
“Heretic” by Hakushu KITAHARA ( Unabridged ) 北原白秋『邪宗門』(全) (24)
Part 24
さならずば
わが家の
わが家の可愛ゆき鴿を
その雛を
汝せちに恋ふとしならば、
いでや子よ、
逃れよ、早も邪宗門外道の教
かくてまた遠き祖より伝ヘこし秘密の聖磔
とく柱より取りいでよ。もし、さならずば
もろもろの麝香のふくろ、
桂枝、はた、没薬、蘆薈
および乳、島の無花果、
如何に世のにほひを積むも、――
さならずば、
もしさならずば――
汝いかに陳じ泣くとも、あるは、また
護摩炷(た)き修し、伴天連の救よぶとも、
ああ遂に詮業なけむ。いざさらば
接吻の妙なる蜜に、
女子の葡萄の息に、
いで『ころべ』いざ歌へ、わかうどよ。
嗅煙艸
『あはれ、あはれ、深江の媼よ。
髪も頬も煙艸色なる、
棕櫚の根に蹲む媼よ。
汝が持てる象牙の壺は
また薫る褐なる粉は
何ぞ。また、せちに鼻つけ
涙垂れ、あかき眼擦るは。』
このときに渡の媼
呻ぶらく。『わが葡萄牙、
こを嗅ぎてわかきは思ふ。』
『さらば、汝は。』『責めそ、さな、さな、
養生を骸はただ欲れ。
さればこそ、この嗅煙艸。』
鵠
わかうどなゆめ近よりそ、
かのゆくは邪宗の鵠、
日のうちに七度八度
潮あび化粧すといふ
伴天連の秘の少女ぞ。
地になびく髪には蘆薈、
嘴にまたあかき実を塗る
淫らなる鳥にしあれば、
絶えず、その真白羽ひろげ
乳香の水したたらす。
されば、子なゆめ近よりそ。
視よ、持つは炎か、華か、
さならずば実の無花果か、
兎にもあれ、かれこそ邪法。
わかうどなゆめ近よりそ。
日ごとに
日ごとにわかき姿して
日ごとに歌ふわが族よ、
日ごとに紅き実の乳房
日ごとにすてて漁りゆく。
黄金向日葵
あはれ、あはれ、黄金向日葵
汝また太陽にも倦きしか、
南国の空の真昼を
かなしげに疲れて見ゆる。
一炷
香炉いま
一炷のかをり。
あはれ、火はこころのそこに。
さあれ、その
一炷のけむり、
かの空の青き龕に。
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- 발행일2025년 9월 13일 오후 3:00 UTC
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