7分

80,【後編】12月21日 月曜日 20時09分 河北潟放水‪路‬ オーディオドラマ「五の線」リメイク版

    • ドラマ

80.2.1.mp3

静寂の中、銃声が鳴り響いた。

目の前が真っ暗になった。
撃たれた。
俺は村上に撃たれた。
撃たれた?
痛くない。
そうか脳をやられたか。
いや、ならばこんなに頭が働かないはずだ。
眩しい。
なんだこの光は。
そうか俺は死ぬのか。
寒い。
風が寒い。
地面も冷たい。
地面?
なんで地面が冷たいってわかったんだ。
手が動く。
痛くない。
まさか。

佐竹は目を開いた。
彼は無意識のうちに目を瞑って地面に倒れこんでいたようだ。彼は即座に身を起こした。すると村上の姿が目に飛び込んできた。彼はその場にうずくまって自分の右腕を抑えていた。

「ふーっ。ふーっ。」

佐竹は気がついた。さっきまで闇であった周囲が明るい。まるで昼間のようだ。その光源はどうやら放水路の上からのもののようである。

「よし。確保だ。」

双眼鏡を外した松永は無線で警備班に指示を出した。それを受けて放水路の上に待機していた警備班が一斉にそれを降り始めた。

「どうだ。保険ってもんはかけておくべきだろう。」

古田と片倉は唖然としていた。

「動機の部分は明らかにはされていないから、決定的とは言えない。しかしやむを得んだろう。これ以上、佐竹を危険に晒せない。」
「そうですね…。」
「片倉。古田。お前たちは村上の怪我が落ち着いたらヤツの取り調べを頼む。俺はここまでだ。俺は一色を回収する。」

松永は眼下に見える二人の姿を背にした。

「待って下さい理事官。」

双眼鏡を覗き込んでいた古田が言った。

「まだです…。」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
佐竹の目の前にいる村上の腕からは血が流れ出していた。

「ふーっ。ふーっ…。」

村上の息遣いは荒い。彼が息をするたびに白いものが吐き出される。

「佐竹…。てめぇ…。俺を嵌めやがったな…。」
「動くな!そのままその場にうつ伏せになれ!」

遠くの方から拡声器を使った声が聞こえる。この指示は何度も繰り返された。

「くそっ…。これで俺も終わりか…。」

村上は警察の指示に従って、そのままうつ伏せになった。
その様子を見ていた佐竹の目に、地面に落ちた拳銃が飛び込んだ。

「さ、佐竹…。」

村上の後頭部に冷たい金属の感覚があった。

「佐竹!何をやっている!銃を捨てろ!」
「ほ、ほら…。佐竹。警察がああ言ってるぞ…。」
「ああ言ってるな。」

撃鉄を起こす音が村上の後頭部に響く。

「な、なぁ。佐竹…落ち着け…。そこで引き金なんか引いたら真実は闇の中だ…ぞ…。」
「佐竹!銃を捨てろ!」

佐竹は銃口を後頭部から外した。

「そうだ…。そうだ。それでいい…。落ち着け…な…佐竹…。」

銃声がこだました。

「あ…あ、あ…。」

うつ伏せになったままの村上から大量の血液が流れ出した。

「ぐはっ…。さ、佐竹…。マジか…。」
「佐竹!銃を捨てろ!」
「ひ、ひひ…。」

佐竹は再び村上に銃口を向けた。

「これで、お前も…人殺しだ…。」

放水路の門が開くサイレンがなった。佐竹は口を開いた。しかしこのけたたましい音によって彼の発する言葉が聞こえなかった。

佐竹は引き金に指をかけた。


それからの記憶は無い。

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静寂の中、銃声が鳴り響いた。

目の前が真っ暗になった。
撃たれた。
俺は村上に撃たれた。
撃たれた?
痛くない。
そうか脳をやられたか。
いや、ならばこんなに頭が働かないはずだ。
眩しい。
なんだこの光は。
そうか俺は死ぬのか。
寒い。
風が寒い。
地面も冷たい。
地面?
なんで地面が冷たいってわかったんだ。
手が動く。
痛くない。
まさか。

佐竹は目を開いた。
彼は無意識のうちに目を瞑って地面に倒れこんでいたようだ。彼は即座に身を起こした。すると村上の姿が目に飛び込んできた。彼はその場にうずくまって自分の右腕を抑えていた。

「ふーっ。ふーっ。」

佐竹は気がついた。さっきまで闇であった周囲が明るい。まるで昼間のようだ。その光源はどうやら放水路の上からのもののようである。

「よし。確保だ。」

双眼鏡を外した松永は無線で警備班に指示を出した。それを受けて放水路の上に待機していた警備班が一斉にそれを降り始めた。

「どうだ。保険ってもんはかけておくべきだろう。」

古田と片倉は唖然としていた。

「動機の部分は明らかにはされていないから、決定的とは言えない。しかしやむを得んだろう。これ以上、佐竹を危険に晒せない。」
「そうですね…。」
「片倉。古田。お前たちは村上の怪我が落ち着いたらヤツの取り調べを頼む。俺はここまでだ。俺は一色を回収する。」

松永は眼下に見える二人の姿を背にした。

「待って下さい理事官。」

双眼鏡を覗き込んでいた古田が言った。

「まだです…。」

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佐竹の目の前にいる村上の腕からは血が流れ出していた。

「ふーっ。ふーっ…。」

村上の息遣いは荒い。彼が息をするたびに白いものが吐き出される。

「佐竹…。てめぇ…。俺を嵌めやがったな…。」
「動くな!そのままその場にうつ伏せになれ!」

遠くの方から拡声器を使った声が聞こえる。この指示は何度も繰り返された。

「くそっ…。これで俺も終わりか…。」

村上は警察の指示に従って、そのままうつ伏せになった。
その様子を見ていた佐竹の目に、地面に落ちた拳銃が飛び込んだ。

「さ、佐竹…。」

村上の後頭部に冷たい金属の感覚があった。

「佐竹!何をやっている!銃を捨てろ!」
「ほ、ほら…。佐竹。警察がああ言ってるぞ…。」
「ああ言ってるな。」

撃鉄を起こす音が村上の後頭部に響く。

「な、なぁ。佐竹…落ち着け…。そこで引き金なんか引いたら真実は闇の中だ…ぞ…。」
「佐竹!銃を捨てろ!」

佐竹は銃口を後頭部から外した。

「そうだ…。そうだ。それでいい…。落ち着け…な…佐竹…。」

銃声がこだました。

「あ…あ、あ…。」

うつ伏せになったままの村上から大量の血液が流れ出した。

「ぐはっ…。さ、佐竹…。マジか…。」
「佐竹!銃を捨てろ!」
「ひ、ひひ…。」

佐竹は再び村上に銃口を向けた。

「これで、お前も…人殺しだ…。」

放水路の門が開くサイレンがなった。佐竹は口を開いた。しかしこのけたたましい音によって彼の発する言葉が聞こえなかった。

佐竹は引き金に指をかけた。


それからの記憶は無い。

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