高千穂さんのご縁です。

【お彼岸のお話】亡き人への祈りであると同時に、今を生きる私たちのためにあるもの

🔶お彼岸の心を見つめ直す

今年の秋のお彼岸は、9月20日から26日までです。中日(ちゅうにち)にあたる9月23日は「秋分の日」で、祖先を敬い、亡くなった人々をしのぶ日とされています。

お墓参りやお寺参りをする方も多いこの期間、「彼岸」という言葉の語源は、サンスクリット語の「パーラミター(波羅蜜多)」から来ています。これは「悟りの境地に至ること」を意味し、仏教でいう「お浄土(じょうど)」を表しています。

🔶太陽が教えてくれる彼岸の意味

お彼岸は春と秋にありますが、この時期は太陽が真東から昇り、真西に沈む日です。その太陽の動きに重ねて、西方極楽浄土を思う日とされてきました。

つまりお彼岸は、亡き人への祈りであると同時に、私たち自身が仏の教えを聞き、自らの心を見つめる機会なのです。

🔶芦屋仏教会館に学ぶ「聞法(もんぽう)」の心

昭和2年、兵庫県芦屋に「芦屋仏教会館」という施設が建てられました。これは、大手商社「丸紅」の創業者・伊藤長兵衛氏が私財を投じて建てたものです。

伊藤氏は、当初「地域の人に教えを聞いてもらおう」と考えていましたが、仏教学者・梅原真隆先生の「それは違うのではないか」という言葉に戸惑います。

伊藤氏は悩んだ末、考えを改め、「この私が教えを聞かせていただく場所として会館を建てよう」と計画を変更。

梅原先生はその言葉を聞いて、「その言葉を待っていた」と感動したといいます。

今でも芦屋仏教会館は、宗派を問わず多くの人が集う聞法の場として息づいています。

🔶亡き人のためでなく、今を生きる私のために

お墓参りやお寺参りは、つい「亡き人のため」と考えがちですが、実は「今を生きる私自身のため」なのだと、仏教は教えてくれます。

亡き人や仏さまから「今のあなたを見つめてほしい」という願いが届いている──そのことに気づかされるのが、お彼岸なのです。

🔶今週のまとめ

今週は「お彼岸の心」をテーマに、芦屋仏教会館と伊藤長兵衛氏のエピソードを通して、「仏教を聞くことの意味」について考えてみました。

春分・秋分の日に、太陽が西へ沈む様子を見ながら「極楽浄土」を思う。

お寺やお墓に手を合わせるのは、他者のためではなく、自らの心と向き合うため──そんなお彼岸の過ごし方を、あらためて見つめてみてはいかがでしょうか。

来週は「仏教と火」というテーマでお届けします。

お話は、熊本市中央区京町にある仏嚴寺の高千穂光正(たかちほ こうしょう)さん、お相手は丸井純子(まるい じゅんこ)さんでした。どうぞまた来週。