亀井幸一郎のゴールドボイス

#041 「有事の金」とウクライナ侵略戦争

ウクライナ情勢を受けて、今回は「有事の金」をテーマに取り上げる。そもそも「有事の金」とは、1989年にベルリンの壁が崩壊する以前、米国とソ連が対立する構図の中で起きる世界各地の紛争の背後には、必ず両国がいたことに由来する。紛争はおおむね代理戦争の様相を呈していたため、紛争が起きる度に金は目立った反応を示した。そこで「有事の金」というワードは生まれた。

ところがベルリンの壁が崩壊した後、旧ソ連は崩壊してロシアになり、東欧諸国は自由主義経済圏に入り、勢力図が大きく変わった。米国一人勝ちの構図が出来上がった。東西冷戦が終わったことで、軍事技術だったインタネットも民間に開放されてきたという流れがある。その後の平和な30年間は、仮に地域紛争が起きても、背後に大国はいないことから、「有事の金」といっても、すぐに沈静化するのが常だった。

そして今回。米中対立構図が鮮明なところへ、ウクライナ侵略戦争という位置づけでロシアのプーチン大統領が割って入ってきた。米国は自由主義体制の盟主として対峙していることから、過去30年の紛争とはまったく異質であり、「有事の金」の位置づけも大きく異なる。

現在の米政府および米FRBにとって、国内の「インフレ沈静化」が重要であるため、予定通り利上げに動こうとしている。しかし、いきなり変数が増えたことで、今後は材料が共振しあって大きな影響を及ぼす可能性が出てきた。どこかで金価格が噴き上がる可能性も否定できない。