田舎駅のホームに置かれた、ひとつの古い木製ベンチ。大正の終わりから現代まで、百年の時を見つめ続けてきたそのベンチは、人々の出会いと別れ、季節の移ろい、戦争や平和の日々、母と娘の静かな朝を、何度も何度もその木肌に刻み込んできた。
ある春、母の姿がホームから消え、娘はひとりベンチに座り、母のハンカチと紙切れを隙間に託す。やがて少女も成長し、駅は変わっていく。
けれどベンチは、移りゆく時代のなかで消えゆく記憶と確かに向き合いながら、今日も静かに新しい朝と人々を迎える。ベンチの木目に刻まれた百年の物語は、今を生きる誰かのそばにも、そっと続いていく。
Information
- Show
- FrequencyUpdated Semiweekly
- PublishedAugust 11, 2025 at 8:00 AM UTC
- Length4 min
- Season1
- Episode11
- RatingClean