高浜電工で働く父・ベイスと、バスケットボールに情熱を注ぐ息子・スカイ。かつて病院へ駆け込んだ小さな背中は、今や空へ跳ぶキャプテンに。設計技師として天井クレーンを動かす父と、体育館のリングを目指す息子。小さな町で生まれた、親子の軌跡が交差する感動のストーリー。クライマックスは奇跡のラストシュート「ブザービート」!聴き終えた瞬間、きっとあなたも空を見上げてしまう・・
【ボイスドラマ「ブザービート〜跳べ!高く!空の果てまで!」】
【ペルソナ】
・スカイ(息子/15歳)・・・高浜市の中学3年生。バスケ部。体は小さいけどジャンプ力は抜群
・ベイス(父/42歳)・・・高浜電工機電部所属。天井走行クレーンなどの設計・施工技師
・エレナ(母/43歳)・・・専業主婦。元CA。ベイスと同じくスカイの良き理解者
<シーン1/走れ!ベイス>※ベイスのモノローグ
▪️虫の声/走る足音
「しっかりしろ。もうすぐ病院着くからな」
息子のスカイが背中で苦しそうに息をする。
子供の発熱は珍しいことじゃないけど、親としてはほっとけない。
高熱を出して苦しむ息子を背負って、近所の診療所へ走る。
息子の体の熱と、背中に感じる小さな手のぬくもり。
”大丈夫だ。
お前は強い子だから”
呼び鈴を押すと病院の電気が点いた。
医師に促されて診察室へ。
検温、呼吸・皮膚・顔色・表情の確認。アレルギーの有無も伝える。
ひと通りの検査を済ませ、
結局、ただの風邪とわかってホッとする。
と同時に全身から力が抜けて、へたりこんでしまった。
オレの名はベイス。
高浜電工の機電部で天井走行クレーンの設計・施工をする技師だ。
2年前、息子が生まれてから、なにかあるたびに病院へ走る。
小さな町なので、車より走った方が早い。
と、自分では思っている。
まあ、とにかく無事でよかった。
<シーン2/天井走行ホイストクレーン>※ベイスのモノローグ
▪️トラックの走行音
あれから13年。
あんなに小さかった息子も、今では中学でバスケットボールの選手だ。
今朝も元気よく学校へ出かけていった。
積車に載せた高所作業車スカイタワー。
完成間近の新工場で高所作業車スカイタワーを走らせ、
天井走行するクレーンをチェックする。
オレはいま、高浜電工で、大手自動車部品メーカーを担当している。
この秋竣工、来年稼働する新工場の天井走行ホイストクレーン。
高浜電工の敷地内にある工場でシミュレートしながら
施工に向けてトライ&エラーを繰り返してきた。
今回はアモルファス変圧器も採用して工場の省エネも考えている。
巨大な工場の天井に設置されるレール。
その上をホイストクレーンが縦横無尽に動き回る。
想像するだけで胸が熱くなってきた。
オレにはやっぱり、設計技師のDNAが備わってるんだな。
<シーン3/跳べ!スカイ>※スカイのモノローグ
▪️体育館の雑踏/練習風景
「跳べ!もっと高く!早く!」
自分に気合いを入れる掛け声。
魔法の言葉が体育館に響き渡る。
練習を始める前は、いつもこの言葉で気合いを入れるんだ。
父さんから教えられた言葉だけど。
ボクはスカイ。
中学3年生の15歳。
バスケ部のキャプテンをやってる。
身長は部員の中で一番低い。
けど、そんなの関係ない。
中学に入って始めたバスケットボール。
父さんはいつもボクに、
「跳べ!高く!空の果てまで!」と言った。
だから、ボクは誰よりも高く飛ぶ練習をした。
ランニングや基礎練習が終わると、ひたすらジャンプの反復練習。
最初は、ゴールにすら届かなかった。
リングに向かって何度も何度も飛ぶ。
ある日、顧問の先生がボクを呼び出した。
「スカイ、お前のジャンプは滞空時間が長い。
その滞空時間で、相手のブロックをかわせる」
それからボクの練習メニューはガラリと変わった。
フローターシュート。
ディフェンスに囲まれたゴール下で、ボールを浮かせてシュートを決める。
ブロックされても、ボールを奪われても諦めない。
空中で一瞬だけ静止するような感覚。
それを掴みたくて、必死に練習した。
”いつか、このジャンプでダンクを決めてみせる”
夢はおっきい方がいい。
レギュラーメンバーになったのは、中学2年の夏。
県大会予選の前日。
チームの主力である先輩がケガをして、チャンスが回ってきた。
ボクは毎日練習してきた成果を100%発揮する。
相手の大きなセンターを、何度もジャンプでかわしてシュートを決めていく。
この試合でチームメイトも認めてくれた。
ボクは晴れてレギュラーメンバーになった。
<シーン4/スカイタワー降臨>※スカイのモノローグ
▪️朝の小鳥のさえずり
「ふわぁ〜、おはよう、母さん」
「おはようスカイ」
「父さんは?会社?」
「そうよ。工場のクレーンはお休みの日しか点検できないもんねえ」
「そっか〜。またなんか新しく設計してるのかなあ」
「かもね。
ねえ、スカイ。ご飯食べ終わったら、父さんの会社まで行ってきてくれない?」
「高浜電工?」
「うん。今朝慌てて出てったらお弁当忘れてっちゃったのよ」
「はは。そそっかしいなあ」
「あんた、ひとのこと言えないでしょ」
「はいはい」
「とにかくよろしくね」
「ほーい」
高浜電工ってJAの前だっけな。
昔、防災フェアのイベントのときに1回行ったっきりだからなー。
ま、行きゃわかるだろ。
▪️工場の稼働音
「あ、ありがとうございます」
高浜電工のお姉さんに案内してもらったのは、事務所棟の横にある工場。
お姉さんはボクにヘルメットを渡して、かぶるように言った。
白くて汚れひとつないヘルメット。
かぶって工場の中へ入ると、
なんだろう、ここ。
天井たかっ。
お姉さんが指差した先にはブルーの籠(かご)。
小さな作業車が小さなブルーの籠を天井近くまで持ち上げてる。
その籠に乗って天井のクレーンを触っているのは・・・
父さん!
父さんはボクを見つけると手を振って笑った。
ボクは持ってきた弁当の包みを高くあげる。
『あーそれか』という表情をして、ゆっくり籠が降りてきた。
「すまん、すまん。すっかり忘れてたなあ」
「父さん、あんな高いとこでなにやってんの?」
「ああ。天井にあるクレーンのテストをしてるんだよ」
「あのちっちゃいクルマは?」
「高所作業車スカイタワーさ」
「スカイタワー?」
「そうだ。体は小さいけど天井近くまでバケットを上げれるんだぞ」
「へえ〜」
「タイヤがついてて自分で走れるからどこへでも行けるし」
「すごいなあ」
「テストが終わったら、自動車メーカーの工場へ運ぶんだ」
「どうやって?」
「積車、って力持ちの車がいるから、その積車に乗せて運んでいく」
「スカイタワーはおっきな工場で働くんだね」
「ああ。おまえみたいだろ」
「ええっ?」
「体は小さくても高くジャンプしてゴールするんだよ」
「そっか」
「もうすぐ、大きな大会に出る」
「うん!愛知県ジュニアオールスター/バスケットボール大会」
「そうか、がんばれ。跳べ!高く!早く!だ」
やっぱり、最後はこれか。
でもすごいな。スカイタワー。
父さんは汗をいっぱいかきながら、
小さなスカイタワーの籠に乗り、天井にあるクレーンを点検する。
あんなに小さな車であんな高くまで・・・。
ボクだって・・・きっと跳べる!高く!早く!
<シーン5/走れ!ベイス再び>※ベイスのモノローグ
▪️会場の大歓声
「跳べ〜!もっと高く!もっと早く!」
愛知県ジュニアオールスターバスケットボール大会。
愛知県選抜チームは地区予選を勝ち抜いた選手たちで編成
Information
- Show
- FrequencyUpdated Bi-monthly
- Published3 September 2025 at 6:08 am UTC
- Length15 min
- Season1
- Episode3
- RatingClean