気候ポッド 第21回 ~ 災害時にコミュニティを支えるスポーツ球団と選手たちの役割と責任感

気候変動の向こう側

Episode_021_Sports and Community.mp3〓 Apple Pod: https://apple.co/32Z2MN7〓 Spotify: https://spoti.fi/3xoxiO3 ※ どういうわけか、このエピソードは3月初旬に収録されました。テキサス州をはじめ米南部を襲った大寒波と、災害時に地元のスポーツ球団や選手がコミュニティでどんな役割を果たしているかについて話しています。 2月のテキサス大寒波で停電と断水が相次ぐ テキサス州だけが大きく報じられましたが、テキサス、ルイジアナ、ミシシッピを中心に、米南部では2月の大寒波で多数の人が停電と断水に見舞われました。多くの死者も出ています。テキサス州では、400万人以上が停電を経験し、また長引く寒さによって水まで止まってしまい、極寒の中を電気も水もなく過ごすことになりました。 同州に住むブログ主の地域も例外ではなく、輪番停電で多くの人が数日電気を失い(ブログ主のコミュニティには上水道の施設の一部があったため停電を免れました)、大寒波の後半は上水道サービスでも水が凍って圧力が落ちたために断水することに。 なんでそんな大規模な停電が起こったの? これまでにもテキサス州は10年に1回くらい大寒波に見舞われてきました。そのたびに停電が起こって、「電力システムを冬に強くなるように整備しないとダメだ」という話が持ち上がっては、コストを抑えて利益を増やしたい石油ガス&エネルギー産業に妨害されて実現しませんでした。 で、あの大寒波。大規模な停電が起こって数百万人の州民が寒さに凍えている真っ最中に、保守的な米共和党所属のテキサス州知事は、保守系のFOXニュースに出演して「停電が起こっているのは風力発電のタービンが凍って電力を供給できなくなったから(ファクト:風力は予想以上の電力を供給していました。凍って止まっていたのは、火力発電所と原子力発電所)」「停電は民主党のせい(ファクト:なにも対策をしないどころか献金をもらっている石油ガス産業やエネ産業のために共和党が対策を妨害)」「グリーン・ニューディールのせい(ファクト:ただの言いがかり)」と相変わらず共和党お得意の嘘を吹聴していました。 なにが起こっていたのかというと、石炭火力、天然ガス火力、原子力の発電所が凍って電力を供給できなくなったのと、天然ガスは各家庭に優先的に供給しなければならないために、電力に供給できる量が不足する事態になりました。散々指摘されてきたのに、準備がまったくできていなかったんです。 要するに、責任は州民の安全よりも利益を追求した石油ガス&エネルギー産業と、その意向を政策に反映させて準備を怠ったテキサス州議会の共和党と、テキサス州知事、もっと根っこまで掘り下げると、強欲な資本主義にあるということです。 あ、そうそう。テキサス州選出の連邦共和党上院議員のテッド・クルーズにいたっては、「娘たちにせがまれたから」という理由で、極寒の家に飼い犬を残してメキシコのリゾート地、カンクンに家族旅行に出かけたのを飛行機内で写真を撮られてSNSに拡散され、叩かれまくって翌日に自分だけとんぼ返りするかっこ悪さというかろくでもなさを存分に発揮。 やれやれです。 ところで、大寒波と温暖化との関係は? 大寒波がくるたびに、「ほらみろ温暖化なんて嘘じゃないか」と科学的事実そっちのけで無知をさらす人が出てくるのですが、温暖化が進むとジェット気流が大きく蛇行してスピードが落ちて南に伸び、北極の寒気団が中緯度地域までおりてきやすくなるため、冬に今回のような激しい大寒波が起きるようになります。 つまり、温暖化によって大寒波は起こりやすくなってきているんです。 被災コミュニティを支えるスポーツ球団やローカルビジネス 災害時には、国や州が「非常事態宣言」みたいなのを発令したりしますが、あれって誰が救済のための支援金を出すかをハッキリさせるためで、すぐにそのお金や食料などが必要な人の元に届けられるわけではありません。ハッキリ言って、いま食べるものが必要な人たちにとってはクソの役にも立たないんですね。 そんな救いがなにもなさそうな状況の中で、被災者とコミュニティを献身的に支えたのは、地域に根差すスポーツ球団や所属選手、そしてローカルのビジネス経営者たちだったんです。 テキサス州ダラスに本拠地を置くNBA(米プロバスケットボール)のダラス・マーベリックスは、停電と断水で食べ物と飲み物に困っているダラス市民のために、球団とオーナー、選手やコーチたちが、ダラスのコミュニティに密着して活動しているいくつかのフードバンクを選んで寄付しました。 大きな慈善団体ではなく、なぜ地元のフードバンクを選ぶのでしょう?それは、コミュニティのことをよく知っているからです。どの地域のどれくらいの人がどんなもの(食べ物や飲み物以外にも、必要な生活用品はありますよね。災害時になかなか集まらないおむつや生理用品、トイレットペーパーみたいに。)に困っているのか、小回りが利く分、よく理解しているので、効率よく必要な人に必要なものを届けることができるんです。 今回だけではありません。昨年、新型コロナが広がったときには、ダラス・マーベリックスが地元の医療機関に金銭の寄付をしたのはもちろんのこと、選手やコーチたちが毎日、全国チェーンではなく、ダラス市民が経営しているカフェやレストランでランチや朝食を自腹で調達して、医療関係者に届けていました。 それ以外にも、選手たちが医療関係者数百人分のスニーカーを寄付したこともありました。 もっとさかのぼると、2017年にハリケーン「マリア」によってプエルトリコが甚大な被害を受けた際には、当時マーベリックスに所属していたプエルトリコ出身のJ.J.バレア選手がオーナーのマーク・キューバンにチーム専用機を借りて、ダラス市民から集まった救援物資を積み込んで、何度も故郷のプエルトリコを往復しました。 災害時だけじゃないコミュニティとの日常的なコミュニケーション こういったスポーツ球団や選手とコミュニティの関係は、平時に積み重ねられた小さなコミュニケーションによって育ってきたものです。 シーズンオフには子どもたちを対象に選手やコーチが参加してバスケットボール教室を開催したり、シーズン中でも小学校や保育園で選手たちが読み聞かせ会を開いたり、ゲームがない日にはダラス市内のスーパーやスポーツ用品店で選手がサイン会を開催したりしています。 また、選手がマイノリティの貧しい地域にバスケットボールコートを寄付したり、アフタースクールプログラム(ひとり親や共働きの家庭が放課後に子どもを預ける施設)にコンピュータ数十台を寄付したりなど、コミュニティが必要とするものを提供しています。 球団もそうですが、多くの選手が自身の経験にもとづいた基金を設立して、年俸の一部や集まった寄付をコミュニティに還元しているんです。理由は、コミュニティがなければ、球団は存続できないから。ダラス・マーベリックスは、企業の持ち物ではなく、ダラス市民のものなんです。だからチーム名は「ダラス」・マーベリックスなんです。日本のプロ野球のように、ブランド名は出しません。球団は、企業の広告ではないんです。 しかも、ダラス・マーベリックスに、ダラス出身の選手はひとりもいません。所属選手の3分の1はアメリカ出身ですらありません。それでも、いつまでいるかわからない(NBAの大半の選手はだいたい数年で移動します)コミュニティのために活動しています。新型コロナや気候危機などに共通して必要なものですが、共感力、想像力、思いやりにあふれているんですよね。それが個人で育んできたものなのか、球団の教育によるものなのかはわかりませんが、たぶん両方でしょう。NBA選手には黒人が多く、その大半が貧しい子ども時代を過ごしているのも大きいかもしれませんね。ダラスからは離れますが、今回の大寒波で、ヒューストンでは家具屋さんが店舗を開放して、形状記憶の豪華なベッドを寝場所として被災者たちに提供していました。「マットレス・マック」の愛称でヒューストン市民から愛される

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