みんなのまちづくりトーク

#68 みんまちトーク『伴 宣久さんと語る、地域と行政が共に育てるまちづくり(4)』

#68 みんまちトーク『伴宣久さんと語る、地域と行政が共に育てるまちづくり(4)』

この番組は「認定NPO法人日本都市計画家協会;通称⁠⁠⁠JSURP⁠⁠⁠(じぇいさーぷ)」がお届けするポッドキャスト『みんなのまちづくりトーク』です。毎回多彩なゲストと共に、いま話題のまちづくり事例、新しい制度、活動のhow-toなどを紹介していきます。

★☆★「この番組、いいね♪」とお感じになった方は是非、当協会(JSURP)へのご寄付を御願いします!あなたのご寄付がわたしたちNPO法人のエネルギー源になります!⁠⁠⁠⁠⁠⁠https://jsurp.jp/nyuukai/⁠⁠⁠⁠⁠

第68回は、前回に引き続き、元台東区都市づくり部長、伴 宜久(ばん のぶひさ)さんをお迎えした全4回番組の最終回です。今回は伴さんが「谷中のまちづくり」についてお伺いします。伴さんのご趣味である「旧車」のお話しもチラリ・・。どうぞお楽しみ下さい。

▼話していたことのリンク

『〔実践〕自治体まちづくり学』
上山肇 (著), 伴宣久 (著), 田村知洋 (著), 内藤結子 (著), 笹沼史明 (著)

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『東京の 自治体まちづくりⅠ —東京スカイツリー・自治体連携のまちづくり 他 (自治体まちづくり学シリーズ)』

上山肇 (著), 河上俊郎 (著), 伴宣久 (著)

https://amzn.asia/d/8GDEEzd

▼出演者

伴 宣久(ばん のぶひさ)一財日本建築設備・昇降機センター定期報告部長、東京都市大学(旧武蔵工業大学)工学部建築学科卒、東京都立大学(旧首都大学東京)都市環境科学研究科博士課程後期卒。民間企業に就職後、東京特別区(台東区)営繕課長、まちづくり推進課長、都市計画課長、都市づくり部長、用地施設活用担当部長を経て現職。一級建築士、建築基準適合判定資格者、工学博士。著書:自治体まちづくり学(編著。公人の友社、2024年)

論文:「敷地整除型区画整理事業を活用した歩行者空間の創出と大街区化による商業・業務機能の強化」(アーバンインフラテクノロジー推進会議、2012年)、「東京都心4区における都市再生特別地とその他都市計画制度の外部効果の比較」(日本建築学会計画系論文集82巻72号、1211-1219頁、2017年)、「東京都心部における不動産価格に着目した都市更新と都心居住に関する都市計画制度の効果の研究」(博士論文、2018年)             

▼パーソナリティ

内山 征(うちやま ただし):Jsurp理事

安藤 裕之(あんどう ひろゆき):Jsurp理事

◇フリーBGM・音楽素材MusMus https://musmus.main.jp

▼番組概要

「谷中を守る都市計画の知恵 ― 路地とカフェと歴史を未来へ」

出演

第1章 都市計画道路をどう扱うか――谷中という舞台

東京都台東区・谷中。ここには、南北・東西に交差する都市計画道路が存在していた。伴氏が携わったのは、そのうち東西に走る道路の計画廃止と、その後の町の未来を守る地区計画づくりであった。

「道路をなくすだけでは、町が無秩序に変わってしまう。だからこそ、都市計画道路の廃止と同時に地区計画を定めたんです」(伴氏)

芸大卒業生が地域に入り調査協力を行う中で、町の細分化した住民層・土地利用の実態を丁寧に把握しながら計画を進行。現地の声を大切にした合意形成が、計画の核心を支えた。

第2章 「まちの記憶」をいかに継承するか

谷中のととい通り沿いには、古い建物が多く残されていた。茅場コーヒー、質屋跡、調査官通り沿いの朝倉彫塑館…。こうした建物は、まちの魅力そのものである。

しかし、都市計画道路を通す場合、それらの建物が失われる可能性があった。登録文化財の旧質屋については、所有者が土地売却を希望した際、台東区が取得に動いた。

「まちの価値は、建物の“古さ”だけじゃない。人が使い続けてこその“記憶”なんです」(伴氏)

その後、同建物は民間提案を経て、新たな利活用へ向けて動き出している。

第3章 まち並み誘導の難しさと挑戦

都市計画法の規制を外したことで、町並み誘導型の地区計画を策定。特に、狭小地が多いエリアでは、壁面線やセットバックなどの工夫で建築可能な延べ床面積を確保しようとした。

ところが、都市計画審議会では「それでは景観が壊れる」との指摘も。

「職員がレーザー測量で門の奥行きまで調査したほど、徹底的にやった。でも最終的には方針転換が必要でした」(伴氏)

都市計画の手法と、町の個性を守る知恵のせめぎあい。そのバランス感覚が問われた瞬間だった。

第4章 協定という“もう一つの都市計画”

都市計画道路の見直し時に危惧されるのが、規制解除による混乱や訴訟だ。しかし、谷中ではそのリスクが比較的低かった。その鍵は「建築協定」にあった。

芸大卒業生を中心としたまちづくり協議会が、都市計画道路予定地にあらかじめ建築協定を締結していたため、法的規制を外しても秩序が維持されたのである。

第5章 景観、文化、防火…木造建築の未来を考える

谷中の古い建物を保全・再利用するには、防火規制との折り合いも避けられない。準防火地域で木造建築の再建は難しいが、耐火性能を高めた木造建築の技術も登場している。

また、赤坂の旧家から出た建材を谷中に移築するというアイデアも浮上。

「やろうと思えば、伝統的な建物を現代に蘇らせることも可能なんです」(伴氏)

第6章 「歩いて楽しい町」にこそ価値がある

谷中には、ショコラティエ、リノベ系の店、かき氷の名店、古自転車店など、小さくても個性ある店が路地に散らばっている。車好きの伴氏曰く、「街並みに似合う車が、街を引き立てる」のだと。

「自分のクラシックカーも、谷中に持って行くと絵になるんですよ(笑)」

散歩しながら歴史を感じられる町、それこそがまちづくりの到達点なのかもしれない。

第7章 まち歩きから、未来の都市像へ

番組の最後には、こんな一幕も。

「今度は『みんなのまちあるきトーク』にして、一緒に谷中を歩きましょう!」

伴氏はこれまでも大学や海外ゲストに谷中を案内してきた。歩くことで見えてくる町の価値。補助金制度を含めた都市の保全制度を改めて問い直す声もあがる。

終わりに

谷中という一つの町を通して見えたのは、「都市計画」と「まちの記憶」が交差する接点でした。都市開発の名の下に何を壊し、何を残すか。伴氏の言葉と実践が、多くの視聴者にとってヒントとなるはずです。