22 min

127.2 第百二十四話 後‪半‬ オーディオドラマ「五の線2」

    • Drammatici

125.2.mp3

7時間前 12:00
「1512室ですか?」
「はい。」
「失礼ですがお名前をお願いします。」
「岡田と言います。」
「岡田様ですね。失礼ですがお名前もいただけますか。」
「圭司です。」
「岡田圭司様ですね。しばらくお待ちください。」
ホテルゴールドリーフのフロントの女性は受話器を取って電話をかけはじめた。
「フロントです。ロビーにお客様がお見えになっています。はい。ええ男性です。岡田さんとおっしゃるそうです。ええ。はい。かしこまりました。それではお部屋までご案内致します。」
女性は電話を切った。
「私がご案内いたしますので、一緒に来ていただけますか。」
「え?どこか教えてくれれば自分で行きますけど。」
「当ホテルのスイートルームになりますので、私がご案内いたします。」
「スイート?」
エレベータを5階で降りそのまま廊下をまっすぐ奥に進むと、いままであった部屋のものとは明らかに作りが違うドアが現れた。重厚な作りの観音扉である。女性はインターホンを押した。暫くしてその扉は開かれた。
「おう。」
「え?」
扉を開いたのは数時間前まで捜査本部に岡田と一緒にいた、県警本部の捜査員だった。
「え…なんで?」
「まあ入れま。」
豪華な作りの玄関を抜け、いよいよ部屋の中に入るという時に岡田は異変を感じ足を止めた。
「あれ?おいどうした。」
「あの…なんか騒がしくないですか。」
「ほうや。訳あって大所帯になっとる。」
捜査員が部屋の扉を開くとそこはくつろぎの空間というより会議室だった。上座中央には最上が座り、その隣に土岐が座っている。
「よく来たね岡田くん。」
「本部長これは一体。」
「土岐くんは君に紹介するまでもないね。」
「え…ええ。」
「じゃあこちらから紹介しよう。まずは県警本部警備部公安課の神谷警部。」
最上の紹介にあわせて神谷は頭を下げた。
「え?公安?」
「次に同じく警備部公安課の冨樫警部補。」
「冨樫です。よろしくお願いします。」
「そして冨樫くんの前に座っているのは…。」
岡田は思わず目をこすった。
「み…三好…さん?」
三好は岡田を見て笑顔で会釈をした。
「なんで…。」
「岡田くん。まぁ掛けてくれ。」
最上に促されて岡田は席についた。
「岡田くん。君をこの席に呼んだのはほかでもない。先程も言ったように君には最後の仕上げをして欲しいんだ。」
「あの…本部長。」
「岡田くん。君は「ほんまごと」の記事が真実に迫るものがあると言った。」
「あ、はい。」
「その根拠は君が信頼する人間が紹介してくれた奴が、あの記事を書いているからと言った。」
「はい。」
最上は立ち上がった。
「その君が信頼する人間ってのは片倉くんだ。」
「え?」
「県警警備部公安課課長、片倉肇くんだよ。」
「公安課課長?」
「そうだ。民間企業の営業マンじゃない。彼はれっきとした警察官だよ。」
片倉は警察をやめ警察OBが経営する会社の営業になった。この情報しか持ち合わせていなかった岡田は最上の言葉がにわかには信じられない。
「岡田くん。ほんまごとを読んだだろう。あれは片倉くんによる公安警察の捜査内容そのものなんだ。病院横領事件、一色の交際相手の強姦事件、熨子山事件、鍋島の生い立ち、村上殺害の謎、ツヴァイスタンの工作活動実態、背乗り、金沢銀行の

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7時間前 12:00
「1512室ですか?」
「はい。」
「失礼ですがお名前をお願いします。」
「岡田と言います。」
「岡田様ですね。失礼ですがお名前もいただけますか。」
「圭司です。」
「岡田圭司様ですね。しばらくお待ちください。」
ホテルゴールドリーフのフロントの女性は受話器を取って電話をかけはじめた。
「フロントです。ロビーにお客様がお見えになっています。はい。ええ男性です。岡田さんとおっしゃるそうです。ええ。はい。かしこまりました。それではお部屋までご案内致します。」
女性は電話を切った。
「私がご案内いたしますので、一緒に来ていただけますか。」
「え?どこか教えてくれれば自分で行きますけど。」
「当ホテルのスイートルームになりますので、私がご案内いたします。」
「スイート?」
エレベータを5階で降りそのまま廊下をまっすぐ奥に進むと、いままであった部屋のものとは明らかに作りが違うドアが現れた。重厚な作りの観音扉である。女性はインターホンを押した。暫くしてその扉は開かれた。
「おう。」
「え?」
扉を開いたのは数時間前まで捜査本部に岡田と一緒にいた、県警本部の捜査員だった。
「え…なんで?」
「まあ入れま。」
豪華な作りの玄関を抜け、いよいよ部屋の中に入るという時に岡田は異変を感じ足を止めた。
「あれ?おいどうした。」
「あの…なんか騒がしくないですか。」
「ほうや。訳あって大所帯になっとる。」
捜査員が部屋の扉を開くとそこはくつろぎの空間というより会議室だった。上座中央には最上が座り、その隣に土岐が座っている。
「よく来たね岡田くん。」
「本部長これは一体。」
「土岐くんは君に紹介するまでもないね。」
「え…ええ。」
「じゃあこちらから紹介しよう。まずは県警本部警備部公安課の神谷警部。」
最上の紹介にあわせて神谷は頭を下げた。
「え?公安?」
「次に同じく警備部公安課の冨樫警部補。」
「冨樫です。よろしくお願いします。」
「そして冨樫くんの前に座っているのは…。」
岡田は思わず目をこすった。
「み…三好…さん?」
三好は岡田を見て笑顔で会釈をした。
「なんで…。」
「岡田くん。まぁ掛けてくれ。」
最上に促されて岡田は席についた。
「岡田くん。君をこの席に呼んだのはほかでもない。先程も言ったように君には最後の仕上げをして欲しいんだ。」
「あの…本部長。」
「岡田くん。君は「ほんまごと」の記事が真実に迫るものがあると言った。」
「あ、はい。」
「その根拠は君が信頼する人間が紹介してくれた奴が、あの記事を書いているからと言った。」
「はい。」
最上は立ち上がった。
「その君が信頼する人間ってのは片倉くんだ。」
「え?」
「県警警備部公安課課長、片倉肇くんだよ。」
「公安課課長?」
「そうだ。民間企業の営業マンじゃない。彼はれっきとした警察官だよ。」
片倉は警察をやめ警察OBが経営する会社の営業になった。この情報しか持ち合わせていなかった岡田は最上の言葉がにわかには信じられない。
「岡田くん。ほんまごとを読んだだろう。あれは片倉くんによる公安警察の捜査内容そのものなんだ。病院横領事件、一色の交際相手の強姦事件、熨子山事件、鍋島の生い立ち、村上殺害の謎、ツヴァイスタンの工作活動実態、背乗り、金沢銀行の

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