森雪之丞 Poetry Readingの世界『感情の配線』

十一月の旅人には翼がある<連弾詩集「扉のかたちをした闇」より>

十一月の旅人には翼がある<連弾詩集「扉のかたちをした闇」より>

探し続けていたのか?
逃げ回っていたのか?
華氏77℉の空港で虹を見つけた朝も
霞(かすみ)という町の路地で息を潜めた夜も
旅の途中だった

何処へ行こうとしたのか?
何処(ドコ)へ行っても其処(ソコ)がまた此処(ココ)になる
その騙し絵の中で生きて死ぬのが人だと言うのに
なぜ旅に憧れる?

晩秋の月はさめざめと青く
地面を濡らす寡黙な影が
男の背中に翼が生えたことを教える

翼…
何処にも行けない旅人を見兼ねて
神が与え給うた奇蹟(ギフト)
男は笑う
飛び方を知らずに翼を持つこと
そいつは
叶え方のわからない夢を抱え込んできたことと
何が違うと言うんだ

無意味な分 翼は重い
囚人が引き摺る鉄球のように重い
歩き疲れ 其処(ソコ)が此処(ココ)になり
十一月の闇が朝の気配に溶かされた頃
旅人は気づく
空は飛べなかったが
初めての町に 辿り着けたじゃないかと

光に震えて 翼が少し拡がる
役立たずのくせに
何故か自慢気に

1976 年作詞作曲家としてデビュー以来、昭和・平成・令和の3 世代でジャンルを超えてヒットチューンを生み出し続ける森雪之丞が、自選詩集『感情の配線』の発売を記念して詩を朗読する番組。
メロディーを脱ぎ捨てた諧謔とエロスと波動(グルーヴ)詩人・森雪之丞の言葉の軌跡を是非ご体感ください。

森雪之丞 自選詩集『感情の配線』
2024年1月14日(日)発売
特設サイト:⁠https://www.mori-yukinojo.com/emotional_wiring/⁠

ハッシュタグ:#感情の配線 #推詩森雪之丞
スタッフX:⁠⁠⁠⁠ ⁠https://x.com/yukinojo_news