7分

耳の野外学習#2|「ふく」Fuku/Blow|Yasuhiro Morinaga 耳の野外学習【コクヨ野外学習センター】

    • ドキュメンタリー

「たたく」「ふく」「はじく」とは、楽器またはモノを鳴らすための行為である一方、働くこと、生活すること、遊ぶための、最も原始的な人間本来の生きていくための営み=技術だといえるはずだ。今回のDJミックスは、そんなことを考えながら、ここ数年アジアを中心にレコーディングしてきた民族の音楽や環境音をセレクト(アジアの音ではないものもいくつか含まれているが)し、ポストプロダクションでミキシングや電子的な加工を施しながら、リニアな音の時間を創造した。
人類学者たちは、調査地で現地語を学び、長期間地域に密着し、そこの情報をくまなく記述・記録した上で、ラボで検証・実験しながら論文や民族誌としてまとめあげていく。僕の場合は、現地の言葉もわからないし地域に密着しながら文字で記述をしていくような形も採用していない。むしろ楽器や音を軸に、その文脈や周縁を追い続けながらレコーディングしているに過ぎない。自身の目と耳を頼りに作品のゴールをゆるやかに想像しながら記録をし、素材を持ち帰ってスタジオで実験・検証しながら作品を制作していく過程は、どことなく人類学者の研究手法と似ている部分があることを以前から意識していた。
コクヨ野外学習センターがどれだけ実践者としての自分を勇気づけてくれただろう。新型コロナウイルスの感染症が収束した後もきっと、僕自身はフィールドでの活動を継続しながら、音に対する実践を技術の視点から考えていくような作品を創作していくはずだ。(2021.2.7 森永泰弘)

1: Balinese Suling Gambung Ensemble
Location: Bali, Indonesia
Recorded: 6th May 2019

この音源は、インドネシアの女性演出家、カミラ・アンディー二によるバリ島の伝統思想を題材にした舞台作品「みえるもの、みえざるもの」で使用したもの。バリ島には笛や太鼓など様々な楽器を演奏できるマルチ・インストゥルメンタリストがたくさんおり、この音源以外にも島に根付く楽器や音楽を数多くレコーディングさせてもらった。これまでバリ島は観光地のイメージが強かったが、いざ行ってみると、地元の人たちでしかアクセスできないような儀式がいまだ多く存在していることを知り、バリ島に対する固定観念を払拭することができた。

2: Mongolian Sharman conducting a healing ritual
Location: Ulaanbaatar, Mongolia
Recorded: 8th March 2018

北方アジアのシャーマニズムがバイカル湖を起点に広がっていったのかもしれないと思いつき、首都のウランバートルやチャンドマニを旅してまわった。ウランバートルでは、地域のシャーマンセンターで情報を聞き取り、そこに在籍されているシャーマンの方から厄除け的な儀礼をしてもらった。これは、その際にレコーディングした音源だ。口琴や鈴を鳴らしながら、何かに取り憑かれたかのように周囲を暴れ回りながら儀式を執り行うさまは、とてもパフォーマティブであった。頭巾から垂れたお札のようなものが顔を覆い、表情が全く見えないシャーマンの佇まいは、その後訪れることになるベトナム北部のモンのシャーマンと同じで興味深かった。どうやらモンの先祖がモンゴルからやってきたという話もあながち根拠がないわけではなさそうだ。

3: Thresing (by Ede-Bih group)
Location: Buôn Ma Thuột, Đắk Lắk, Central Highland of Vietnam
Recorded:6th September 2017

オストロネシ

「たたく」「ふく」「はじく」とは、楽器またはモノを鳴らすための行為である一方、働くこと、生活すること、遊ぶための、最も原始的な人間本来の生きていくための営み=技術だといえるはずだ。今回のDJミックスは、そんなことを考えながら、ここ数年アジアを中心にレコーディングしてきた民族の音楽や環境音をセレクト(アジアの音ではないものもいくつか含まれているが)し、ポストプロダクションでミキシングや電子的な加工を施しながら、リニアな音の時間を創造した。
人類学者たちは、調査地で現地語を学び、長期間地域に密着し、そこの情報をくまなく記述・記録した上で、ラボで検証・実験しながら論文や民族誌としてまとめあげていく。僕の場合は、現地の言葉もわからないし地域に密着しながら文字で記述をしていくような形も採用していない。むしろ楽器や音を軸に、その文脈や周縁を追い続けながらレコーディングしているに過ぎない。自身の目と耳を頼りに作品のゴールをゆるやかに想像しながら記録をし、素材を持ち帰ってスタジオで実験・検証しながら作品を制作していく過程は、どことなく人類学者の研究手法と似ている部分があることを以前から意識していた。
コクヨ野外学習センターがどれだけ実践者としての自分を勇気づけてくれただろう。新型コロナウイルスの感染症が収束した後もきっと、僕自身はフィールドでの活動を継続しながら、音に対する実践を技術の視点から考えていくような作品を創作していくはずだ。(2021.2.7 森永泰弘)

1: Balinese Suling Gambung Ensemble
Location: Bali, Indonesia
Recorded: 6th May 2019

この音源は、インドネシアの女性演出家、カミラ・アンディー二によるバリ島の伝統思想を題材にした舞台作品「みえるもの、みえざるもの」で使用したもの。バリ島には笛や太鼓など様々な楽器を演奏できるマルチ・インストゥルメンタリストがたくさんおり、この音源以外にも島に根付く楽器や音楽を数多くレコーディングさせてもらった。これまでバリ島は観光地のイメージが強かったが、いざ行ってみると、地元の人たちでしかアクセスできないような儀式がいまだ多く存在していることを知り、バリ島に対する固定観念を払拭することができた。

2: Mongolian Sharman conducting a healing ritual
Location: Ulaanbaatar, Mongolia
Recorded: 8th March 2018

北方アジアのシャーマニズムがバイカル湖を起点に広がっていったのかもしれないと思いつき、首都のウランバートルやチャンドマニを旅してまわった。ウランバートルでは、地域のシャーマンセンターで情報を聞き取り、そこに在籍されているシャーマンの方から厄除け的な儀礼をしてもらった。これは、その際にレコーディングした音源だ。口琴や鈴を鳴らしながら、何かに取り憑かれたかのように周囲を暴れ回りながら儀式を執り行うさまは、とてもパフォーマティブであった。頭巾から垂れたお札のようなものが顔を覆い、表情が全く見えないシャーマンの佇まいは、その後訪れることになるベトナム北部のモンのシャーマンと同じで興味深かった。どうやらモンの先祖がモンゴルからやってきたという話もあながち根拠がないわけではなさそうだ。

3: Thresing (by Ede-Bih group)
Location: Buôn Ma Thuột, Đắk Lắk, Central Highland of Vietnam
Recorded:6th September 2017

オストロネシ

7分