高千穂さんのご縁です。

「お布施のお話」その一 お金がなくてもできる「無財の七施」

🔶「お布施(その一)」をやさしく整理します

「お布施=お金や物を渡すこと」と思われがちですが、仏教でいう**布施(ふせ)**はもっと広く深い実践を指します。今週は、用語を正しつつ、日常で生かせる形にまとめます。

🔶布施の本来の意味

布施はサンスクリット語 dāna(ダーナ) の意訳で、「自分の持ち物や能力・心を惜しみなく分かち合い、互いに助け合い喜び合うこと」を意味します。見返りや取引ではなく、純粋な贈与の心が要です。

🔶六波羅蜜と三種の布施

菩薩の修行である**六波羅蜜(ろくはらみつ)**のはじめに置かれるのが布施です。布施には大きく三つあります。

財施(ざいせ):金品・物品・時間・労力を分かち合います。

法施(ほっせ):教えや知恵・気づきを分かち合います(僧侶だけでなく、学んだことをやさしく伝える行為全般を含みます)。

無畏施(むいせ):不安・恐れにある人を安心へ導く支え(傾聴・寄り添い・安全の提供など)。

いずれも「相手の利益(やすらぎ)を願う心」が中心にあります。

🔶布施の心得は「見返りを求めない」

「これをしたから、相手は返してくれるはず」という計算は布施の心から離れます。結果や評価に執着せず、ただ相手のためにおこなう——その自由さが布施のいのちです。

🔶お金がなくてもできる「無財の七施」

財産がなくても実践できる布施として、仏教には無財の七施(むざいのしちせ)が説かれます。

眼施(がんせ):温かいまなざしを向けます。

和顔施(わがんせ)(和顔悦色施):にこやかな表情で接します。

言辞施(ごんじせ):やさしい言葉をかけます。

身施(しんせ):体を使ってできる助けをします(手伝い・介助など)。

心施(しんせ/慈心施 じしんせ):思いやり・祈りなど心からの善意を向けます。

床座施(しょうざせ):席や場所を譲るなど、快適な居場所を提供します。

房舎施(ぼうしゃせ):雨宿りの軒を貸す・玄関先で休ませるなど、憩いの場を与えます。

どれも「今日から・ここで」実践できます。

🔶「和顔愛語(わげんあいご)」を合い言葉に

和顔愛語とは、柔和な顔(和顔)と愛ある言葉(愛語)で人に接すること。対面でもオンラインでも、誹謗や刺々しさが生まれやすい時代だからこそ、表情と言葉に温度を取り戻すことが無畏施にもつながります。

・まずは深呼吸→和顔→ひと言目をやさしく。

・相手の事情を慮(おもんぱか)る一拍を置く。

小さな実践が、身の回りの空気を確実に変えます。

🔶今週のまとめ

・布施は贈与の心であり、六波羅蜜の第一。

・財施・法施・無畏施はいずれも「相手の安楽」を願う実践です。

・結果を求めずおこなうのが布施のいのち。

・無財の七施(眼施・和顔施・言辞施・身施・心施・床座施・房舎施)は、誰でも今日から始められます。

・合い言葉は和顔愛語。顔と言葉から、やさしさを広げましょう。

来週も引き続き、「お布施(その二)」をお届けします。どうぞお楽しみに。

お話は、熊本市中央区京町(きょうまち)にある仏嚴寺(ぶつごんじ)の

高千穂光正(たかちほ こうしょう)さん。

お相手は丸井純子(まるい じゅんこ)でした。