岡大徳のポッドキャスト

岡大徳

病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。 www.daitoku0110.news

  1. 8時間前

    在宅自己注射にバイオ後続品2剤の追加案|中医協第650回を解説

    令和8年5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、バイオ後続品2剤を在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に追加する案が示されました。この追加の可否は、患者が自宅で注射を続けられるかどうかと、医療機関が診療報酬を算定できるかどうかを左右します。本号では、追加案の根拠と、医療機関が押さえるべき実務上の留意点を解説します。 追加案の内容は、オマリズマブBS皮下注「CT」とゴリムマブBS皮下注50mgシリンジ「F」の2剤を、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に加えるというものです。第一に、先行品が対象となっているバイオ後続品は、運用基準により品目ごとに中医協で審議される仕組みになっています。第二に、オマリズマブBS「CT」は、効能効果や用法・用量等が先行品ゾレアと同等と評価されました。第三に、ゴリムマブBS「F」は、効能効果が関節リウマチのみですが、効能効果や用法・用量等が先行品シンポニーと同等と評価されました。 1. バイオ後続品は品目ごとに中医協で審議される バイオ後続品の在宅自己注射の対象追加は、先行品が対象であっても自動的には認められません。中医協の運用基準が、先行品が対象となっているバイオ後続品について「当分の間、個別品目毎に中医協において審議する」と定めているためです。 この運用基準は、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤を決めるためのルールです。運用基準は平成28年8月24日に中医協総会で承認され、令和5年8月23日に改正案が承認されました。在宅自己注射指導管理料(C101)とは、患者が自宅で自分に注射できるよう医師が指導・管理した場合に算定する診療報酬です。 運用基準は、対象薬剤に対して、頻回投与または発作時の緊急投与が必要な注射剤であることを前提に、主に3つの要件を求めています。1つ目は、関連学会のガイドライン等で在宅自己注射の診療上の必要性が確認されていることです。2つ目は、維持期の投与間隔が概ね4週間以内であることです。3つ目は、学会から追加の要望書が提出されていることです。 先行品が対象となっているバイオ後続品は、先行品との比較等を踏まえて審議されます。バイオ後続品(バイオシミラー)とは、すでに承認されたバイオ医薬品(先行バイオ医薬品)と同等・同質の品質、有効性、安全性をもつとして承認された医薬品です。今回の2剤は、いずれも先行品がすでに在宅自己注射の対象となっています。そのため、今回の資料では「先行品との比較」「バイオ後続品の治験成績」「先行品の市販後の安全性」の3点が示されました。 2. オマリズマブBS「CT」は先行品ゾレアと同等と評価された オマリズマブBS「CT」は、効能効果、用法・用量、主な副作用のすべてが先行品ゾレアと同じです。資料は、この同等性に加え、先行品の使用状況等にも特段の問題はないと考えられることから、対象薬剤への追加を提案しています。 オマリズマブBS「CT」は、令和8年3月に薬事承認されたヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体製剤です。製品は、75mgと150mgのシリンジ製剤とペン製剤の計4品目です。効能効果は、先行品と同じく、難治の気管支喘息、重症または最重症の季節性アレルギー性鼻炎、特発性の慢性蕁麻疹の3つです。先行品ゾレアは、平成21年に薬事承認され、令和3年に在宅自己注射の対象に追加されています。 オマリズマブ製剤は、季節性アレルギー性鼻炎への使用が、保険医が投与できる注射薬の範囲から除かれています。厚生労働大臣が定める注射薬の告示では、「オマリズマブ製剤(季節性アレルギー性鼻炎の治療のために使用する場合を除く。)」と規定されています。したがって、効能効果が3つあっても、現行の告示上、在宅自己注射として投与できるのは季節性アレルギー性鼻炎以外の用途に限られます。 オマリズマブBS「CT」の治験では、先行品との臨床的同等性が確認されました。治験は、ヒスタミンH1受容体拮抗薬の治療下でも症状のある特発性の慢性蕁麻疹患者を対象とした海外第Ⅲ相試験です。主要評価項目は、300mg投与時の投与12週後におけるISS7(7日間のかゆみの重症度スコア)のベースラインからの変化量です。この評価で、95%信頼区間は事前に規定した同等性許容域(-2.0~2.0)の範囲内でした。24週まで本剤300mgを継続投与した群の副作用発現割合は8.4%(17/203例)でした。先行品300mgから本剤300mgへ切り替えた群の副作用発現割合は12.5%(12/96例)でした。主な副作用は両群とも注射部位反応で、それぞれ4例(2.0%)、6例(6.3%)でした。 先行品ゾレアの市販後調査では、添付文書の記載変更を要するような問題は見つかっていません。安全性解析対象46例の特定使用成績調査では、副作用発現割合は2.2%(1/46例)でした。この割合は承認時の臨床試験の1.2%(2/161例)を上回りましたが、副作用は添付文書で注意喚起済みの非重篤な注射部位疼痛1例のみでした。特定使用成績調査Ⅰでは、副作用発現割合は10.2%(13/127例)でした。この割合は、日本人のアレルギー性喘息患児を対象とした承認時の臨床試験の26.3%(10/38例)より高くありませんでした。投与量換算表の変更後の用法・用量を対象とした特定使用成績調査Ⅱでは、副作用発現割合は6.6%(26/392例)でした。この割合は、変更前の用法・用量で投与した気管支喘息患者の調査結果(8.1%、292/3,620例)より高くありませんでした。 オマリズマブBS「CT」の追加は、2つの学会から要望されています。日本アレルギー学会は2026年(令和8年)3月16日に、日本小児アレルギー学会は同年3月26日に要望書を提出しました。両学会は、就労・就学中の世代の患者にとって通院の時間的制約や身体的・経済的負担が大きい点を、要望の理由に挙げています。 3. ゴリムマブBS「F」は先行品シンポニーと同等と評価された ゴリムマブBS「F」は、関節リウマチに対する効能効果、用法・用量、主な副作用が先行品シンポニーと同じです。資料は、この同等性に加え、先行品の使用状況等にも特段の問題はないと考えられることから、対象薬剤への追加を提案しています。 ゴリムマブBS「F」は、令和7年9月に薬事承認されたヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体製剤です。製品は、50mgシリンジ製剤の1品目です。効能効果は、既存治療で効果不十分な関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止を含む)のみです。先行品シンポニーがもつ潰瘍性大腸炎の効能効果は、ゴリムマブBS「F」にはありません。先行品シンポニーは、平成23年に薬事承認され、平成30年に在宅自己注射の対象に追加されています。 ゴリムマブBS「F」の治験では、先行品との有効性の同等性が検証されました。治験は、メトトレキサートを併用する中等度から重度の関節リウマチ患者を対象とした国際共同第Ⅲ相試験です。主要評価項目である第16週までの疾患活動性スコア(DAS28-CRP)の変化量は、先行品との最小二乗平均値の差の95%信頼区間が、事前に規定した同等性許容域(-0.6~0.6)の範囲内でした。投与開始から本剤を投与した群の副作用発現割合は12.4%(31/251例)でした。主な副作用は、AST増加5例(2.0%)とALT増加4例(1.6%)でした。16週以降に先行品から本剤へ切り替えた群の副作用発現割合は10.7%(12/112例)でした。主な副作用は、AST増加2例(1.8%)とALT増加2例(1.8%)でした。 先行品シンポニーの市販後調査では、長期投与における新たな安全性上の問題は認められていません。使用成績調査では、副作用発現割合は15.0%(772/5,137例)でした。この割合は、承認時の国内臨床試験の77.3%(449/581例)を上回りませんでした。長期使用に関する特定使用成績調査Ⅰでは、副作用発現割合は31.9%(107/335例)で使用成績調査より高めでしたが、承認時の77.3%は上回りませんでした。悪性腫瘍と重篤な感染症を対象とした特定使用成績調査Ⅱ(観察期間5年間)では、これらの副作用発現割合の明らかな増加は認められませんでした。ただし、承認時の臨床試験とは患者背景や観察期間が異なるため、直接の比較は困難とされています。 ゴリムマブBS「F」の追加は、日本リウマチ学会から要望されています。日本リウマチ学会は、令和7年8月22日に要望書を提出しました。学会は、関節リウマチの治療が長期に及び、患者の多くが労働者世代である点を、要望の理由に挙げています。 4. 対象に追加されて

    在宅自己注射にバイオ後続品2剤の追加案|中医協第650回を解説
  2. 1日前

    在宅自己注射の対象に2剤追加案 ハイキュービアとトレムフィアを解説

    令和8年5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、在宅自己注射の対象薬剤を追加する案が示されました。この追加案が了承されると、対象薬剤の処方箋の交付や在宅自己注射指導管理料の算定が可能になるため、医療機関は対象薬剤と算定できる加算を把握しておく必要があります。本号では、追加案の根拠となる仕組みと、追加が提案された2剤の内容を整理します。 追加案の結論は、ハイキュービアとグセルクマブ(トレムフィア)の2剤を、保険医が投与できる注射薬と在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に加えるというものです。追加の提案は、中医協が定めた「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤に係る運用基準」と学会からの要望書等を踏まえたものです。ハイキュービアは皮下注射の免疫グロブリン製剤で、必要な加算として注入器用注射針加算と注入ポンプ加算が示されています。グセルクマブは潰瘍性大腸炎とクローン病の治療薬で、必要な在宅療養指導管理材料加算は「なし」とされています。 追加案の前提となる2つのリストと運用基準 今回の追加案は、注射薬に関する2つのリストに薬剤を加える提案です。2つのリストとは、「保険医が投与することができる注射薬」と「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤」です。この2つのリストへの追加は、中医協が承認した運用基準に沿って判断されます。 「保険医が投与することができる注射薬」は、処方箋を交付することができる注射薬のリストでもあります。保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)第20条第2号トは、注射薬の投与を厚生労働大臣が定めるものに限っています。この厚生労働大臣が定める注射薬は、「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」の第十の一に列挙されています。保険診療で患者に注射薬を投与できるのは、このリストに載っている薬剤に限られます。 「在宅自己注射指導管理料の対象薬剤」は、患者が自宅で自己注射を行う際に指導管理料を算定できる注射薬のリストです。このリストは、特掲診療料の施設基準等の別表第九に掲げられています。在宅療養指導管理材料加算も、別表ごとに対象薬剤が決まっています。たとえば、注入器加算の対象は別表第九の一の三、注入ポンプ加算の対象は別表第九の一の五に定められています。 運用基準は、対象薬剤に追加できる薬剤の要件を定めたルールです。運用基準は平成28年8月24日に中医協で承認され、令和5年8月23日に改正案が承認されました。対象となる薬剤は、補充療法等の頻回投与または発作時の緊急投与が必要で、剤形が注射によるものでなければならない薬剤です。そのうえで、次の3つの要件をすべて満たす必要があります。 * 関連学会等のガイドライン等で、在宅自己注射の診療上の必要性が確認されていること * 医薬品医療機器法上の用法・用量として、維持期の投与間隔がおおむね4週間以内であること * 上記を踏まえ、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤への追加の要望があること 学会の要望書には、5つの事項の記載が求められます。5つの事項とは、自己注射の安全性の確認、対象患者の要件、使用上の具体的な留意点、頻回投与や長期治療が必要になる理由、在宅療養指導管理材料加算を要望する場合の加算の名称と理由です。さらに、発作時の緊急投与にも補充療法にも使わない薬剤は、要望書を提出した学会以外の学会の意見を確認する等、診療上の必要性を十分に確認することが求められます。 運用基準は、対象薬剤に追加する時期も定めています。14日未満の間隔で注射する薬剤は、要件を満たせば原則として薬価収載の時期にあわせて追加を検討します。14日以上の間隔で注射する薬剤は、14日を超える投薬が可能な場合で要件を満たすときに、原則として薬価収載の時期にあわせて追加を検討します。14日を超える投薬が条件となるのは、新医薬品の投薬期間が、原則として薬価収載月の翌月初日から1年間は14日に制限されるためです。 在宅自己注射を導入する医療機関は、厚生労働省の通知(保医発第0427002号)が示す4つの留意事項を守る必要があります。1つ目は、対象疾患の診療を日常的に行っており、十分な経験をもつ医師が指導管理を行うことです。2つ目は、導入前に入院、または週2回もしくは3回以上の外来・往診・訪問診療で十分な教育期間をとることです。3つ目は、かかりつけ医と異なる医師が指導管理する場合に、緊急時の対応などでかかりつけ医と連携することです。4つ目は、廃棄物の適切な処理方法もあわせて指導することです。 追加薬剤1:ハイキュービア(皮下注射の免疫グロブリン製剤) 1剤目のハイキュービアは、免疫グロブリンを皮下に投与する薬剤です。追加案では、必要な加算として注入器用注射針加算と注入ポンプ加算が示されています。追加の背景には、4学会による3通の要望書があります。 ハイキュービアの成分は、pH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)とボルヒアルロニダーゼ アルファ(遺伝子組換え)です。販売名は「ハイキュービア10%皮下注セット」で、5g/50mL、10g/100mL、20g/200mLの3規格があります。ハイキュービアは令和6年12月に薬事承認され、2025年(令和7年)6月にCIDP・MMNの効能が追加されました。効能・効果は、次の2つです。 * 無又は低ガンマグロブリン血症 * 慢性炎症性脱髄性多発根神経炎(CIDP)及び多巣性運動ニューロパチー(MMN)の運動機能低下の進行抑制(筋力低下の改善が認められた場合) ハイキュービアの投与は、2つの成分を順に皮下注射する点が特徴です。まず、ボルヒアルロニダーゼ アルファを皮下投与します。次に、約10分以内に同じ部位へ人免疫グロブリンGを皮下投与します。ボルヒアルロニダーゼ アルファは、結合組織のヒアルロン酸を脱重合(分解)して、皮下組織の浸透性を高めます。この作用によって、人免疫グロブリンGの拡散・吸収が促進されます。 ハイキュービアの投与間隔は、3週間に1回または4週間に1回です。投与は、規定用量の1/3または1/4から開始し、投与量にあわせて投与間隔を延ばしながら漸増します。無又は低ガンマグロブリン血症では、人免疫グロブリンGとして通常150〜600mg/kg体重を3週間に1回、または200〜800mg/kg体重を4週間に1回投与します。CIDP・MMNでは、成人に人免疫グロブリンGとして1.0g/kg体重を3週間に1回投与するのが基本です。CIDP・MMNでは、1回量と忍容性に応じて、48〜72時間の間隔で分割投与することもできます。 ハイキュービアの追加は、4つの学会が3通の要望書で要望しました。3通の要望書とは、日本小児感染症学会、日本神経学会・日本末梢神経学会(連名)、日本免疫不全・自己炎症学会の要望書です。要望書が挙げる理由は、通院負担と感染リスクの軽減です。原発性免疫不全症候群(PID)やCIDP・MMNの患者は、生涯にわたり疾患と付き合う必要があり、長期にわたって免疫グロブリン療法を続けます。月1回以上の通院は、感染リスクのある患者や四肢の筋力低下がある患者にとって、治療継続の妨げになります。安全性については、要望書によると、国内外の臨床試験で3週間に1回または4週間に1回の自己注射が実施され、明らかな安全性上の懸念は認められませんでした。 ハイキュービアで必要な加算は、注入器用注射針加算と注入ポンプ加算です。注入ポンプ加算が必要な理由は、投与速度を調節できるシリンジポンプを使うためです。この扱いは、同じpH4処理酸性人免疫グロブリン(皮下注射)を含むハイゼントラやキュービトルと同様です。なお、日本小児感染症学会と日本免疫不全・自己炎症学会は、注入ポンプ加算の算定回数を現行の「2月に2回」から「3月に3回」へ広げるよう要望しています。今回の追加案の資料には、この算定回数の変更は記載されていません。 ハイキュービアの主な副作用は、アナフィラキシーショックと無菌性髄膜炎症候群などです。自宅で投与する患者には、これらの副作用への対処法を事前に指導しておく必要があります。 追加薬剤2:グセルクマブ(潰瘍性大腸炎・クローン病) 2剤目のグセルクマブは、潰瘍性大腸炎とクローン病に使う皮下注射の製剤です。追加案では、必要な在宅療養指導管理材料加算は「なし」とされています。追加の背景には、消

    在宅自己注射の対象に2剤追加案 ハイキュービアとトレムフィアを解説
  3. 2日前

    DPC高額薬剤判定|第650回中医協で13成分を出来高算定へ

    令和8年5月13日、中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)は「DPCにおける高額な新規の医薬品等への対応について」を議題としました。新規に薬価収載された医薬品等はDPC/PDPSの診療報酬点数表に反映されていないため、高額な薬剤を包括評価のまま使うと、医療機関の持ち出しが生じるおそれがあります。本稿では、今回示された判定の仕組み、対象となる医薬品等、診断群分類への反映案を解説します。 今回の議題では、13成分を出来高算定の対象とし、1成分を診断群分類の分岐に反映する案が示されました。判定の基準は、1入院あたりの標準的な薬剤費が、包括範囲薬剤費の84パーセンタイル値を超えるかどうかです。出来高算定の対象案は、効能・効果などの一部変更(一変)8成分と新薬5成分の計13成分です。新薬のインレビックカプセルは、類似薬モメロチニブ塩酸塩と同じ診断群分類の分岐に反映する案が示されました。 ※本稿の「13成分」「8成分」「5成分」は、資料の一覧を成分名単位で数えた件数です。資料自体に件数の記載はありません。また、規格ごと(例:アイリーアの注射液とキット)に数えると件数は多くなります。 高額薬剤判定は、点数表に未反映の新薬を出来高で評価する仕組み 高額薬剤判定とは、新たに保険適用された高額な医薬品等を使った患者を、DPCの包括評価から外す仕組みです。判定は、対象医薬品と診断群分類の抽出、1入院あたり薬剤費の算出、84パーセンタイル値との比較という3段階で進みます。 高額薬剤判定が必要なのは、新薬の費用がDPCの包括点数に含まれていないためです。 DPC/PDPSは、診断群分類ごとに1日あたりの点数を定める包括払いの制度です。この包括点数は、過去の診療実績データをもとに設定されます。そのため、実績データのない新薬の費用は、包括点数に含まれていません。高額な新薬の費用を医療機関が負担し続けると、新しい医療技術の導入が妨げられます。そこで、一定の基準に該当する医薬品等を使った患者は、次期診療報酬改定までの間、包括評価の対象外とし、出来高算定とされています。 判定の第1段階では、対象となる医薬品と、それを使う可能性のある診断群分類を抽出します。 対象となる医薬品は、新薬、効能・効果や用法・用量の一部変更(一変)を受けた医薬品、事前評価済公知申請の医薬品の3種類です。これらの医薬品ごとに、効能・効果から使用の可能性がある診断群分類(14桁コード)を抽出します。 判定の第2段階では、「仮想投与回数」から1入院あたりの標準的費用を算出します。 仮想投与回数とは、入院初日から退院まで、添付文書の用法・用量どおりに投与した場合の投与回数です。資料では、仮想投与回数と1回投与あたりの標準的な費用をもとに、平均在院日数を加味した1入院あたりの標準的費用を示しています。併用する医薬品がある場合は、その費用も標準的費用に含まれます。 判定の第3段階では、1入院あたりの標準的費用を84パーセンタイル値と比較します。 84パーセンタイル値とは、当該診断群分類の1入院あたり包括範囲薬剤費を低い順に並べたとき、下から84%の位置にある値です。前年度に使用実績のない医薬品の場合は、当該医薬品を使っていない症例の薬剤費から84パーセンタイル値を求めます。標準的費用がこの値を超えると、その医薬品は高額薬剤に指定されます。比較は診断群分類ごとにおこなうため、同じ医薬品でも、出来高算定となる診断群分類とならない診断群分類が生じます。 高額薬剤判定の作業は、新薬の薬価収載にあわせて年4回実施されます。 緊急に薬価収載された新薬については、必要に応じて追加の判定がおこなわれます。判定の結果は、包括評価の対象外とする薬剤と診断群分類を定める「高額薬剤告示」に追加されます。 出来高算定の対象案は、一変8成分と新薬5成分の計13成分 今回の判定で基準に該当し、出来高算定の対象とする案が示されたのは、一変8成分と新薬5成分の計13成分です。判定の範囲は、令和8年3月23日に効能・効果と用法・用量が追加された医薬品、令和8年3月5日に公知申請が受理された医薬品、令和8年5月20日に薬価収載予定の医薬品等です。案では、これらを使った患者のうち、医薬品ごとに指定された診断群分類に該当する患者が、次期診療報酬改定まで出来高算定となります。 一変8成分のうち5成分は、がん領域の医薬品です。 エンハーツ点滴静注用100mgは、HER2陽性の進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る)が対象です。ニュベクオ錠300mgは、アンドロゲン受容体陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌が対象です。ターゼナカプセルは、遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌が対象です。ルンスミオ皮下注は、再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫と、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫が対象です。ポライビー点滴静注用は、大細胞型B細胞リンパ腫と、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫が対象です。 一変8成分の残り3成分は、がん以外の領域の医薬品です。 アイリーア8mgは、網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫が対象です。デュピクセント皮下注は、中等症から重症の水疱性類天疱瘡が対象です。フィブリノゲンHT静注用1g「JB」は、心臓血管外科手術における出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症に対するフィブリノゲンの補充が対象です。 新薬5成分のうち2成分は、1回あたり5,000万円を超える、細胞を脳内に移植する製品です。 アクーゴ脳内移植用注は、ヒト(同種)骨髄由来間葉系幹細胞を移植し、外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善に使う製品です。アムシェプリは、非自己iPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞を移植し、パーキンソン病患者の運動症状の改善に使う製品です。残る3成分は、ソホノスカプセル(進行性骨化性線維異形成症)、ドジョルビ内用液(長鎖脂肪酸代謝異常症)、インレビックカプセル(骨髄線維症)です。 13成分の概要は、以下のとおりです。 【一変】 * エンハーツ点滴静注用100mg * 効能・効果:HER2陽性の進行・再発の固形癌(標準的な治療が困難な場合に限る) * 1回投与あたりの標準的な費用:胃癌770,608円/胃癌以外577,956円 * 対象の診断群分類:脳腫瘍、頭頸部悪性腫瘍、消化器の悪性腫瘍など(令和6年度37分類、令和8年度36分類) * ニュベクオ錠300mg * 効能・効果:アンドロゲン受容体陽性の根治切除不能な進行・再発の唾液腺癌 * 1回投与あたりの標準的な費用:4,107.8円(別途併用薬) * 対象の診断群分類:03001x 頭頸部悪性腫瘍 * ターゼナカプセル0.1mg/0.25mg * 効能・効果:遠隔転移を有する去勢抵抗性前立腺癌 * 1回投与あたりの標準的な費用:19,152.0円(別途併用薬) * 対象の診断群分類:110080 前立腺の悪性腫瘍 * ルンスミオ皮下注5mg/45mg * 効能・効果:再発又は難治性の大細胞型B細胞リンパ腫、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫 * 1回投与あたりの標準的な費用:初回266,843円/2回目以降2,327,787円(別途併用薬) * 対象の診断群分類:130030 非ホジキンリンパ腫 * ポライビー点滴静注用30mg/140mg * 効能・効果:大細胞型B細胞リンパ腫、再発又は難治性の濾胞性リンパ腫 * 1回投与あたりの標準的な費用:762,003円(別途併用薬) * 対象の診断群分類:130030 非ホジキンリンパ腫 * アイリーア8mg硝子体内注射液/注射用キット * 効能・効果:網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫 * 1回投与あたりの標準的な費用:146,272円 * 対象の診断群分類:020210 網膜血管閉塞症 * デュピクセント皮下注300mgシリンジ/ペン * 効能・効果:中等症から重症の水疱性類天疱瘡 * 1回投与あたりの標準的な費用:初回106,986円/2回目以降53,493円 * 対象の診断群分類:080110 水疱症 * フィブリノゲンHT静注用1g「JB」 * 効能・効果:心臓血管外科手術における出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症に対するフィブリノゲンの補充 * 1回投与あたりの標準的な費用:282,231円 * 対象の診断群分類:全診断群分類 【新薬】 * ソホノスカプセル(5規格) * 効能・効果:進行性骨化性線維異形成症 * 1回投与あたりの標準的な費用:190,381.3円 * 対象の診断群分類:070090 筋炎(感染性を含む。) * ドジョルビ内用液100% * 効能・効果:長鎖脂肪酸代謝異常症 * 1回投与あたりの標準的な費用:734,770.0円 * 対象の診断群分類:100335 代謝障害(その他) * インレビックカプセル10

    DPC高額薬剤判定|第650回中医協で13成分を出来高算定へ
  4. 3日前

    ブリィビアクト薬価4.3%引き下げ|費用対効果評価の結果を解説

    2026年(令和8年)5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、抗てんかん薬「ブリィビアクト錠」の費用対効果評価結果に基づく価格調整が示されました。費用対効果評価による薬価の見直しは、計算式や専門用語が多く、公表資料だけでは内容をつかみにくい制度です。本号では、ブリィビアクトの価格調整について、結果、仕組み、根拠の3点を順に解説します。 ブリィビアクトの薬価は、2026年8月1日から約4.3%引き下げられます。価格調整の結果として、25mg錠は373.30円から357.30円に、50mg錠は609.30円から583.20円に下がります。価格調整の仕組みとして、ICERが1,000万円/QALY以上の区分とされたため、有用性加算部分に最も低い価格調整係数0.1が適用されました。価格調整の根拠は、公的分析が主に4つの論点で企業の分析を再分析し、専門組織がその結果を妥当と判断したことです。 価格調整の結果:2規格とも約4.3%の引き下げ ブリィビアクトの価格調整では、25mg錠と50mg錠の2規格がそろって約4.3%引き下げられます。新しい薬価の適用は2026年8月1日からです。 新しい薬価は、次のとおりです。 * 25mg 1錠:373.30円 → 357.30円(16.00円、約4.3%の引き下げ) * 50mg 1錠:609.30円 → 583.20円(26.10円、約4.3%の引き下げ) ※引き下げ額と引き下げ率は、資料の数値から筆者が計算したものです。 新薬価の適用日は、今回の総会から約2か月半後の2026年8月1日に設定されました。この猶予期間は、医療機関の在庫への影響などを踏まえて設けられたものです。医療機関や薬局は、8月1日の切り替えに向けて、在庫量や薬価マスタの更新時期を確認しておくとよいでしょう。 ブリィビアクトは、2024年8月7日の中医協総会で費用対効果評価の対象に指定された品目です。ブリィビアクトの効能・効果は、てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)です。ブリィビアクトの評価区分は「H1」で、ピーク時の市場規模予測が100億円以上(178億円)の品目に当たります。ブリィビアクトの費用対効果評価結果は、2026年4月8日の中医協総会ですでに承認されています。今回の総会では、この承認済みの評価結果を薬価に反映する具体的な価格が示されました。なお、2026年5月13日時点の評価終了品目一覧には、ブリィビアクトを含めて55品目が掲載されています。 価格調整の仕組み:有用性加算部分の9割を削る算式 ブリィビアクトの価格調整は、ICERの区分に応じた価格調整係数を、薬価のうち有用性加算部分だけに掛ける仕組みで行われました。ICERが1,000万円/QALY以上の区分に入ったため、係数は最低の0.1となりました。 ICERとは、新しい薬が既存の治療と比べて、健康上の効果を1単位増やすために追加でいくらかかるかを示す指標です。ICERの「健康上の効果」には、QALY(質調整生存年)という単位が使われます。QALYは、生存期間に生活の質(QOL値:完全な健康を1、死亡を0とする数値)を掛け合わせた値です。ICERが高いほど、薬の価格に比べて得られる効果が小さい、つまり費用対効果が悪いことを意味します。 有用性系加算等の価格調整係数(β)は、資料の図ではICERの区分ごとに4段階で示されています。ICERが200万〜500万円/QALYの区分では係数1.0で、有用性加算部分は引き下げられません。ICERが500万〜750万円の区分では係数0.7、750万〜1,000万円の区分では係数0.4、1,000万円以上の区分では係数0.1となります。ブリィビアクトのICERは1,000万円/QALY以上の区分とされたため、係数0.1が適用されました。なお、評価終了品目一覧には、評価の結果、価格が引き上げられた品目(例:レケンビ)や変更なしとなった品目も含まれています。 価格調整後の薬価は、次の算式で求められます。 価格調整後の薬価 = 価格調整前の薬価 - 有用性加算部分 ×(1 - β) この算式で調整の対象となるのは、薬価全体ではなく有用性加算部分だけです。ブリィビアクトは、薬価収載時に類似薬効比較方式(Ⅰ)で算定され、有用性系加算(加算率5%)が適用されていました。係数0.1を当てはめると、有用性加算部分の90%が薬価から差し引かれます。25mg錠の場合、有用性加算部分は約17.78円と逆算でき、その90%に当たる16.00円が引き下げ額となります(逆算は筆者による試算です)。 価格調整に用いられた対象集団は、「併用療法による治療を受ける患者」のみで、その患者割合は100%とされました。費用対効果評価の分析枠組みでは、「単剤療法による治療を受ける患者」も分析対象集団に含まれていました。しかし、単剤療法の集団は、公的分析で「分析不能」という結果になりました。企業は、単剤療法の試験を計画中であることを理由に、この集団の評価を中断するよう求めています。この中断の要望の扱いについて、今回の資料には結論が記載されていません。 評価の根拠:公的分析による4つの論点の再分析 ブリィビアクトのICERが1,000万円/QALY以上の区分とされた根拠は、公的分析が主に4つの論点で企業の分析を再分析し、専門組織がその結果を妥当と判断したことです。4つの論点は、追加的有用性、維持治療の継続率、後治療、QOL値です。 費用対効果評価の流れを確認しておきます。費用対効果評価では、まず製造販売業者(企業)が分析を行います。次に、公的な立場の分析(公的分析)が企業分析を検証し、必要に応じて再分析します。最後に、費用対効果評価専門組織が両者の結果を検討し、評価案をまとめます。ブリィビアクトの併用療法の集団では、比較対照技術(比べる相手)は「レベチラセタム+薬物療法」とされました。レベチラセタムは、ブリィビアクトと同じ薬理作用を持つ既存の抗てんかん薬です。 1つ目の論点である追加的有用性について、公的分析は「発作抑制について、レベチラセタムに対する追加的有用性は示されていない」と判断しました。ネットワークメタアナリシスでは、完全発作消失率のオッズ比が1.208(95%信頼区間0.457〜3.194)でした。一方、50%レスポンダー達成率のオッズ比は0.787(同0.554〜1.118)でした。2つの指標が相反する結果となり、信頼区間の幅も広かったため、公的分析は発作抑制に関するアウトカムにオッズ比1.000を適用して分析しました。 2つ目の論点である維持治療の継続率について、公的分析は企業の推計方法を修正しました。企業は、ブリィビアクトにはランダム化比較試験(RCT)のデータを、レベチラセタムにはレセプトデータベースを用いた観察研究のデータを用いていました。公的分析は、研究デザインが大きく異なるデータを単純に比べることには課題があると指摘しました。そこで公的分析は、レベチラセタムの維持治療中断率に「有害事象による治療中断」のオッズ比0.678を掛けて、ブリィビアクトの継続率を推計し直しました。 3つ目の論点である後治療について、公的分析は企業が設定した「費用0・QOL値0」を修正しました。後治療とは、ブリィビアクトやレベチラセタムを中止した後の、他剤による多剤併用療法、迷走神経刺激療法、外科手術などによる治療を指します。企業は、後治療の費用とQOL値をともに0と設定していました。しかし、費用とQOL値が0になる状態は「死亡」と同じ扱いを意味します。公的分析は、後治療の患者は生存していることから、近い健康状態である「非レスポンダー」の費用とQOL値を当てはめて再分析しました。 4つ目の論点であるQOL値について、公的分析は企業が用いた韓国のビニエット法のデータを、臨床試験で患者本人から得たデータに置き換えました。ビニエット法とは、文章で描写した健康状態を一般の人に想像させ、QOL値を評価する手法です。企業が用いたデータ(Kang 2014)は、発作時に「意識消失、転倒、記憶障害」が必ず起こり、月10回以上発作が生じる重い状態を想定していました。公的分析は、ブリィビアクトの臨床試験(N01252、N01253、N01254試験)で患者本人から得たQOL値を用いて再分析しました。 企業は専門組織の判断に不服意見を出しましたが、専門組織は公的分析の結果が妥当であると結論づけました。企業の主な主張は、有用性加算の根拠である「治療方法の改善(利便性)」がICERに反映されない点や、後治療を考慮しなかった前例(ビンゼレックス)がある点などです。専門組織は、ビンゼレックスの措置は評価対象と比較対照の後治療への移行確率が同等だっ

    ブリィビアクト薬価4.3%引き下げ|費用対効果評価の結果を解説
  5. 4日前

    再生医療等製品2品目に最適使用推進GL|中医協第650回の要点

    2026年(令和8年)5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、再生医療等製品2品目の最適使用推進ガイドライン(以下、GL)が報告されました。GLの要件は保険適用上の留意事項にも反映されるため、医療機関は要件を正確に把握する必要があります。本稿では、対象2品目の概要、使用の要件、診療報酬明細書(レセプト)への記載事項を順に整理します。 両品目は、GLの要件を満たす施設・医師・患者に限って、保険診療で使用できます。対象は、外傷性脳損傷後の運動麻痺に用いる「アクーゴ脳内移植用注」と、パーキンソン病の運動症状に用いる「アムシェプリ」です。使用には、医療施設、治療の責任者、投与対象となる患者の3要件をすべて満たす必要があります。この3要件への該当性は、2026年5月20日からレセプトの摘要欄への記載が求められています。 対象は脳に細胞を移植する再生医療等製品2品目 今回の対象は、定位脳手術で脳に細胞を移植する再生医療等製品2品目です。定位脳手術とは、頭蓋骨に開けた小さな孔から、画像で決めた脳内の目標点へ器具を正確に進める手術です。両品目とも臨床試験成績が限られているため、「条件及び期限付承認」を受けています。この承認は、期限内に有効性と安全性を改めて検証することを条件とした承認です。 最適使用推進GLは、革新的な医薬品等を、真に必要な患者に、適切な施設で使うための指針です。この仕組みは、2017年(平成29年)9月13日に中医協で取扱いが了承されました。GLは承認審査と並行して作成され、保険適用までに保険適用上の留意事項とともに通知されます。今回のGLは、医薬品医療機器総合機構(PMDA)と関係学会の協力で作成されました。 アクーゴ脳内移植用注(一般的名称:バンデフィテムセル、製造販売業者:サンバイオ)は、外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺を改善する製品です。本品は、健康成人の骨髄から採った間葉系幹細胞に、遺伝子を導入した細胞製品です。移植した細胞が分泌するサイトカインにより、神経の修復が期待されます。第Ⅱ相試験(TBI-01試験)では、移植群46例と偽手術群15例を比較しました。移植群は3つの用量群(2.5×10⁶個、5.0×10⁶個、10.0×10⁶個)を合わせた集団で、承認用量にあたる5.0×10⁶個群は15例です。主要評価項目である24週時点の運動機能スコア(FMMS)の改善幅は、移植群8.3点、偽手術群2.3点でした。両群の差は6.0点で、統計学的に有意でした(p=0.0401)。 アムシェプリ(一般名:ラグネプロセル、製造販売業者:住友ファーマ)は、既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の運動症状を改善する製品です。本品は、他人のiPS細胞から作製したドパミン神経前駆細胞を含む細胞製品です。移植した細胞は、ドパミンを作る神経細胞に分化して働くことが期待されます。第Ⅱ相試験(IACT16049-01試験)は、対照群を置かない非盲検の試験として、国内1施設で行われました。この試験では7例に移植し、両側同時に移植した6例で有効性を評価しました。6例には、承認用量より少ない片側2.4×10⁶個を移植した2例が含まれます。副次評価項目である移植後24カ月の運動症状スコア(オフ時のMDS-UPDRS Part III、低いほど症状が軽い)は、平均50.8点から41.3点に下がりました。6例中4例は、5点以上改善する「著効」と判定されました。残る2例は、スコアがそれぞれ3点、5点悪化しました。なお、本品では拒絶反応を抑えるため、移植日から免疫抑制剤タクロリムスを服用します。 2品目の比較 * アクーゴ脳内移植用注 * 一般名:バンデフィテムセル * 細胞の由来:他人の骨髄由来間葉系幹細胞 * 効能・効果:外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺の改善 * 移植部位:損傷した組織の周辺部 * 併用する治療:移植後のリハビリテーション * アムシェプリ * 一般名:ラグネプロセル * 細胞の由来:他人のiPS細胞由来ドパミン神経前駆細胞 * 効能・効果:既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の運動症状の改善 * 移植部位:両側の被殻 * 併用する治療:移植日からのタクロリムス投与(1年を目安) 使用には施設・責任医師・患者の3要件をすべて満たす 両品目を使用するには、医療施設、治療の責任者、投与対象となる患者の3要件をすべて満たす必要があります。この3要件は、レセプトの摘要欄に記載を求められる項目とも一致します。以下では、3要件を同じ順で両品目について説明します。 医療施設の要件では、まず施設の種類が、特定機能病院、大学附属病院、関係学会の基幹施設・連携施設・認定施設のいずれかに限られます。大学附属病院は、脳神経外科の診療科を持つ場合に限ります。アクーゴで対象となる学会施設は、日本脳神経外科学会の基幹施設又は連携施設、日本脳神経外傷学会の認定研修施設、日本定位・機能神経外科学会の認定施設です。アムシェプリで対象となる学会施設は、日本脳神経外科学会の基幹施設又は連携施設、日本定位・機能神経外科学会の認定施設です。さらに両品目とも、定位脳手術の設備、再生医療等製品の情報管理担当者、重篤な副作用に24時間対応できる体制(連携施設での対応を含む)が必要です。アクーゴでは、細胞調製の設備・手順書と、脳血管疾患等リハビリテーション料(Ⅰ)~(Ⅲ)の届出も求められます。アクーゴではさらに、自施設で3件以上の細胞調製実績があり、講習を修了した細胞調製担当者の配置も必要です。アムシェプリでは、日本脳神経外科学会認定専門医と日本神経学会認定神経内科専門医を、それぞれ1名以上配置する必要があります。アムシェプリでは、タクロリムスの用量を血中濃度に基づいて調節できる医師の配置も求められます。なお、移植後のリハビリテーション(アクーゴ)や経過観察(アムシェプリ)は、移植施設と連携する等の要件を満たせば、別の施設でも行えます。 治療の責任者の経験要件(GLの表4)は、両品目で共通です。ただし責任者には、アクーゴでは外傷性脳損傷、アムシェプリではパーキンソン病の診断・治療に十分な経験と知識も求められます。責任者となる医師は、初期研修の2年間を除き、4年以上の脳神経外科の臨床研修を修めている必要があります。この4年のうち3年以上は、脳神経外科治療の臨床経験でなければなりません。また、日本定位・機能神経外科学会の機能的定位脳手術技術認定に相当する経験(5例以上)も必要です。加えて、製造販売業者が実施する本品の講習を修了していることが求められます。 投与対象となる患者の要件は、各疾患の病期と重症度で定められています。アクーゴの対象は、受傷後6か月以上が経過して運動機能障害が固定した、GOS-Eスコア3~6の患者です。GOS-Eとは、外傷後の生活状態を1(死亡)から8(良好な回復)の8段階で評価する指標で、3~6は中等度又は重度の障害にあたります。アクーゴでは、運動麻痺の原因となる局所病変をMRI等で確認できることも条件です。アムシェプリの対象は、次の6項目をすべて満たすパーキンソン病患者です。 * パーキンソン病と診断され、罹病期間が5年以上の者 * 既存の薬物療法では運動症状のコントロールが十分に得られていない者 * MDS-UPDRS Part 3及び/又は症状日誌から、オンとオフの状態を有する者 * オフ時のHoehn & Yahr重症度分類が2度以上の者 * オン時のHoehn & Yahr重症度分類が3度以下の者 * 抗パーキンソン病薬を休薬した状態で、レボドパへの反応性が30%以上である者 対象外や慎重投与となる患者も、両品目で定められています。両品目とも、本品の成分に過敏症の既往歴がある患者は禁忌です。アクーゴでは、定位脳手術やリハビリテーションの実施が困難な患者も対象になりません。アムシェプリでは、本品の投与歴がある患者も禁忌です。また、アムシェプリは臨床試験で70歳超の患者への移植経験がないため、有益性と危険性をより慎重に評価する必要があります。 3要件の比較 * アクーゴ脳内移植用注 * 医療施設:特定機能病院、大学附属病院(脳神経外科あり)、日本脳神経外科学会の基幹・連携施設、日本脳神経外傷学会の認定研修施設、日本定位・機能神経外科学会の認定施設のいずれか * 治療の責任者:脳神経外科の臨床研修4年以上(うち治療経験3年以上)、定位脳手術5例以上、講習修了 * 投与対

    再生医療等製品2品目に最適使用推進GL|中医協第650回の要点
  6. 5日前

    【中医協】iPS細胞製品など再生医療等製品3品目が保険適用へ

    令和8年5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、再生医療等製品3品目の保険適用が議題となりました。3品目のうち2品目は「条件及び期限付き承認」を受けた製品であり、令和8年1月に中医協が了解した算定ルールに沿って価格が算定されています。本稿では、3品目の薬価と技術料、そしてこのルールが価格にどう反映されたかを解説します。 3品目は令和8年5月20日に薬価基準へ収載される予定で、いずれも神経の病気を対象とする高額な製品です。第一に、アクーゴとアムシェプリの薬価は、条件及び期限付き承認のルールにより、営業利益率を平均的な営業利益率の半分(7.8%)とし、有用性系加算の該当性を判断せずに算定されました。第二に、両品目の投与には、細胞調製の技術料として「K924 自己生体組織接着剤作成術」4,340点を準用し、移植手術の技術料として「K154 機能的定位脳手術」を算定する案が示されました。第三に、ゾルゲンスマ髄注は、既に収載されている点滴静注と同じ1患者当たり1億6,707万7,222円で算定され、費用対効果評価の対象となります。 今回保険適用される3品目の概要 今回保険適用される3品目は、細胞加工製品2品目と遺伝子治療用製品1品目です。3品目の基本情報は次のとおりです。 アクーゴ脳内移植用注 * 会社名:サンバイオ * 対象疾患:外傷性脳損傷に伴う慢性期の運動麻痺 * 算定薬価:72,716,528円(1回分) * 算定方式:原価計算方式 アムシェプリ * 会社名:住友ファーマ * 対象疾患:レボドパ含有製剤を含む既存の薬物療法で十分な効果が得られないパーキンソン病の運動症状 * 算定薬価:55,306,737円(18瓶1組) * 算定方式:原価計算方式 ゾルゲンスマ髄注 * 会社名:ノバルティス ファーマ * 対象疾患:脊髄性筋萎縮症(抗AAV9抗体陰性、2歳以上) * 算定薬価:167,077,222円(1患者当たり) * 算定方式:別銘柄として算定しない アクーゴは、健康成人の骨髄由来の間葉系幹細胞に遺伝子を導入した細胞を、脳の損傷部位の周辺に移植する製品です。この細胞から分泌されるサイトカインが、神経細胞の修復を促すと期待されています。臨床試験では、運動機能の指標(FMMSスコア)の24週目における変化量が、本品群8.3点、偽手術群2.3点となり、統計学的に有意な差(p=0.0401)が示されました。製造販売承認は令和6年7月31日ですが、生産体制の整備と算定方法の検討がなされていたため、収載まで約1年10か月を要しました。 アムシェプリは、iPS細胞から作ったドパミン神経前駆細胞を、脳の両側の被殻(運動の調節に関わる部位)に移植する製品です。移植した細胞がドパミン神経細胞に分化・成熟し、運動症状を改善すると期待されています。国内臨床試験では、有効性を評価した6例のうち3例で、オフ時の運動症状スコア(MDS-UPDRS PartⅢ)に、文献で報告された移植1年後の最大のプラセボ効果(-10.1点)を上回る改善が移植2年後に認められました。ただし、この試験は非盲検の非対照試験であり、資料では、定位脳手術を受けたこと自体によるプラセボ効果の可能性は否定できないとされています。製造販売承認は令和8年3月6日で、世界に先駆けて日本で承認された製品です。 ゾルゲンスマ髄注は、SMN遺伝子を運ぶウイルスベクターを髄腔内に1回だけ投与する製品です。成分は既存の「ゾルゲンスマ点滴静注」と同じで、投与経路が静脈内から髄腔内に変わりました。製造販売承認は令和8年4月3日です。 アクーゴとアムシェプリ:条件及び期限付き承認のルールによる薬価算定 アクーゴとアムシェプリは、類似する既存品がないため、原価計算方式で算定されました。原価計算方式とは、製造原価に営業利益や流通経費などを積み上げて価格を決める方法です。両品目は条件及び期限付き承認を受けているため、営業利益率と補正加算の扱いに、このルールが反映されています。 条件及び期限付き承認とは、有効性が「確認」ではなく「推定」された段階で、期限と条件を付けて承認する仕組みです。この仕組みで承認された再生医療等製品について、中医協は令和8年1月14日に診療報酬上の扱いを了解しました。このルールでは、算定時の扱いを次の3点としています。 * 原価計算方式の営業利益率は、平均的な営業利益率に0.5を乗じた値とする * 有用性系加算は、算定時には該当性を判断しない * 有用性系加算以外の補正加算は、有効性が推定にとどまることを踏まえて該当性を判断する 両品目の原価計算の内訳は、営業利益率7.8%(流通経費を除く価格に対する割合)で積み上げられています。 アクーゴ(1回分) * 製品総原価:50,363,585円 * 営業利益(7.8%):4,260,694円 * 流通経費(0.84%):464,000円 * 消費税:5,508,828円 * 加算前の価格:60,597,106円 * 加算後の価格(算定薬価):72,716,528円 アムシェプリ(18瓶1組) * 製品総原価:42,820,163円 * 営業利益(7.8%):3,622,530円 * 流通経費(0.54%):250,394円 * 消費税:4,669,309円 * 加算前の価格:51,362,396円 * 加算後の価格(算定薬価):55,306,737円 ※加算前から加算後への増加率は、アクーゴが20%、アムシェプリが約7.7%です。アムシェプリの増加率が加算率の合計(20%)と一致しない理由は、資料には記載されていません。 両品目の補正加算は、市場性加算(Ⅰ)と先駆加算がそれぞれ10%で、いずれも加算幅(10~20%)の下限にとどまりました。市場性加算(Ⅰ)は、両品目とも希少疾病用再生医療等製品の指定を受けているため適用されました。先駆加算は、アクーゴが先駆け審査指定制度の対象品目であるため、アムシェプリが世界に先駆けて日本で承認されたため、それぞれ適用されました。加算率が10%とされた理由は、アクーゴでは国際共同第Ⅱ相試験の結果が薬事審査で限定的な評価とされたため、アムシェプリでは有効性を示すデータが限られているためです。なお、画期性加算と有用性加算(Ⅰ)(Ⅱ)は、両品目とも「該当しない」とされています。 両品目の収載後の扱いも、このルールで定められています。市場拡大再算定は、通常の承認を受けた製品と同じく適用されます。革新的新薬薬価維持制度(薬価改定時の引き下げを抑える制度)は、要件を満たせば適用され、両品目とも該当とされました。費用対効果評価は、分析に必要なデータが不十分と想定されるため、改めて承認を受けた際に該当性を判断します。改めて承認を受けた際には、営業利益率の係数と補正加算の適用・控除を薬価算定組織で検討し、中医協総会の了承を経ることになっています。 アクーゴとアムシェプリ:細胞調製と定位脳手術の技術料 アクーゴとアムシェプリの投与には、細胞調製と定位脳手術という2つの手技が必要なため、2つの技術料を組み合わせる案が示されました。定位脳手術とは、頭蓋骨に小さな穴を開け、画像で位置を特定しながら脳の深部に器具を到達させる手術です。 細胞調製の技術料には、両品目とも「K924 自己生体組織接着剤作成術」4,340点を準用する案です。準用とは、診療報酬点数表に該当する項目がない手技に、似た手技の点数を当てはめて算定することです。K924が選ばれた理由は、投与前に製剤を融解や遠心分離などで調製する手技が似ているためです。アクーゴの調製は、細胞の融解、洗浄、細胞カウント、エンドトキシン試験用サンプルの分注、細胞懸濁液の調製と細胞カウント、投与デバイスへの充填という手順で進みます。この調製は、製造販売業者が企画する講習を修了した医療スタッフがおこないます。アムシェプリの調製は、遠心分離、上清除去、投与デバイスへの細胞充填、細胞数の計算という手順で進みます。 移植手術の技術料には、両品目とも「K154 機能的定位脳手術 2 その他の場合」を算定する案ですが、移植部位によって点数が異なります。アクーゴは、1箇所の損傷部位に移植するため「イ 片側の場合」52,300点です。アムシェプリは、両側の被殻に移植するため「ロ 両側の場合」94,500点です。この2つの技術料を合計すると、アクーゴが56,640点、アムシェプリが98,840点となります。なお、アムシェプリでは、免疫反応を抑えるため、移植日の朝からタクロリムスを服用し、1年を目安に、その後12週間かけて減量・中止します(必要に応じて延長)。 ゾルゲンスマ髄注:既存の点滴静注と同じ薬価で算定 ゾルゲ

    【中医協】iPS細胞製品など再生医療等製品3品目が保険適用へ
  7. 6日前

    【中医協第650回】新薬4成分の薬価とマンジャロ25%引き下げを解説

    2026年(令和8年)5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、「医薬品の新規薬価収載等について」が議題になりました。この議題では、新薬の薬価だけでなく、処方日数の例外、既存薬の薬価引き下げ、算定ルールの基礎資料も同時に示されています。本号では、医療機関や薬局の実務に関わるポイントを、算定表の読み方とあわせて整理します。 今回の議題の要点は、「新薬4成分の収載」「1成分の処方日数制限の撤廃」「既収載2成分の薬価引き下げ」の3つです。新薬4成分11品目は5月20日に薬価収載される予定で、4成分すべてが革新的新薬薬価維持制度の対象とされました。新薬のうちドジョルビ内用液は、収載後1年間の「14日ルール」の例外として、処方日数の制限を設けない案が示されました。既収載品のアムヴトラ皮下注とマンジャロ皮下注は、販売額の急拡大を理由に、8月1日から薬価を引き下げることとされました。あわせて、類似薬選定の薬剤分類(改訂第16版)、革新的新薬薬価維持制度の平均的な維持率、新薬算定の係数も示されました。 1. 新薬4成分11品目の薬価:希少疾病用3成分と造影剤1成分 5月20日に収載予定の新薬は、内用薬3成分7品目と注射薬1成分4品目です。4成分のうち3成分は希少疾病用医薬品で、残る1成分はMRI用の造影剤です。算定方式は、原価計算方式が2成分、類似薬効比較方式(Ⅰ)が2成分に分かれました。 ソホノスカプセル(パロバロテン) * 対象疾患:進行性骨化性線維異形成症 * 算定方式:原価計算方式 * 主な加算:有用性加算(Ⅱ)10%、市場性加算(Ⅰ)10%、加算係数0 * 算定薬価:1mg 46,062.10円/1.5mg 57,114.90円/2.5mg 95,190.70円/5mg 190,381.30円/10mg 355,689.50円 * ピーク時予測:投与患者12人、販売額6.3億円 ドジョルビ内用液100%(トリヘプタノイン) * 対象疾患:長鎖脂肪酸代謝異常症 * 算定方式:原価計算方式 * 主な加算:有用性加算(Ⅱ)5%、市場性加算(Ⅰ)15%、加算係数0 * 算定薬価:500mL1瓶 734,770.00円 * ピーク時予測:投与患者276人、販売額36億円 インレビックカプセル100mg(フェドラチニブ塩酸塩水和物) * 対象疾患:骨髄線維症 * 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ) * 主な加算:市場性加算(Ⅰ)5% * 算定薬価:100mg1カプセル 11,137.40円(1日薬価44,549.60円) * ピーク時予測:投与患者197人、販売額32億円 アムベルビスト静注(ガドクアトラン水和物) * 対象疾患・用途:MRI造影(脳・脊髄、躯幹部・四肢) * 算定方式:類似薬効比較方式(Ⅰ) * 主な加算:有用性加算(Ⅱ)5%、小児加算15% * 算定薬価:2mL 2,261円/5mL 4,930円/7.5mL 7,098円/10mL 9,193円 * ピーク時予測:投与患者69.3万人、販売額46億円 算定方式の違いを押さえると、上記の数字が読みやすくなります。原価計算方式は、比較できる既存薬(類似薬)がない場合に、製品総原価に営業利益・流通経費・消費税を積み上げて薬価を決める方式です。類似薬効比較方式(Ⅰ)は、効能や薬理作用が最も近い既存薬(最類似薬)の1日薬価にそろえて薬価を決める方式です。 ソホノスカプセル:国内初の進行性骨化性線維異形成症治療薬 ソホノスカプセルは、筋肉や腱などが徐々に骨に置き換わる希少疾患「進行性骨化性線維異形成症」の治療薬です。同様の効能・効果、薬理作用、化学構造を持つ既存薬がないため、薬価は原価計算方式で算定されました。算定では、有用性加算(Ⅱ)10%と市場性加算(Ⅰ)10%が認められています。ただし加算係数が0のため、加算前と加算後の薬価は同じ金額です。加算係数とは、原価計算方式で加算率に掛ける係数で、一般に製品総原価の開示度に応じて設定されます。係数が0の場合、加算は実際の薬価に反映されません。なお、資料には係数が0となった具体的な理由は記載されていません。ピーク時の予測は、投与患者12人、販売額6.3億円です。 ドジョルビ内用液:長鎖脂肪酸代謝異常症で初めて承認された薬 ドジョルビ内用液は、脂肪からエネルギーを作る過程に障害がある遺伝性疾患「長鎖脂肪酸代謝異常症」の治療薬です。この疾患に適応を持つ既存薬がないため、薬価は原価計算方式で算定されました。算定では、有用性加算(Ⅱ)5%と市場性加算(Ⅰ)15%が認められています。市場性加算(Ⅰ)が15%とされた理由は、患者数の少ない疾患であることと、ドラッグ・ロス(海外で承認された薬が国内で開発されない状態)に該当するとされていた品目の開発であることです。なお、この加算率は、臨床試験に日本人患者が組み入れられていない点も踏まえたうえで判断されています。ただしソホノスと同じく加算係数が0のため、薬価は加算前と同じ734,770.00円です。ピーク時の予測は、投与患者276人、販売額36億円です。 インレビックカプセル:既存のJAK阻害薬オムジャラと1日薬価をそろえた骨髄線維症治療薬 インレビックカプセルは、血液がんの一種である骨髄線維症に使うJAK阻害薬です。同じ骨髄線維症に使うオムジャラ錠(1日薬価42,428.00円)が最類似薬に選ばれ、薬価は類似薬効比較方式(Ⅰ)で算定されました。1日4カプセルを服用するため、加算前の1カプセルの薬価は10,607.00円です。この金額に市場性加算(Ⅰ)5%が上乗せされ、算定薬価は11,137.40円(1日薬価44,549.60円)になりました。市場性加算(Ⅰ)の加算率は通常10〜20%ですが、本剤は優先審査の対象ではなかったことから、5%が妥当と判断されました。なお、本剤の承認は2025年6月ですが、品目の承継と供給体制の構築に時間を要したため、今回の収載希望となりました。 アムベルビスト静注:世界で初めて日本で承認されたMRI造影剤 アムベルビスト静注は、MRI検査で脳・脊髄や体幹・四肢を造影するガドリニウム(Gd)造影剤です。同じ効能を持つガドビスト静注が最類似薬に選ばれ、薬価は類似薬効比較方式(Ⅰ)で算定されました。算定では、有用性加算(Ⅱ)5%と小児加算15%が認められています。有用性加算(Ⅱ)は、国内外のガイドラインで腎機能障害の患者や小児を含む患者に推奨される「低Gd用量」の造影剤である点を評価したものです。小児加算は、小児の用法・用量が明示されていることから認められました。加算率が15%とされた理由は、臨床試験での日本人の組入れ数、日本が世界に先駆けて承認したこと、成人と小児の同時開発がなされたことなどです。ピーク時の予測は、投与患者69.3万人、販売額46億円で、今回の新薬で最大の市場規模です。 4成分共通:全成分が革新的新薬薬価維持制度の対象 今回の新薬4成分は、すべて革新的新薬薬価維持制度の対象とされました。革新的新薬薬価維持制度とは、要件を満たす新薬について、薬価改定時に一定期間、薬価を維持する仕組みです。ソホノス、ドジョルビ、インレビックの3成分は、希少疾病用医薬品の指定を理由に対象となりました。アムベルビストは、有用性加算などの加算が適用されたことを理由に対象となりました。 2. ドジョルビ内用液の14日ルール例外:処方日数の制限を設けない案 ドジョルビ内用液には、新薬に課される「14日ルール」の例外を適用し、処方日数の制限を設けない案が示されました。14日ルールとは、新薬は薬価収載の翌月から1年間、原則として1回14日分までしか処方できないという決まりです。このルールには、2010年(平成22年)の中医協了承に基づく2種類の例外があり、例外とする新薬は個別に中医協の確認を得ます。ドジョルビに関係する例外の条件は、「疾患や製剤の特性から14日を超える投薬に合理性があること」と「投与初期から14日を超える投薬の安全性が確認されていること」の2つです。ドジョルビは、疾患の特性、製剤の特性、安全性の3点から、この条件を満たすとされました。この例外では通常、処方日数を「製剤の用法・用量から得られる最少日数に応じた日数」とします。これに対しドジョルビでは、処方日数の制限そのものを設けない案が示されました。 疾患の特性:通院そのものが症状悪化のリスクになる 長鎖脂肪酸代謝異常症では、通院自体がストレスになり、症状を引き起こす可能性があります。この疾患は、空腹時や運動時に横紋筋融解症、低血糖、心筋症などを起こす遺伝性疾患で、新生児マススクリーニングの対象です。遺伝性疾患であるため、本剤は食事療法と併せて14日を

    【中医協第650回】新薬4成分の薬価とマンジャロ25%引き下げを解説
  8. 9月30日

    中医協第650回|6月収載の医療機器7製品の価格と算定ルール

    令和8年5月13日の中央社会保険医療協議会(中医協)総会(第650回)で、令和8年6月1日に保険適用が予定される医療機器などが審議されました。これらの医療機器を使う医療機関は、償還価格だけでなく、対象患者・施設の条件や診療報酬明細書への記載事項も押さえる必要があります。本号では、資料「総-3-1」と「総-3-2」をもとに、新たに保険適用される医療機器の価格と算定ルールを整理します。 今回の議題は、医療機器の価格決定、材料価格以外の枠組みでの評価、価格算定に使う係数の更新の3つで構成されます。第一に、医療機器7製品に償還価格が設定され、いずれも企業の希望価格を下回りました。第二に、医療機器・検査の3件は、技術料・検査点数・評価療養という材料価格以外の枠組みで評価されました。第三に、原価計算方式で使う3つの係数が、令和8年度分としてすべて引き上げられました。 償還価格が決まった医療機器7製品 償還価格が決まった医療機器7製品は、「処置・手術で使う機器」「治療用アプリ」「歯科材料」の3つに分かれます。7製品の償還価格は、いずれも企業希望価格を下回りました。また、多くの製品で、対象患者の限定や診療報酬明細書の摘要欄への記載が算定の条件になっています。なお、7製品とも市場規模予測が50億円未満のため、費用対効果評価の対象外です。 * シルクエラスチン創傷用シート(三洋化成工業):区分C1/償還価格 1,460円/cm²/原価計算方式/企業希望 1,760円/cm² * コクレアインプラント Nexa(日本コクレア):区分C1/償還価格 1,690,000円/類似機能区分比較方式・改良加算5%/企業希望 1,730,000円 * ゴア TIPS セット(日本ゴア):区分C1/償還価格 102,000円/原価計算方式/企業希望 107,000円 * ゴア VIATORR TIPS ステントグラフト コントロールエクスパンション(日本ゴア):区分C2/償還価格 792,000円/原価計算方式・有用性加算10%(加算係数0.2)/企業希望 1,140,000円 * サスメド 不眠障害用アプリ Medcle(サスメド):区分C2/償還価格 24,100円/原価計算方式・有用性加算5%/企業希望 49,458円 * ENDEAVORRIDE(塩野義製薬):区分C2/償還価格 14,500円/原価計算方式・有用性加算5%/企業希望 29,914円 * KZR-CAD ファイバーブロック シンボー(YAMAKIN):区分C2/償還価格 11,700円/類似機能区分比較方式・改良加算10%/企業希望 18,200円 一覧中の用語を先に確認します。区分C1(新機能)は、既存の技術料で使える新しい機能の材料です。区分C2(新機能・新技術)は、材料に加えて技術料の評価も新たに必要となる医療機器です。原価計算方式は、製造原価に経費と利益を積み上げて価格を決める方法です。類似機能区分比較方式は、似た既存製品の価格を基準に、改良点などを加算して価格を決める方法です。 処置・手術で使う医療機器(4製品) 処置・手術で使う4製品は、創傷治療、人工内耳、門脈圧亢進症の治療(TIPS関連2製品)に使われます。 シルクエラスチン創傷用シートは、全層創傷・部分層創傷の治療材料として、1cm²当たり1,460円で収載されます。 この製品は、遺伝子組換えタンパク質であるシルクエラスチンを使った創傷被覆材です。シルクエラスチンは、創傷面の滲出液を吸収して溶け、体温でゲル化して創傷面に密着します。価格は原価計算方式で算定され、企業希望の1,760円/cm²を下回りました。算定対象は、次の3つの条件(ア~ウ)のいずれかに該当する創傷に限られます。アは、人工真皮で奏効しない、または治癒遷延等が懸念される急性創傷のうち、明らかな感染兆候のないものです。イは、滲出液が少なく、骨・腱の露出が創傷面の10%以内の慢性創傷です。ウは、滲出液が少なく、局所陰圧閉鎖療法または人工真皮が奏効しなかった慢性創傷です。「滲出液が少ない」とは、二次ドレッシング材の交換頻度が2日に1回程度の状態を指します。また、関連学会の適正使用指針に従って使用することも算定の条件です。算定量の上限は、一連の治療計画につき原則98cm²です。算定時には、使用する医学的理由と既存療法の結果を摘要欄に記載します。98cm²を超える場合は、その医学的必要性も摘要欄に記載します。臨床試験では、慢性創傷20例の90%が、貼付14日後に閉創可能な状態になりました。 コクレアインプラント Nexaは、高度難聴患者の人工内耳として、1,690,000円で収載されます。 この製品は、従来品(CI600シリーズ)を改良し、1回の充電での稼働時間を延ばした次世代品です。価格は、既存の人工内耳用インプラント(1,650,000円)を基準に、耐久性の向上を評価した改良加算5%を上乗せして算定されました。企業は操作性の向上も含めた加算10%を希望しましたが、認められたのは5%でした。この製品に合わせて、人工内耳用インプラントの機能区分は「標準型」と「長時間稼働型」の2区分に分かれます。企業資料では、16時間持続可能な患者の割合が、成人で86%(従来品65%)と示されています。 ゴアのTIPS関連2製品は、門脈圧亢進症の治療材料として、ステントグラフトが792,000円、アクセスセットが102,000円で収載されます。 TIPS(経頸静脈的肝内門脈大循環短絡術)は、カテーテルを使って肝静脈と門脈の間にシャント(迂回路)を作る手技です。ステントグラフトには、治療方法の改善を評価した有用性加算10%が付きました。ただし、原価計算の開示度が50%未満のため、加算係数0.2が掛けられています。この結果、実際の上乗せ幅は2%にとどまります。手技料は、K561 ステントグラフト内挿術の「腹部大動脈(その他のもの)」49,440点を準用します(準用とは、既存の点数を借りて算定することです)。算定対象は、難治性胸腹水または消化管静脈瘤を伴う門脈圧亢進症の患者に限られます。算定には、関連学会の適正使用指針の遵守も必要です。算定時には、材料を用いる医学的必要性を摘要欄に記載します。材料は、原則として1回の手術でそれぞれ1個まで算定できます。複数個を算定する場合は、その医学的必要性を摘要欄に記載します。 治療用アプリ(2製品) 治療用アプリ2製品は、不眠障害と小児ADHDを対象とし、どちらも研修を修了した医師による指導管理が算定の条件です。2製品とも、指導管理料はB005-14 プログラム医療機器等指導管理料(90点)を準用します。初回の指導管理を行った月には、導入期加算(50点)も準用して加算します。この準用算定に、プログラム医療機器等指導管理料の届出は不要です。一方、研修の修了証の写しは、院内の見やすい場所に掲示し、原則としてウェブサイトにも掲載する必要があります。 サスメド 不眠障害用アプリ Medcleは、成人の不眠障害の治療支援アプリとして、24,100円で収載されます。 このアプリは、7日間の睡眠衛生指導と睡眠表の後に、不眠障害の認知行動療法(CBT-I)を治療原理とする8週間のプログラムを提供します。価格は、原価計算方式に有用性加算5%を上乗せして算定されました。この価格は、企業希望価格49,458円(加算15%)の半額以下です。対象は、薬物療法に適しない、または薬物療法に同意しない軽症から中等症の外来患者です。睡眠障害治療薬を服用している患者や、交代勤務・夜勤に従事している患者などは対象外です。算定は、7日間の睡眠表を含む睡眠衛生指導を行った後に、1回に限り認められます。算定時には、薬物療法に適しない・同意しない理由を摘要欄に記載します。また、関連学会等のガイドラインと適正使用指針に従って使用することも算定の条件です。医師が修了すべき研修は、6時間以上で修了証が交付されるものと定められています。 ENDEAVORRIDE(エンデバーライド)は、小児ADHDの治療補助アプリとして、14,500円で収載されます。 このアプリは、2つの課題を同時にこなし、難易度が自動で調整されるビデオゲーム型です。価格は、原価計算方式に有用性加算5%を上乗せして算定されました。この価格は、企業希望価格29,914円の半額以下です。算定できる医療機関は、研修を修了した医師が1名以上いて、過去6か月間に20歳未満の発達障害患者の初診が5名以上ある施設です。対象は、環境調整や心理社会的治療を行っても症状改善が見られない小児ADHD患者です。対象患者には、小児特定疾患カウンセリング料(医師による場合)または通院・在宅精神療法の所定の区分を算定していることも求めら

    中医協第650回|6月収載の医療機器7製品の価格と算定ルール

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番組について

病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。 www.daitoku0110.news

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