アワノトモキの「読書の時間」 粟野友樹,星野良太,Work-Teller
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「働く人と組織の関係性の編み直し」をテーマに
独自の視点で選んだ本を紹介する番組です。
扱う本は皆さんが知らないものが多くなるかもしれません。
20年以上「人と組織の関係性」を見つめてきたぼくの知見から
今の時代に必要だと思われる本だけを三部構成でご紹介していきます。
【profile】
リクルート/リクナビNEXT「転職成功ノウハウ」、リクルートエージェント「転職成功ガイド」識者
累計約600本以上の記事を監修
https://next.rikunabi.com/tenshokuknowhow/profile-tomoki-awano/
筑波大学→大学院→人材系企業→フリーランスと
20年以上、人と組織の関係性について学習と実践を重ねる。
◎注目している分野
・無意識的に社会指標に適応しようとする個人の葛藤
・現代社会のしがらみから五感を解き放つ自然環境の可能性
・現場、当事者の主体性に焦点を当てたオルタナティブ教育
・ブリコラージュ/人が元来持つ適応能力・打開能力の活用
・ナラティブコミュニケーションによる脱既定路線
※上記分野のお話が多くなると思います。
★ご質問、扱う本のリクエストなどがありましたら、
こちらまでDMをお寄せください。
https://twitter.com/Tomoki_Awano
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ep37-1 「ふつうの相談」(東畑開人さん)-星野良太の読書の時間、心のケア世界のナウシカ、大仏次郎賞誤読事件
37冊目は、粟野さんではなく星野による読書の時間です。
扱う本は「ふつうの相談」、著者は東畑開人さん。
https://amzn.asia/d/5Aqtjix
白金高輪カウンセリングルームを主催されている方です。
2024年の紀伊国屋人文大賞で16位になっていたのを見て、興味を持ち読んだのでした。
大学時代にカウンセリングを学ぼうとしていた身としては、再度今の業界動向を知ってみたいという気持ちがあり、この機会に手に取った次第です。
読後のファーストインプレッションは「読者へのケアがある本だな」という印象。
また、本自体の構成に意図があり、そこに惹かれました。
実際本がかかれた背景としては、心のケアに関わる方々をつなぐための新しい相対的な見方を提示しよう、というもの。
いわば心のケア世界のナウシカです。
失われた人と大地の絆を結びなおそうとされています。
本を読みながら感じたことを、次回以降、下記3つのキーワードに沿ってお話していこうと思います。
1.相対化してお互いを理解し合うこと
2.星野は預かりたい
3.横道の意義とは?
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※ちなみに途中、「大佛次郎賞」を「だいぶつじろう」と呼んでいる個所がありますが、正しくは「おさらぎじろう」ですね。無知をぶっこきまして大変失礼いたしました!皆さまお気を付けを!
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ep36-5 「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか」(岩尾俊兵さん)-小さな表現者たち・誤配と連帯・おぼっちゃまくん-
読書の時間36冊目、慶應義塾大学准教授の岩尾俊兵さんの著書、
「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増強改訂版『日本”式”経営の逆襲』」
を扱う5話目、こぼれ話の回。
www.amazon.co.jp/dp/4334100910
「日本企業が逆襲」するにあたって重要となる、コンセプト化・文脈依存度の話から、
本・ZINEを作る個人が増えている今いま、文芸フリマの盛況ぶり(東京は2024年5月で38回目)、
星野さんが感銘を受けた「陶器市@栃木県・益子」でのストーリーを感じる陶器との出会い、
などなど・・・
より小さな範囲の自分・自分たちを「表現する」流れが来ているのではないか?
小さな、もしかしたら取るに足らないかもしれない表現と、
それに偶然出会った受け手との間にこそ、
何か大切なものがあるのかも知れません。
益子の陶器市での陶器との出会いを熱く語る星野さんの話を聴きながら、
小さな表現者である作陶者やそれを代弁するお店の方、
受け手の星野さんの間に小さいけれど、確かなつながり「連帯」が生じている。
ふとそこから連想するのは、
読書の時間31冊目で扱った、東浩紀さん「「観光客の哲学 増強版」の、
「誤配・観光・憐れみ」。
「分断ではなく連帯」を社会に作っていく上で重要なキーワードでした。
www.amazon.co.jp/dp/4907188498
ep31-1「観光客の哲学 増強版」(東浩紀さん)-訂正可能性・偶然性/無責任性/曖昧性・人間っぽさ-
https://spotifyanchor-web.app.link/e/fz7Z1B9t5Ib
それはつまり、偉い誰かに「皆、連帯しましょう」と掛け声をかけられても、内心は白けてしまう。
けれども、たまたま偶然の出会いによって生じてしまった愛着や思い出からは、
簡単には消えない連帯が生まれるのではないだろうか、というような話でした。
そんな話もしながら、
終盤はドラゴンボールの作者、鳥山明さんの訃報に触れた世界中からの
リスペクト溢れる様々な反応からまざまざと感じる、漫画の持つ影響力の話へ。
作者の超個人的な想いやイメージからスタートした作品が、勝手に、そして何ら反発をされずに世界中へ広がっていく。
(逆襲とか、売り込むとか、他国の文化に自国が乗っ取られるとか、そういった発想が生まれることもなく)
最後はこぼれ話らしく、コロコロコミックで1990年前後に連載されていた、昭和の名作漫画「おぼっちゃまくん(小林よしのりさん作)」へ着地。
経営・グローバル競争から、陶器、おぼっちゃまくんまで。
書籍の内容をそのまま扱うのではなく、
ある程度は実直に読み解きながらも、
同時に受け手の我々が誤読をしつつ、発想を展開していく。
その中にこそ、その書籍との忘れがたいつながり・連帯が生じたり、
聴いていただいている皆さんと「アワノトモキの読書の時間」との何らかのつながりになるのかもしれません。
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さて、次回37冊目は星野さん選書「ホシノリョウタの読書の時間」です。
どんな本になるのかも含め、楽しみにお待ちいただければと思っています。
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ep36-4 「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか」(岩尾俊兵さん)-幼馴染とアイドル・強い文脈と弱い文脈・開かれる儚さ-
読書の時間36冊目、慶應義塾大学准教授の岩尾俊兵さんの著書、「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増強改訂版『日本”式”経営の逆襲』」を扱う4話目。
www.amazon.co.jp/dp/4334100910
キーワード3つ目は、
「文脈依存度を下げるべきなのか」
『日本”式”経営の逆襲』を企図する著者としては、
日本の優れた経営技術(ノウハウ)をグローバルに輸出していきたい。
それはつまり、
日本企業の現場で日々行われるノウハウの抽象度を上げて=文脈依存度を下げ、コンセプト化し、
「サムライ・スピリット」
「wabi-sabi(侘び寂び)」
のような日本風のプロダクト名をつけ、
世界に広め、日本企業・日本式の実力を知らしめる、ということだと解釈しました。
「確かに!元々いい経営技術を持っている日本企業が同じものを逆輸入させられて、良さを失う状態は変えたいよね」とまさに正しい方向性だと思う一方で、
私(粟野)としては、強いプロダクトをぶつけ合ってシェア競争・輸出と逆輸入をやり合う、
永遠に続く戦いの円環の中に入っていくだけのような、
そんな印象も受けたというのが正直な感想です。
同時に、星野さん曰くの「世に開かれる故の儚さ」という必然性にも思いが至ります。
文脈依存度を下げてコンセプト化した経営技術プロダクトを世界に出す、ということは、
つまり同時に他国(他者)にそのコンセプトなりを書き換えられる・再解釈される可能性に開かれるということ。
「仲の良かった幼馴染が、人気アイドルになり、遠い存在になってしまった。
もう俺の知ってる幼馴染じゃない・・・。嬉しいけれど、寂しい。」
その寂しさに似た儚さを感じて違和感を持った私がいたのかもしれませんが、最近流行りのアメリカの哲学者・リチャード・ローティ的にみると、「再解釈され続けることに開かれる」という態度が必要なのかもしれません。
一度出したプロダクトがずっと勝ち続けるという不可能な期待はしない。
幼馴染もステージや環境によって、変化していくことが自然である。
※この文脈(コンテクスト)やコンセプトの話にご興味ある方は、ぜひTAKRAM・渡邉康太郎さんの「コンテクスト デザイン」の”強い文脈・弱い文脈”の話もご覧いただけると面白いかと思います。
https://aoyamabc.jp/products/context-design
読書の時間 ep01-1/「コンテクストデザイン」(Takram渡邉康太郎さん)
https://podcasts.apple.com/jp/podcast/ep01-1-%E3%82%B3%E3%83%B3%E3%83%86%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%87%E3%82%B6%E3%82%A4%E3%83%B3-takram%E6%B8%A1%E9%82%89%E5%BA%B7%E5%A4%AA%E9%83%8E%E3%81%95%E3%82%93/id1574537184?i=1000527397958
さて、次回は36冊目の5話目、こぼれ話の回になります。
ざっくばらんな展開になると思いますが、次回もお聴きいただければと思っています。
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ep36-3 「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか」(岩尾俊兵さん)-カイゼン・オープンイノベーション・ティール組織-
引き続き、読書の時間36冊目は、
慶應義塾大学准教授の岩尾俊兵さんの著書、
「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増強改訂版『日本”式”経営の逆襲』」を扱う3話目。
www.amazon.co.jp/dp/4334100910
キーワード2つ目は、
「逆輸入される日本の経営技術」
まず著者は、曖昧模糊とした解釈をされがちな「経営」という言葉を、
3つに分解した理解を提案します。
・経営成績・・・株式時価総額、売上高、など
・経営学・・・・世の主流とされるアメリカ式経営学、ドイツ経営学など
・経営技術・・・企業経営の現場にある技術、ノウハウ、フレームワークなど
もし「経営」を上記3つを分解せずに解釈している場合、
「日本企業の時価総額ランキングは、失われた30年で凋落した。だから日本企業はだめだ」
「経営学の最先端はアメリカで、日本の経営学は遅れている。キャッチアップが必要だ」
「◯◯というGAFAMの最新フレームワークを導入して、日本企業の経営をアップデートしなければならない」
といった表現をされながら、日本企業の劣位が解説される場面が多いように感じます。
しかし、著者曰く、「経営」を3つに分解して捉え直した時、
こと経営技術に関しては日本企業にもともと素晴らしいものがある。
なのに、同じもの(経営技術)をカタカナ語に変換されただけで欧米から逆輸入してしまうことで、
本来持っていた日本企業の経営技術が消され、
日本企業の弱体化を招いているのではないか、と指摘されます。
その具体例として、
両利きの経営、オープンイノベーション、ティール組織、リーン・スタートアップ、
アジャイル開発、スクラム開発、ボトルネック、コンカレント・エンジニアリングなどが
本書では挙げられています。
この読書の時間では、そのうち3つ経営技術用語を取り上げました。
▼両利きの経営(既存事業=知の深化+新規事業=知の探索、その両方やっていくことが大事ですよ)
素朴な疑問;
トヨタ生産方式のカイゼンのように、デンソーが既存の生産ラインを動かしながらも、
新しく製造指示書(カンバン)を効率的に処理する新しい方法として「QRコード(クイック・レスポンス)」を
生み出したように、日本企業でも普通にやっていることなのでは?
改めて、欧米から「両利きの経営が大事ですよ」と言われて、改めてやることなのだろうか。
▼オープンイノベーション(企業の内と外の技術をうまく活用して新しいよきものを生み出していきましょうね)
素朴な疑問:
日本企業の「ケイレツ」は、1企業で製品を完成するのではなく、複数の企業がそれぞれの知見を活かしており、
オープンイノベーションのわかりやすい事例として、ずっと存在しつづけているのではないか。
今更、カタカナ語で啓蒙される必要は無いのでは?
▼ティール組織(組織が1つの生命体のように自然に機能し、人がその人全体として受け入れられている)
素朴な疑問:
(問題箇所はありつつも)日本企業の特徴とされた、終身雇用・年功序列・企業別労働組合だったり、
メンバーシップ型雇用(職務、場所、時間が無限定だと、ジョブ型雇用の対で批判されましたが)だったり、
日本企業はもともと、ティール組織の多くの要素を自然に持っていたのでは? -
ep36-2 「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか」(岩尾俊兵さん)-デフレとインフレ・時代のメカニズム・カネで人材を釣る-
読書の時間36冊目は、慶應義塾大学准教授の岩尾俊兵さんの著書、「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増強改訂版『日本”式”経営の逆襲』」です。
なお、この36冊目の2話目から放送形態を変更し、
1キーワード=1話、というスタイルになります。
これまではキーワード3つを一気に1話分として放送していたので、45分以上の長時間放送回も多数・・・。
これからは、1話15分程度に短縮化されるので、
よりご負担なく、より身近にお聴きいただけるのでは、と思っております。
さて、本題のキーワード1つ目は「カネ優位・ヒト軽視のデフレ時代」です。
戦後から続いた「インフレの時代=カネの価値が低く、ヒトに価値がある」状況から、
平成のあたりを転換点に「デフレ=カネの価値が高く、人の価値が相対的に下がる」流れになり、そして現在に至る日本。
「昭和の時代は、今みたいに物質的に豊かではなく大変だったけど、みんな仕事を一生懸命やって会社に貢献し、会社も家族のような存在で従業員に報いてくれた。いい時代だった。
それに比べて、今の時代は賃金は上がらないし、会社は従業員の面倒を見てくれないし、非正規労働の問題もある。
やれキャリアオーナーシップだ、リスキリングだ、雇用の流動性を上げるべきだ、人的資本経営だとか、生産性・投資対効果といったカネ勘定が物差しになり、ヒトを大事にしない世の中になった」
ちょっと極端な表現をしてみましたが、
こういった、ある種の本音的な感想を持つ方も一定数いらっしゃるのではないでしょうか。
こう考えていくと、一般的に日本型雇用の特徴として一時期称賛された、終身雇用・年功序列・企業別労働組合、
それらさえも、日本企業の経営者がヒトを大事にしようとして取り組んだからそうなったというよりも、「カネよりヒトの価値が高い」から、力学的にそうせざるを得なかっただけなのではないか。
1990年代に規制緩和で非正規雇用が拡大したことも、一言で言ってしまえば、「ヒトを大事にするより、カネを重視したほうが合理的だよね」と状況変化に対応しただけなのかもしれません。
多くの人には当たり前の知識なのかもしれませんが、
我々的には未知の情報であり、時代の裏側にあるメカニズムの1つを教えていただいた、そんな学び多き内容でした。
次回、36冊目の3話目は、キーワードの2つ目「逆輸入される日本の経営技術」を扱います。
「経営技術」という、聞き慣れない用語・概念も出てきますが、ぜひ楽しみにしていただければと思っています。
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ep36-1 「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか」(岩尾俊兵さん)-日本式・カネかヒトか・構造改革-
読書の時間36冊目は、やや趣向を変えてビジネス・経営よりの本をチョイスしました。
「日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか 増強改訂版『日本”式”経営の逆襲』」という、慶應義塾大学准教授の岩尾俊兵さんの著書です。
www.amazon.co.jp/dp/4334100910
1話目は、岩尾俊兵さんの30数年の数奇な人生に少し触れていきます。
幼少期の名門経営者一族としての生活から、中卒自衛官・各種アルバイト生活を経て大検を取得。最終的には東京大学初の経営学博士号まで、といった波乱万丈な歩み。興味深い方です。
従来と異なる選書のきっかけは、岩尾俊兵さんのネットの記事を見かけたこと。
「経営者が、ヒトを大事にするか、カネを重視するか。それは経済環境に多分に影響される」
という話で、金融・経済に疎い粟野は、なるほど!と、また1つ新たな視点を得た感がありました。
さて、Podcast「アワノトモキの読書の時間」 Work Tellerの放送形態ですが、36冊目から少しだけ構造改革を行っていきます。
これまではキーワード3つを1話にまとめて放送していましたが、時間が40~50分と長くなりがち。
そこで、1キーワードで1話放送に分割し、
1冊の本で全5話というスタイルにさせていただきます。
(少しでもお聴きいただいている方の負担やハードルが下がればと思っています)
この新しいスタイルで放送する、
2話目~5話目で取り上げるキーワードは以下の3つになります。
1.カネ優位・ヒト軽視のデフレ時代
2.逆輸入される日本の経営技術
3.文脈依存度を下げるべきなのか
それでは、読書の時間 36冊目の2話目でもお会いできることを楽しみにしています。
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