岡大徳のポッドキャスト

岡大徳

病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。 www.daitoku0110.news

  1. 令和8年度改定で新設、ロボット手術200例以上の病院に15,000点加算

    5時間前

    令和8年度改定で新設、ロボット手術200例以上の病院に15,000点加算

    ロボット手術は、平成24年度の保険適用以降、累次の診療報酬改定で対象術式が拡大し、現在32項目が保険収載されている。しかし、令和6年時点では、ロボット手術を実施する675施設のうち年間150回未満の施設が59%を占め、算定回数の分散が顕著である。本稿では、こうした状況を背景に令和8年度改定で新設された「内視鏡手術用支援機器加算」について、加算の趣旨、対象手術、施設基準、経過措置を解説する。 内視鏡手術用支援機器加算は、年間200例以上のロボット手術を実施する保険医療機関を対象に15,000点を算定する新加算である。算定対象は、悪性腫瘍手術等の25区分(区分番号ベース)のK番号手術である。施設基準は、年間症例数、人員配置、機器管理体制、情報公開の4つの観点で構成される。情報公開要件のうち前年実績のウェブサイト掲載については、令和9年5月31日まで経過措置が設けられている。 新加算の背景:算定の分散と高額な医療材料費 新加算の背景には、ロボット手術の算定実績の分散と医療材料費の高さという2つの課題がある。厚生労働省は、これらの課題を踏まえ、高額医療機器の効率的活用と集約化を促す方針を示した。 ロボット手術の算定実績は、医療機関ごとに大きく分散している。令和6年の算定医療機関数は675施設、総算定回数は約11.3万回である。このうち、年間算定回数が150回未満の医療機関は全体の59%を占める一方、250回以上の医療機関は22.8%にとどまる。さらに、250回以上の医療機関で実施されるロボット手術は全体の55.5%に達し、症例の集約傾向が認められる。 医療材料費は、ロボット手術が腹腔鏡下等手術と比較して約2〜3倍高い。外保連試案2026によれば、肺悪性腫瘍手術(肺葉切除等)の償還できない医療材料費は、腹腔鏡下等手術が175,762円であるのに対し、ロボット手術は511,584円である。胃悪性腫瘍手術(全摘)でも、腹腔鏡下等手術346,240円に対しロボット手術697,582円と、同様の傾向がみられる。 こうした課題を踏まえ、令和8年度改定では、多数の手術を実施する保険医療機関への評価を新設する方針が示された。具体的には、医療機器の効率的な活用と高額医療機器の集約化を図る観点から、年間手術実績に応じた評価を行うこととされた。新加算は、この方針を実現する具体的な手段として位置づけられる。 新加算の概要:15,000点で25区分が算定対象 内視鏡手術用支援機器加算は、所定の手術を実施する際に手術1件ごとに15,000点を算定する加算である。算定対象は、悪性腫瘍手術およびそれに準じた手術のうち、内視鏡手術用支援機器を用いた症例である。 算定対象となるK区分番号は25区分にわたる。ただし、区分番号は25であっても、K514-2は枝番2と枝番3が、K655-2は枝番3が、K655-5は枝番3が、K657-2は枝番4のみが対象となるため、対象手術項目としては実質的に26項目となる点に留意が必要である。 具体的な対象手術は、領域別に整理すると以下のとおりである。頭頸部領域では、K374-2(鏡視下咽頭悪性腫瘍手術)およびK394-2(鏡視下喉頭悪性腫瘍手術)が対象となる。胸部領域では、K502-5(胸腔鏡下拡大胸腺摘出術)、K504-2(胸腔鏡下縦隔悪性腫瘍手術)、K514-2の2・3(胸腔鏡下肺悪性腫瘍手術)、K529-2・K529-3(食道悪性腫瘍手術)、K554-2(胸腔鏡下弁形成術)、K555-3(胸腔鏡下弁置換術)が含まれる。 腹部領域では、K655-2の3(腹腔鏡下胃切除術・悪性腫瘍手術)、K655-5の3(腹腔鏡下噴門側胃切除術・悪性腫瘍手術)、K657-2の4(腹腔鏡下胃全摘術・悪性腫瘍手術)、K674-2(腹腔鏡下総胆管拡張症手術)、K695-2(腹腔鏡下肝切除術)、K702-2(腹腔鏡下膵体尾部腫瘍切除術)、K703-2(腹腔鏡下膵頭部腫瘍切除術)、K719-3(腹腔鏡下結腸悪性腫瘍切除術)、K740-2(腹腔鏡下直腸切除・切断術)が対象となる。 泌尿器・婦人科領域では、K755-2(腹腔鏡下副腎髄質腫瘍摘出術)、K773-5(腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術)、K773-6(腹腔鏡下尿管悪性腫瘍手術)、K778-2(腹腔鏡下腎盂形成手術)、K803-2(腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術)、K865-2(腹腔鏡下仙骨腟固定術)、K879-2(腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術、子宮体がんに限る)が含まれる。 算定対象と症例数カウント対象の非対称:K843-4の取扱いに要注意 本加算の最大の注意点は、加算の算定対象となる手術と、200例の症例数要件をカウントする対象となる手術が、完全には一致しない点にある。具体的には、K843-4(腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術)が両者で異なる扱いを受ける。 K843-4は、施設基準告示において200例の症例数要件をカウントする対象に含まれている。つまり、年間200例という分子の集計には、K843-4の症例を算入できる。前立腺癌に対するロボット手術は症例数の多い領域であるため、施設基準の充足にあたって重要な意味を持つ。 一方で、K843-4は、加算15,000点の算定対象には含まれていない。つまり、K843-4の手術自体には本加算を上乗せして算定することはできない。本加算が算定できるのは、前項で列挙した25区分(実質26項目)の手術に限られる。 この非対称な構造を踏まえると、医療機関は2つのリストを明確に区別して運用する必要がある。施設基準の充足判定には26区分(K843-4を含む)の合計症例数を、加算の算定可否判断には25区分(K843-4を除く)の対象手術リストを参照することになる。リストを取り違えると、施設基準誤届出や算定誤りの原因となりうる。 施設基準:症例数、人員配置、機器管理、情報公開の4要件 施設基準は、症例数、人員配置、機器管理、情報公開の4つの観点から構成される。これらの基準を満たし、地方厚生局長等への届出を行った保険医療機関のみが、本加算を算定できる。 症例数要件は、年間200例以上のロボット手術実績である。対象手術は、施設基準告示に列挙された26区分のK番号手術(K843-4を含む)を合算する。この要件は、医療機器の効率的活用と集約化を促す本加算の中核的な要件である。 人員配置要件は、麻酔科の標榜、常勤麻酔科標榜医の配置、常勤臨床工学技士1名以上の配置の3点である。あわせて、緊急手術が可能な体制を整備することも求められる。これらは、ロボット手術を安全に実施するための周術期体制を担保する要件である。 機器管理要件は、保守管理計画の策定と適切な保守管理の実施である。また、関連学会が行うレジストリへの参加も求められ、手術患者の長期予後情報の収集に貢献することが施設に課せられる。これらの要件は、機器の安全性確保と医療技術のエビデンス蓄積を目的とする。 情報公開要件は、前年の実績(症例数および平均在院日数)をウェブサイトに掲載することである。本要件には経過措置が設けられ、令和9年5月31日までの間は、未掲載であっても要件を満たすものとみなされる。算定を予定する医療機関は、経過措置期間内にウェブサイトを整備する必要がある。 まとめ:集約化の方針を踏まえた体制整備と運用設計が鍵 内視鏡手術用支援機器加算は、年間200例以上のロボット手術を実施する保険医療機関を対象とする新加算である。本加算は、算定実績の分散と医療材料費の高さを背景に、高額医療機器の集約化を促す目的で新設された。算定対象は悪性腫瘍手術等の25区分(実質26項目)で、施設基準は症例数、人員配置、機器管理、情報公開の4要件から構成される。特に、K843-4(腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術)は症例数要件のカウント対象には含まれるが加算算定対象には含まれないという非対称な扱いには注意が必要である。情報公開要件のうちウェブサイト掲載については、令和9年5月31日までの経過措置が設けられている。算定を目指す保険医療機関は、経過措置期間内に体制整備とウェブサイト掲載を完了させることが求められる。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    6分
  2. 令和8年度診療報酬改定|手術等の医療技術の適切な評価4つの柱を徹底解説

    1日前

    令和8年度診療報酬改定|手術等の医療技術の適切な評価4つの柱を徹底解説

    医療技術は日々進歩しており、新しい手術手技や検査が次々と臨床現場に登場しています。一方で、診療報酬上の評価は必ずしも技術の実態や人件費・材料費に追いついておらず、医療機関の持ち出しが恒常化している術式も少なくありません。令和8年度診療報酬改定では、こうした課題に対応するため、手術等の医療技術について評価の見直しが行われます。 今回の改定では、手術等の医療技術の適切な評価として4つの柱で見直しが行われます。第1に、医療技術評価分科会の検討結果を踏まえた新規技術の保険導入と既存技術の再評価が行われます。第2に、新規医療材料等として保険適用された準用点数技術への新たな評価が行われます。第3に、外保連試案2026を参考にした技術料の見直しが行われます。第4に、整形外科領域のKコードが部位別に細分化されます。 1.新規技術の保険導入と既存技術の再評価 医療技術評価分科会の検討結果を踏まえ、新規技術の保険導入と既存技術の再評価(廃止を含む)が行われます。学会等から提案された技術のうち、優先度が高いものが新たに保険適用され、エビデンスが乏しくなった技術は廃止されます。あわせて、LDTs(Laboratory Developed Tests)の評価のあり方も整理されます。 優先度が高い新規技術として、学会等からの提案では5項目が例示されています。具体的には、骨盤内臓全摘術(ロボット支援)、死体移植腎機械灌流保存技術、自己免疫性脳炎に対する血漿交換療法、肝エラストグラフィ撮影加算、細菌培養同定検査(血液又は穿刺液)です。先進医療として実施されている技術では、陽子線治療と重粒子線治療が対象となり、いずれも切除不能の3個以内の大腸癌肺転移に係るもので、かつ原発巣切除後であり局所再発のないものに限られます。保険医療材料等専門組織で審議された技術では、「注意欠如多動症治療補助プログラム」の使用に係る医療技術や、在宅振戦等刺激装置治療指導管理料及び疼痛等管理用送信器加算(遠隔プログラミングを算定対象とするための再評価)が対象となります。 廃止される技術の例として、ヒッチコック療法が挙げられます。臨床的な使用実績や有効性のエビデンスを踏まえ、診療報酬上の評価から削除される技術が整理されます。 LDTsの評価については、令和8年度改定の次の改定における医療技術評価分科会の評価対象とする方向が示されました。具体的には、性能評価や精度管理等の要件を満たすことが客観的に担保された施設で実施されていること、国内診療において一定の使用実績があることの2要件を満たすLDTsが対象となります。LDTsとは、単一の検査室または検査室ネットワーク内で設計・開発・製造され、臨床診断の補助や臨床的管理の意思決定に用いられる検査を指します。 2.新規医療材料等の準用点数技術への新たな評価 C2区分で保険適用された新規医療材料等について、これまで準用点数で算定されていた医療技術に技術料が新設されます。準用点数とは、新規材料が保険適用された際に、既存の類似技術の点数を準用して算定する仕組みです。今回の改定では、こうした準用状態の技術に独立した点数が設定されます。 技術料新設の代表例として、植込型除細動器移植術に「4 胸骨下植込型リードを用いるもの 24,310点」が新設されます。胸骨下植込型リードという新しい医療材料の特性を踏まえ、従来の経静脈リード等を用いるものとは区別された独立評価が行われます。これにより、医療機関は技術の実態に即した算定が可能となります。 3.外保連試案2026に基づく技術料の見直し 外科系学会社会保険委員会連合(外保連)の「外保連試案2026」における人件費及び材料費の調査結果等を参考に、技術料の見直しが行われます。外保連試案は、各術式に要する人件費・医療材料費等を学会が積算した資料であり、診療報酬の適正化を検討する際の重要な参考データです。今回の改定で見直される区分の例として、CT撮影が挙げられます。 CT撮影については、機器のマルチスライス列数による区分が見直されます。現行では「64列以上」「16列以上64列未満」「4列以上16列未満」「その他」の4区分でしたが、改定後は「128列以上」が新設され5区分となります。具体的な点数は、128列以上の共同利用施設で1,120点、その他で1,100点となり、64列以上128列未満は共同利用施設で1,020点、その他で1,000点とされます。最新の高性能機器による撮影が独立して評価されることで、機器更新を進める医療機関のインセンティブとなります。 4.整形外科領域のKコードの部位別見直し 整形外科領域のKコードについて、部位別を基本として区分が見直されます。これまで複数部位を一括りにしていた区分が、部位ごとに細分化されます。背景には、外科系学会社会保険委員会連合の手術基幹コードであるSTEM7の分類に基づく解析により、手術時間に有意な差があることが明らかになった点があります。 骨折観血的手術(K046)を例にとると、現行の3区分が改定後は15区分に細分化されます。現行では「肩甲骨、上腕、大腿」(21,630点)、「前腕、下腿、手舟状骨」(18,370点)、「鎖骨、膝蓋骨、手(舟状骨を除く。)、足、指(手、足)その他」(11,370点)の3区分でした。改定後は、肩甲骨骨折、上腕骨骨折、大腿骨骨折、前腕骨骨折、下腿骨骨折、手舟状骨骨折、鎖骨骨折、膝蓋骨骨折、手根骨(舟状骨を除く。)骨折、中手骨骨折、手指骨骨折、足根骨骨折、中足骨骨折、足趾骨骨折、その他の骨折観血的手術の15項目に整理されます。点数水準は現行と同様の3階層(21,630点、18,370点、11,370点)が維持されつつ、各部位がどの階層に該当するかが明確化されます。 部位別細分化により、診療実態に即した算定がしやすくなります。これまで複数部位がまとめられていた区分が部位ごとに独立して整理されることで、レセプト記載の明確化と統計データの精緻化が期待されます。 まとめ:手術等医療技術の評価が実態に即したものへ 令和8年度診療報酬改定では、手術等の医療技術の適切な評価として4つの見直しが行われます。新規技術の保険導入と既存技術の再評価、準用点数技術への技術料新設、外保連試案2026に基づくCT撮影等の技術料見直し、整形外科Kコードの部位別細分化です。いずれも、医療技術の進歩や実態に即した適正な評価を目指したものです。 医療機関の事務担当者や臨床現場の医師・看護師にとっては、改定後の点数算定ルールの確認が不可欠です。特にCT撮影の128列以上の新設や、整形外科Kコードの細分化は、施設基準の届出やレセプト記載の運用に直接影響します。改定告示・通知の発出後、速やかに自院の対応状況を点検することをお勧めします。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    6分
  3. 【令和8年度改定】健診後の保険診療|初再診料の算定ルールが明確化

    2日前

    【令和8年度改定】健診後の保険診療|初再診料の算定ルールが明確化

    医療機関では、健康診断、検診、予防接種等(以下「健診等」)の受診後に、健診等で発見された疾病について保険診療を行う場面が日常的に発生している。しかし、現行の通則では、こうした健診後の保険診療における初診料、再診料、外来診療料(以下「初再診料等」)の算定ルールが明記されていない。令和8年度診療報酬改定では、この健診後の保険診療に関する初再診料等の算定方法を、通則に新たな規定を追加して明確化する。 本改定は、通則13〜17の新設により、健診後の保険診療における算定ルールを4つの観点から整理する。第一に、健診等の費用は「療養の給付と直接関係ないサービス等」として別途徴収できることを明確化する。第二に、健診等と同日に1回の受診で保険診療を行う場合、初再診料等は算定できないことを明確化する。第三に、健診等の後に別の受診として保険診療を行う場合、再診料または外来診療料は算定できることを明確化する。第四に、健診後に行う検査や治療について、保険給付の対象として算定できる要件を明確化する。 1. 健診等の費用は「療養の給付と直接関係ないサービス等」として別途徴収できる(通則13) 健診等の費用は、保険診療とは別の枠組みとして患者から直接徴収できることが、通則13により明確化される。 健診等とは、健康診断、検診、予防接種等を指し、これらは保険給付の対象外である。保険給付の対象外であるため、健診等の費用は保険診療の費用と区別して取り扱う必要がある。改定後の通則13では、この健診等の費用を「療養の給付と直接関係ないサービス等」に分類することが明記される。 「療養の給付と直接関係ないサービス等」とは、保険診療と直接関係しない費用を患者から実費徴収できる仕組みである。本規定により、医療機関は健診等の費用を保険診療の費用と独立して請求できる根拠が明確になる。 2. 健診等と同日に1回の受診で保険診療を行う場合、初再診料等は算定できない(通則14前段、通則15) 健診等と同日に同一の受診機会で健診関連疾病の保険診療を行う場合、初診料、再診料、外来診療料はいずれも算定できないことが、通則14の前段により明確化される。 同日に1回の受診で保険診療を行うケースとは、健診等を実施した医療機関で、同一日に1回の受診として健診関連疾病の保険診療を行う場合を指す。例えば、健診を受けた患者がその場で高血圧の指摘を受け、同日に高血圧の治療を開始する場合がこれに該当する。 このケースでは、初診料に加え、再診料および外来診療料も算定できない。これは、現行の初診料の取扱いと同じ考え方を、再診料および外来診療料にも適用するものである。受診の機会が1回である以上、初再診料等を重複して請求できないという整理である。 加えて通則15では、算定できない初再診料等に含まれる特掲診療料や、初再診料等と併せて算定できない特掲診療料についても、同様に算定できないことが規定される。ただし、検査、画像診断、投薬、注射、リハビリテーション、処置、手術、麻酔、放射線治療、病理診断は、保険診療として実施する場合に限り算定できる。 3. 健診等の後に別の受診として保険診療を行う場合、再診料等は算定できる(通則14後段) 健診等の後に、改めて別の受診として保険診療を行う場合、初診料は算定できないものの、再診料または外来診療料は算定できることが、通則14の後段により明確化される。 別の受診として保険診療を行うケースとは、健診等を実施した医療機関で、健診等とは別の受診機会として健診関連疾病の保険診療を行う場合を指す。例えば、健診結果の説明を後日改めて行い、その場で治療を開始する場合がこれに該当する。 このケースでは、「A001」再診料または「A002」外来診療料を、それぞれの規定に従い算定できる。これは、現行の保険診療における再診料の取扱いと同じ考え方である。健診等が初診の機能を果たしているとみなし、その後の受診を再診として整理するものである。 4. 健診後の検査・治療は要件を満たせば保険給付の対象として算定できる(通則16、通則17) 健診等の結果、疾病またはその疑いが判明した場合に行う検査や治療の費用は、所定の要件を満たせば医療保険給付の対象として算定できることが、通則16および通則17により明確化される。 通則16では、健診結果に基づき治療方針を確立するために行う検査の算定要件が示される。具体的には、当該検査が健診等の一環としてあらかじめ計画または予定されていたものではないことが客観的に明らかである場合に限り、医療保険給付の対象として診療報酬を算定できる。本規定は、健診費用に含まれるべき検査と、保険診療として実施する検査を明確に区別する趣旨である。 通則17では、健診結果に基づき治療を開始した場合の治療費用の算定要件が示される。具体的には、健診等の結果、特に治療の必要性を認めて治療を開始した場合、当該治療費用について医療保険給付の対象として診療報酬を算定できる。ただし、通則14および通則15により算定できないとされる費用は対象から除外される。 まとめ|健診後の保険診療における算定ルールの整理 本改定により、健診等の受診後に保険診療を行う際の初再診料等の算定ルールが明確化される。健診等の費用は別途徴収できる一方、同日に1回の受診で保険診療を行う場合は初再診料等を算定できず、別の受診として保険診療を行う場合は再診料または外来診療料を算定できる。さらに、健診後の検査や治療の費用は、所定の要件を満たせば医療保険給付の対象として算定できる。なお、本改定は歯科においても同様に適用される。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    6分
  4. 総合診療医とは?4つの役割と地域医療の未来を旭川の医師が語る

    2日前

    総合診療医とは?4つの役割と地域医療の未来を旭川の医師が語る

    総合診療医という言葉が、ドラマ「19番目のカルテ」の放送をきっかけに、少しずつ社会に知られはじめています。しかし、総合診療医が実際に何をする医師なのか、その専門性と地域医療における役割は、まだ十分に理解されていません。本記事では、北海道旭川市で総合診療医として活動する西村涼医師へのインタビューから、総合診療医の本当の役割と価値を伝えます。 総合診療医は、「なんでも診る医者」を超え、地域医療のインフラを担う専門医です。西村医師は、総合診療医の役割を4つに整理しています。また、旭川市では2024年4月から、総合診療医を育てる専門研修プログラム(KAMUI総合診療プログラム)を開始しました。このプログラムは、医療・介護・福祉を一つの法人内で学べるエコシステムを強みとしています。 総合診療医の4つの役割 総合診療医の専門性は、4つの役割に整理できます。西村医師は、入り口の整理、コンテキストに基づく個別化医療、在宅医療、医療・介護・福祉の包括的ケアという4つの軸で、総合診療医の仕事を説明します。 入り口の整理は、総合診療医の第一の役割です。患者が「お腹が痛い」「背中が苦しい」「めまいがする」「足がしびれる」といった症状を抱えたとき、何科にかかればよいか迷うことが少なくありません。総合診療科にまず受診すれば、適切な検査と診断を行ったうえで、専門科への紹介や自科での治療の判断ができます。総合診療医は、患者と専門医療をつなぐ窓口として機能します。 コンテキストに基づく個別化医療は、第二の役割です。コンテキストとは、患者のライフステージや価値観のことを指します。たとえば、20代・30代で心疾患を発症した患者には、ガイドラインに沿った標準治療を組み合わせて進行を予防します。一方、90代後半で認知症症状のある患者には、症状緩和を優先し、薬剤を減量調整します。総合診療医は、患者の人生に合わせたオーダーメイドの処方を提供します。 在宅医療は、第三の役割であり、総合診療医の得意分野です。西村医師は、患者の自宅を訪問し、玄関の上がりかまちの高さ、寝室からトイレまでの距離、段差、手すりの有無を詳細に評価します。この評価をもとに、ケアマネージャーと連携して住環境の改善を提案します。在宅医療では、患者の生活全体を支える視点が求められます。 医療・介護・福祉の包括的ケアは、第四の役割です。総合診療医は、医療だけでなく、介護や福祉の専門職と連携し、患者を地域で支える仕組みをつくります。この役割を果たすには、医療機関の中だけで完結する診療ではなく、地域全体を見渡す視点が必要です。 西村医師が総合診療医を目指した原体験 西村医師が総合診療医を目指した原体験は、学生時代の大学病院での実習にあります。当時、各診療科の外来で、患者が「ついでに他の症状も相談したい」と話す場面を何度も目撃しました。 その場面で、医師は「それはうちの科ではなく、他科に行ってください」と患者を回していました。この対応に、西村医師は強いモヤモヤを感じたと振り返ります。患者を病気という文脈ではなく、「その人の困っていること」として捉えたいと思うようになりました。 このモヤモヤが、総合診療科を目指す出発点になりました。西村医師は、患者の困りごとを全体として受け止め、整理できる専門性を身につけるため、総合診療の道を選びました。 旭川での専門研修プログラムとビジョン 西村医師のビジョンは、「総合診療科という名前が当たり前に社会に知られている状態」をつくることです。総合診療専門医制度は2018年に開始されたばかりで、2025年時点でも全国に1000人未満の専門医しかいません。専門研修プログラムも、全国に十分整備されていない状況です。 このビジョンを実現するため、西村医師は2024年4月から、旭川でKAMUI総合診療プログラムを開始しました。プログラムは、専門医機構が定める整備基準にもとづき、入院病棟管理、外来診療、在宅での終末期ケア、家族との話し合いをカリキュラムに組み込んでいます。一つの病院では完結できないため、旭川市内の大学病院、大規模病院、道外の病院と連携し、3カ月ごとのローテーションを組んでいます。 プログラムの強みは、医療・介護・福祉を一つの法人内で学べるエコシステムです。所属法人は、病院に加えて、介護事業所の経営、ソーシャルワーカーの配置、社会福祉協議会との提携を備えています。研修医は、患者を地域で生活させるためのすべてのリソースを、均等に学ぶことができます。 地域医療における総合診療医の意義 総合診療医は、地方の中小病院と在宅医療において、二つの意義を持ちます。西村医師は、病院側の意義と患者側の意義の両方から、総合診療医の役割を整理しています。 病院側の意義は、収益向上です。総合診療医は、来院した患者を幅広く診察し、適切に整理して専門医に送るか、自科で対応するかを判断します。この機能により、病院全体の患者動線が整理され、収益が安定します。 患者側の意義は、受診先の明確化です。患者は「総合診療医がいる病院」を目印にして、最初の受診先を決められます。動線が整理されることで、たとえば血圧高値程度で大病院の夜間救急を受診し、当直医に怒られるような悲しい体験を減らせます。 総合診療科を受診するタイミング 総合診療科は、いつでも、何のきっかけでも受診できます。西村医師は、リスナーに向けて、受診のハードルを下げるメッセージを送っています。 健康診断で異常を指摘されたときは、総合診療科にまず相談できます。受診すれば、必要な検査を組んで、診断と治療方針を整理します。家族の物忘れが気になるときも、総合診療科で相談できます。受診するかどうか悩む段階の相談も歓迎です。 入院中の家族の退院支援も、総合診療科の役割です。人工呼吸器や点滴管などの医療機器がついたまま在宅に戻る場合、介護の方法や生活の整え方を一緒に考えます。患者本人と家族がつらくない状況をつくるため、総合診療医は伴走者として関わります。 まとめ 総合診療医は、「なんでも診る医者」を超え、地域医療のインフラを担う専門医です。西村医師は、入り口の整理、コンテキストに基づく個別化医療、在宅医療、医療・介護・福祉の包括的ケアという4つの役割を、旭川の現場で実装しています。総合診療専門医はまだ全国に1000人未満ですが、旭川のKAMUI総合診療プログラムは、医療・介護・福祉を一つの法人内で学べるエコシステムを強みに、地域医療の中心を担う総合診療医を育てています。 総合診療医を地域医療のインフラに据える取り組みは、病院の仕組みそのものを再設計する挑戦でもあります。西村医師は、Substack「『病院』再設計ノート」で、現場から病院の仕組みをどう組み直すかを書き続けています。総合診療、在宅医療、病院運営、AI実装を一つの絵としてつなぐ視点に触れたい方は、ぜひご覧ください。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    19分
  5. 療養・就労両立支援指導料の見直し|令和8年度改定の4つのポイント

    3日前

    療養・就労両立支援指導料の見直し|令和8年度改定の4つのポイント

    治療と仕事の両立は、日本社会における重要な課題となっています。現行の療養・就労両立支援指導料は、対象疾患が限定されており、評価額や算定期間の面でも十分とは言えない状況にあります。本記事は、令和8年度診療報酬改定で行われる療養・就労両立支援指導料の見直し内容を解説します。 療養・就労両立支援指導料の見直しは、4つの観点から行われます。第1の見直しは、勤務情報の提供方法に「治療と仕事の両立支援カード」を追加する点です。第2の見直しは、対象疾患の定めを廃止する点です。第3の見直しは、2回目以降の算定可能期間を3月から6月に延長する点です。第4の見直しは、初回・2回目以降の点数および相談支援加算を引き上げる点です。 勤務情報の提供方法の拡大 勤務情報の提供方法に「治療と仕事の両立支援カード」が追加されます。これまで医療機関が患者と事業者の共同作成文書を受け取る方法に限定されていた仕組みが、改定によって柔軟化されます。 現行制度では、患者と事業者が共同して作成した勤務情報を記載した文書が、算定の前提条件となっています。この共同作成文書には、病状や就労状況などを医療機関に伝えるための情報が記載されます。共同作成という形式が必要なため、患者と事業者の双方に作成負担が生じている状況です。 改定後は、患者が作成した「治療と仕事の両立支援カード」が、事業者の確認を経て医療機関に提供された場合も算定可能となります。この両立支援カードは、患者自身が病状や就労上の希望を記載するツールです。事業者の確認のみで足りるため、共同作成に比べて手続きの負担が軽減されます。 対象疾患の定めの廃止 対象疾患の定めが廃止され、算定対象が大幅に拡大されます。現行では7区分に限定されていた対象が、就業継続への配慮が必要な入院中以外の患者へと広がります。 現行制度の対象疾患は、悪性新生物、脳血管疾患、肝疾患(慢性)、心疾患、糖尿病、若年性認知症、指定難病等の7区分に限定されています。これらの疾患に該当しない患者は、就業継続に配慮が必要であっても算定対象とはなりません。疾患の限定は、両立支援を必要とする多様な患者を制度から排除する要因となっていました。 改定後は、疾患の増悪防止等のための反復継続した治療が必要な入院中の患者以外の患者であって、就業の継続に配慮が必要なものが算定対象となります。本指導料は外来患者を対象とした評価であるため、入院中の患者は引き続き対象外です。疾患名による制限が撤廃されるため、対象範囲はこれまでより広くなり、従来の7区分に含まれなかった疾患の外来患者にも、両立支援指導の機会が拓かれます。 算定可能期間の延長と評価の引き上げ 算定可能期間が6月に延長され、点数も全体的に引き上げられます。この見直しは、両立支援指導が3月を超えて継続されている実態を踏まえたものです。 算定可能期間は、現行の3月から改定後の6月へと延長されます。2回目以降の指導について、現行では1を算定した日の属する月またはその翌月から起算して3月が限度となっています。改定後は、同じ起算点から6月までが限度となり、より長期にわたる継続的な支援が評価対象になります。 評価の引き上げは、初回・2回目以降・相談支援加算・情報通信機器使用時のすべての項目で行われます。初回は800点から850点へ、2回目以降は400点から500点へ引き上げられます。相談支援加算は50点から400点へと大幅に増点されます。情報通信機器を用いた場合は、初回696点から740点へ、2回目以降348点から435点へとそれぞれ引き上げられます。 まとめ 令和8年度改定では、療養・就労両立支援指導料が4つの観点から見直されます。第1に、勤務情報の提供方法に「治療と仕事の両立支援カード」が追加されます。第2に、対象疾患の定めが廃止され、入院中の患者以外の算定対象が拡大されます。第3に、2回目以降の算定可能期間が3月から6月に延長されます。第4に、初回・2回目以降の点数および相談支援加算が引き上げられます。これらの見直しにより、治療と仕事の両立支援がさらに推進される改定となっています。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    6分
  6. 【令和8年度改定】外来医師過多区域の新規開業に診療報酬ペナルティ

    4日前

    【令和8年度改定】外来医師過多区域の新規開業に診療報酬ペナルティ

    令和8年度診療報酬改定では、医師の地域偏在対策の一環として、外来医師過多区域における新規開業者への診療報酬上のディスインセンティブ措置が導入されます。背景には、改正医療法による外来医師過多区域の無床診療所への対応強化があり、地域で不足する医療機能の提供に応じない医療機関の保険医療機関指定期間が3年以内に短縮される仕組みが新たに設けられました。指定期間が3年以内に短縮された医療機関については、地域医療への寄与が不十分との位置付けを踏まえ、診療報酬上の評価から除外する措置が講じられます。 具体的には、保険医療機関の指定が3年以内とされた診療所について、5つの主要な評価項目が対象から外れます。算定不可となるのは機能強化加算、地域包括診療加算、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料の4項目、届出不可となるのは在宅療養支援診療所の1項目です。改正医療法と診療報酬を連動させたこの仕組みは、医師偏在対策の実効性を高める初の試みとして位置付けられます。 外来医師過多区域対応の背景と目的 医師の地域偏在は、2040年頃を見据えた医療提供体制の確保において、最も重要な課題のひとつです。都市部に医師が集中する一方、医師少数区域では医療機関の維持が困難になりつつあり、「保険あってサービスなし」との事態に陥る懸念が指摘されています。こうした状況を打開するため、令和7年12月に医療法等の一部を改正する法律が公布され、医師偏在是正に向けた総合的な対策が法制化されました。 改正医療法では、外来医師過多区域の無床診療所への対応が強化されました。具体的には、新規開業の事前届出制、要請・勧告・公表の手続き、そして保険医療機関の指定期間の短縮といった措置が導入されています。都道府県知事は、外来医師過多区域での新規開業者に対し、開業6か月前の届出を求め、地域で不足する医療機能や医師不足地域での医療提供を要請することができます。要請に従わない場合には、保険医療機関の指定期間が通常の6年から3年以内に短縮される仕組みです。 診療報酬改定では、この改正医療法と連動したディスインセンティブ措置を講じます。指定期間が3年以内に短縮された医療機関は、地域医療への寄与が不十分との位置付けであることを踏まえ、かかりつけ医機能等を評価する主要な診療報酬項目の対象から除外されます。診療報酬と医療法を連動させることで、医師偏在対策の実効性を高めることが今回の改定の目的です。 対象から外れる5つの評価項目 指定期間が3年以内に短縮された診療所では、5つの評価項目が対象から外れます。算定不可となるのは機能強化加算、地域包括診療加算、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料の4項目です。これに加えて、在宅療養支援診療所の届出ができなくなります。いずれも、かかりつけ医機能や地域医療を担う医療機関を評価する重要な項目であり、診療所経営への影響は決して小さくありません。 機能強化加算は、専門医療機関への受診の要否の判断や一元的な服薬管理等を含めた、診療機能を評価する初診料の加算です。地域包括診療料・加算は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症、慢性心不全、慢性腎臓病のうち2つ以上の慢性疾患を有する患者に対する、継続的かつ全人的な医療を評価する項目です。小児かかりつけ診療料は、小児に対する継続的かつ全人的な医療を評価する項目として位置付けられています。 在宅療養支援診療所は、地域において在宅医療を支える24時間の窓口として、他の医療機関と連携を図りつつ24時間往診や訪問看護等を提供する診療所を評価する仕組みです。これら5項目はいずれも、地域医療への積極的な貢献を前提とした評価であり、地域で不足する医療機能の提供要請に応じない医療機関を対象外とすることには明確な政策的合理性があります。 改定内容の具体的な規定 施設基準の改定内容は、機能強化加算を例にとると明確に把握できます。改定後の施設基準では、「健康保険法第六十八条の二第一項の規定により三年以内の期限が付された同法第六十三条第三項第一号の指定を受けた診療所以外の保険医療機関であること」が新たに加わります。つまり、指定期間が3年以内に短縮された診療所は、機能強化加算の算定要件を満たさないことが明文化されます。 同様の規定は、地域包括診療加算、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料、在宅療養支援診療所の施設基準にも追加されます。条文上の表現は項目ごとに揃えられており、改正医療法における健康保険法第六十八条の二第一項の規定を共通の参照点として、5項目に一貫した形で適用される構成です。施設基準の通知においても、同趣旨の規定が新設されます。 新規開業を検討する医師にとっては、開業地の選定段階から外来医師過多区域に該当するかどうかの確認が不可欠となります。外来医師過多区域に該当する場合は、都道府県知事からの要請内容を十分に検討し、地域で不足する医療機能の提供に応じるか否かを判断する必要があります。要請に応じない選択をする場合には、診療報酬上の主要な加算・料が算定できないことを前提とした事業計画の策定が求められます。 まとめ:改正医療法と診療報酬の連動による医師偏在対策 令和8年度診療報酬改定では、外来医師過多区域における医師偏在対策として、診療報酬上のディスインセンティブ措置が導入されます。都道府県知事の要請に応じず保険医療機関の指定が3年以内とされた診療所は、機能強化加算、地域包括診療加算、地域包括診療料、小児かかりつけ診療料の4項目が算定不可となり、在宅療養支援診療所の届出ができなくなります。改正医療法と診療報酬を連動させたこの新たな仕組みは、医師偏在対策の実効性を高める制度設計の出発点として位置付けられます。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    5分
  7. 【令和8年度改定】包括型訪問看護療養費を新設|高齢者住まい併設ステーション対応

    5日前

    【令和8年度改定】包括型訪問看護療養費を新設|高齢者住まい併設ステーション対応

    令和8年度診療報酬改定では、高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションを対象に、新区分「包括型訪問看護療養費」が新設されます。背景には、併設ステーションが居住者へ短時間で頻回の訪問看護を効率的に実施できる一方、現行の出来高評価では加算が積み上がり訪問看護療養費が高額化する構造的な問題があります。本メルマガでは、対象施設・利用者、点数体系、算定要件、施設基準を整理し、改定への実務対応を解説します。 包括型訪問看護療養費は、1日当たりの包括評価として算定する新たな報酬体系です。対象は併設・隣接ステーションが指定する建物の居住者であり、別表第7・第8該当者または特別訪問看護指示書に基づく利用者に限られます。点数は単一建物居住利用者数(20人未満・20人以上50人未満・50人以上)と訪問時間(30分以上60分未満・60分以上90分未満・90分以上・90分以上で大臣が定める場合)の組み合わせで決まり、5,950円から15,500円までの9区分が設定されています。算定には24時間対応体制、日中・夜間それぞれ1回以上の訪問、計画書の1日1回以上の確認などが求められ、関連する加算等の併算定には広範な制限が設けられます。 新設の背景|効率的な訪問看護と高額化する療養費 高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションは、居住者に対し短時間で頻回な訪問看護を効率的に実施できる環境にあります。中医協資料(在宅その2)によれば、住宅型有料老人ホームに併設・隣接する訪問看護事業所のうち87.6%は関連法人が運営しており、移動時間や提供時間が短い特性から、医療機関の入院患者への看護に近い継続的・断続的なケアが提供されている実態があります。 こうした効率的な訪問看護に対し、現行の出来高評価では加算が積み重なり訪問看護療養費が高額化する構造的な問題が指摘されてきました。中医協が示した試算例では、別表第7該当者50名が居住する高齢者住まいで併設ステーションが訪問看護を実施した場合、訪問看護基本療養費(Ⅱ)に難病等複数回訪問加算・複数名訪問看護加算・夜間早朝加算・深夜加算等が積み上がり、利用者1人当たり1月で約88万円に達するケースが提示されています。 この構造を是正する観点から、令和8年度改定では一連の頻回訪問看護を1日単位で包括評価する体系が新設されます。包括型訪問看護療養費は、効率的な提供環境を点数体系に反映させると同時に、24時間体制での計画的な訪問看護を要件化することで、提供の質と請求の適正化を両立させる仕組みです。 点数体系|単一建物居住者数と訪問時間の組み合わせで算定 包括型訪問看護療養費は、単一建物居住利用者数と1日当たりの訪問時間の組み合わせにより、9区分で算定します。利用者数の区分は「20人未満」「20人以上50人未満」「50人以上」の3段階、訪問時間の区分は「30分以上60分未満」「60分以上90分未満」「90分以上」「90分以上で別に厚生労働大臣が定める場合」の4段階で設定されています。 単一建物居住利用者が20人未満の場合は、30分以上60分未満で7,000円、60分以上90分未満で11,000円、90分以上で14,000円、90分以上で大臣が定める場合で15,500円となります。20人以上50人未満の場合は、それぞれ6,300円、9,900円、13,720円、15,190円です。50人以上の場合は、それぞれ5,950円、9,350円、13,440円、14,880円が算定可能です。 「90分以上で別に厚生労働大臣が定める場合」とは、緊急時に即時対応できる体制を有し、かつ算定対象利用者全員の1日当たり訪問時間の平均が120分以上である場合を指します。利用者数が多い建物ほど効率性が高いと評価され、1人当たりの点数は低く設定される構造です。 算定要件|24時間体制と日中・夜間の訪問が必須 包括型訪問看護療養費の算定には、24時間対応体制での計画的または随時の頻回訪問看護が前提となります。算定対象は、別表第7該当の疾病等の者、別表第8該当者、または特別訪問看護指示書に係る指定訪問看護を受けている者(以下「大臣が定める者」)に限られます。利用者の同意を得た上で、主治医(保険医療機関の保険医、介護老人保健施設または介護医療院の医師)から交付された訪問看護指示書および訪問看護計画書に基づき実施します。 訪問の頻度については、日中および夜間帯(午後6時から午前8時まで)にそれぞれ少なくとも1回ずつの指定訪問看護が必要です。1日当たりの訪問看護実施時間が60分以上となる場合は、1日3回以上の訪問を実施しなければなりません。訪問時間は1日に行った複数回の指定訪問看護で実際に看護を提供した時間を合算して算出します。 看護職員の関与に関する要件も明確化されています。1日に1回以上、准看護師を除く看護職員による訪問が含まれる必要があります。また、訪問看護ステーションの管理者または当該日の指定訪問看護に関する責任を担う看護職員(准看護師を除く)が、訪問看護計画書について1日1回以上の確認と必要時の見直しを行います。記録については、訪問看護計画書および訪問看護記録書を電子的方法で記録し、実施した指定訪問看護の内容と実施時間を記載します。 同一建物内の利用者属性に応じた算定方法も整理されています。届出を行った建物に居住する「大臣が定める者」に対して1日に2回以上の指定訪問看護を行う場合は、包括型訪問看護療養費以外の訪問看護基本療養費等は算定できません。一方、届出建物に居住していても「大臣が定める者」に該当しない利用者(別表第7・第8該当者でも特別訪問看護指示書対象者でもない利用者)に指定訪問看護を行った場合は、訪問看護基本療養費(Ⅱ)等を算定します。 算定上の併算定制限にも注意が必要です。包括型訪問看護療養費を算定する場合、同一日に「訪問看護基本療養費(訪問看護基本療養費(Ⅰ)および(Ⅱ)のハを除く)」、精神科訪問看護基本療養費、難病等複数回訪問加算、複数名訪問看護加算、夜間・早朝訪問看護加算、深夜訪問看護加算、複数名精神科訪問看護加算、精神科複数回訪問加算、訪問看護管理療養費および24時間対応体制加算は別に算定できません。ここで除外される「訪問看護基本療養費(Ⅰ)」と「訪問看護基本療養費(Ⅱ)のハ」(=理学療法士等による訪問)は、包括型との同日算定が可能です。なお、緊急訪問看護加算および精神科緊急訪問看護加算は、別に厚生労働大臣が定める場合を除き、別途算定可能です。 施設基準|建物の指定と看護職員配置の要件 包括型訪問看護療養費の届出には、訪問看護ステーションが高齢者向け住まい等に併設または隣接していることが前提となります。届出時には、併設・隣接する高齢者向け住まい等のうち算定対象とする建物を訪問看護ステーションにつき1か所指定し、その建物を単位として指定訪問看護を実施します。届出は訪問看護ステーションごとに行う必要があり、サテライトのみが併設・隣接している建物では届出できません。ただし届出済みステーションが当該建物以外の場所にサテライトを設置し、そこから建物外の他の利用者へ包括型を算定しない指定訪問看護を実施することは差し支えありません。 組織体制および地域連携に関する要件も求められます。医療安全および衛生管理に関する組織的な取組み、合同研修や事例検討会等を通じた地域の保険医療機関または訪問看護ステーションとの連携実績、厚生労働大臣が実施する利用者状態・訪問看護実施状況等に関する毎年の調査および中医協要請に基づく随時調査への適切な参加が必要です。指定訪問看護に係る記録は電子的に行い、看護職員の負担軽減および処遇改善に資する体制の整備も求められます。 看護職員の配置については、夜間帯(午後6時から午前8時まで)の対応体制が詳細に規定されています。算定区分1・2・3のハまたはニを算定する利用者に対し、夜間帯の対応を行う看護職員を常時1名以上配置することが原則です。当該利用者の合計が31以上80以下の場合は2名以上、81以上の場合は50またはその端数を増すごとに1名を加えた数以上の配置が求められます。夜間対応の看護職員は、算定利用者への影響を与えない範囲で同建物内の他の利用者への訪問看護に従事できますが、建物外の利用者への訪問看護との兼務はできません。 施設基準のうち、地域の保険医療機関等との連携に関する相当な実績については経過

    5分
  8. 【令和8年度改定】同一建物の訪問看護、人数・日数で評価が細分化へ

    6日前

    【令和8年度改定】同一建物の訪問看護、人数・日数で評価が細分化へ

    高齢者住まい等に居住する利用者への訪問看護は、近年、多人数への頻回な訪問が短時間で効率的に行われる傾向が強まっています。しかし、現行の訪問看護基本療養費(Ⅱ)等は、同一日に3人以上か否かといった粗い人数区分に留まり、効率性の実態を十分に反映できていません。この課題を踏まえ、令和8年度診療報酬改定では、訪問看護基本療養費(Ⅱ)等とその関連加算を、1月当たりの訪問日数や建物内の訪問人数に応じたきめ細かな評価へと再編します。 本改定の柱は4点です。第1に、訪問看護基本療養費(Ⅱ)等の人数区分を、現行の2区分から「2人」「3人以上9人以下」「10人以上19人以下」「20人以上49人以下」「50人以上」の5区分へ細分化します。第2に、訪問時間の標準を30分以上とし、20分未満の訪問は算定不可とする要件を新設します。第3に、同一建物の定義に同一敷地内の建物を含めるよう拡張します。第4に、難病等複数回訪問加算や夜間・早朝・深夜訪問看護加算、複数名訪問看護加算についても、人数や日数に応じた段階評価へ見直します。 なお、頻回訪問を24時間体制で行う高齢者住まい等併設・隣接ステーションについては、加算による評価ではなく、新設される「包括型訪問看護療養費」(Ⅱ-5-2⑧)で別途評価されます。本メルマガで扱う加算の段階評価は、その他のケースに適用される枠組みです。 訪問看護基本療養費(Ⅱ)が人数区分2区分から5区分に再編 訪問看護基本療養費(Ⅱ)の人数区分は、現行の2区分から、同一建物に居住する利用者の人数に応じた5区分へと細分化されます。現行は「同一日に2人」と「同一日に3人以上」の2区分でしたが、改定後は「2人」「3人以上9人以下」「10人以上19人以下」「20人以上49人以下」「50人以上」の5区分となります。これにより、大規模な高齢者住まい等への効率的な訪問の実態が、点数体系に直接反映される構造になります。 新たに設定される10人以上の3区分では、1月当たりの訪問日数による段階評価も導入されます。保健師・助産師・看護師による訪問の場合、例えば「同一日に50人以上」では、1月当たり20日目までが2,610円、21日目以降は2,510円と、頻回訪問に対して逓減的な点数が設定されます。准看護師による訪問にも、同じ5区分と日数階層が適用されます。建物規模と訪問頻度の両軸で評価が分かれる点が、今回の改定の特徴です。 理学療法士・作業療法士・言語聴覚士による訪問にも、同じ5区分の人数区分が適用されますが、週・月の段階の入り方は職種により異なります。保健師等と准看護師では、「2人」と「3人以上9人以下」の区分内に「週3日目まで/週4日目以降」の段階がありますが、PT・OT・STの場合は、これらの区分はフラット料金(週・月による段階なし)です。一方、10人以上の3区分では、職種を問わず1月当たりの日数階層が共通で適用されます。 訪問時間の標準を「30分以上」とする要件を新設 訪問看護基本療養費(Ⅱ)等を算定する場合に、適切な訪問時間に関する要件が新たに設けられます。具体的には、適切な指定訪問看護の時間は30分以上を標準とし、20分を下回る訪問では基本療養費(Ⅱ)およびその加算等を算定できません。実施した時間は訪問看護記録書に記載することが義務付けられ、短時間訪問の濫用を抑制する仕組みとなります。 短時間訪問の合算ルールも新設されます。前回提供した訪問看護の終了から2時間未満の間隔で、提供時間が20分以上30分未満の指定訪問看護を行う場合、それぞれの所要時間を合算して1回として扱います。ただし、緊急の指定訪問看護はこの合算対象から除かれます。短い訪問を分割して複数回算定する運用が、これにより制限されます。 同一建物の定義に同一敷地内の建物を追加 同一建物の定義は、同一敷地内の建物まで含むよう拡張されます。現行では「当該者と同一の建物に居住する他の者」が同一建物居住者の対象でしたが、改定後は「同一の建物又は同一の敷地内の建物に居住する他の者」も対象となります。この見直しにより、敷地内に複数棟を構える高齢者住まい等への訪問も、同一建物居住者として扱われます。 この定義の見直しは、介護保険における取り扱いとも整合性を高めるものです。介護保険では従来から、同一敷地内や隣接する敷地内の建物に居住する利用者への訪問看護費に減算が適用されてきました。医療保険でも同一敷地内の建物を同一建物と扱うことで、訪問看護ステーションが敷地内の複数棟を効率的に巡回する場合に、その実態が評価に反映される仕組みとなります。 主要加算も人数・日数に応じた段階評価へ 難病等複数回訪問加算は、同一建物内の算定人数に応じた5区分の評価へと細分化されます。現行は「1人または2人」「3人以上」の2区分でしたが、改定後は「1人または2人」「3人以上9人以下」「10人以上19人以下」「20人以上49人以下」「50人以上」の5区分になります。1日に3回以上の場合は、「1人または2人」の区分はフラット料金(8,000円)ですが、「3人以上9人以下」以降の区分には1月当たりの算定日数による段階も加わります。例えば「3人以上9人以下」で1日3回以上の場合、20日目までが7,200円、21日目以降は6,900円となります。 複数名訪問看護加算と複数名精神科訪問看護加算についても、同一建物内の算定人数に応じた5区分の評価が導入されます。看護職員と他の看護師等が同時に訪問する場合、現行の「1人または2人」「3人以上」の2区分から、難病等複数回訪問加算と同じ5区分構造へと再編されます。准看護師との同時訪問や、その他職員との同時訪問にも、同様のパラレルな構造が適用されます。 夜間・早朝訪問看護加算と深夜訪問看護加算は、人数による5区分を基本とし、3人以上の区分には1月当たりの算定日数による段階が加わります。「同一建物内2人」の区分は日数階層がないフラット料金(夜間・早朝2,100円、深夜4,200円)です。一方、3人以上の4区分では、1月当たり15日目までと16日目以降で段階評価が設定されます。例えば夜間・早朝訪問看護加算の「同一建物内50人以上」では、1月当たり15日目までが1,000円、16日目以降は800円となり、深夜訪問看護加算では同じ階層構造で1,800円・1,300円が設定されます。 まとめ:効率性の実態を反映した、きめ細かな評価体系へ 令和8年度改定における同一建物への訪問看護の見直しは、訪問の効率性を点数体系に反映させる方向で、4つの軸から進められます。すなわち、訪問看護基本療養費(Ⅱ)等の人数5区分化と日数階層の導入、訪問時間の標準化と短時間訪問の合算ルール、同一敷地内まで含めた同一建物の定義拡張、そして主要加算の段階評価への再編です。なお、24時間体制で頻回訪問を行う高齢者住まい等併設・隣接ステーションは、加算による評価ではなく新設の「包括型訪問看護療養費」で別途評価される点にも留意が必要です。高齢者住まい等に併設・隣接する訪問看護ステーションを運営する事業者にとっては、収益構造に直接影響する改定であり、令和8年度の施行に向けて算定要件の確認と運用体制の見直しが急務となります。 Get full access to 岡大徳のメルマガ at www.daitoku0110.news/subscribe

    6分

評価とレビュー

番組について

病院事務長が実務と経営の視点で語る、医療制度の最新動向。急性期〜回復期で幅広い部門を統括してきた経験をもとに、最新の令和8年度診療報酬改定(算定要件・疑義解釈)や施設基準、医療DXの解説を音声で配信。経営層から現場の事務担当者まで、忙しい合間に「現場で使える知識」をアップデートできます。 www.daitoku0110.news