永瀬清子の世界

#70「一九八八年夏 i夏の服」

永瀬清子さんをご存じの方から、「永瀬さんはおしゃれな方だった」と伺うことがよくあります。写真に写る永瀬さんは、帽子やアクセサリーといったところまで心を配ったおしゃれをしており、なるほどと思います。そんな永瀬さんが、着たい服をあきらめてでもしたかったのは、「今、書かねば書けぬ私の詩」を書くことでした。もう少し時間があれば、こんなこともあんなこともできると考えるのは、永瀬さんも同じです。だからこそそうした気持ちも詩になり、空想の中で着たい服を着ているのです。詩人は、詩の中でこのように生きることもできるのです。<文・白根直子>