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128.2 最終話 後‪半‬ オーディオドラマ「五の線2」

    • Drammatici

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「12月24日お昼のニュースです。政府は24日午前、2015年度第3次補正予算案を閣議決定しました。今回の補正予算は今年10月に国家安全保障会議において取りまとめられた「日本国の拉致被害者奪還および関連する防衛措置拡充に向けて緊急に実施すべき対策」に基づいた措置を講じるためものです。
この予算案では先ごろ国内で発生したツヴァイスタンの工作員によるテロ未遂事件を受けてのテロ対策予算の拡充として500億円。ツヴァイスタンに拉致された疑いがある特定失踪者の調査費として28億円。近年日本海側で脅威となっている外国船の違法操業対策および外国公船の領海侵入対策として海上保安庁の予算を新たに1,000億円追加します。あわせてツヴァイスタン等によるミサイルの脅威に対抗するため、新たに5兆円の防衛予算を措置します。防衛予算においては国際標準である対GDP比2%の達成を継続的に維持するため、来年度の本予算においては今回の補正予算の5兆円を既に盛り込んだ10兆円とする予定です。これで今回の補正予算における予算額は合計で5.1兆円となります。これはリーマンショック以降の補正予算としては過去最大規模のものとなり、政府はこの内の5兆円を赤字国債の発行によって財源を捻出します。
また、政府は今回の安全保障政策の拡充を図る財政政策を積極的に行うことで、現在の日銀による金融緩和政策と連携して、デフレ脱却の起爆剤にすることをひとつの目標としています。
それでは今回の補正予算についての総理のコメントです。」
テレビの電源を切った片倉は立ち上がった。
「もう行くん?」
「ああ。やわら行かんとな。」
「次はいつ家に戻って来るん?」
「そうやな…。」
「新幹線は3月14日に開通するらしいわよ。」
「あ…そうか…その手があったか。」
「2時間半で東京やし、私もいつでも行こうと思ったら行けるわね。」
「ふっ…来ても相手出来んかもしれんぞ。」
「別にいいわいね。あなたが相手できんがやったら若林さんと一緒にお茶でもするわ。」
「え…。」
片倉は絶句した。
「嘘よ嘘。あの人つまんない人なの。」
「どこが。」
「だって少しは不倫しとる感じださんといかんから、手でも繋ごっかって言ったら、ボディタッチだけは勘弁してくれって。後で変な誤解が生まれたらあなたにどつかれるって。」
「ふっ…。」
「ぱっと見韓流スターみたいで素敵なんやけどねぇ…。」
「やめれ。」
「あ怒った。」
「怒っとらん。」
そう言って片倉は妻を抱きしめた。
「京子は?」
「ほら、またあなた忘れとる。」
「何が。」
「今日はクリスマスイブやよ。」
「あ…。」
「相馬くんとデートでもしとるんやろ。」
妻の肩越しに片倉は笑みを浮かべた。


「え?東京に?」
「うん。」
相馬と京子は昭和百貨店の一階にある喫茶店にいた。
「なんでまた。」
「知らんわいね。」
プリンを食べ終わった相馬はナプキンで口を拭った。
「あれ?」
「なに?」
「ちょ…京子ちゃん…。」
遠くを呆然として見つめる相馬に京子は怪訝な顔をした。
「だから何ぃね。」
「ほら…あそこ…。」
相馬が指す方を京子は振り返って見た。
「え…。」
そこには山県久美子が猫背の男と向かい合って座っていた。


「東京に行かれるんですか。」
「ええ。」
「どうしてまた。」
男は胸元から

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「12月24日お昼のニュースです。政府は24日午前、2015年度第3次補正予算案を閣議決定しました。今回の補正予算は今年10月に国家安全保障会議において取りまとめられた「日本国の拉致被害者奪還および関連する防衛措置拡充に向けて緊急に実施すべき対策」に基づいた措置を講じるためものです。
この予算案では先ごろ国内で発生したツヴァイスタンの工作員によるテロ未遂事件を受けてのテロ対策予算の拡充として500億円。ツヴァイスタンに拉致された疑いがある特定失踪者の調査費として28億円。近年日本海側で脅威となっている外国船の違法操業対策および外国公船の領海侵入対策として海上保安庁の予算を新たに1,000億円追加します。あわせてツヴァイスタン等によるミサイルの脅威に対抗するため、新たに5兆円の防衛予算を措置します。防衛予算においては国際標準である対GDP比2%の達成を継続的に維持するため、来年度の本予算においては今回の補正予算の5兆円を既に盛り込んだ10兆円とする予定です。これで今回の補正予算における予算額は合計で5.1兆円となります。これはリーマンショック以降の補正予算としては過去最大規模のものとなり、政府はこの内の5兆円を赤字国債の発行によって財源を捻出します。
また、政府は今回の安全保障政策の拡充を図る財政政策を積極的に行うことで、現在の日銀による金融緩和政策と連携して、デフレ脱却の起爆剤にすることをひとつの目標としています。
それでは今回の補正予算についての総理のコメントです。」
テレビの電源を切った片倉は立ち上がった。
「もう行くん?」
「ああ。やわら行かんとな。」
「次はいつ家に戻って来るん?」
「そうやな…。」
「新幹線は3月14日に開通するらしいわよ。」
「あ…そうか…その手があったか。」
「2時間半で東京やし、私もいつでも行こうと思ったら行けるわね。」
「ふっ…来ても相手出来んかもしれんぞ。」
「別にいいわいね。あなたが相手できんがやったら若林さんと一緒にお茶でもするわ。」
「え…。」
片倉は絶句した。
「嘘よ嘘。あの人つまんない人なの。」
「どこが。」
「だって少しは不倫しとる感じださんといかんから、手でも繋ごっかって言ったら、ボディタッチだけは勘弁してくれって。後で変な誤解が生まれたらあなたにどつかれるって。」
「ふっ…。」
「ぱっと見韓流スターみたいで素敵なんやけどねぇ…。」
「やめれ。」
「あ怒った。」
「怒っとらん。」
そう言って片倉は妻を抱きしめた。
「京子は?」
「ほら、またあなた忘れとる。」
「何が。」
「今日はクリスマスイブやよ。」
「あ…。」
「相馬くんとデートでもしとるんやろ。」
妻の肩越しに片倉は笑みを浮かべた。


「え?東京に?」
「うん。」
相馬と京子は昭和百貨店の一階にある喫茶店にいた。
「なんでまた。」
「知らんわいね。」
プリンを食べ終わった相馬はナプキンで口を拭った。
「あれ?」
「なに?」
「ちょ…京子ちゃん…。」
遠くを呆然として見つめる相馬に京子は怪訝な顔をした。
「だから何ぃね。」
「ほら…あそこ…。」
相馬が指す方を京子は振り返って見た。
「え…。」
そこには山県久美子が猫背の男と向かい合って座っていた。


「東京に行かれるんですか。」
「ええ。」
「どうしてまた。」
男は胸元から

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