関税は為替にどのような影響をおよぼすのか?

市場の風を読む

米国の関税政策によって為替市場のボラティリティがどの程度高まるかについて、為替および新興国市場戦略担当責任者のジェームス・ロードがお話しします。

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「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。

為替および新興国市場戦略担当責任者のジェームス・ロード.  

本日の話し手は為替および新興国市場戦略担当責任者のジェームス・ロードです。米国の関税政策が為替市場におよぼし得る影響についてお話しします。

このエピソードは2月13日 にロンドンにて収録されたものです。

英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。

為替市場は現在、トランプ大統領が提案する関税政策の行方について固唾を飲みながら見守っています。わずか1週間ほど前、メキシコ、カナダ、中国に対して提案された関税措置を巡って市場の不確実性は著しく高まり、多くの投資家がそれに戸惑いました。それぞれの国との交渉の結果、米国政府はカナダおよびメキシコ製品に対する25%関税の発動を最終的に延期しましたが、中国製品に対する10%の関税引き上げについては予定通り発動しました。為替市場への影響を見ると、市場ボラティリティは交渉中にこそ高まりましたが、交渉が終わると共に低下し、差し引きの影響は小さなものにとどまりました。また、鉄鋼およびアルミ製品に対する追加関税発表の影響も小さなものにとどまりましたが、一方、多くの投資家は現在、相互関税実施の見通しに神経を尖らせています。

最近の関税を巡る緊張の高まりからは、考慮すべき3つのことを投資家は学び取ることができると私たちは考えます。第一は、トランプ大統領が提案する関税には2つのタイプがあり、それらを区別する必要があるということです。1つ目のタイプは最初から交渉カードとして提案された関税で、関税引き上げの対象となる国と別の重要問題について協議し、米国が関税で譲歩する代わりに別の問題で相手側の譲歩を引き出すことを狙ったものです。2つ目のタイプはより幅広い経済戦略的な意味合いを持つ関税で、米国が関税引き上げを通して貿易赤字を縮小したり、国内主要産業を保護したりすることを狙ったものです。

 一方、トランプ大統領が言及した相互関税など、場合によってはこの2つのタイプを合わせたような関税措置が提案される可能性もあるでしょう。

関税政策が為替市場におよぼす影響は、関税のタイプによって大きく異なります。最終的な目的が別の問題で相手国の譲歩を引き出すことにある関税引き上げなら、相手国との交渉が成立した場合、交渉中に進んだ為替市場のボラティリティ拡大トレンドは反転するでしょう。しかし、より幅広い経済戦略の一環としての意味合いが強い関税の場合、投資家は為替市場に対する影響がより長期におよぶかどうかについて、より真剣に見定める必要があると考えます。例えば、中国からの輸入製品に課される関税は、ドル/人民元に対して長期的な影響をおよぼすと考えるべきでしょう。実際、私たちはドル/人民元相場の持続的な上昇を予想しており、2025年下期には7.6に達する可能性があると考えています。

投資家が考慮すべき第2のポイントは、関税政策実施のタイミングを予想することです。この点、米国第一主義貿易政策のさらなる詳細が明かされる可能性のある今年4月1日は、為替市場にとってとても重要な日になると私たちは考えています。ドルはこの日に向かって上昇し続け、投資家はこの日以降のどの時点で関税政策実施を促す圧力が最も大きくなるか、そのタイミングを見定めるようになる可能性があるからです。

投資家が考慮すべき第3のポイントは、為替市場のボラティリティが長期的に高い水準のまま推移するのか、単に偶発的に高まる一時的なものかを見定めることにあります。投資家の多くは、米国の貿易政策を巡る不確実性を理由に、為替市場のボラティリティが例年よりも高まると考えています。しかしこれまでのところ、そのような結果を裏付ける統計データはありません。例えば、第一期トランプ政権時、世界貿易政策を巡る不確実性の水準を追う各種指標は、特に中国製品に対する関税を引き上げたときに上昇しましたが、同時期の為替市場を見ると、ドル相場が上昇したことは事実ですが、市場ボラティリティそのものは拡大しませんでした。

第二期トランプ政権がスタートした現在も、前回同様、貿易政策を巡る不確実性とドル相場はいずれも上昇しています。こうした中、為替市場のボラティリティはやや拡大しましたが、その影響は今のところ見られず、また、インプライド・ボラティリティも過去10年間の最高値を大きく下回る水準にとどまっています。以上からすると、為替市場のボラティリティは、大きなイベントのある日の前後や、関税を巡る緊張が高まり続ける間は拡大する可能性がありますが、いずれも持続的なものではないでしょう。しかしその一方、関税引き上げが米国のマクロ経済をより大きく上向かせた場合、為替市場のボラティリティが長期的に高い水準で推移し続ける可能性は高まると考えます。

最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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