ひとり暮らしのおばあちゃん・エレナと、拾われた子猫・ユニカのあたたかい日常に潜む、小さな“電気トラブル”。ゲームに夢中な孫・スカイと、優しさゆえに危うい行動をとってしまったおばあちゃん。その先に待ち受けていたのは——ブレーカーが落ち、部屋が暗転し、そして・・・家族の絆と、地域の支えの大切さを描く、優しさがめぐる小さな奇跡の物語・・・
【ボイスドラマ「子猫のワルツ」】
【ペルソナ】
・ユニカ(猫)・・・おばあちゃんが拾ってきた子猫。おばあちゃんの話し相手
・エレナ(おばあちゃん)・・・車にひかれそうになっている子猫を拾ってユニカと名付ける
・ベイス(高浜電工一般住宅部)・・・普段から1人暮らしのおばあちゃんを家族のように気にしている
・スカイ(孫)・・・父母は共働きで家にいない。おばあちゃんちでゲームをするのが日常
<シーン1/出会い>
▪️クラクションの音
「あぶない!」
間一髪アタシの命を救ってくれたのは一人のおばあちゃん。
ママとはぐれたアタシは、419(よんいちきゅう)の車線にフラフラ飛び出していたの。
こ〜んなに車の交通量が多いなんて知らなかったんだもん。
気がついたら向こ〜〜〜の方にいたはずのクルマが目の前にきてて・・
▪️急ブレーキの音
「止まって!」
おばあちゃんは車道に出て両手を広げる。
クルマは急ブレーキをかけてアタシたちの前で止まった。
運転手さんの怒鳴り声に頭を下げるおばあちゃん。
こちらを振り向くと、ニッコリ笑う。
そのままサッとアタシを抱っこして歩道へ。
クルマの流れはいつものようにまた、途切れなく走り始めた。
「よかったねえ、無事で」
これが、アタシとおばあちゃんの出会いだった。
「もう心配いらないから。
一緒に帰ろう、うちへ」
こうして、アタシとおばあちゃんの同居がはじまった。
<シーン2/アタシはユニカ>
▪️小鳥のさえずり
「ユニカ」
え?だれだれ?
アタシのこと?
やだ、かわゆい名前。
おばあちゃんはアタシの名付け親になった。
おばあちゃんの名前はエレナ、って言うんだって。
「ユニカ、お腹すいたのかい?」
ううん、違うよ。
ゴロゴロ喉を鳴らしているのは、もっとおばあちゃんのそばにいたいから。
「よしよし、すぐにご飯にするから」
「ちょこっとだけ、待っててや」
やだやだ、まだおばあちゃんのおひざの上でゴロゴロしていたい。
いつもシュッとしてて、イケテる、エレナばあちゃん。
ステキだなあと思ったら、昔キャビンアテンダントだったんだって。
キャビンアテンダント、ってなんだ?
<シーン3/天敵スカイ>
▪️玄関が開く音/ガラガラガラ〜
「ばあちゃん!きたよ!」
わ、きた。
こいつはおばあちゃんの孫。
スカイ、って言うんだけど、アタシ、苦手。
だって、いつも、きったない手でアタシの顔を撫で回すんだもん。
「ユニカ、おいで」
ふん、だぁれが行くか。
「ほら、こっちこい」
あっ、おい。
ずるいぞ。首の後ろを持つなんて。それキライなんだってば。
「こら、スカイ。
ユニカが嫌がっとるじゃろ。
離してやれ」
「ちぇっ、つまんない」
「さ、ユニカ。
お庭で遊んでおいで。
は〜い。
あ、スカイのやつ。
アタシを解放したら、とたんにゲーム始めちゃって。肩を叩くとか、お掃除手伝うとか、ちゃんとばあちゃん孝行しろ。
しかもタコ足配線でスマホの充電するな〜。
歩きにくいじゃんか。
あ〜、縁側気持ちよき〜。
お庭よりこっちの方が好き。
気持ちよすぎて、あ、まぶたをあけていられない・・・
▪️夕暮れ/カラスかツクツクボーシの声
ハッ。
やだ、もうお外暗くなってる。
おいおい、スカイ。
いつまでゲームやってんだよ。
エレナばあちゃんは?
キッチン?
あ、アタシのために、お湯を沸かしてくれてるんだ。
ポットで・・・ミルク作ってくれるの?おばあちゃん、大好き。
「おい、スカイ。
こんな暗いとこでゲームやっとったら、目がわるなるぞ」
「電気つけてあげるよ」
▪️壁のスイッチ/カチッ
「あれ?つかない?」
「ああ、それ。夜豆電球にしたから、チェーンひっぱらんとつかんわ」
「僕の背じゃ届かない」
ったく。しかたないなあ、もう。
よいしょっと、ハイジャンプ・・・あれ?
「僕が届かないのにユニカが届くわけないだろ」
「椅子に乗らんと私でも届かんでな。こらしょっと」
ばあちゃん、危ないよ。
◾️SE:よっこらしょ…と椅子を引く音
◾️SE:カチャ…バランス崩す足音 → ドサッ!
◾️SE:同時に、ブン!という音とともに、家中の電気がバツッと落ちる
「ばあちゃん!」
「ばあちゃん!」
「ばあちゃん!どこ?見えない!」
「スカイ!こっち!
あんた見えてないの!?
ばあちゃんはここだよ・・・やだ、ばあちゃん、倒れてる!
◾️SE:もうバレてるけど、このへんで子猫の声にゃーにゃー入れてもいいかも
「ばあちゃん!どこだよ!」
ったく、オトコってのはホント、いざというとき役に立たないんだから。
アタシはスカイのスマホを充電器からくわえて持ってくる。
ほら。
このキカイ、これでなんとかしろ。
スカイはすぐにスマホで灯りをつける。
「ばあちゃん!?
わあ大丈夫!?死んじゃヤダぁ!」
アタシはおばあちゃんに駆け寄る。
鼻先で頬をこすっても反応がない。
どうしよう・・・
スカイ、早く誰か呼んでこい!
アタシはスカイの裾に噛みついて引っ張る。
「ユニカ、なんだよ。
え?あれ?ちょっと待って。
ユニカの首輪に書いてある数字、なに?」
数字?なんのこと?
スカイは、スマホを操作しはじめた。
「電話番号かも・・・かけてみる」
もう〜!なんでもいいからばあちゃんを早く助けて!
<シーン4/ベイス参上>
▪️救急車の音
「スカイくん、いい判断だった!」
「どちらさまですか?」
「高浜電工 一般住宅部のベイスだよ」
「高浜電工?」
「この前、おばあちゃんに頼まれて、キッチンをガスから電気に変えたんだ。
あとで電話して、なにかあったときのための連絡先を伝えたんだけど。
おばあちゃんはこの子の首輪にメモってたんだね」
そうだった。おばあちゃん、アタシの首輪になんか書いてた。
「この子、名前はなんて言うの?」
「ユニカ」
「そうか。ユニカもよくやった。お手柄だぞ」
えへ。なんもしてないけど・・
「明日から工事に入る予定だったんだよ」
「なんの工事?」
「まずはブレーカーを分配しなくちゃ」
「なにそれ?」
「さっきエアコンと充電をこのコンセントから同時に使ってたでしょ」
「うん」
「さらにポットでお湯を沸かして、照明のスイッチを入れたらブレーカーが飛んだ」
「え」
「おばあちゃん、そのときに転倒したんだ」
「そんな」
「だからまず、エアコンと充電とポットを一緒に使ってもいいように
ブレーカーを分配する」
「そっか」
「あと椅子に乗って照明のひもをひっぱらなくてもいいように。
リモコンで明るさを変えられるLEDの電球に変えて」
「うん」
「それからタコ足」
「あ」
「タコ足は絶対にやめた方がいい」
「はい・・」
「コードがいっぱいになって足にひっかかるし、発火の恐れもあるからね」
「わかったよ」
「壁のコンセントを使いやすい位置に増やすから、もうタコ足はやめよう」
「うん」
「工事はぼくたちがちゃんと責任持ってやる。
だからスカイ君はいま言ったこと全部に気をつけて」
「わかりました」
「長時間ゲームに夢中になっておばあちゃんのことほったらかさないように」
「はい・・・」
そうだそうだ。
よく
Information
- Show
- FrequencyUpdated Bi-monthly
- Published3 September 2025 at 6:08 am UTC
- Length11 min
- Season1
- Episode1
- RatingClean