「8語で論じる情報学」平成17年度市民講座 National Institute of Informatics
-
- テクノロジー
国立情報学研究所の研究者が、情報学に関連したさまざまなテーマについてわかりやすく解説します。第2回は「8語で論じる情報学」と題して8回の講座を開催させて頂きました。コーディネーター:北本朝展(国立情報学研究所)
-
-
-
-
-
- video
佐藤真一「メディア検索」
家庭用デジタルカメラ・ビデオカメラやカメラつき携帯電話の普及、Web上の画像・映像情報の提供、ケーブルテレビ・デジタル放送・データ放送・ハードディスクレコーダなどの放送映像環境の革新などにより、個人が大量の画像・映像情報にアクセスできる時代がやってきた。こうした視覚メディアは、見ただけで多くの情報を得ることができ、かつ理解しやすい、すぐれた情報源といえる。こうした大量の画像・映像情報から、あたかもWebの検索エンジンを使うように、好きな情報を自由自在に引き出すことができれば、われわれの画像・映像の利用環境も大幅に便利になるものと考えられる。しかし、これは技術的には大変に難しい。大きな理由の一つは、われわれ人間は画像や映像を見て即座にその中身を理解することができるが、コンピューターにはこれが大変に難しいことがあげられる。それでは、どうすればいいのか。何が可能なのか。本講座では、画像や映像などの視覚メディアの検索のためにはどのような技術が必要なのか、それがなぜ困難なのかについて解説し、現在の研究の最前線では何が検討され、何が可能になってきているのかについて明らかにしたい。
-
- video
岡田仁志「サイバー社会」
インターネット空間に登場したサイバー社会は、ますます便利な空間になっていきます。しかしながら、なんでもできる便利な空間は、なにかと厄介なことに巻き込まれる危険な空間なのかもしれません。本講演では、サイバー社会が抱える危険を避けながら、その便利さを享受することはできるのか、皆さんとご一緒に考えてみたいと思います。
いまやインターネットは研究や仕事のための空間であるだけでなく、たとえば自宅に居ながらにして日本中から新鮮な食材が手に入るスーパーストアーとしての顔を持っています。そこでは、現金よりも簡単で便利な電子の支払い方法がいくつも考案されました。最近ではICカードの形をした電子マネーを使える電子のお店も増えてきました。さらには、街の中にも携帯電話をお財布代わりに使えるお店が登場するようになり、インターネット空間の中だけでなく、現実の社会にもしっかりとデジタル経済のネットワークが張り巡らされています。
サイバー社会に登場するお店は、どれも記憶力がとても良いのが特徴です。誰がどんな商品を買ったのかをコンピュータが記憶していて、消費者の好みにあわせて欲しいと思うものを代わりに見つけてきてくれます。あとは電子マネーをパソコンにタッチするだけで支払いが済んで、商品が届くのを待つばかり、とても便利ですね。一見すると良いことばかりのようですが、ちょっと怖い側面もあります。なにしろ、一人ひとりの行動を何年も先までしっかりと覚えているのですから。
そこで必要になってくるのが、パーソナルデータを別の用途には使わないという約束事と、顧客の要望に応じてパーソナルデータを上手に使いこなすサービスの最適なバランスです。そしてこれらは、新しいサービスを可能にするような技術と、それを支える法制度がコラボレートできた時にはじめて実現するのです。このほかにもインターネット空間を便利でかつ安心な場にするためのさまざまな取り組みを紹介しながら、サイバー社会のあるべき未来像を描いてみたいと思います。