転職といえば、自分のキャリアを活かした方向で考えがちですが、全く違う分野に転身した人もいます。
大至伸行さんは、1984年3月に中学卒業前に押尾川部屋に入門して、初土俵から10年で新十両昇進。翌年、新入幕して前頭三枚目までいったんです。2002年に18年務めた現役を引退して、後進の指導に当たっていたのですが、小さい頃から好きだった歌で第2の人生を歩きたいということで、歌手に転身しました。力士はお父さんのたっての希望だったんだそうです。引退したら今度は自分の人生を歩きたいという思いだったそうです。
相撲甚句の第一人者としての評判はあったのですが、歌手となるとやはり声の出し方も表現も違うので、猛勉強して2023年に東京オッペラシティーで初リサイタイルを開いたんです。何とセカンドキャリアを歩んで約20年です。その間、舞台やミュージカルなどにも出るようになっていたのです。
僕は去年、初めて彼の歌を聴きました。その時に大至さんは「芸能人から芸術人になりたい」と宣言して、そこから更に研鑽を積んで、歌がグッと膨らんで来ました。前に出てくる声だったのが、周りを包み込むような感じになって、歌詞の情感を伝えるだけではなく、歌詞に自らの情感を重ねられるようになってきたんですね。これは見事だと思いました。
スポーツ選手のセカンドキャリアは、スポーツ庁でも様々な取り組みがあるようですが、好きだったことに改めてチャレンジできるという人生二毛作のような生き方もあるんですね。
最近は早く結果を求める時代ですが、相撲、歌手とそれぞれ20年ほどの時間をかけて、じっくりと結果を出していく人生もまた、素晴らしいと思うのです。
18日に東京・代々木上原のMUSICASAという小さなホールで「ドスコイ歌舞台」と題して、リサイタルがあるので、お時間のある方はお聴きになってください。好きと努力を積み重ねた大至さんの歌声は、人生の転機に背中を押してもらえるかもしれません。
情報
- 番組
- 頻度アップデート:毎週
- 配信日2025年2月17日 5:02 UTC
- 長さ13分
- 制限指定不適切な内容を含まない