南風舎  - Japanese Classical Literature Podcast

The Diary of Lady Murasaki - Unabridged #27 紫式部日記(全)

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Part 27 あからさまにまかでて、二の宮の御五十日は正月十五日、その暁に参るに、小少将の君、明け果ててはしたなくなりにたるに参りたまへり。例の同じ所にゐたり。二人の局を一つに合はせて、かたみに里なるほども住む。ひとたびに参りては、几帳ばかりを隔てにてあり。殿ぞ笑はせたまふ。  「かたみに知らぬ人も語らはば。」 など聞きにくく、されど誰れもさるうとうとしきことなければ、心やすくてなむ。  日たけて参う上る。かの君は、桜の織物の袿、赤色の唐衣、例の摺裳着たまへり。紅梅に萌黄、柳の唐衣、裳の摺目など今めかしければ、とりもかへつべくぞ、若やかなる。上人ども十七人ぞ、宮の御方に参りたる。いと宮の御まかなひは橘三位。取り次ぐ人、端には小大輔、源式部、内には小少将。  帝、后、御帳の中には二所ながらおはします。朝日の光りあひて、まばゆきまで恥づかしげなる御前なり。主上は御直衣、小口たてまつりて、宮は例の紅の御衣、紅梅、萌黄、柳、山吹の御衣、上には葡萄染めの織物の御衣、柳の上白の御小袿、紋も色もめづらしく今めかしき、たてまつれり。あなたはいと顕証なれば、この奥にやをらすべりとどまりてゐたり。  中務の乳母、宮抱きたてまつりて、御帳のはざまより南ざまに率てたてまつる。こまかにそびそびしくなどもあらぬかたちの、ただゆるるかに、ものものしきさまうちして、さるかたに人教へつべく、かどかどしきけはひぞしたる。葡萄染めの織物の袿、無紋の青色に、桜の唐衣着たり。  その日の人の装束、いづれとなく尽くしたるを、袖口のあはひ悪ろう重ねたる人しも、御前の物とり入るとて、そこらの上達部、殿上人に、さしい出でてまぼられつることとぞ、のちに宰相の君など、口惜しがりたまふめりし。さるは悪しくもはべらざりき。ただあはひの褪めたるなり。小大輔は紅一襲、上に紅梅の濃き薄き五つを重ねたり。唐衣、桜。源式部は濃きに、また紅梅の綾ぞ着てはべるめりし。織物ならぬを悪ろしとにや。それあながちのこと。顕証なるにしもこそ、とり過ちのほの見えたらむ側目をも選らせたまふべけれ、衣の劣りまさりは言ふべきことならず。  餅まゐらせたまふことども果てて、御台などまかでて、廂の御簾上ぐるきはに、上の女房は御帳の西面の昼の御座に、おし重ねたるやうにて並みゐたり。三位をはじめて典侍たちもあまた参れり。  宮の人びとは、若人は長押の下、東の廂の南の障子放ちて、御簾かけたるに、上臈はゐたり。御帳の東のはざま、ただすこしあるに、大納言の君、小少将の君ゐたまへる所に、たづねゆきて見る。  主上は、平敷の御座に御膳まゐり据ゑたり。御前のもの、したるさま、言ひ尽くさむかたなし。簀子に北向きに西を上にて、上達部。左、右、内の大臣殿、春宮傅、中宮の大夫、四条大納言、それより下は見えはべらざりき。  御遊びあり。殿上人はこの対の辰巳にあたりたる廊にさぶらふ。地下は定まれり。景斉朝臣、惟風朝臣、行義、遠理などやうの人びと。上に、四条大納言拍子とり、頭弁、琵琶、琴は、□□、左の宰相中将、笙の笛とぞ。双調の声にて、「あな尊と」、次に「席田」「此の殿」などうたふ。曲のものは、鳥の破、急を遊ぶ。外の座にも調子などを吹く。歌に拍子うち違へてとがめられたりしは、伊勢守にぞありし。右の大臣、  「和琴、いとおもしろし。」 など、聞きはやしたまふ。ざれたまふめりし果てに、いみじき過ちのいとほしきこそ、見る人の身さへ冷えはべりしか。  御贈物、笛歯二つ、筥に入れてとぞ見はべりし。 寛弘五年 I went home for a while. For the fifty days' ceremony of the second Prince, which was the fifteenth day of the Sociable Month, I returned in the early morning to the palace.(…)