
15 episodes

復職名人が読む三手先 Centro Salute
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この番組は、産業医の高尾総司、弁護士の前園健司、社労士の森悠太の三名が、企業や自治体の人事・健康管理に携わる方向けに、メンタルヘルス不調者対応や健康管理について、議論をしていくポッドキャストです。
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第14回|【質問】復帰準備は何に取り組めば良いか
今回は過去に頂いた質問に基づいて、議論を深めました。
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■質問
現在復帰準備期に移行して、リワークに取り組んでいる職員がいます。リワーク内でPC作業等に取り組んでいて、それなりに課題にも取り組んでいるようですが、組織としてはまだまだ物足りない印象です。
とはいえ、本人は少し焦れ始めていて、「具体的に復職基準を満たすような状況になるため、病院でのリワーク以外に何を行えば良いか」と質問を受けそうなのですが、どのように対応するのが望ましいのでしょうか?
■議論の概要
まず大前提として、休職事由の消滅、つまり復職できることの主張立証責任は、本人側にある(組織側に、不足部分を具体的に主張立証する責任があるわけではない)。そのため大方針としては、何をすればよいかは本人が考えること。
例えば採用場面も同じことで、「何をしたら御社に入れますか」と質問にどう回答するだろうか。
基本的には、本人が復帰基準を満たせるというのであれば、最終的には復帰させて構わない。ただ、本人が「できる、大丈夫」「やるしかない」というような説明しかしないようであれば、不十分。
本人の課題を、本人にどのように伝えるかが問題。療養開始前に伝えていれば良いが、療養専念期や復帰準備期の初期に、いきなり課題を突き付けても、本人も負担になるかもしれない→受領書に+αとして、課題の提示シートを作ってもよいかもしれない。
会社側のサポート窓口チーム体制だけでなく、本人側の復職支援チーム体制というのも、検討できるかもしれない。
職務無限定=どの業務であっても従事できることが求められるはずで、苦手な業務、できない業務がある状態は、良いとは言えない。苦手な業務ができるようになってから復帰しよう=原職復帰と捉えられるかもしれない。
■類似質問
ボランティアは不適切療養にあたるか
「業務上の問題はうつ病のせいだ。うつ病は治ったのだから、問題ない」と言い張る人 -
第13回|【質問】産業医による復職面談の際に必要な事前情報とは
前回から少し間が空いてしまいましたが、今回は高尾メソッド公式アカウントの方へ頂いていた質問に回答しました。
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■質問
産業医として、復職面談をする際に、事前に知っておきたい情報はなんでしょうか?
産業医に十分な情報収集をして提供しても、前職や大学、学生時代の部活の情報まで求められる時があります。これさえあれば十分という情報を教えていただけると嬉しいです。
■回答
復職者本人から知りたい、知らねばならぬ情報は、ほとんどないのではないでしょうか。
なぜならば、就労を再開すること(復職)に関する諸条件は、会社と労働者の二者間において確認すべきことだからです。
ですので、当該二者間で予備的に合意ができているのであれば、産業医としては、特に復帰を延期すべき具体的な理由がないかぎりは、復帰に積極的に賛同(すなわち、「復職しても大丈夫ですよ!」)することはないにせよ、逆に復帰を止める必要がないので、(つまり、「復帰に対して消極的に賛成」)との立場となり、こうすれば特に情報収集は必要ありません。
おそらくは情報収集すればするほど、「復帰を延期すべきとまではいえないものの、一方で復職可の判断に躊躇するような情報」が出てくるだけ、という状況がよくある現状なのではないでしょうか。
■議論の概要
すべてを産業医面談で判断しよう(判断してもらおう)という姿勢が、こういった状況を招いているのでは
医療的に考えると情報はいくらあっても良い。一方で業務的に考えると情報を知れば知るほど安全配慮義務が拡大する。かつ配慮の追加が行われていく
診断的治療
職場巡視の際に、復職者の職場へ行って周囲の同僚のヒアリングをしてみたら・・・
とはいえ、産業医の判断を合理的にするためには、一定程度の情報はあった方が良いのでは?
損害賠償のスキーム
療養期間中の産業医面談もやらない方が良いものの一つ。結局主治医と同じような確認をしているだけになる
メンタル不調の履歴があっても、「現在、通常勤務ができる」のであれば、全く構わないのでは
産業医面談を強く要望する労働者が時々いる
お医者さんは人の主張を疑わない、とても良い人なのでは?
労働条件とか契約上の地位とか、そういう情報の方が重要 -
第12回|【質問】育休明けの従業員から「異動が望ましい」という診断書が出てきた
今回は、頂いていた質問に回答しました。
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■質問の概要
育児休業から復帰した女性従業員から提出された、産婦人科さんからの診断書に、通常記載されている「いつまで労務不能」と言った内容は無く、「適応障害」の病名と「異動させて下さい」と言う意見が記載されています。
なお本人からは、関連として懸念される「ハラスメント等」窓口への相談も来ておりません。
そもそも異動については会社が各種情報から判断、決定すべきものと思いますが、診断書への記載内容としては如何でしょうか?
■議論の概要
異動については会社の専権事項なので、業務上の必要性に基づいて判断する。他の不当な動機や目的があったか、労働者が通常甘受すべき不利益な程度を超えないか←医師の意見は、業務上の必要性は全くないのでは?
こういった診断書が出た場合、「元の職場のまま就業継続させると、病状が悪化する恐れがある」ということで、健康面で通常勤務ができているとは言えないため、療養させるほかない。そうした話を本人に対して行う。
関係者(本人・会社・主治医・産業医)の契約関係の整理。本人-会社は雇用契約、本人-主治医は医療契約、会社-産業医は嘱託契約があるが、会社と主治医、本人と産業医、主治医と産業医には契約関係はない。また、主治医は本人との守秘義務を守らないといけない立場にあり、その前提で主治医からの情報をとらえなければならない。
何を会社として公式に知っていて、何は知らないか。知っている情報のみからどう判断するか。知りすぎることは、会社にとってのリスク増大につながる。
仕事はできているけど、泣いているという事例への対応は?→職場で泣いている人は、療養させるしかない
産婦人科医が、精神疾患について言及することはアリ?
「健康管理は社員自身にやらせなさい」の改版が決定しました。夏頃に出版予定です。結構大幅に手を入れる予定なので、今のうちに現行版を入手することをお勧めします! -
第11回|休職を繰り返しているものの、主治医・上司・産業医がかばう為、再休職させられない事例
今回はよくある事例を取り上げ、ストップ要件(復帰後の原疾患の再増悪に対して早期に対応するための再療養要件)に関する議論をしました。
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■質問の概要
休職を10回繰り返し、現在は復帰している社員がいます。ところが勤怠の乱れがあり、酷い時は月の半分程度しか出勤していない状況です。
現場は困っていると予想されますが、その上司に確認したところ「出勤した日はきちんと働いている。業績も上げているので問題ない。」と主張しています。
休職を繰り返しているのだから、回数が進むにつれて休職期間は長くするべきではないのかと思いますが、毎回短い休職期間で復帰しています。
産業医は「症状の振れ幅が大きいだけで、大丈夫なのでは?」と言いますが、その判断に根拠があるようには思えず、困っています。主治医も「病気はこれ以上良くはならないから、休んでいても仕方ない。復帰させて。」と主張してきています。
10月に有給休暇が付与されるので、それまでは欠勤と出勤を繰り返して、その後は有給休暇を使いながら出勤し、通算規定を免れて次の休職に繋げたいようです。
■議論の概要
「来た日は仕事ができている」は、通常勤務ができているとは言えない
有給休暇は本来事前申請制。事後救済は予測不可能な従業員の場合は許容しうるが、本事例のように繰り返されている事例は予測不可能とは言えない
安全配慮義務の観点からも、働かせ続けることはリスクが高い
産業医や主治医への聞き方
上司への指導も必要。周囲にヒアリングしても良いかもしれない
専門家として、どのように関与を始めればよいか
勤怠システム上のデータから、メンタルの気づきとなる勤怠の乱れを検知できるのでは
■ストップ要件について
復職後の任意の1ヶ月間に、原疾患に起因することが否定できない遅刻・早退・欠勤、および当日連絡による休暇取得の申し出や、あるいは、上司の通常の労務管理下での指揮命令が困難であると判断される事象が、合わせて3回以上あった場合は、速やかに再療養を前提とした面接を実施します。
任意の1カ月間
原疾患に起因することが否定できない
当日連絡による休暇取得の申し出
”原疾患の再増悪を早期に検知するために”
疾病性ではなく、事例性をとらえる
ストップ要件に該当した場合は、速やかに面接の対応をできるように、準備をしておく
「合わせて3回」には医学的根拠や裁判例などがあるのか -
第10回|【質問】心療内科へ受診していることを理由に、異動を拒否されている
今回は、頂いたご質問について、議論をしました。なお、3人そろって対面で収録しています!
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■質問の概要
気分のムラが激しく、顧客とのトラブル等もあり、会社から職場異動を通達しました。
ところが「以前より心療内科を受診していることを理由に、異動拒否されている」という状況です。
会社と労働契約を結んでる限り、メンタルヘルス不調があったとしても異動の拒否は難しいのではないかなと思いますが、先生方のお考えを聞かせていただけないでしょうか。
また本人への対応として、お話しして納得してくれるようならいいですが、どうしても拒否が強い場合に休ませるという対応で解決するのかは不明であり、いい対応方法(妥協点)などあれば、ご教授頂けると幸いです。宜しくお願いします。
■議論の概要
法律的な論点としては、配転命令の濫用と、異動を強行した場合の安全配慮義務違反
原職復帰の原則の考え方と同じく、異動拒否であろうと正社員としての職務無限定性から考えると許容されない
従業員とのコミュニケーション不足で、異動を強行することが問題
本人からの不完全労務提供の申し出であると解することができるのでは
「労務管理」の問題を「健康管理」にすり替えないこと
医学的な理由は、本人側の「正当な理由」になりえるのか
業務上の必要性があるのであれば、そもそも配転命令を強行するか、止めるべきかという議論にならないのでは
異動は、いつから法律的な効力を発するのか
仕事と治療の両立支援の文脈で、治療機会の確保のために、転勤は命じない(勤務地を限定しておいてあげる)ということはありうるか
なぜ業務上の支障を、指摘・注意指導ではなく、異動で改善しようとするのか
育児や介護、治療との両立支援は、どのように整理すればよいか -
第9回|休職期間満了まで残すところ半年。本人は復帰を希望しているが、復帰は難しそう
今回は、よくある事例への対応について、議論してみました。
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■質問の概要
これまでに複数回の休職歴があるが、間に1年以上勤務(リセット期間)が有るため、休職期間の通算はされていない事例。
今回の休職の始まりは約3年前から。休職期間中の慣らし勤務を経て、一度は復職したものの、職位相当の業務遂行は到底できていない状況であった。復帰後も遅刻をはじめとする勤怠の乱れが非常に多く、職場に適切に連絡をすることもできず、無断で遅刻や欠勤を続けていた。その後次第に休みがちになり、病気休暇90日を経て、1年前から再度休職となっている。今回はリセット期間を経ていないので、休職期間が通算されて、満了日は半年後の予定。
休職中は、主に生活リズム・体調・服薬状況を確認するための面談を、1~2カ月に一回程度の頻度で実施している。
本人は、社内の都合で顧客の要望に応えられないことが重なったことが辛かったと話す。また通勤には40分以上の車の運転が必要な部署に配属されたものの、朝早くに起きることができず、職場に行きにくくなってしまったとのこと。
■ゾノ先生と森との議論
このまま休職期間満了退職としても、解雇と同じ扱いだと考えられるので厳しいだろうし、そもそも復職可能の診断書が出てくることが想定される。
面談はやめて、週一報告と面接をしましょう。
面接では、復帰基準と手順、手続き(週一報告提出)の説明、休職期間満了通知、休職期間内に復職するためのタイムスケジュールなどの共有をする。
面談で体調が悪いという話になった時に、会社から説明をしきれないかもしれない。面接で説明を完了することが重要。
面接で説明をすることで、本人と会社が共通認識を持つことができるようになり、同じ方向を向いて対応ができるようになる。
あくまで休職=復職を目指している状態であり、退職という話は一切してはいけない。復帰基準を満たす限りにおいて、誰でも復職を認める。
40分の車の運転って大変だよね。でも本人の気持ちはわかるものの、それも含めて仕事。原職復帰の原則に変わりなし。
■その後の経緯
面談はやめて、面接を実施して復帰基準や手順の通知、休職期間満了通知などを行い、改めて週一の報告を開始した。会ってしまうと、本人に対する情が入るということがよく分かった。
復帰準備期にまでは移行できたものの、復帰準備に関するフィードバックを行っていたところ、体調が目に見えて悪化した。一方で、満了までの復帰を考えた場合、ピッチを上げていかないといけない。
満了1カ月前、本人から休職期間満了までの期間を考えると、復帰基準を満たせる状態になることは難しいと考えたとのことで、本人から退職を検討したいとの申出があった。
■その他の議論
体調が悪いということが分かった時に、どんどん情報を収集しようとする、邪な人事担当者がいるようだ。
面談をしていると、徐々に復職基準を下げていることが多い。
このタイミングでの面接で、このまま療養専念期が続く場