推しタカボイスドラマ「空と海の彼方に〜ちいさなちいさな海辺のまちのエモエモ物語」

Ks(ケイ)、湯浅一敏、空と海の彼方に

推しタカ(推し活!TAKAHAMA)が2024年4月からスタートしたボイスドラマです。愛知県高浜市を舞台にちょっとだけエモいボイスドラマです。毎月新作を公開していきます!(CV:桑木栄美里/山崎るい)

  1. ボイスドラマ「アタシはうさぎ」

    11月22日

    ボイスドラマ「アタシはうさぎ」

    ツンデレうさぎ“キク”の目線で描かれる家族と幸せの物語。笑って、泣いて、心がふわっと温まる── 【ペルソナ】 ・ヒメ/キク(1歳2か月)=ネザーランドドワーフ種のツンデレウサギ。1年前ペットショップでRUIの目に止まる ・RUI(38歳)=高浜市から安城市の自動車部品メーカーに通っている一人暮らしの女性 【シーン1:一人暮らしの自宅】 ◾️SE:TVの音声 『おかえりなさ〜い! 朝から準備してた、アレ・・ もうキンキンに冷えてますよぉ 今日もお疲れ様でした 新発売のダイコクビール! あ、もう一本いっちゃいます?』 ◾️SE:TVを切る音/窓を開ける音/吹き込む北風 「う〜さむっ」 ちょっとちょっとご主人。 真冬に窓あけちゃ寒いでしょ。 いくらフワフワモミモミの毛皮を着てるアタシでも。 あ、申し遅れました。 アタシはう・さ・ぎ。 ネザーランドドワーフ、っていう種類なの。 知ってる人は知ってるよね。 うさぎの中では、ちっちゃな方。 性格はよく”ツンデレ”って言われるわ。 一応、言っておくと、ネザーランドドワーフは純血種。 誇り高き種族、ってところかしら。 その分、ほかのうさぎたちに比べてちょっと体が弱いんだけど・・・ ◾️SE:TVを切る音〜ビールをグビっと飲む音 「プハ〜!」 しっかし、冬にキンキンに冷えたビールって・・ 人間の嗜好ってようわからんわ。 「あ〜〜〜〜〜っ」 あ〜あ。 ご主人、また会社でなんか嫌なことあったんだな。 あ〜もう・・いちいちご主人って呼ぶのはめんどくさいなあ。 名前でいっか。 いいよね、ルイさんで。 アタシがルイさんと出会ったのは一年前。 生後2か月くらいの頃だったかなあ。 高浜市内のペットショップでミルクを飲んでたら、 じい〜っとアタシのこと見つめている目があったの? とってもキレイなブラウンの瞳。 あれ、カラコン、って言うの? でもよく見たら、なんか潤んでるの。 え? 泣いてる? なんで? アタシ、なんか悪いことした? うんちだって、さっき店員さんが片付けてくれたし。 匂ってないでしょ。 しばらくしてから、店員さんがアタシをかごから出してくれた。 そのお姉さんはアタシを抱っこして、アタシに話しかけてきたの。 「かわいい子。 ねえ、うちにくる?」 しょうがないなあ。 そんなに言うなら行ってやるよ。 お姉さんは、ペットショップで、 ケージから食器、トイレ、マット、ブラシにかじり木まで用意してくれた。 もちろん、ごはんも。 アタシ、チモシーやペレットより、アルファルファの方が好きなんだ。 店員さん、ちゃんと伝えてくれた? アルファルファのない生活なんて、耐えられないんだからね。 お姉さんは1時間以上もペットショップで店員さんと話してた。 そのあとは、車のトランクに荷物を積み込んで、ケージのアタシは助手席へ。 「よろしくね、ヒメ。 う〜ん・・・ヒメ・・? ・・じゃなくて・・・ キク! あなたはこれから、キクよ。 わかった?」 ええええええ。 アタシ、ペットショップで呼ばれてた『ヒメ』の方がいいな。 だってぇ、キク、なんて・・ アタシ、うさぎだよ。お花じゃないんだから。 「私はルイ。これから一緒だよ。さ、おうちに帰ろ」 もう〜、しょうがないなあ。 これが、アタシとルイさんの出会いだった。 【シーン2:名鉄吉浜駅】 ◾️SE:吉浜駅到着アナウンス ルイさんは吉浜から名鉄三河線で安城(※頭高)まで通っている。 会社は、自動車部品メーカーの工場らしい。 工場、ってなんだ? ま、いいや。 とにかくその工場で、品質管理エンジニア、という仕事をしてるんだと。 「私の仕事はねー、ヒメ。 自動車部品の品質を保証するための検査とか、データ分析とかしてるんだよ。 わかるー?」 わかるわけないだろ。 さっぱりちんぷんかんぷん。 だけど、まあ、とっても難しい仕事をしてるんだってことはわかる。 お休みは土曜・日曜だけ。 でもときどき、何日も仕事を休んで、アタシと遊んでくれるから感謝してるわ。 遊ぶときはたいてい、アタシを抱っこして、お散歩。 人形小路(にんぎょうこみち)、って言うの? 吉浜駅から続く散歩道を歩いていくんだ。 うわ!びっくりした! 真っ白なゾウがいる! と思ったら人形なんだもの。 細工人形って言うらしい。 駅からすぐのとこにある「人形小路一番館」。 他にもいっぱい、等身大の細工人形が、まるで生きているみたい・・・ だけじゃなかった。 菊の花を体中にまとった、ものすごく色鮮やかな人形たちがいる。 菊人形、っていうの? へえ〜。 うさぎのアタシから見てもほれぼれするわ。 あ、ひょっとして・・ だから、アタシの名前は「キク」って言うの? そっかぁ。 早く言ってよ、もう〜。 11月になると、吉浜の町に菊人形がいっぱい並ぶんだね。 じゃあ、これから毎年一緒に見にこれるのかな。 アタシの声が聴こえたか聴こえないのかわかんないけど、 ルイさんはアタシを見てニッコリと微笑んだ。 【シーン3:ひとり暮らしの自宅】 ◾️SE:アパートの扉が開く音 「ただいまー、キク。 おりこうにしてた?」 失礼だな。子供じゃないんだから。 うさぎの1歳2か月は、人間で言うと24歳なんだぞ。 立派なレディなんだから。 なんか、いつもより楽しそうな顔。 今日、いいことでもあったのか? ルイさんってわかりやすいからなー。 「キクー、聞いてくれる。 今日ね、知立の駅で、彼に会ったの」 ほーほー。 彼ってだれだー。 まったく話が見えないぞー。 「ペットショップで初めてキクに会った日。 あの日、遠くに行っちゃった彼よ」 あー、それであのとき目がウルウルしてたのかー。 「5年は帰れないって言ってたけど、 一時帰国したんだって。 で今日、知立駅の三河線ホーム。 安城から帰ってくるアタシを待ちかまえて、サプラ〜イズ!」 へ〜、よかったじゃない。 「今日はそのままセントレアから成田へ行って、明日の朝またとんぼ返りなんだけど・・」 あ、また、泣きそうな顔・・・ と思ったら・・・ 「実は来年日本へ戻ってくるのよ!」 感情の起伏がジェットコースターみたいだな。 まあ、でも、ルイさんが幸せそうでよかった。 で、なんの話だっけ? 「キクにも早く会わせたいなー」 え? いまなんてった? 「ほら見て。これが彼よ〜。 ソラ、っていうの」 そう言ってルイさんはアタシの目の前にスマホを置いた。 ふうん。 こういうのが好みなんだー。 イケメン度はまあまあかな。 「ソラ、早くまた会いたいよー」 こらこら、顔をくっつけてくるなら、メイク落とせよー。 よくわかんないけど、アタシ的にはなんだかちょっぴり不安。 ルイさんは鼻歌を歌いながら、 アタシにグルーミングスプレーをかけて いつまでもいつまでもブラッシングをしてくれた。 【シーン4:やってきた他人】 ◾️SE:アパートの扉が開く音 「ただいまー。 さ、ソラ。入って。遠慮しないで」 一年後。 アタシとルイさんのアパートに、見知らぬ人間がやってきた。 この匂い・・・ 今まで嗅いだことのない匂いだ。 ルイさんとはまったく違う。 「見て。この子がキク。 ちっこくて可愛いでしょう」 ルイさんがケージからアタシをひっぱり上げる。 体を撫でながら、その男の方を向ける。 やめろ。アタシにとっては、こいつは敵だ。 アタシは、ケージの中で激しく足ダン(※うさぎの威嚇行為)をした。 「どうしたのよ、キク。 そんなに足をバタバタさせて。 そっかー。嬉しいの?ひょっとしてー」 なワケあるか。 うさぎのこともっと勉強しろよ。 空気が読めないのはルイさんだけじゃない。 目の前の男。 背が高くてヒゲを生やした男は、アタシに手を伸ばしてくる。 思わず耳を立てて、威嚇の声を出した。 そのまま両足でパ〜ンチ!てかキ〜ック! 「なにすんのよ、キク!」 ルイさんが、アタシの頭を小さく叩く。 すごく優しい叩き方だったけど、アタシの心にはものすごく強く響いた。 アタシは、自分からケージの中に駆け込み、奥の方でうずくまる。 「ごめんなさい。この子、きっと緊張してるんだわ。 そのうちきっと仲良くなれるから」 結局そいつは、アタシたちのアパートに居着いてしまった。 ねえちょっとルイさん、そいつ、いつまでおいとくんだよ? 【シーン5:気まずい時間】 「ごめんねー、ソラ。 工場に抜き打ちの検査が入っちゃったみたい。 ホントは私、

    26分
  2. ボイスドラマ「蛇抜〜もうひとつの真実〜」

    10月31日

    ボイスドラマ「蛇抜〜もうひとつの真実〜」

    愛知県高浜市に伝わる伝説「蛇抜(じゃぬけ)」をモチーフにしたボイスドラマ最新作。人気声優・姫乃蘭が、アニメ制作の裏側で出会う“もうひとつの真実”。神楽の舞、伝説の巫女、そして“脱皮”の意味——。彼女が最後に見つけたのは、声の向こうにある“命の物語”。 【ペルソナ】 ・姫乃蘭(ひめの らん)/愛称ヒメ(24歳アイドル声優)=現場でぶりっ子、本音はツンデレ ・星宮比売(ほしみや ひめ)/(14歳)=高浜市の小さな神社の巫女、舞姫。実は龍神の子孫 ・マネージャー(38歳)=姫乃蘭所属事務所のマネージャー。ヒメ以外に大物も担当している   [シーン1:渋谷のアフレコスタジオ/Aスタにて『異世界高校 ミルキーハイスクール』収録中】   ◾️BGM:最高にエモーショナルな音楽   『私はここよ! なっ、なに!?・・見えないの!?私が・・・ ああ!そうよ! 手を・・私の手を・・・ 絶対にもう離さないで!!! 一緒に、元の世界へ戻るのよ〜!』   ◾️SE:音響監督のモブ声「はい!オッケー!いいねえ!おつかれー」   「ありがとうございます!監督! 皆さんもお疲れ様でしたぁ! スタッフの皆さんもありがとうございます!   あ、監督〜! 明日、アタシの写真集、発売日なんですよー! また監督の番組で告知させてください🙇(ぺこり)   あの、ご迷惑でなければ・・・一冊、もらってください! コレ発売日までオフレコなんですけど〜 スク水のカットもあるんでんすぅ!きゃっ。 アタシ、恥ずいからイヤって言ったんですけど カメラマンさんがどうしてもって・・・ あ、興味なかったら、捨てちゃってくださいねー!」   今日のアフレコは、来年4月から放送される春アニメの最終回。 まだプレスリリースが出たばかりだけど あの有名なアニメスタジオが制作!ってことで話題になってる。   ストーリーは学園を舞台にした異世界もの。 監督なんて京都のアニメスタジオからわざわざオファーしてるし。 そうそう。 キャラデザも最近人気の女性絵師さんだから、 そりゃもう〜キラキラしてかわゆいの! メインキャラだけでなく、サブキャラや悪役キャラも魅力たっぷりよ。   キャストもそうそうたるメンバーね! メインのひとりは、あの超人気作品でエルフを演じたハナザキ アサミさんでしょ。 スパダリのイケメン役は男子声優人気No.1のメカジキ ユウくん。 優しい担任教師役にベテランのマツダ カズトモさん。   そして主人公は! 前作『禍ツ魂』で超バズっちゃったアタシ! 姫乃蘭(ひめの らん)、通称ヒメ! アタシの役は引きこもりのJK。 でも異世界では無敵の魔法使いになっていくの!   『禍ツ魂』は地上波の12話1クールだけで終わんなかったんだよねー。 続編の劇場版『禍ツ魂〜鬼師一族の廻天!』が 歴代アニメの興行記録を塗り替えちゃったもんね!   でも!今回の「異世界高校 ミルキーハイスクール」はその上をいく。 製作委員会的にもめっちゃ力入ってる新作。 とはいえ、春アニメは超話題作目白押しで 人気のアニメスタジオはパンク状態。 なんとか探したのがサンセットスタジオのサブチームらしい。 正直アタシ・姫乃蘭を起用したのも、 『禍ツ魂』で名前は売れたけどギャラがそこまで高くないから!   い〜んじゃない。 監督はあの『口のカタチ』のYさんだし、 アタシにとってはステップアップするビッグチャンス! 今日の最終回できっちり区切りをつけてと。   次の作品で、推しも推されもせぬ、No.1声優になってやる!   「1クールおつかれさまでした〜!」     [シーン2:マネージャーの運転する車の中】   ◾️SE:車の扉を閉める音/車内の走行音   「あ〜つかれたぁ! あのスタジオ、マジで空調悪すぎ。メイク取れるじゃん。 それにサブキャラの女の子、間の取り方下手すぎ。 合わせにくいんだって。 新人? 5年目? あれで? モブからやり直した方がいいんじゃね? ん? それなに?次の作品? 見せて、プロット」   帰りの車の中。 運転するマネージャーが持っていた次のアニメのプロット。 ざっと目を通したアタシの口から出た言葉は、   「ちょっと! なに!この話!?」   「なにが言いたいのか、ぜ〜んぜんわかんない!」   「オファーは前作『禍ツ魂』の製作委員会から? どういうこと?」   話をまとめるとこういうことらしい。   『禍ツ魂』は愛知県高浜市の物語。 アニメの大ヒットで観光客も増えて市の財政も潤った。 アニメ終了後に実施した声優イベントも、全国からお客さんがきてくれて大成功。   「じゃあ次は高浜市から発信するアニメを!」   ということで地元の企業から協賛金が結構集まったんだって。 製作委員会は地上波のTV局と枠どりをして、 ネット媒体とも独占配信の約束をとりつけた。 さすが、やること早いな。   それで、アニメのテーマは高浜市に伝わる伝説「蛇抜(じゃぬけ)」に決定。 伝説の内容はこんな感じ。 ちょっと長いけど聴いてね。 むかしむかし、吉浜村の高平(たかひら)というところに、長者が住んでいました 長者にはたいそう美しい娘がいて、 あちこちからお嫁さんにほしいと申しこまれます   ところが娘は、どうしてもお嫁にいくのはいやと、首を縦にふりません 実は娘には好きな男の人がいたのです その人は立派な身なりでやさしく、毎夜毎夜娘の部屋に通ってきていました それを知った長者はたいそうおどろき、その若者はどこのお人だと娘に尋ねます でも娘もどこの人か知りません 長者はすっかり心配になって、娘に申しつけます   木綿針に糸を通し、若者の着物のすそにぬいつけておきなさい   夜明け近く、娘の部屋から若者が帰ると、一すじの木綿糸が外へ続いています 長者が糸を追って竜田(りゅうた)の川ぶちまでくると、 急に糸が乱れからまっていました 川の中では一匹の大蛇がのどに針を突き立てて苦しんでいます   『相手はこの世のものではなく、オロチであったか』   長者は嘆き悲しみました それでものどの針を抜いてやると、二度と姿を見せるなといいます   オロチは衣が浦(きぬがうら)の海の上をわたって、 対岸の生路村(いくじむら)の方へ逃げていきました そのとき、 オロチが衣浦湾へ抜けていったとされる場所には橋が架けられ、 「蛇抜橋(じゃぬけばし)」と呼ばれるようになった、とさ   え? これをどうやって12話のレギュラーアニメにするの? ストーリーに起伏がなさ過ぎじゃない?   眉間に皺を寄せ、難しい顔をしてプロットを見つめていたとき、   「高浜・・行ってきたら?」   突然マネージャーがアタシの顔を見て言った。   「最近ずうっと休みなかったし、 休暇を兼ねてロケハンに行けばいいじゃない」   真剣な顔でアタシを見つめる。 う〜ん。 どうしよっかなあ。 最近LIVE配信もできてなかったからなあ・・・   あ。高浜から配信、ってのもアリか。   「ね、東京からどんくらい? 2時間半? そんくらいなら、まいっか じゃ行ってくるわ 高浜・・・」     [シーン3:高浜のとある小さな神社にて】   ◾️SE:静かな夕暮れの音/小さく神楽の音   高浜市。 小さな神社の神楽殿。 少女が一人、静かに神楽を舞っている。   三河高浜(みかわたかはま)の駅を降りたら、突然の雨。 (※吉浜駅の方がいいでしょうか?)   名古屋からすぐだと思ってたのに。 JRで刈谷ってとこまで戻って、 そこからさらにドローカルの名鉄という電車。   荷物はスリムにしたけど、 こんなとこでスーツケース引きずってるのはアタシくらい。   とりあえず、マネージャーから聞いてた たかびれ公園と蛇抜公園、竜田公園(りゅうたこうえん)、 それに蛇抜橋は見てきたけど・・・   で? って感じ・・ よくある作り物のオロチとフツーの石橋。 なんか物足りないなあ、って思いながら歩いてたら 道がわかんなくなっちゃって・・・   気がついたら、小さな神社・・・   秋雨(しゅうう)に煙る神楽殿。 見たこともない神楽を舞う舞姫。 その姿も朧げで、すごく幻想的。 思わず近づいて見入ってしまった。   「あ」   アタシに気づいた巫女の動きが止まる。 小さく頭を下げて、さらに近くまで寄っていく。   「ごめんなさい。 声をかけようと思ったんだけど」   「なんか見惚(みと)れちゃった・・」   「こんにちは」   遠目で見るより、は

    26分
  3. ボイスドラマ「特別養護老人ホーム鷹濱荘」

    10月16日

    ボイスドラマ「特別養護老人ホーム鷹濱荘」

    ここは、一見普通の特別養護老人ホーム。しかし、その正体は、法で裁けぬ巨悪を闇で裁く秘密組織「陽炎」の最後の砦だった。 介護福祉士のルイと、個性豊かな入居者たちが、AI監視企業「シンギュラリティ」の脅威にどう立ち向かうのか?三州瓦、花火、水圧銃…お年寄りたちが、それぞれの特技を活かした驚きの武器で敵を迎え撃ちます。 【ペルソナ】 主人公・ヤマサキさん(年齢不詳):寝たきりのおばあちゃん。実は手下に命令を下して悪いやつらを闇に葬り去る「陽炎」のビッグボス 介護福祉士・ルイ(24):秘密組織「陽炎」で訓練を受けた世界最高級の秘密工作員。訪問介護や病院への送り迎え、外出催事などの際にミッションをこなしている [シーン1:特別養護老人ホーム 鷹濱荘】 ◾️SE/効果音:緊急コール(No.1530968 緊急コール)〜廊下を走る音 ※CV/息を切らして走ってくるルイ はぁっ!はぁっ!はぁっ! 緊急コールを鳴らすなんて、また誰かが転倒でもしたのかしら? 骨折とか大事(おおごと)でなきゃいいけど。 ※CV/モノローグっぽく ここは、愛知県高浜市にある特別養護老人ホーム鷹濱荘(たかはまそう)。 海沿いに建つ瀟洒な施設。 一見、どこにでもある普通の特養だが・・・ ◾️BGM/スパイアクション風に転換 ここにいるのは、ただ静かに余生を送る老人たちではない。 法で裁けぬ巨悪を闇で裁く非公認の秘密諜報組織「陽炎(かげろう)」。 彼らはその「陽炎」最後の生き残りたちである。 私は介護福祉士のルイ。 しかしてその実態は・・・ 「陽炎」で訓練を受けた腕利(うできき)の秘密諜報部員。 パステルカラーのユニフォームの下にはワルサーPPK。コルセットをガンベルトにしていつでも臨戦体制の工作員なのだ。 いやいやいや、私などまだまだ青二才。 ホームの入所者は全員、超一流のエージェント。 その素顔は誰も想像できまい。 主だったメンバーを紹介しよう。 ※年齢はそのまま続けて読んで まずは、元鬼師のタクミさん(85歳)。 三州瓦で鬼瓦を作る伝統工芸職人。 特殊な材料でいろんな瓦の仕掛けやギミックを作り、敵を制圧する。 毎回私に新しい発明品を見せたくてウズウズしてるのよね。 面白いけどほっとこ。 戦時中「従軍看護婦」だったマミさん(78歳) 毒物調合の達人。 手に持っている砂糖入れには常に微量の毒が混ざっている。 今日もメタボ気味な理学療法士のおじさんに、デザート作って渡してた。 メタボ解消よ〜、って笑ってたけど・・・ おじさん大丈夫かしら? コウシさん(82歳)は”回天”計画の元特攻隊員。 出撃直前「陽炎」にスカウトされたらしい。 水を使った戦法が得意。 介護浴槽の中でも10分以上息を止められるって。 職員が海にボールペン落としたときは、潜ってサっと拾ってくれた。 ありがたいわぁ。 伝説のスナイパー「人形菊(にんぎょうぎく)」ことコハルさん(75歳)。 いまはちょっと耳が遠くなったけど、視力とスナイパーの腕は健在。 上空150メートルぎりぎりに飛んでるドローンも一発で撃ち落とす。 昨日もドローンが近づいてきたから撃墜したって言ってたけど・・ なんかこわ〜。 元花火師で爆弾作り名人の、トシカズさん(88歳)。 破壊対象のごく一部だけを正確に、かつピンポイントで爆破する。 しかも超人的な聴力はデビルイヤー。他人の心音まで聴き分ける。 こないだも「ルイちゃん、心拍数あがってるよ。相談員の栗栖くんの前だから?」って。 いらんことを〜。 カズオさん(90歳)は、凄腕の金庫破り。 少〜し認知入ってるけど、錠前開けの腕は健在。 所長が金庫の鍵なくしたときなんて、つまようじ一本で開けちゃったし。 すごすぎる〜。 最後は、ヤマサキさん(年齢不詳)。 戦後の混乱期から今まで、諜報機関「陽炎」の指揮官。 3年前の脳梗塞が原因で寝たきり・・・ というのはカムフラージュ。 超人的なリハビリを半年続けて復活。 密かに私に指令を出している。 表情ひとつ変えずにぼそっと言うから、ちょっと怖い。 ◾️SE/効果音:緊急コール(No.1530968 緊急コール)〜廊下を走る音 ※CV/息を切らして走ってくるルイ はぁっ!はぁっ!はぁっ! 呼んでいるのは4階の北の端。多目的交流センター。私が打合せをしていたのは南の端1階のデイルーム。 走っても遠いわ。 はぁはぁ・・・ あ・・れ? 交流センターのマットに寝かされてるのは・・・タクミさん? ま〜たなんか瓦でヘンなモノ作ってたんじゃない? 「タクミさん、大丈夫?」 「ああ、ああ。ちいっとばかし、転んじまったわ」 「バイタルは?」 「正常じゃ」 「打ったのはひざ? 見せて・・・腫れてはいないわね」 「ああ」 「一応、総合病院行こう」 「そうじゃな。いこいこ」 タクミさんは遠足へ行く子どもみたいな笑顔。 わざとらしく足を引き摺りながら、車に乗り込んだ。 [シーン2:介護車両「よしはま号」】 ◾️SE/介護車両の車内音 「転倒なんて嘘でしょ?」 「いや、うそじゃない。わざとだけど」 「もう〜。 デイルームから多目的まで必死で走ったのよ」 「ほかほか。ええ運動になったのう」 「なぁにが。で、要件は?」 「昨日三味線弾きのカズヤが慰問にきたじゃろ」 「ああ。陽炎の連絡員、カズヤさんね」 「演奏の幕間(まくま)にちらっとだけ聞いたんじゃが・・・」 「なあに?」 「最近、裏の世界で不穏な動き、というか空気があるんじゃと」 「どうしたの?」 「八咫烏(やたがらす)って知っとるじゃろ?」 「同業ね。あっちはカズガ/ハルヒ神社の神官たちのグループじゃない」 「宮司のサカキバラを除いて全滅らしい」 「ええっ!? 500年以上も続いている神官と巫女のエージェント集団よ!」 「そうなんや」 「どういうこと?相手は誰?」 「わからん。 だから、いくつかわしが秘密兵器をつくっておいた」 「まぁた、瓦でヘンなもん作ったんでしょ」 「失礼だな。まあ見ろ」 「はいはい」 「まずはこれ」 「ただのキーホルダーじゃない。たしかクラファンの返礼品でしょ」 「そう見えるだろうがな、これは手榴弾じゃ」 「え〜」 「爆弾作り名人のトシカズさんに爆薬を調合してもらってな。 窯の中で爆発させず、強度も保てる瓦爆弾を焼いてもろうたんじゃ」 「そんなん持ってるだけで危ないじゃん」 「そうかぁ? ほんじゃこっちは? 三州瓦を細かく砕いて、特殊な合成樹脂で固めた手甲(てっこう)じゃ。 一見、ただのギプスに見えるやろ? 拳銃の銃弾(たま)だって弾き返すんやぞ」 「重いだけじゃん」 「やっぱ若いやつには、この価値はわからんかぁ。 見よ、この瓦の艶。美しいのう」 「もう総合病院着くわよ。 とりあえずレントゲンだけはとっときましょ」 結局、タクミさんは手首を骨折していた。 瓦のギプス、役立ってよかったじゃん。 まあ、股関節の骨折じゃなくてひと安心。 早くホームに戻ってボスに報告しなくっちゃ。 [シーン3:ビッグボス】 ◾️SE/小鳥のさえずり 「八咫烏が全滅だと?」 「はい。生き残ったのは宮司のカズヤさんだけ」 「シンギュラリティだな」 「シンギュラリティ?なんですか、それ」 「先週防衛省の役人がきたとき、ちらっと言っておった」 「防衛省の役人!?そんなん、いつきました?」 「なんや。ほれ、マミの家族が訪ねてきとったろ?」 「ああ、あの息子さんとお孫さん・・・ ってあれ、偽物だったんですかぁ!?」 「年に一度の定期連絡じゃ」 「年に一度しか顔を見せないなんて冷たい家族だなあ、 って思ってたんですけど・・・ え、でも・・・お孫さんは?子役ですか?」 「チャイルドプレイのメンバーじゃよ」 「チャイルドプレイ?ちょっと頭が混乱してきました」 「正式には非政府組織のNGO。 10歳未満のこども中心の諜報メンバーじゃな。 労働基準法の『年少者保護規定』にひっかかるんでNGOになっとる。 売れてる子役はたいがいメンバーだぞ」 (※以下カット可能) 「ひえ〜。芦田愛菜とかも入ってたりして」 「初代隊長じゃ」 「いやいやいや。そうですか。ごちそうさまでした」 「話を戻そう。 シンギュラリティは、AI監視ネットワークを駆使した反政府団体じゃ。 SNS時代に急成長したAI監視企業が、ならずもの国家と結託してな、 全世界を掌握しようとしておる」 「じゃあ、陽炎とか八咫烏は・・」 「基本アナログの

    29分
  4. ボイスドラマ「マーメイドの夏〜三河地震に引き裂かれた愛」

    8月31日

    ボイスドラマ「マーメイドの夏〜三河地震に引き裂かれた愛」

    1944年、戦時下の愛知県・高浜市。世界の美しい海に憧れながら、衣浦の小さな海で修行をする人魚姫ルイーズ。彼女が出会ったのは、徴兵検査で落ち、居場所を失った青年サトシ。二人は密かに愛を育むが、やがて三河地震、そして終戦の波が押し寄せる――。歴史とファンタジーが交錯する切なくも美しいボイスドラマ 【ペルソナ】 主人公・ルイーズ(年齢不詳):北欧生まれの人魚。プリンセス候補の1人。修行のために衣浦の海に住んでいるが、この小さな海がどうしても好きになれない。 サトシ(21):高浜の電気工。友達が次々と出征して戦地にいくなか、徴兵検査で丁種となり悶々としている。そんなとき幼馴染のマサルの戦死公報が届く。 (CV:山﨑るい) 【ストーリー】 [シーン1:1944年夏/衣浦の海】※ルイーズのモノローグ ◾️SE:潮騒の音/海鳥の声/遠くに聞こえる汽笛 赤、青、黄色。 色とりどりの魚たちが珊瑚礁の間を泳いでいく。 光のカーテンがゆらゆら揺れて、まるで宝石みたいに美しい海。 パラオ。 透き通るようなエメラルドグリーンの水面。 白い砂浜に打ち寄せる波。 マンタと一緒に、空を飛ぶように泳ぐ海。 モルディブ。 エメラルドグリーンからコバルトブルーへ。 息をのむような美しいグラデーション。 天国に一番近い島。 ニューカレドニア。 ああ〜、なんて素敵なの〜 美しい海は世界中にこんなにいっぱいあるのに・・・ ◾️SE:暑苦しいセミの声 なんで私は衣浦?なんで高浜? 海か川か、わかんないような海。 いつまでここにいればいいの〜!? 私の名前はルイーズ。 おわかりだと思うけど、マーメイド。 場所によっては、セイレーンとか、ローレライって呼ぶ人もいるわね。 日本では、そ、人魚。 ジュゴン?マナティ? ちょっと勘弁して。 あの海棲哺乳類のどこから麗しい人魚の姿が想像できるっていうの? それに人魚の世界って厳しいのよ。 ポセイドンっていう神様の下で何年も修行して やっと自分の海を持たせてもらえるんだから。 で、私の海は・・・衣浦? 夏だというのにカラフルな熱帯魚もいないし、海亀だっていない。 真っ白な砂浜だって・・・ なんで?なんでよ〜?ポセイドンさま〜 しかも・・・ いまって何年? 私たち人魚には時間という概念がないからよくわかんないけど・・・ 1944年? たしか世界中で戦争が起こってたんじゃない? そうそう。ポセイドンさまが言ってたわ。 ”戦争とは、神々の時代から幾度となく繰り返されてきた愚かな所業。 人間たちの欲のために、陸(おか)は火の海となり、 美しく青い海は血で赤く染まっている。 かつては美しく、清らかであったこの海も、 今や醜い憎悪と悲しみを吸い込み、深く澱んでしまった。 人間たちよ、いつか、その報いを受けるであろう” だって。 この高浜ってところには、まだ爆弾とかは落ちてないんだけど、 人間の数がどんどん減っているんじゃない? 男の人は戦地に送られ、女の人や学生さんは名古屋の工場に行ってる。 畑とか田んぼとかどうするのかしら? 陸(おか)の食べものがないからって、魚をもっといっぱい獲っちゃうの? 魚って私たち人魚の眷属だから、守ってあげないと。 チヌ、セイゴ、メバル、カサゴ、サッパ、ハゼ、イサキ、シイラ。 みんな、隠れなさい。逃げなさい。 人間なんかにつかまっちゃだめよ。 私が魚たちを転進させている頃、 陸(おか)の上ではいろんなことが起こってたみたい。知らんけど。 [シーン2:1944年秋/出会い】 ◾️SE:友人の葬式(棺桶に入っているのは戦死の知らせの紙だけ) 「このたびはご愁傷さまで・・・」 「あ、サトシです。ほら、小さい頃マサルと一緒に遊んだ・・」 「ああ、ボクには赤紙はまだ・・・」 「そ、そうです。徴兵検査で丁種(ていしゅ)だったので・・・」 「非国民?そんな・・そんな・・・ボクだって」 「帰れ?お願いです!線香の1本くらいあげさせてください」 「マサルの・・」 ◾️SE:バシャっと水をかけられる音 「失礼、しました」 海沿いの古民家でおこなわれていたお葬式。 一人の若者が、水をかけられて、追い出された。 ってか、家にもあげてもらえなかったのね。 なんか、陰鬱な顔して ひとりで海の方へとぼとぼ歩いてくる。 私は退屈だから、浜辺に腰掛けて、人間の営みをぼんやりと眺めていた。 どこの家も軒先に赤い提灯を飾るんだ。 ほおずき提灯っていうの?いまの時期だけかしら。 きれいだな。 衣浦に夕陽が沈む。 夕陽のオレンジとほおずき提灯の赤が混ざり合って 幻想的な風景を作り出す。 まあまあ、かな。悪くない。 そのとき・・・ ◾️SE:海に身を投げる音「ザバ〜ン!」 え? なに? 向こうの岩場だわ。 尾鰭を素早くくねらせて水音がした方へ泳ぐ。 あれは・・・人間だ。 あっ。さっき、夕方。お水をかけられていた男の人。 私は、迷うことなく彼を水から引き揚げる。 だって、この海で土左衛門なんて、冗談じゃないわ。 土左衛門?水死者のことでしょ。 春先に、貝掘りにきてたおばあちゃんに聞いたもん。 なんか、可愛い呼び方。と〜っても不謹慎だけど。 彼を抱えて浜の方へ。 よっこらしょっと。 なんとか砂浜に寝かせた。 意外と軽いわね。 ちゃんと栄養とってないんじゃない。 よく見ると、可愛い顔。 タイプってわけじゃないけど、悪くないわ。 思わずじぃ〜っと見つめる。 ゆっくりと彼の目が開いた。 予想外の展開。 私は慌てて、海の中へ飛び込む。 人魚の掟では、人間に姿を見られるのは御法度。 もしも見られたのが男の人だったら、 その人と結ばれないといけないの。 女の人だったら?あ、それは聞かない方がいいと思うわ。 それに、私たち人魚に見つめられた男の人は、例外なく恋に落ちるの。 これは、ま、絶滅危惧種でもある人魚の、種を維持する本能かも。 あ〜、でも危ない危ない。 もう少しで結婚しなきゃいけなくなるとこだった。 波の下からそうっと陸を覗くと・・・ 月の明かりに照らされた彼が、浜辺に立って いつまでも海を見つめていた。 [シーン3:1944年秋/逢瀬】 ◾️SE:潮騒の音 その日から彼は、毎日浜辺に来るようになった。 日が昇る時間からひとりで海にきて、 帷が降りるまで海を眺めている。 なんで? まさか・・まさか。 彼・・私に魅入られてる? 夏が過ぎ、秋になって、稗田川から彼岸花の花びらが流れてくる。 花びらがピンク、黄色、赤と変わっていっても、彼は浜辺に立ち続けた。 これは・・・間違いないわね。 わかった、もう私の負け。 高浜川からも稗田川からも真っ赤な紅葉が流れてくる季節。 私は、彼の前に姿を見せた。波の上に顔だけだして。 ◾️SE:潮騒の音 「やっぱり・・幻覚じゃなかったんだ」 「あなた、名前は?」 「サトシ。君は?」 「私はルイーズ。年はいくつ?」 「廾壱(にじゅういち)。君は?ルイーズ」 「失礼ね、女性に年を聞くもんじゃないわよ」 「これは失敬」 「年が明けると120歳くらいかしら・・」 「ひゃ、ひゃくにじゅっさい・・・」 「繰り返さないでよ」 「ご、ごめん。でもまだ信じられない」 「そりゃそうよね。人魚は人間の前に決して姿を見せないんだから」 「え・・・じゃ、どうして姿を見せてくれた の?」 「それは・・・ま、おいおいわかるわよ」 「なんか・・怖いな」 「臆病なのね」 「臆病・・・そんなことはない!! どんな理由だって構わないさ。 僕は・・・君のことを慕っているのだから」 「やっぱりそうよねー」 「すごい自信だな・・」 「いや、そういうわけじゃないけど」 「君のことをもっと知りたいんだ」 「いいわ、教えてあげる」 私は、波の上に腰から上を出した。 長い髪で胸を隠して。 立ち泳ぎしながら、尻尾の先を波間から出す。 「本当に・・人魚なんだ」 「私、こう見えて王家の出なのよ。プリンセス候補のひとりってわけ」 「プリ・・・?」 「プリンセス。お姫様ってこと」 「お姫様・・」 「そ。で、いまはこの衣浦の海で修行中」 「そっか・・・」 「あなたのことももっとちゃんと教えて」 「わかった」 私たちはこのあと、1時間以上も語り合った。 サトシの身の上。 父も母もサトシが幼い頃に亡くなって、身寄りもなく物乞いのような生活。 食べ物につられて戦争の徴兵検査に行ったけど持病で落とされたこと。 幼馴染の両親から

    29分
  5. ボイスドラマ「セカンドチャンス〜もうひとつのNBA」

    7月25日

    ボイスドラマ「セカンドチャンス〜もうひとつのNBA」

    忘れ物を届けた先にあったのは、過去の自分だった——。セントレア空港で働くルイ(28歳)は、ロスト&ファウンドでNBA選手のボールを預かる。持ち主は、プロ入り4年目・未だ無得点の控え選手エバン・ヒーロー。夢を諦めかけたふたりに訪れた、「セカンドチャンス」とは? ・高浜市×セントレア×NBA・感動のクライマックスはまさかのゴール下! バスケ経験者にも、そうでない人にも届けたい、再出発の物語。 (CV:山崎るい) 【ストーリー】 <『セカンドチャンス』> 主人公・ルイ(28):セントレア空港のロスト&ファウンド係。几帳面で冷静、でも実は学生時代バスケ部でNBAの大ファンだったがインターハイ予選の決勝でセカンドチャンスを外して敗退。それがきっかけでトラウマに。 エバン・ヒーロー(24):NBAのベンチメンバー(補欠)。来日試合のためにセントレア経由で入国。誰よりも努力家だが入団以来公式戦で得点がない。日本が嫌い [シーン1:インターハイ決勝のトラウマ/2015年8月高浜市体育館(碧海)】 ◾️SE:会場の大歓声 「ルイ、スクリーン!」「OK!」 2015年5月30日。 その日、碧海町の高浜市体育館は、熱狂的な歓声に包まれ、 シューズの摩擦音が響いていた。 インターハイ予選決勝、残り時間はあと10秒。 1点ビハインドで迎えた、九死に一生の場面。 ポイントガードが インサイドに切れ込むセンターのミサキにパスを送る。 だが、相手チームの厳しいディフェンスがミサキのシュートを阻んだ。 ボールはリングに嫌われ、無情にもリムを叩いて転がっていく。 その瞬間、私は無意識に動き、ルーズボールに飛び込む。 「ルイ!今よ!セカンドチャンス!」 視界の端に、赤く点滅するショットクロックが見えた。 もう時間がない。 拾い上げたボールを抱え、私は迷わずドライブを仕掛ける。 マークについていた相手フォワードをクロスオーバーで抜き去り、ゴール下へ。 ノーマークだ。 誰もが私のシュートが決まることを確信した。 しかし、放たれたボールは・・・ ◾️SE:会場のためいきと大歓声 実況アナウンサーの絶叫が、耳に突き刺さる。 ボールはリングに弾かれ、無情にもアウトオブバウンズ。 その瞬間、試合終了を告げるブザーが、私の心を打ち砕いた。 鼓膜から歓声は消え去り、 凍り付いた時間の中でコートは静まり返る。 チームメイトの慰める声も私の耳には入らない。 ベンチから歩いてくる監督は、作り笑顔の中に落胆した表情が隠せない。 この日を境に、私の心からバスケットボールという言葉は消えた。 あんなに好きだったNBAの試合ですら怖くて見れない。 高校最後の初夏が、私の一番好きなものを奪っていった。 [シーン2:中部国際空港セントレア】 ◾️SE:空港のガヤ 「え?忘れ物? もう〜。帰ろうと思ったのに」 あれから10年後の2025年。 私は高浜から毎日車でセントレアへ通う。 中部国際空港・第1ターミナル1階 総合案内所裏「遺失物取扱所」 通称“ロスト&ファウンド”。 それが私の職場だ。 ガラス越しに見える滑走路と、遠ざかっていく白い機体。 カウンターの奥、仕切られた一角で私は丁寧にグローブをはめた。 目の前の“拾得物預かり票”にボールペンで書き込んでいく。 国内線112便・到着ロビーC付近で拾得。品目・・・ ・・・ボール? え? ロスト&ファウンドに普段届くのは、財布やスマホ、書類がほとんど。 スポーツ用品が届くのは珍しい。しかも・・・ このサイズ、この形状、このカラーは・・・バスケットボール。 一目見ただけでわかる。 プロ仕様のバスケットボールだ。 深いオレンジ色の革には、使い込まれた証拠の擦れ。 かすかに汗の匂いが染み込んでいる。 「・・・まじか」 ためらいながら、手を伸ばす。 手のひらで感じる感触。 顔を近づけたとき、微かに漂う皮の匂い。 記憶の奥底に封じ込めたはずの感情が、ふいに呼び覚まされる。 ボールのパネルには、筆記体で「E. HERO(イー・ヒーロー)」と刺繍されていた。 その下には、見慣れない猛禽類のマークが縫い付けられている。 どこかのチームロゴだろうか。 高校のとき、あんなに夢中だったNBA。 10年という歳月は、私をここまでバスケから遠ざけちゃったんだな。 名前まで入れて・・ よっぽど大切にしていたボールなんだろう。 なんとか返してあげなくちゃ。 全然気にもとめなかったけど、 何チームかエキシビジョンマッチで来日していたらしい。 「イー・ヒーロー・・・?どっかで聞いたような・・」 その名前が、私の頭の中をかすめた。 ベンチメンバーにそんな名前の選手がいたような・・・ でも、NBAの選手がこんな大事なボールを忘れるか・・・? [シーン3:ルイの自宅】 ◾️SE:自宅の雑踏/ノンアルコールビールを注ぐ音 その夜、私はノンアルコールビールを飲みながら自宅のパソコンで名前を検索した。 (だって私、お酒飲めないんだもん) 検索窓に「E・ヒーロー ・・」と打ち込むと、 「エバン・ヒーロー?」続けて「0(ゼロ)」と表示される。 なにこれ? ヒットした記事はどれも、彼の短いNBAキャリアと、 ベンチウォーマーとしての不遇な日々を報じていた。 出場機会はほとんどなく、コートに立っても数分で交代。 シュートを放つチャンスすら滅多にない。「garbage time」に少しだけコートに出させてもらっても パスを回すだけでシュートを打たせてもらえない。 シュートを打ってもプレッシャーから外してしまう。 エバンの公式プロフィールには「キャリア通算得点:0」という数字が、 冷たく刻まれていた。 なんか、私みたい。 胸の奥が締め付けられるような共感を覚える。 高校最後の試合。 1点のビハインドをひっくり返せるはずだったセカンドチャンス。 得点は、2ではなく、0。 あの日から私はずっと「0」という数字に追いかけられていた。 彼もきっと誰にも理解されない孤独な戦いを続けてきたのだろう。 エバンのボールは、ただの遺失物ではない。 それは、私自身のトラウマを映し出す鏡のようだった。 [シーン4:エバンの泊まる衣浦グランドホテル】 ◾️SE:空港の雑踏/朝のイメージ 遺失物取扱所に並べられた、拾得物預かり票。 ロスト&ファウンドの係員として、遺失物の処理には厳格な手順があった。 遺失物法に基づいて、拾得物は警察に届け出る。 公示された後、一定期間、通常は3ヶ月、持ち主が現れなければ、 拾得者のものとなるか、国庫に帰属。 国際空港で拾得された場合は、税関や出入国在留管理局との連携も必要になる。 通常の手続きを踏んでいたら、間に合わない。 エバンが日本に滞在している間に、ボールが彼の元へ戻る可能性は限りなく低い。 彼のチームが日本にいるのは数日間。 その間に手続きが完了するのは極めて難しい。 どうしよう・・・ 気がつくと、私はエバンたちが宿泊するホテルの前に立っていた・・・ ※続きは音声でお楽しみください。

    28分
  6. ボイスドラマ「禍ツ魂」

    6月16日

    ボイスドラマ「禍ツ魂」

    「その声は、命を削って届いた」 新人声優ルイが挑んだのは、異色の鬼アニメ『鬼師』のラスボス「禍ツ魂」。過酷な現場、突きつけられる現実、そして自身の病——それでも、彼女の声は人々の心を震わせた。SNSでバズり、異例の主人公交代。感動と希望のラスト、そして次回作『蛇抜』へ繋がる予告も─心震える45分、あなたも“あの演技”を聴いてください。 (CV:山崎るい) 【ストーリー】 [シーン1:スタジオオーディション『鬼師 vs 禍ツ魂』】 ◾️SE:雷鳴轟く豪雨の中 『おのれぇ!こざかしい鬼師どもめがぁ! おまえらごときにこの禍ツ魂の術が破れるものか!?これでもくらえ〜!!』 ◾️SE:爆発音 『なん・・だとぉ〜!!! 術が効かぬ!鬼瓦に吸い込まれる!!! くそぉぉぉぉ〜!鬼師めが! これで終わりと思うなぁ〜! きさまを倒すまでわれは何度も蘇えるからなぁ!』 ◾️SE:音響監督のモブ声「はい!オッケー!」 あ〜、しまったぁ。 ちょいと、やりすぎちゃったかも。 いつもの調子で、ハラから思いっきり声だしちゃった。 最後、アドリブまで入れてるし・・・ ってか今日、バイト先で超ムカついたんだよねー。店長に。 早朝のシフト終わって私にかけた言葉が、 『おつかれ〜。オーディションがんばって。あでもー。 声優なんて食ってけないんだからいい加減あきらめたら〜?』 だって。 ざけんな、っつうの。 あ〜! ったく、セリフに力入ったわ〜。 あ、いかんいかん。 まだオーディション終わってないし。 今日は、一年後に放送される2026年夏アニメのCVオーディション。 って早すぎ? いやいや、TVアニメなんてそんなもんよ。 絵が出来上がる前のアフレコなんてザラだから。 タイトルは『鬼師』。 鬼師というのは、鬼瓦を作る職人のことらしい。 舞台は愛知県高浜市というところ。 なんでも、瓦の生産量が日本一なんだって。 へえ〜。知らなかった。 物語の世界は、平安時代末期から鎌倉時代。 世の中には鬼が闊歩し、人々に畏れられていた。 まさに『百鬼夜行絵巻』の世界。 鬼たちが集まる高浜には、鬼師がいた。 鬼師とは、鬼を討伐する専門職。 特殊な結界を張った瓦に、鬼を封じ込めて葬り去る。 はるか遠い昔の物語。 鬼師と鬼の果てしない戦いを描くアニメだった。 CVオーディションは音響監督の決めうちじゃなくて、 呼ばれた声優たちがいろんな役を演じる。 私はラスボスの鬼じゃなくて、ヒロインの美少女鬼師狙い。 だって最近、アニメじゃいっつもモブか人外ばっかなんだもん。 そうそう。 気持ちを切り替えて、と。 よろしくお願いしま〜す!! [シーン2:自宅のアパート】 ◾️SE:小鳥のさえずり/朝のイメージ 結局、決まったのは鬼の役。 セリフにもあったけど『禍ツ魂』という、すごい名前の鬼。 めっちゃ強そお〜。 源頼光(みなもとのらいこう)に討伐された酒呑童子(しゅてんどうじ)の転生した姿だって。 フィクションだけど。 確か、台本の決定稿きてたよなあ・・・ ◾️SE:台本をペラペラめくる音 あれ? なんか、これ。 オーディションのときと変わってない? この内容、主人公は・・・禍ツ魂・・・ 私〜っ!? うっそぉ! いやいや。違う違う。主人公のCV名は私じゃないし。私の名前は下の方だし。 いまビデオコンテ作ってるとこだって言ってたけど。 監督とシナリオライターの間でなんかあったのかなぁ。 と、と、とにかく。 本番までまだ一ヶ月あるから、台本読みこんどかなきゃ。 役作り役作り。 [シーン3:渋谷のアフレコスタジオ】 ◾️SE:スタジオのガヤ 「おはようございま〜す! 禍ツ魂で入らせていただきます!ルイです! よろしくお願い申しま〜す!」 15分前。 よし、まだスタッフさんだけだ。 じゃなくて、音響監督さんは副調整室の中か。 モブシーンを先に録ってるんだ。 あ、あの子たち。 私の同期。 今回はモブ役なんだね・・ ◾️SE:同期の声優がスタッフに対して「おつかれさまでした」 「あ、あ・・お、おつかれさまでした。 あ、あの・・・」 え? なんか、フツーにスルーされちゃった。 どゆこと?私、なんか、悪いこと、した? と思う間もなく、鬼師役の声優さんが入ってくる。 そうだ、主人公。 彼女に決まったんだ。 別の事務所だけど、いま結構売れてる子だよね。 レギュラー5本以上やってる。 あの話題作の映画にも出てたんじゃないかしら。 年下だけど。 ◾️SE:鬼師役の声優「おはようございま〜す」 「お・・おはようございます。 今日(きょう)は・・・」 「あ、監督。セリフでちょっとわからないとこ、あるんですけど」 え? また? ガンムシ? そういえばレギュラーメンバー、みんなそこそこ売れてる声優ばっかりだ。 やっぱ、地上波のレギュラーアニメだもんね。 私、ここにいていいのかな。浮きまくってる。 ああ、どうしよう・・・ ただでさえ、人見知りするし、人と話すの得意じゃないのに。 ◾️SE:音響監督「よし、じゃあスタンバイ!リハホンでいくぞ」 「はい」 「は、はい・・」 ◾️SE:音響監督「まだ絵がVコンでボールドないから、自分のタイミングで入って」 ◾️BGM:盛り上がる鬼出現のBGM 「出たな、禍ツ魂・・・」 「きさま、鬼師の分際で・・」 ◾️↑2人同時に言葉が被る 「え?」 「あ」 セリフが被ってしまった。 そんなミス、フツーありえない。 スタジオの副調がザワつく。 「ご、ごめんなさい。台本に・・」 「それ、古い台本じゃない?」 「え、そ、そんな・・・」 「決定稿はこれよ」 「わ、私その台本(ほん)もらってない・・・」 「マネージャーに文句言っときなさい」 「は、はい。すみませんでした・・・」 「あ〜あ」 なんでだろう。 決定稿だっつって、一昨日事務所でもらった原稿なのに。 いつ入れ替わった? あのとき、事務所にいたのは・・・ はっ。 さっきのモブの子たち。 まさか・・・ だめだめ。 そんなこと考えるもんじゃない。 それこそ、鬼になっちゃうよ。 予備のホンをもらってなんとかその場をしのぐ。 ニコリともせず、鬼師役の子はモニターに向かって見えを切る。 「出たな、禍ツ魂! 汚れた魂を私が作った瓦の結界で浄化してやる!」 「なにを鬼師の分際で! 返り討ちにしてくれようぞ! 雷(いかづち)よ、天を裂き、鬼瓦を打ち砕けい!」 ◾️SE:雷鳴轟き豪雨が降りしきる 「念を込めた鬼瓦がおいそれと破れるものか! 臨(りん)兵(ぴょう)闘(とう)者(しゃ)皆(かい)陣(じん)烈(れつ)在(ざい) 前(ぜん)!」 「九字切り(くじきり)かぁ! おのれえ!!」 「ノウマクサーマンダ バザラダン!」 「く、苦しい!心臓が・・・!」 え。 本当に胸が苦しい・・・なんで・・・? なんとか、このシーンだけ乗り切らないと・・・ 「ウンタラタ カン マン!」 「ぐえ〜っ!!!」 [シーン4:自宅のアパート〜1年後へ】 ◾️SE:コーヒーを沸かす音 第一回目の収録はなんとか気力で持ちこたえた。 いったいなんだったんだろう? 胸の痛み。 スタジオから出たらすっとひいたけど。 最後のシーン、一発オッケーでほんとによかったわ。 不安を残しながら、ゆっくりと収録の回数を重ねていく。 月1のアフレコの日程。アニメーションの方は制作がだんだん追いついてくる。 最初は動かないラフスケッチのビデオコンテだったのが清書のキャラクターになり、色がついていく。アニメの本数は、1クール12本。 11話まで収録が終わり、アフレコもあと1話のみを残すだけとなった。 季節は巡り、気がつけば夏アニメのオンエアが一斉にスタート。 あっという間に一年が経っていた。 宣伝にあまりお金をかけないと言っていたプロデューサー。 そのせいか、あまり前評判に上がってこなかった。 まあなんとか、人気声優が出てるってことで たまにネットニュースにはなってたけど。 あ、もちろん、人気声優ってのは、主人公のあの子ね。 私にとっては初めての大きな仕事だったからわざわざテレビを購入して、リアタイでアニメ鑑賞。 TVの前で正座・・・って昭和の人ってこんな感じ? ◾️SE:TV音声 「ノウマクサーマンダ バザラダン!」 「く、苦しい!心臓が・・・!」 このシーン。 あのあと病院に行ったら、『心臓弁膜症』って言われたのよねえ。 加齢とともになる人が多いらしいんだけど、 調べてもらったら、先天性な

    27分
  7. ボイスドラマ「恋は泡沫〜男雛のいない女雛に平安時代の歌会へ異世界召喚された結果」

    5月10日

    ボイスドラマ「恋は泡沫〜男雛のいない女雛に平安時代の歌会へ異世界召喚された結果」

    「恋は泡沫」は、愛知県高浜市の伝統と歴史、そして現代の若者の心を繋ぐファンタジーです。高浜市は、鬼瓦の産地として知られ、町のあちこちで雛人形や細工人形が見られる「人形のまち」としても有名です。そんな高浜市を舞台に、内気な高校生・ウミが、家に伝わる古典雛に秘められた千年の恋の物語に巻き込まれていきます。夢の中で響く和歌の声、蔵の奥で見つけた男雛、そして平安時代の宮中での歌会—。時を超えた魂の出会いが、ウミの心を揺さぶります。この物語を通じて、古の文化や和歌の美しさ、そして現代の若者の繊細な心情に触れていただければ幸いです。 この物語は高浜市オリジナルアニメ「いきびな」のスピンオフ〜前日譚です(CV:山崎るい) 【ストーリー】 [シーン1:ウミの夢の中1】 ◾️SE:遠くで波の音〜風の音〜笛のようなかすかな旋律 『人知れず こそ思ひ初(そ)めしか・・・』 「え・・」 ここはどこ? ・・・夢? ああ、ここ、私の夢だ。 『いつよりか 面影見えぬ 時もなき身ぞ』 なに? 和・・歌? きいたことない歌だし・・・ また夢を見た。 ここんとこ、毎晩同じ夢・・・。 私はウミ。 吉浜に住む、女子高生。JK。高校1年生。 3月のひな祭りが終わってから、ずうっとこの夢を見てる。 白い霧の中に響き渡る声。 和歌を読み、私に問いかける。 声の主が姿を見せることはない。 なんなの、いったい。 吉浜は人形のまち。 ひな人形や細工人形がまちのあちこちで見られる。 もちろん、うちの家にも。 うちは、桃の節句がとうに過ぎたいまも現在形。 一年中、家の中のどこかに雛壇が置いてある。 立春の日から桃の節句まではリビング。 それ以外は奥の間。 小さい頃からずっとそうだったから、ヘンだと思ったことはない。 友だちの家に行ったときは、どこにあるんだろって探したりしたけど。 それより疑問だったのは、男雛がいないこと。 うちでは、男雛を飾らないんだ。 小さい頃、一度おばあちゃんにきいたことがある。 「どうして男雛がいないの?」 おばあちゃんは優しい笑顔で、 ”女雛と男雛を並べると、よくないことが起きるんだよ” と言った。 そう言われても全然理解できなかった。 だって・・・ お友だちの家でも、お店のショーウィンドウでも、 女雛と男雛は仲良く並んでるんだもの。 だけど、なんだか怖くて、言い返せなかった。 家のなか、どこかに男雛はいるんだろうけど・・・ 探そうとも思わなかった。 [シーン2:ウミの夢の中2】 ◾️SE:遠くで波の音〜風の音〜笛のようなかすかな旋律 『人知れず こそ思ひ初(そ)めしか・・・』 まただ。 今日も夢を見ている。 『・・ いつよりか 面影見えぬ 時もなき身ぞ』 だれ? あなたは、だあれ? 「わらわは親王・・・」 え?答えた? 親王? 親王って? 「新(あらた)の鎧、とでも呼ぶがよい」 新の鎧? よけいわかんない。 「千年の時を越え、魂は、君を待ちわびて候ふ・・・」 だからわかんないってば。 (『人知れず こそ思ひ初(そ)めしか』) またいつもの和歌だ。 何度も繰り返すから覚えちゃった。 明日学校で調べてみようっと。 [シーン3:学校の図書館】 ◾️SE:図書館内のざわめき あった。 「人知れず こそ思ひ初めしか いつよりか 面影見えぬ 時もなき身ぞ」 読み人知らず? 人に知られないようにと思い始めた恋なのに。 いつからかあなたの面影が浮かばない時はなくなってしまった。 はぁ〜。 なんて切ない歌。 意味もなく、幼馴染のソラのことが、思い浮かんじゃった。 意味がない、わけじゃないけど・・ ソラは同級生。 家も同じ吉浜で、小学校も同じ吉浜小学校。 中学も同じで、不思議と毎年同じクラスだった。 部活は違ったけど、家が近いから帰り道も同じ。 合わせてるわけじゃないけど、いつも一緒に帰る。 合わせてる・・・んだけど。本当は。 [シーン4:家の蔵:物置】 ◾️SE:探し物をする雑音 見つけた。 母屋とは離れたところにある「蔵」。 うちは古い家だから、「蔵」なんてものがあるんだ。 昔の道具がしまってある奥の一角。 さらにその一番奥に置かれた大きな桐箪笥。 桐箪笥の一番下の引き出し。 それは桐の箱におさまっていた。 きれいな匂い紙に包まれた”男雛”。 埃がつもった和紙から取り出すと・・・ なんて美しい顔だち。 誰かに似てる気もするけど。 家の人が気づく前に、私は雛人形が飾ってある奥の間へ。 3月と同じように、美しく並べられたお雛様。 その一番上。 女雛の隣がぽっかりあいている。 いつも思ってた。 女雛、寂しそうだな。 少し震えながら 手に抱えた男雛を、ゆっくりと女雛の横に置く。 その瞬間。 部屋の中に風が吹き荒れ、真っ白な光に包まれた。 え〜っ!? うそ〜! [シーン5:平安時代の宮中:歌会始め】 ◾️SE:静かに流れる雅楽 ここは・・・ど、どこ? 晩春の穏やかな日差しが差し込む、宮中の庭園。​ 曲がりくねった遣水(やりみず)のほとり。 色とりどりの狩衣(かりぎぬ)や小袿(こうちき)を纏った歌人たちが、 優雅に座している。 な、な・・・なんで? 歌人たちの前には、香を焚いた硯と白い短冊。 風に揺れる梅の花が淡い香りを運んでくる。 金屏風の前、一段高い位置に座しているのは・・・ まるでお人形のような姫君。​ 年の頃わずか十歳ほどながら、その佇まいは宮中の気品を湛えていた。 高貴な身分であるのは一目でわかる。 ​艶やかな桜色の十二単を纏い、襲(かさね)の色目は、 春の霞を思わせる淡い色合い。 光の加減によって微妙に変化し、思わずみとれてしまう。​ 私、どうなったの? いま、どこにいるの? もともと、あまり感情を表に出す方じゃないから 取り乱したりはしなかったけど・・・ 気を落ち着かせて深呼吸。 ふう〜っ。 私の目は壇上の姫君に釘付けとなった。 姫君の黒髪は、肩を越えて背中まで滑らかに流れ、艶やかな光沢を放っている。 表情は年齢に似合わぬ落ち着きを見せ、周囲のざわめきにも動じていない。 薄く白粉(おしろい)を塗られ​た額。 小さく紅を差した唇。​ 彼女の視線は、常に一点を見つめている。 私? いや、違う。 私の右横、1人の青年に向けられていた。 下を向いて短冊に何か書いているから、顔がよく見えない。 着ているものは、狩衣(かりぎぬ)に烏帽子(えぼし)。 「文様」や「刺繍」が入っていないからきっと下級貴族ね。 私、万葉オタクで、平安時代フェチだから、よくわかる。 狩衣とは、万葉の時代のカジュアルな服装。 袖や脇が縫い合わされてないから、動きやすいのよね。 位が高い貴族だと文字を入れるんだけど。 烏帽子は細長い被り物。黒い色がよく似合ってるわ。 姫君は、視線を動かさないまま白い短冊に和歌を書く。 心の内に浮かぶ想いを和歌に託して書いているんだ。 やがて、書き終わった姫君は口を開く。 (※アニメ/ヒメのセリフから抜粋) 「しのぶれど 色に出でにけり わが恋は ものや思ふと 人の問ふまで」​ 周囲の歌人たちから感嘆の声があがる。 え? それって、平兼盛の歌じゃなかったっけ? 読み終わったあと、じっと見つめる姫君の視線の先。 隣の青年が顔を上げた。 ソ、ソラ!? 青年の顔は幼馴染のソラとうりふたつ。 っていうより、ソラそのものだった。 私が声をかけようとしたとき、 短冊を手にして、ソラの口が開いた。 『人知れず こそ思ひ初めしか・・・』 「ソラ!だめ〜っ!!」 思わず、声が出てしまった。 一斉に私の方を振り返る歌人たち。 姫君は・・・ 困惑と憤怒の表情で私を睨みつける。 憎しみに満ちた表情のまま壇上で立ち上がった。 その瞬間。 歌会は再び真っ白な光に包まれる。 ゆっくり光の霧が晴れていくと・・・ 目の前には見慣れた雛壇。 おうちだ・・・ いまの、一瞬の異世界召喚だったってこと? う・・・ うそみたい・・・ なんだったの、いったい・・・ はっ。 私は思わず雛壇の一番上から、男雛をつかむ。 女雛にキッと睨まれた気がした。 そのまま母屋を飛び出す。 門扉の向こう側、家の前は学校へつづく道。 塀越しに、道の向こうから部活帰りのソラが歩いてくる。 「ソラ!」 ソラがうちの前を通り過ぎたとき。 私は思わず、男雛を抱えたまま、家の外へ出る。 はぁ、はぁっ・・ 息を切らして駆けていく私。 不思議そうな顔で私を見つめるソラ。 ソラの視

    21分
  8. ボイスドラマ「最後の弁当、最初の産着〜特別養護老人ホームで働く母がアレルギーの息子にしたこと」

    3月27日

    ボイスドラマ「最後の弁当、最初の産着〜特別養護老人ホームで働く母がアレルギーの息子にしたこと」

    愛知県高浜市。 海と風に恵まれたこの町には、どこか懐かしさとぬくもりが残っています。『最後の弁当、最初の産着』は、そんな高浜を舞台にした、ある母子の物語です。 体の弱かった息子と、たったひとりで彼を育ててきた母。毎日手づくりされた弁当には、食べ物以上の「想い」が込められていました。編み物で包んだ愛情と、ことばでは言えなかった「ごめんね」「ありがとう」の気持ち。それらはすべて、小さなお弁当箱のなかに詰まっていたのかもしれません。 時代が変わっても、どんなに忙しくても、人の心を動かすのは、ささやかな日常と、積み重ねられた想いです。 Podcastでは音で、「小説家になろう」では文字で、この物語を、ぜひあなたの心で感じてみてください。 ■設定(ペルソナ)とプロット ・息子(18歳)CV:桑木栄美里=幼い頃から体が弱くアレルギー体質。小学校入学時からずうっと毎日作ってくれる母の弁当に育てられたといっても過言ではない ・母(39歳)CV:山崎るい=シングルマザーで働きながら息子を育てた。アレルギー体質になっている息子に対して責任を感じ、どんなに忙しいときも毎日弁当を作ってきた <序章/1998年3月> ■SE〜赤ちゃんの産声 初めて息子の産声を聞いたとき、私は感動で胸が震えた。 ”この子のためなら、私はどんなことでもしよう” 強く心に誓う。 そんな喜びも束の間。母乳を飲む息子に異変を感じた。 最初は皮膚に現れた湿疹。 それは乳児特有の症状だと思っていた。 ところが、気がつくと母乳を飲みながら、苦しそうに息をしている。 そう。これは・・・アレルギー反応。 母乳に含まれる特定のタンパク質に反応して起こっているらしい。 原因は、私が普段食べているもの。 私はシングルマザーだ。 父も母も日本にいない。 働いているのは、高浜の特別養護老人ホーム。 介護士として入所者のいろんなサポートをしている。 当然、仕事は不規則。 食事も朝昼晩、決まった時間になんてとれない。 ランチなんて食べる日の方が少ないくらい。 夜遅く家に帰ってきて食べるのは、決まってカップラーメン。 こんな食生活が、子供をアレルギーにしてしまったのかもしれない。 ”この子のためにできること” 私は、所長に相談して、介護職から生活相談員に変えてもらった。 今までのような夜勤や宿直もやめて、日勤だけに。 夜勤手当がなくなる分、生活は苦しくなるけど、仕方ない。 食生活だってもちろん変えた。 食事はすべて自炊。 食材もなるべく添加物の含まれていないものを選ぶ。 ポイントは、原材料欄のなるべく少ないもの。 そうすれば、意外と高いお金を払わなくてもいけるんだ。 ”この子のために” 生活を切り詰めても、この子に貧しい思いをさせるのはいや。 そうだ。 私、子供の頃から手先が器用で編み物が得意だったんだ。 着るものはもちろん、マフラー、手袋、靴下、ポシェットやブランケットまで。 なんでも、手編みでつくった。 『子供がアレルギーになるのは、母親の愛情が足りないから』 無神経なことを言う人も周りにはいたけれど、関係ない。 だって、愛情なら負けないもん。 使うのは安価なアクリル毛糸。 そうそう、百均の毛糸や編み針って、安いけど結構品質がいいんだよね。 <シーン1/2002年3月> 3年後。 息子の3歳の誕生日。 私は息子に、名前入りのキラキラしたセーターをプレゼントした。 「やったぁ!ママ大好き!」 ウールの毛糸はちょっと高かったけど、 息子の喜ぶ顔を見たら、そんな思いは吹っ飛んだ。 4月になって、保育園に行くようになると、 息子の身の回りはメイド・イン・ワタシのニットで溢れかえっていた。 先生からもらってくる連絡ノートにも、 『おかあさんの愛情あふれるニットに包まれて、息子さんは幸せですね』 なんて書かれていた。 よかった。編み物をして。 私は日勤の仕事になったけど、それでも仕事を終えて帰宅するのは夜7時。 それまでは延長保育で園に預かってもらう。 延長保育は有料だけど、働きながら子育てしてる私には助かる。 私、基本的に残業はしないけど、ときどき息子が一番最後だった。 それでも息子は笑顔で私のもとに駆けてくる。 なんか、私の最大の理解者って感じ。 先生も、延長保育の間、息子はいつもニコニコして絵本を読んでるって。 ありがたいなあ。 保育園に入る頃から息子のアレルギーも治ってきたようだ。 食生活の改善が効いてる? 下処理を工夫して作ってるんだから。 このまま、健康になって、元気に育ってほしいな・・・ <シーン2/2008年3月> 息子の9歳の誕生日。 早めに仕事を切り上げて、学童へ迎えに行くと、なんだか元気がない。 車の中でも無口だ。 アパートに帰り、朝仕込んでおいた料理を仕上げる。 息子の大好物、私の得意料理、とりめし。 少〜し豪華に、平飼いの地鶏のもも肉で。 だって誕生日だもの。 雑穀米を加えて、栄養価と食感をプラス。 うずらの卵、にんじん、しいたけなどを加えて、特別感を演出する。 全部オーガニックよ。 帰り道のケーキ屋で買ってきたスイーツは冷蔵庫へ。 ちょっと奮発してカップケーキ2つと、 息子が大好きな生パピヨンというスポンジケーキ。 今日は半分だけにして、残りは明日食べよう。 とりめしを食べ終わった息子に、可愛くラッピングしたプレゼントを手渡す。 息子は黙って受け取り、包みをあけた。 中から現れたのは、サッカー柄のニット帽とリストウォーマー。 私の手編み。自信作。 最近休み時間にいつもサッカーやってるって言ってたから。 喜んでくれていると思って、顔を覗き込むと・・・ 「こんなのいらない!」 息子はプレゼントを私に投げつける。 そのまま、自分の部屋に引きこもってしまった。 正確に言うと、簡易パネルで仕切った勉強スペースだけど。 少し時間をおいてから息子に話しかける。 「ごめんね。気に入らなかった?」 息子はうつむいたまま私に説明した。 『小学校高学年になって母親の編み物を身につけるなんてダサい』 友達からこう言われたそうだ。 「そっかぁ。そりゃそうだね。もう9歳だもんね。 ママ、考えが足りなかったね。ホントごめん」 そう言って私はアパートを出た。 その足でショッピングセンターへ向かう。 明日の晩御飯の食材、用意していなかったな。 なにしろ慌てて帰ったから。 そのあと既製品の帽子とリストウォーマーを買った。 息子が大好きなブルーとレッドのストライプ。 このくらいの出費は、ちょっと残業すれば大丈夫、大丈夫。 この日を境に、私が毛糸を買うことはなくなった。 編みかけだったものもすべて封印した。 問題ない。 ようし、明日からまたがんばろう。 息子のために。 <シーン3/2014年3月> 中学を卒業して高校へ入ると、息子は吹奏楽の部活を始めた。 なんでも、吹奏楽で有名な高校らしい。 2年生になったころ、しばらく朝練が続いた。 朝5時に家を出る。 私は4時起き。 いいのいいの。 早出で残業つけさせてもらえるから。 こんなときは息子だけじゃなく、私も体調管理には注意しないとね。 最近は弁当を残してくることが多くなった。 疲れてるんだろうな。 それに準レギュラーだって言ってたからストレスもあるだろうし。 それならば・・ 大好物のとりめしをおにぎりにして、鶏のガラスープを水筒へ。 味付けはあっさり目にしたから体にもいいのよ。 息子との会話はほとんどなくなっちゃったけど、 お弁当で話せるから問題ない。 息子の気持ちに合わせた、栄養バランスの良いメニューと、さりげないメッセージ。吹奏楽の大会の日は・・・ 無添加の豚肉に大根おろしとポン酢を添えて 『負けないで。君の音が、ちゃんと届きますように』 風邪気味で食欲がないときは・・・ 雑炊風のおかゆと無農薬の温野菜で 『無理しなくていい。ゆっくり回復しよう』 ひょっとして失恋したかもしれない日は・・ 授産所のみなさんが手作りで焼き上げたクッキー。 少〜しだけビターな、ぱりまるしょこらクランチね。 食物アレルギーの原因食品、特定原材料7品目が不使用なんだから。 メッセージはこう。 『サクッと次いこ!甘くてビターな心を癒して』 なんて感じ。 毎日大変だろうけど、がんばって。 <シーン3/2015年3月> 高校の卒業式は、息子の誕生日だ。 前日が最後のお弁当。 息子は東京

    20分

番組について

推しタカ(推し活!TAKAHAMA)が2024年4月からスタートしたボイスドラマです。愛知県高浜市を舞台にちょっとだけエモいボイスドラマです。毎月新作を公開していきます!(CV:桑木栄美里/山崎るい)