みんなのまちづくりトーク

#67 みんまちトーク『伴 宣久さんと語る、地域と行政が共に育てるまちづくり(3)』

#67 みんまちトーク『伴宣久さんと語る、地域と行政が共に育てるまちづくり(3)』

この番組は「認定NPO法人日本都市計画家協会;通称⁠⁠⁠JSURP⁠⁠⁠(じぇいさーぷ)」がお届けするポッドキャスト『みんなのまちづくりトーク』です。毎回多彩なゲストと共に、いま話題のまちづくり事例、新しい制度、活動のhow-toなどを紹介していきます。

★☆★「この番組、いいね♪」とお感じになった方は是非、当協会(JSURP)へのご寄付を御願いします!あなたのご寄付がわたしたちNPO法人のエネルギー源になります!⁠⁠⁠⁠⁠⁠https://jsurp.jp/nyuukai/⁠⁠⁠⁠⁠

第67回は、前回に引き続き、元台東区都市づくり部長、伴 宜久(ばん のぶひさ)さんをお迎えした全4回番組の第3回です。今回は伴さんが取り組まれた「上野駅公園口の整備」についてお伺いします。どうぞお楽しみ下さい。

▼話していたことのリンク

『〔実践〕自治体まちづくり学』
上山肇 (著), 伴宣久 (著), 田村知洋 (著), 内藤結子 (著), 笹沼史明 (著)

https://amzn.asia/d/7zuplyi

『東京の 自治体まちづくりⅠ —東京スカイツリー・自治体連携のまちづくり 他 (自治体まちづくり学シリーズ)』

上山肇 (著), 河上俊郎 (著), 伴宣久 (著)

https://amzn.asia/d/8GDEEzd

▼出演者

伴 宣久(ばん のぶひさ)一財日本建築設備・昇降機センター定期報告部長、東京都市大学(旧武蔵工業大学)工学部建築学科卒、東京都立大学(旧首都大学東京)都市環境科学研究科博士課程後期卒。民間企業に就職後、東京特別区(台東区)営繕課長、まちづくり推進課長、都市計画課長、都市づくり部長、用地施設活用担当部長を経て現職。一級建築士、建築基準適合判定資格者、工学博士。著書:自治体まちづくり学(編著。公人の友社、2024年)

論文:「敷地整除型区画整理事業を活用した歩行者空間の創出と大街区化による商業・業務機能の強化」(アーバンインフラテクノロジー推進会議、2012年)、「東京都心4区における都市再生特別地とその他都市計画制度の外部効果の比較」(日本建築学会計画系論文集82巻72号、1211-1219頁、2017年)、「東京都心部における不動産価格に着目した都市更新と都心居住に関する都市計画制度の効果の研究」(博士論文、2018年)             

▼パーソナリティ

内山 征(うちやま ただし):Jsurp理事

安藤 裕之(あんどう ひろゆき):Jsurp理事

◇フリーBGM・音楽素材MusMus https://musmus.main.jp

▼番組概要

特集:上野駅公園口の整備 裏話

〜歴史と想いが交差する「まちの玄関口」〜

【第1章】忘れられた計画――“幻の超高層ホテル”から始まった

昭和58年。上野駅前には、著名建築家・磯崎新氏の手による「超高層ホテル」の構想があった。しかし、地元住民の反対とJRの方針転換により、計画は頓挫。ともすれば埋もれていたこの地が再び脚光を浴びるのは、東京都による「上野公園グランドデザイン」がきっかけだった。

「当時はまちづくり推進課長として、“どう地元の理解を得るか”に心を砕きました」と、元台東区都市づくり部長・伴氏は語る。

【第2章】構想から苦難の選定へ――「2重ロータリー案」の舞台裏

上野駅公園口の整備には、アンダーパス案、オーバーブリッジ案、ロータリー案と複数の候補が並んだ。しかし、新幹線の高圧設備移設に30億円、景観破壊の懸念などの課題が噴出。

「最終的に選ばれたのは“2重ロータリー”。地元の意向や技術的現実を踏まえた、妥協と挑戦の産物でした」

【第3章】世界遺産が背中を押した――“西洋美術館登録”の波及効果

2016年、西洋美術館の世界遺産登録。この出来事が、JRと東京都、台東区の連携を後押しした。

「JRが“協力姿勢”を見せた瞬間、動き出したのです」と伴氏。
「ユネスコの要請する“バッファゾーン”の形成と調整も大きな転換点でした」

【第4章】完成後の変化――文化と回遊の「起点」へ

完成した公園口は、「歩きやすさ」と「景観」を兼ね備えた玄関口に。高齢者や足の不自由な方にも配慮された動線が確保され、文化施設へのアクセスは飛躍的に向上。

「駅前の印象が一変し、公園全体の雰囲気が格段に良くなった」
「文化施設からアメ横・谷中への回遊性も意識され始めた」

【第5章】さらなる展望――「連携」と「魅力」の掛け算へ

現在も、アメ横や上野の森美術館、丸井などが連携し、イベントの展示物を地域全体で共有する取り組みが進む。

「商業施設と文化施設、行政の“横連携”が次なる鍵」と伴氏。
「エリアを越えた“歩きたくなる街”への挑戦は、今も続いています」

編集後記

上野駅公園口の整備は、単なる都市改造ではなく、“文化・交通・景観・市民感情”が絡み合う、まちづくりの縮図である。数十年越しの構想と、その実現に向けた地道な調整は、まちづくりの本質を私たちに教えてくれる。

「まちをつくるとは、人の記憶と暮らしを未来につなぐこと」
この対談の一言が、それを雄弁に物語っていた。(おわり)