第593回:中小企業のAI活用の現状を商工中金のデータから読む、そして本当に必要な「要素」とは何か?

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ラウンドナップWebコンサルティングの中山陽平です。

このPodcast/書き起こしで得られること(要点)

  • 中小企業のAI活用が、個人利用や事務作業の効率化以上に波及しづらい理由
  • 「会社としてAIを導入すれば成果が出る」という見方への注意点
  • AI活用で必要になる「改善後の姿」の描き方
  • 情報収集、予算、人材、定着の課題を分けて考える視点
  • 中小企業が今からAI活用へ踏み出すための現実的な始め方

今回は、中小企業がAIをどう活用していけばよいのか、というテーマです。AIを個人では使っている。メールの下書き、要約、議事録、ちょっとした調べ物には使っている。でも、会社として経営にインパクトが出ているかというと、そこまでは行っていない。そういう相談は、実際にかなり増えています。

商工中金が公開している中小企業向けの生成AIに関する調査を見ると、まさにその現場感が出ています。

個人判断で使っている企業は多い。一方で、会社全体の業務フローを変えるところまでは、まだ進みきっていない。このギャップをどう考えるかが、今回の大きなポイントです。

私が強く感じているのは、AI活用で最初に必要なのは「AIツールの使用スキル」では”ない”ということです。

その前に、自社がどう変わりたいのか、業務がどうなれば良い状態なのか、その絵を描けるかどうかということです。

会社で導入すること自体が、何かを変えてくれる…訳ではない

調査では、会社として導入している企業のほうが、経営へのプラス効果を感じている割合が高い、という結果が示されています。

これだけを見ると、会社主導で生成AIを入れれば成果につながる、という捉え方をしたくなります。

ただ、そこを少し疑って見たほうがよい。

会社として導入しているから成果が出ている、というより、そもそも会社として導入できるだけの土台がある企業だから成果が出ている。

AIをみんなで使おう、システムを入れよう、業務フローを見直そう、と考えられる会社には、もともと改善する文化があります。

上層部の理解があり、現場を変える力があり、小さく試して前に進める空気があります。

そういう会社は、会社契約をしても成果が出やすいし、個人利用から始まっても深い活用へ進みやすい。

逆に、会社として契約だけしても、使う目的が曖昧で、現場の業務にどう組み込むのかが見えていなければ、ほとんど動きません。アカウントを配っただけで終わる。チームプランを契約しただけで終わる。そういうことは普通。

だから、とりあえず会社としてAIを入れれば何とかなる、という考え方は危険。契約の前に、AIを使える会社になっているかどうかを考えなければいけません。

個別作業の効率化でつまづく理由

生成AIの使い道として多いのは、メール、報告書、議事録、要約といった事務作業です。これは始めやすいですし、実際に効果も出やすい領域です。私も、こうした使い方が悪いとはまったく思っていません。

ただ、そこだけで止まってしまうと、AIの力のごく一部しか使っていない状態に。

目の前の作業を少し楽にすることと、会社全体の生産性を変えることは別の話。

目の前の作業を楽にする使い方は、Excelのマクロを作るような感覚に近いもの。この文章を整えてほしい。このメールを短くしてほしい。この議事録をまとめてほしい。こうした使い方は、今ある作業の中にAIを差し込むだけなので分かりやすい。

一方で、会社全体を巻き込んで、生産性を何十%も上げる。新しい業務の進め方を作る。現場のデータを集め、加工し、使える状態にして、意思決定の流れまで変える。ここまで行こうとすると、先に「自分たちはこうなれるはずだ」という絵が必要。

その絵がないままAIを使っても、どこに使えばいいのかが決まりません。結局、分かりやすいメールや議事録に戻ってしまう。多くの企業が個別作業の効率化でつまづく理由は、AIの性能不足ではなく、向かう先が描けていないことにあると感じています。

改善後の姿が情報収集を決める

AI活用が進まない理由として、「情報収集が追いつかない」という声もよく聞きます。もちろん、技術の変化は速いですし、毎日のように新しいツールや事例が出てきます。追いきれない感覚があるのは自然です。

ただ、もう少し分解して考えたほうがよいです。

情報がないのか。調べ方が分からないのか。それとも、そもそも何を調べたらいいのか分からないのか。この3つは違います。

私の感覚では、かなり多くのケースで問題になっているのは、最後の「何を調べたらいいか分からない」です。自社がどうなりたいかが見えていないから、必要な情報も見えていない。だから、AIのニュースを追っても、ツール紹介を見ても、自分たちの業務にどう関係するのかが分からない。

逆に、ゴールの姿があると、必要な情報は見えやすくなります。

  • ここからここへ行くには、どのデータが必要か
  • 今あるデータは使えるのか。現場からどう集めるのか
  • 加工が大変なら、そこをAIに任せられるのか
  • 社内ではGoogle Workspaceを使っているから、スプレッドシートで見られる形がよいか

こういうふうに、必要なステップが自然に分解されていきます。

AI活用は、単にAIに詳しくなることではありません。自社の業務をどう変えたいか。

そのために何が足りないかを見つけ、その足りない部分をAIやデータで埋めていくこと。

情報収集も、その順番で考えないと散らかってしまいます。

導入前、検討中、導入後で違う壁

生成AIを導入しない理由にも、いくつかの段階があります。以下が実際の資料です。

導入以前であれば、具体的な活用場面が分からない、自社業務になじまない、経営戦略や事業戦略に反映できていない、情報収集が追いつかない、といった課題が出てきます。

これらは一見ばらばらですが、かなりの部分は「どこへ向かうのか」が描けていないことに戻ってきます。

  • 活用場面が分からないのは、変えたい業務の姿が見えていないからです。
  • 経営戦略に反映できないのは、AIによって何が変わるのかを説明できないからです。

導入を検討する段階になると、別の壁が出ます。

  • 推進する人材がいない。従業員に知識不足や心理的抵抗がある、予算や時間を確保できない。相談先が見つからない。

これも、先にある変化が見えていなければ動きにくいものです。

特に、推進する人材というのは、単にAIに詳しい人ではありません。絵を描ける人です。

こう変わると良い。こうなれば現場が楽になる。ここまで行ければ会社として意味がある。

そういう姿を示せる人がいると、周りもついてきやすくなります。

さらに導入後には、

  • 社内ルールや方針整備が追いつかない
  • 導入効果を測定できない
  • 知識が一部部署に偏る
  • 業務プロセスに組み込めず定着しない

といった課題が出ます。

ここでは、最初に描いた絵が現場にはまっていなかった可能性と、価値を証明する仕組みを用意していなかった可能性があります。

AIで業務を変えるなら、何をもって効果があったと見るのかも先に考える必要があります。

時間が減ったのか、ミスが減ったのか、判断が速くなったのか、現場の負担が減ったのか。そこを測れないと、せっかく動かしても周囲を説得できません。

今から始めても遅くない理由

調査では、5年後もAIの活用は限定的だと考える人が、業界によってはかなりいることも示されています。

情報通信業のように大きな変化を感じている業界もありますが、多くの業界では、まだそこまで変わらないだろうと見ている人が少なくありません。

これは、AI活用に取り組む側から見ると、まだ十分にチャンスがあるということ。

すでに出遅れたと感じる必要はありません。むしろ、今から自社の業務に合わせて