大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜く‪か‬ QTnetモーニングビジネススクール

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 今回は、「大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか」というトークテーマをいただいています。このテーマについて専門分野の視点からお話しすることになっている訳ですが、正直に申し上げると、非常にテーマが大きいために、何をお話ししたものか考えあぐねていました。しかし、ともかく、このテーマに表れている問いに対する私自身の違和感から話し始めてみようと思います。
 まず「私たちは大きな転換期を迎えている」という認識は、今に始まったものではなく、おそらく歴史上のどの時点でも、その時代を生きた人々に持たれていたのではないかということです。どの時代にも、その時代なりの困難というものがあり、その困難さを強く意識する人々によって、今こそこれまでの生き方、働き方を変えなければならない「転換期」を迎えているのだと認識されてきたのではないかと思います。それぞれの時代の困難には、他の時代状況とは異なる固有性が認められるでしょうが、一方では、その質において互いに類似した性質を持つ時代を見出すこともできる筈です。そう考えると、自分たちの直面している困難の重大さを特権化して、今こそが大きな転換期であるとする意識は薄れてくるのではないでしょうか。
 私が、こういうトークテーマに水を差すようなことを言うのは、現状の困難さを誇大に宣伝して危機感を煽るようなことは、学者が最も慎むべき行為だと思っているからです。無論、自然現象であれ社会現象であれ、学者は自らの研究対象に何らかの重大な変化の兆候を発見することがあれば、それをいち早く社会の構成メンバーに伝えて、必要な行動を促すべきです。しかし、それが重要な義務であればこそ、さしたる根拠もなく徒に社会的な注目を集めるような言辞を弄んではならないと思うのです。そうでなければ、学者が本当に重大な危機の兆候に気づいた時に警鐘を鳴らしても、社会に信用してもらえなくなるでしょう。
 例えば、近年の状況を、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字をとって「VUCAの時代」と呼ぶ人たちがいます。VUCAという語は1990年代に米国で生まれた軍事用語として知られていますが、それが近年ではビジネスを取り巻く予測困難な状況を表す言葉として使われている訳です。実際、このような言葉は、新型コロナウィルス、激甚災害の多発、ロシアのウクライナ侵攻といった予測困難な要因が経営環境を変動させてきた状況を経験した企業にとって受け入れ易いのかも知れません。しかし、こうした環境変化を「VUCAの時代」などと呼んでみたところで、困難の本質が見えてくるわけでもありませんし、せいぜい情報収集能力を高め、迅速な意思決定を行うことがこれまで以上に重要だという程度の凡庸な結論が導き出されるだけでしょう。
 ただ、実際に現在、自らの関わっている企業経営が何らかの事情で転換期を迎えていると認識されている経営者やビジネスパーソンはおられる訳です。そうした認識をお持ちの方々のご参考に供するためは、今日の日本企業が直面している一般的な経営課題とその解決策についてお話しすると良いのかも知れませんが、既に私は最近の放送の中で、日本的経営を

 今回は、「大きな転換期を迎えている今、私たちはこれからの未来をどう生き抜くか」というトークテーマをいただいています。このテーマについて専門分野の視点からお話しすることになっている訳ですが、正直に申し上げると、非常にテーマが大きいために、何をお話ししたものか考えあぐねていました。しかし、ともかく、このテーマに表れている問いに対する私自身の違和感から話し始めてみようと思います。
 まず「私たちは大きな転換期を迎えている」という認識は、今に始まったものではなく、おそらく歴史上のどの時点でも、その時代を生きた人々に持たれていたのではないかということです。どの時代にも、その時代なりの困難というものがあり、その困難さを強く意識する人々によって、今こそこれまでの生き方、働き方を変えなければならない「転換期」を迎えているのだと認識されてきたのではないかと思います。それぞれの時代の困難には、他の時代状況とは異なる固有性が認められるでしょうが、一方では、その質において互いに類似した性質を持つ時代を見出すこともできる筈です。そう考えると、自分たちの直面している困難の重大さを特権化して、今こそが大きな転換期であるとする意識は薄れてくるのではないでしょうか。
 私が、こういうトークテーマに水を差すようなことを言うのは、現状の困難さを誇大に宣伝して危機感を煽るようなことは、学者が最も慎むべき行為だと思っているからです。無論、自然現象であれ社会現象であれ、学者は自らの研究対象に何らかの重大な変化の兆候を発見することがあれば、それをいち早く社会の構成メンバーに伝えて、必要な行動を促すべきです。しかし、それが重要な義務であればこそ、さしたる根拠もなく徒に社会的な注目を集めるような言辞を弄んではならないと思うのです。そうでなければ、学者が本当に重大な危機の兆候に気づいた時に警鐘を鳴らしても、社会に信用してもらえなくなるでしょう。
 例えば、近年の状況を、変動性(Volatility)、不確実性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字をとって「VUCAの時代」と呼ぶ人たちがいます。VUCAという語は1990年代に米国で生まれた軍事用語として知られていますが、それが近年ではビジネスを取り巻く予測困難な状況を表す言葉として使われている訳です。実際、このような言葉は、新型コロナウィルス、激甚災害の多発、ロシアのウクライナ侵攻といった予測困難な要因が経営環境を変動させてきた状況を経験した企業にとって受け入れ易いのかも知れません。しかし、こうした環境変化を「VUCAの時代」などと呼んでみたところで、困難の本質が見えてくるわけでもありませんし、せいぜい情報収集能力を高め、迅速な意思決定を行うことがこれまで以上に重要だという程度の凡庸な結論が導き出されるだけでしょう。
 ただ、実際に現在、自らの関わっている企業経営が何らかの事情で転換期を迎えていると認識されている経営者やビジネスパーソンはおられる訳です。そうした認識をお持ちの方々のご参考に供するためは、今日の日本企業が直面している一般的な経営課題とその解決策についてお話しすると良いのかも知れませんが、既に私は最近の放送の中で、日本的経営を

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