市場の風を読む

モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。

  1. 今後数カ月にわたり原油供給の逼迫が続く可能性があるのはなぜか

    6月4日

    今後数カ月にわたり原油供給の逼迫が続く可能性があるのはなぜか

    弊社グローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツが、ホルムズ海峡を通る原油輸送の再開が、市場の想定よりも遅く、かつ供給制約の強いものとなる可能性があるのはなぜかについて解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト: 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社グローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツが、中東の生産はどのくらいの速さで回復し得るのかについてお話しします。 このエピソードは6月4日にロンドンにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 ガソリンスタンドに立ち寄るたびに、価格が目に入ってきます。給油機で目にする価格は、ここ数カ月にわたり注視してきた世界的なシステムの、いわば入り口にすぎません。タンカー、貯蔵設備、保険、海上輸送ルートのいずれも、なおホルムズ海峡の影響で制約を受けています。しかし、給油所の価格が依然として高い一方で、ブレント原油価格は実際には1バレル当たりおよそ92ドルまで下がっています。 インフレ調整後で見ると、現在のブレント価格は過去20年のちょうど50パーセンタイル 付近にあります。これは、市場が供給は近い将来すっきりと回復する、と見込んでいることを示唆しています。とはいえ、混乱の規模は依然として極めて異例です。湾岸地域の原油のうち、日量およそ1,100万バレルが依然として停止したままで、紛争前のこの地域の生産量のほぼ半分に相当します。 弊社は、市場がやや楽観的すぎる可能性があると考えています。現時点での弊社の基本シナリオでは、海峡を通る輸出の本格的な回復が始まるのは7月後半になってからです。しかも、その段階になっても、何かのスイッチを切り替えるように一気に正常化するわけではありません。 第一に、船舶が実際に航行する意思を持つ必要があります。船主や保険会社は、その水路が安全だという確信を持たなければなりません。従来の航路に機雷が残っていれば、海峡が技術的には開いていても、処理能力を落として運用される可能性があります。このリスクを取り除くには数週間、場合によっては数カ月かかることもあります。 第二に、タンカー船隊が適切な場所にいません。船舶が湾岸地域で稼働できないと、ほかの地域へ移ってしまいます。原油積み出しに必要なだけの空船タンカーを再び戻すには、時間がかかります。 第三に、貯蔵能力が制約要因になります。輸出用タンクが満杯であれば、油田は再稼働できません。したがって、海上輸出への依存度が高い産油国にとって、空のタンカーは不可欠です。 最後に、油田そのものも再稼働させる必要があります。閉鎖前には、湾岸地域の6つの産油国でおよそ3万6,000本の坑井が稼働していました。このうち現在、およそ1万本が停止しています。ほぼ5カ月に及ぶ生産停止の後では、このうちおよそ4,000〜5,000本の坑井が再稼働時の制約に直面する可能性があります。油層圧力が低下している可能性があり、設備は長期間停止していたことで不具合を起こすこともありますし、フローラインには清掃や安全確認が必要です。 総合すると、ホルムズ海峡を通る輸送が再開してから4カ月以内に、失われた供給のおよそ75パーセントはおそらく戻るとみられます。しかし、残る25パーセントが戻るのは、2027年にかなり入ってからになる可能性があります。 では、なぜ価格はもっと大きく動いていないのでしょうか。市場は今回のショックを、いくつかの緩衝材を持った状態で迎えました。在庫水準は高く、洋上在庫も多く、緊急備蓄の放出も支えとなりました。米国は、原油および石油製品の海上純輸出を、日量およそ500万バレルから900万バレルへと増やしました。同時に、中国の海上石油純輸入は、1年前の日量およそ1,300万バレルから、直近30日間では日量750万バレル強へと減少しました。 しかし、こうした緩衝材は薄れつつあります。戦略備蓄の放出量は、4月から6月にかけての日量およそ250万バレルから、7月と8月には日量およそ70万バレルへと減る予定です。米国のガソリンおよびディーゼル在庫は、すでに過去5年の季節的な低水準を大きく下回っています。中国でも、4月積みから8月積みにかけて、5カ月連続で原油購入が異例に低い水準となる見通しです。ただ、そうなると、中国の買い手が9月積みの原油の購入に戻ってくる確率が高まります。通常、9月積みの購入は6月中旬から下旬に始まります。 現在、原油は、まるで混乱がほぼ終わったかのように取引されています。しかし同時に、現物のシステムは、もっと時間がかかることを示しています。画面上では価格は落ち着いて見えるかもしれませんが、ボトルネックはタンカー、貯蔵タンク、坑井、そして作業員にあります。 弊社のブレント原油価格見通しは、第2四半期が1バレル当たり110ドル、第3四半期がおよそ100ドルで据え置いています。さらに最近では、第4四半期の予想を95ドル、2027年第1四半期の予想を85ドルへ引き上げており、その後はいずれ1バレル当たり80ドルへ戻ると見込んでいます。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    7分
  2. 株式・債券・原油がそろって動くとき

    6月2日

    株式・債券・原油がそろって動くとき

    弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、市場がいくつかのマクロ要因を軸にこれまで以上に同調して動いているように見える中で、どのような投資の道筋が考えられるのかを詳しく考察します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、株式と債券の連動性が非常に高い一方で、同時に大きなばらつきも見られるという、いまの市場をどのように読み解くべきかを考えます。 このエピソードは6月2日にロンドンにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 一つの市場――。最近の投資環境は、そのように表現されることがあるかもしれません。厳密に言えば、それは正しい見方です。大半の投資家のポートフォリオの大部分を占める二つの「主要」資産クラスである株式と債券が、異例なほど足並みをそろえて動いています。利回りが低下すると株価は上昇し、逆に利回りが上昇すると株価は下落する――そうした関係が、過去20年以上で最も一貫して見られています。 そして、おそらく不思議ではありませんが、そのどちらも原油価格と密接に連動して動いています。この時点では、全体像はかなり明確に見えます。イランを巡る紛争は市場にとって非常に大きな問題であり、世界のエネルギー供給に対する史上最大の混乱を意味しています。もちろん、株式も債券も原油も、この極めて大きな問題がどのように決着するかという見方に基づいて、そろって動いているのです。 その意味で、市場がかなり堅調に見える足元においても、この紛争が依然としてきわめて重要であることが示唆されています。 株式、債券、商品価格がどの程度そろって動いているかを測ることができるのと同じように、個別株同士がどのように動いているかを追うこともできます。では、こうした主要資産クラスに見られるように、株式もまた一斉に上がったり下がったりしているのでしょうか。答えはノーです。誇張ではなく、実際にはまったく逆の状況です。 たとえばS&P500を構成する個別銘柄同士が、互いにどのように動いているかを測る方法はいくつかあります。しかし、どの指標を見ても示していることは同じです。日々の値動きにおいて、株式は異例なほど分散し、それぞれ独立して動いています。株式と債券の関係が過去20年以上で最も強くなっているのと同時に、S&P500の構成銘柄同士の関係は、むしろ最も低い水準にあります。 もし、先ほどお話しした株式と債券の強い連動を生み出している要因がイランだとすれば、個別企業レベルに落とし込んだときに逆の現象を引き起こしている背景には、人工知能、つまりAIがあるのかもしれません。ある企業はAIの非常に大きな恩恵を受ける一方で、別の企業は取り残される――そうした見方が、少なくともパフォーマンスのばらつきの一因を説明します。さらに注目度の差もあるでしょう。AIに敏感な銘柄にあまりに多くの関心とポジショニングが集まることで、市場のその他の部分はあっという間に忘れられたような状態になり、その結果、より独立して動きやすくなるのです。 実際、S&P500が再び過去最高値圏に近づいている一方で、上昇銘柄数と下落銘柄数のどちらが多いかを示す市場のアドバンス・デクライン・ラインは、2月下旬や4月半ばの水準を下回っています。 ここから導かれる示唆はいくつかあります。第一に、足元では株式と債券は密接に連動していますが、エネルギー市場へのストレスがさらに深刻になれば、この相関は反転すると弊社は考えています。原油価格が弊社コモディティ・チームの弱気シナリオである1バレルあたり130~150ドルまで急騰した場合、市場はこうした状況が成長に与える影響をより懸念するようになり、利回りは低下し始めるとみています。したがって、これまで債券による分散効果には失望もありましたが、本当に重要な局面では、その効果は改善し、しっかり現れてくると考えています。 株式市場においては、この分散の大きさは、銘柄選択によって市場全体とは異なる成果を上げられる可能性を意味します。実際、自分はストックピッカーだと考える方にとって、銘柄間の相関が低い市場こそ、まさに望ましい環境です。さらに言えば、個別銘柄の多くは、市場全体の水準が示唆するほど過熱していない可能性もあります。最近この番組でもお話ししたように、私の同僚であるマイク・ウィルソンと弊社米国株式ストラテジー・チームは、ここから米国株の上昇はより幅広い銘柄に広がっていくと予想しています。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    7分
  3. 米中首脳会談の後に何が変わったのか

    5月28日

    米中首脳会談の後に何が変わったのか

    弊社グローバルリサーチ副責任者のマイケル・ゼザスが、最近の米中首脳会談によって目先のリスクはいくぶん和らいだ可能性はあるものの、投資家にとっての大きな構図は変わっていない理由を解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社グローバルリサーチ副責任者のマイケル・ゼザスが、最近の米中首脳会談から投資家がどのような示唆を得るべきかについてお話しします。 このエピソードは5月28日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 大きな注目を集めていた米中首脳会談から、2週間が経ちました。トランプ大統領と習主席は、両国関係における幅広い論点について協議するために会談しました。もちろん、投資家はその動向を注意深く見守っていました。両国関係と、それが世界の経済環境に及ぼし得る影響は、重要な局面ごとに市場を動かしてきた要因の一つです。 とりわけ注目されてきたのは、貿易関係をめぐるぎりぎりの駆け引きです。2025年には、関税水準がマクロ市場に大きな影響を及ぼし、半導体やレアアースをめぐる輸出規制が、テクノロジー・ハードウェアなど主要な株式セクターの変動性を高めました。首脳会談を迎える時点で、両国はかろうじて均衡を保っており、去年の政策面での激しい変動は、今年に入って不安定ながらも一応の落ち着きへと移っていました。 では、この首脳会談で何かが変わったのでしょうか。 弊社が把握している限りでは、実のところ、そう大きくは変わっていません。機微性の低い分野ではいくらかの前進が見られましたが、投資家はそれをもって関係が持続的に立て直されたと受け取るべきではありません。弊社の見方では、今回の首脳会談が示しているのは、より管理された関係であって、根本的に安定した関係ではありません。 投資家が念頭に置いておくべき点は次のとおりです。言うまでもないことかもしれませんが、ここから先は、それぞれの国がどのような具体的な公共政策上の選択を行うかが極めて重要になります。トランプ大統領は、米中関係への新たな投資の重要性を強調しました。これは前向きなことです。対話しないより、対話するほうがよいからです。ただし、より大きな論点は、この先に何が起きるかです。 これまでのところ、貿易・投資協力の委員会を設けるための共同の取り組みに関する幅広い表現が、実際に機能する枠組みに落とし込まれている様子は見られていません。もしそうした枠組みが具体化すれば、より安定した関係を示唆する可能性があります。 ですので、投資家にとって今回の首脳会談は、転換点というよりも、現状維持の継続として捉えるのが適切です。目先のテールリスクを和らげる可能性はあり、それだけでも、株式市場を押し上げている多くの前向きな要因を支えるには十分です。 しかし、米中間の競争を支えている構造的な力がなくなるわけではありません。 つまり弊社は、今後もこの関係を経済と市場のカタリストとして注視し、引き続き皆さまに最新情報をお届けしてまいります。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    5分
  4. AI関連にとどまらないアジアの設備投資ブーム

    5月26日

    AI関連にとどまらないアジアの設備投資ブーム

    アジアではAI関連の投資だけでなく、エネルギーや防衛関連の投資も加わって数十年ぶりの強力な産業サイクルの原動力になる可能性があります。弊社アジア・チーフ・エコノミストのチェタン・アハヤがご説明します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は弊社アジア・チーフ・エコノミストのチェタン・アハヤが、アジアが2000年代半ば以来の強力な産業サイクルに向かっている理由についてお話しします。 このエピソードは5月26日 に香港にて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 アジア市場の話題はAIに偏って、いえ、ほとんどそれだけに集中しています。しかしながらAIは、この地域で起きているもっとすそ野の広い変化のひとつの側面にすぎません。 弊社では、アジアが産業スーパーサイクルに入りつつあると考えています。その原動力はAI関連、エネルギー、防衛、そしてより広範囲な産業分野における設備投資の継続的な増加です。 裏付けとなる数字は巨大です。弊社では、アジアの設備投資額の合計が今日のおよそ 約11兆ドルから2030年までには16兆ドルに伸びると予測しています。今後5年間に年率7%の成長を遂げる計算になりますが、この伸び率は過去2年間の3倍に当たるハイペースであり、非常に大きな意味を持ちます。しかもAI関連、エネルギー、防衛、そしてより広範囲な産業などの高成長分野の設備投資は、年率およそ 約16%というさらに速いペースで伸びていくと弊社では予想しています。 では、これらの原動力についてひとつずつお話ししましょう。 この勢いを支える一番の原動力がAI関連であることは間違いありません。アジアはAIインフラへの投資をさらに増やす必要があります。それと同時に、アジアの半導体チップやメモリのメーカーは、データセンターの建設を急ぐ米国のハイパースケーラー各社の需要に応えるべく、設備投資を拡大させています。 2つ目の原動力はエネルギーです。アジアは今、AIの電力確保、エネルギー移行、エネルギー安全保障という3つの理由から、エネルギー・セクターに投資しなければならない状況になっています。AIのコンピューターによる電力需要は指数関数的に増えていますし、各国は再生可能エネルギーへの移行も進めなければならず、送配電網、蓄電施設、発電機などへの投資増額が必要不可欠になっています。さらには、昨今の地政学的緊張を受けてエネルギー安全保障政策の優先順位も引き上げられています。輸入エネルギーに依存しているアジアにおいては、特にそうです。 3つ目の原動力は防衛です。昨今は中東情勢が緊迫の度を増していますが、実はそれ以前からアジアの防衛予算は増加しつつありました。今年は中国が、GDP成長率を上回るペースで防衛費を増やす計画を立てています。またインドも今年、防衛関連の設備投資への予算配分を18%増やしました。同時に日本、韓国、台湾でも防衛費増額の動きがあり、実行されればその合計の対GDP比は およそ 約1.7%から3%に拡大します。 4つ目の原動力はより広範囲な産業分野への投資です。アジアではどの国・地域も自国のサプライチェーンの安全確保に取り組んでおり、国内での生産活動に欠かせない重要な投入財の生産能力の国内回帰、すなわち「オンショアリング」に力を入れています。 では、以上のことはアジアにとって何を意味するのでしょうか。それは、この地域が設備投資増加の恩恵を2度享受しそうだということです。第1に、アジアで設備投資が増えればアジア自体の産業サイクルが活気づきます。第2に、アジアが世界の工場であることを考慮しなければなりません。先ほどお話しした分野への設備投資が世界のほかの地域で増えるにつれて、アジアはその需要に応えることからも利益を得るのです。 力強い産業サイクルが起きる証拠は、すでに目に見えるものになっています。弊社では設備投資の代理指標として資本財輸入に注目していますが、この指標が金額ベースで前年比27%という非常に高い成長を遂げているのです。工業生産高の伸び率も4年ぶりの高さに近づいています。そして工業生産高の観点で重要な非テクノロジー関連の輸出も、 去年 昨年第4四半期以降、力強い回復を遂げています。 では今後、アジアのどの国が恩恵を享受するのでしょうか。正確に言えば、すべての国が享受します。ただ、最大の受益者は中国、日本、韓国、そして台湾でしょう。国内需要と輸出需要の両方に応えるからです。一方、インドの産業は主に国内の設備投資サイクルの恩恵を受けます。また、アジアの工業生産が上向きになったことは産業向けコモディティの価格を押し上げており、アジアのコモディティの2大輸出国であるオーストラリアとインドネシアの追い風になっています。 アジアの経済成長物語の次の章は、ほかの部分にも浸透していくことでしょう。設備投資の増加は雇用・所得の増加につながり、さらには消費者にも届いていくのです。これこそが、話がAI関連だけにとどまらない理由です。これはアジア全体の、すそ野の広い景気回復につながっていく話なのです。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    8分
  5. 日本の銀行業の新たな地図

    5月22日

    日本の銀行業の新たな地図

    日本の銀行業界は、デジタルインフラ、M&Aサイクルの拡大、そして預金獲得競争の高まりによって姿を変えつつあります。この変化の中で、最も恩恵を受けるのは誰でしょうか。 トランスクリプト 「市場の風を読む(Thoughts on the Market)」へようこそ。モルガン・スタンレーMUFG証券、日本の金融業界リサーチヘッドの長坂美亜です。 本日は、日本の金融業界の構造を変えている3つの重要テーマについてお話しします。デジタル資産、M&A、そして預金獲得競争です。 こちらは東京時間午前10時、 5月22日(金)に収録しています。   一見すると、デジタル資産、M&A、預金獲得競争は、それぞれ異なるテーマのように聞こえるかもしれません。暗号資産の話、企業の経営戦略の話、そして預金商品の話です。 しかし日本では、これらはすべて同じ大きな変化を示しています。それは金融が従来の「預金と貸出中心」のモデルを超えて進化しているということです。 これまで数十年にわたり、日本の銀行業は主に「誰が最大のバランスシートを持つか」で競われてきました。 しかし現在では、「顧客関係を誰が握るのか」「取引フローを誰が押さえるのか」「金融プラットフォームを誰が主導するのか」がより重要になっています。 それでは順を追って見ていきます。   まずデジタル資産です。暗号資産はこれまで主に投機的な取引として見られてきました。 しかし今、より重要なのは、金融インフラそのものがどのように再設計されるかという点です。 日本では、セキュリティトークン、トークン化預金、デジタル証券決済といった分野で、金融機関とインフラ事業者の連携が進んでいます。 一例がセキュリティトークン化です。これにより、小口投資や分割所有、株主権の付与を一体化した仕組みが実現しやすくなります。 また、証券と資金を同時に移転するブロックチェーンベースのDVP(受渡同時決済)の試行も進んでいます。さらに将来には、T+0、すなわち即日決済の実現も議論されています。 銀行にとってのリスクも明確です。資金移動を担う従来の銀行ネットワーク(いわゆるレール)から、デジタル基盤へ取引が移行すれば、フィンテック企業や機動性の高い銀行が収益機会を取り込む可能性があります。 当社は、2030年までに世界で約210億ドルから820億ドルの銀行収益が影響を受ける可能性があると見ています。 これは単なる暗号資産の話ではなく、次世代の取引インフラを誰が支配するのかという問題です。   次にM&Aです。 日本のホールセール金融市場は、金利正常化とコーポレートガバナンス改革によって変化しています。 企業は、低いPBRの是正、株主対応、資本効率の改善など、より高いリターンを求められています。 この圧力が、非公開化、カーブアウト、TOB、事業再編といった動きを加速させています。 2025年の国内M&Aの市場全体のディールアマウントは、過去10年で最高水準に達したと見ています。 同時に、銀行ビジネスも貸出中心からアドバイザリー含むビジネス強化へ移行しています。 融資提供能力だけでなく、再編、事業承継、IPO、M&A、資本政策における助言力が競争力の源泉となっています。さらに、案件完了後のウェルスマネジメントやコーポレートアドバイザリーも重要です。 また、ウェルスマネジメントと企業アドバイザリーの連携も強まっています。 日本では多くのオーナー経営者が個人として多額の金融資産を保有しており、事業承継や売却、IPO、相続といった意思決定において、企業金融と個人資産管理は不可分になっています。   預金競争 3つ目は預金獲得競争です。 欧州は良い比較対象です。欧州では政策金利が2~3%を超えてから、預金獲得競争が本格化しました。 日本でも金利正常化が進めば、同様の動きが想定されますが、いくつか重要な違いがあります。 日本では家計預金の比率が高く、現状は普通預金が中心です。そのため、欧州のような急激な預金金利の引き上げ(リプライシング)は起こりにくいでしょう。 むしろ、デジタル銀行や決済プラットフォームなど、日常の金融行動に組み込まれているプレーヤーとの競争が先に強まる可能性があります。   これらを総合すると、日本の金融セクターは同時に4つの変化に直面しています。 すなわち、金利正常化、企業再編、資産移転、そしてデジタルインフラの変革です。 その結果、銀行は単なる貸し手から、アドバイザー、ウェルスプラットフォーム、そしてデジタルインフラ提供者へと進化しつつあります。   エンディング お聴きいただきありがとうございました。番組を気に入っていただけましたら、ぜひレビューをお寄せいただき、「市場の風を読む(Thoughts on the Market)」を、ご友人や同僚の皆様にもご紹介ください。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    6分
  6. なぜ今、日本の産業基盤が重要なのか

    5月20日

    なぜ今、日本の産業基盤が重要なのか

    防衛費の拡大や地政学リスクの高まり、AIによる電力需要の増加、そして長期の受注残が、 トランスクリプト  日本の重工業をどう変えているのかを見ていきます。「Thoughts on the Market」へようこそ。モルガン・スタンレーMUFG証券で日本の重工業を担当しているアナリストの北浦岳志です。 本日は、防衛、エネルギー、そしてAIが、日本の産業構造をどのように変えつつあるのかについてお話しします。 本日は、東京時間で5月20日水曜日の午後1時です。 防衛費というと、一般の方や多くの投資家にとっては、日常生活から少し遠い話に感じられるかもしれません。ただ実際には、安定した電力供給やエネルギー価格、サプライチェーンの強さ、そして世界が不確実になる中で政府がどう動くのか、といった、私たち一人ひとりに関わるテーマとつながっています。 かつて日本の防衛産業は市場の片隅にある静かな存在でした。しかし現在では、国家安全保障、エネルギー安全保障、そして産業基盤を結びつける大きなストーリーの中心的な役割を担いつつあります。 これは大きな構造変化です。日本は5年間で総額43.5兆円(約2,750億ドル)規模の防衛関連支出計画を進めています。2025年度までの最初の3年間で、その61%がすでに執行されており、残り2年間も安定した執行が見込まれます。仮に防衛費がGDP比約2%から3〜5%へ引き上げられれば、総支出は現在水準から約80〜200%増加する可能性があります。 こうした数字が意味するものは何でしょうか。防衛支出とは、航空機、艦艇、ミサイル、ドローンだけを指すわけではありません。整備や補修、物流、技術開発、そしてサプライチェーンの強化も含まれます。つまり、これは「いざという時に対応できる産業体制」をどう作るか、という話です。 現代の紛争が、その重要性を示しています。防衛専門家によると、イラン紛争では最初の100時間で約31億ドル相当の弾薬が消費されたと推計されています。軍は短期間で備蓄を使い切りますが、製造業者がそれを補充するには時間がかかります。 今後は、多層的な防衛手段が必要になるでしょう。高度な脅威に対応するミサイル、柔軟性を持つドローン、低コスト迎撃が可能なレーザー、そして成熟が進む新技術。これらは、装備、エンジニアリング力、生産能力、そして信頼できるサプライヤーへの需要を生みます。 政策面でも変化があります。日本では防衛装備品の移転に関する規制が緩和され、輸出の可能性が広がっています。また、2035年頃の配備を目指す次世代戦闘機開発のような長期サイクルのプログラムでは、国際協力の重要性も高まります。こうした複雑で長期にわたる産業プロジェクトでは、受注の可視性が極めて重要です。 重工業のストーリーは、防衛だけではありません。もう一つの軸が電力であり、これはAIと直結しています。 データセンターは膨大で安定的な電力を必要とし、その需要は拡大を続けています。短期的にはガスタービンがその需要を支えるでしょうが、長期的には原子力も重要な選択肢になります。日本では、2011年の東日本大震災と福島原発事故以前は原子力比率が20%を超えていましたが、2024年度には9.4%にとどまっています。政府は約20%への引き上げを目標としており、その実現には再稼働余地のある33基の多くが稼働する必要があります。 防衛とエネルギーは別々のテーマに見えますが、産業の視点では同じボトルネックを共有しています。それは「生産能力」です。 強い受注残は、不確実なマクロ環境下で投資家に一定の安心感を与えます。ただし、受注=すぐに売上、というわけではありません。企業は、工場、熟練エンジニア、サプライヤー、部品、そして時間を必要とします。だからこそ、生産能力とサプライチェーンの強靭性が投資判断の中核となります。 もちろん、リスクも存在します。地政学リスクによる供給制約、レアアース規制による部品不足、エネルギー価格の変動、さらには防衛予算の一部がサイバー、インフラ、あるいは輸入システムに向かう可能性もあります。これらは、重工業が最も強みを持つ船舶、航空機、ミサイル、エンジン分野以外への支出です。 それでも、全体のストーリーは明確です。日本の重工業は、かつての景気循環型の機械セクターから進化し、防衛即応力、AIによる電力需要、そしてエネルギー安全保障の中心に位置する存在になりつつあります。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    7分
  7. 株式に強気なままでいる理由

    5月19日

    株式に強気なままでいる理由

    株式相場はこのところ圧力にさらされているものの、企業業績と人工知能AIの影響は多くの投資家の認識よりも強い――弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンはそう指摘します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 Today’s episode features Mike Wilson, Morgan Stanley’s CIO and Chief U.S. Equity Strategist最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソン. He discusses our bullish mid-year outlook and why stocks have been under pressure more recently.     本日は最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、弊社の強気な中間見通しと、株式相場がこのところ圧力にさらされている理由についてお話しします。 このエピソードは5月19日 にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 投資家が最新のリスクに注意しすぎるあまり次のチャンスを見逃してしまう瞬間が、どのサイクルにもありますが、今がまさにそれではないか、と私はみています。今年の上半期にはそういうおなじみの雰囲気が感じられます。悪材料が大きく報道されるかなり前から株価が水面下で軟調になる、投資家が新たなリスクを発見するものの、すでにそれは株価に織り込まれている、そして株価の先行きが明るくなりつつあるときに投資家の心理はさらに悪化する、というパターンです。 言い換えれば、これは昔の話の繰り返しです。ただ、重要な「ひねり」がいくつか加わっています。 最も大きなひねりは、今はサイクルのどの段階にあるのかという違いです。 去年 昨年はまだ、ローリング・リセッションの最終段階を脱しつつあるところでした。今ではもうローリング・リカバリーに突入しているのですが、それがまだあまり認識されていません。この点は重要です。今年に入って見られた株価の調整とその後の急激な上昇の解釈が変わってくるからです。 第1四半期にS&P500種株価指数が10%に満たない下落を演じたとき、多くの投資家は市場が油断していると結論付けました。私は、この見方は本当に的外れだとみています。ラッセル3000種株価指数では構成銘柄のおよそ半分が20%以上下落していましたし、S&P500指数の予想PERは予想利益が増加し続けたためにピークから18%も低下したからです。これは油断ではありません。市場は最も得意な仕事、すなわち話が広く行き渡る前にリスクを織り込むという作業をしていたのです。 それに、それらのリスクは決して小さなものではありませんでした。新たに始まった戦争のために原油価格が100%上昇したことに加え、プライベート・クレジットの懸念もありました。AIが労働市場を混乱させるという議論も盛んです。これらのリスクに直接さらされている地域では、市場が40%を超える調整を余儀なくされているところも少なくありません。 そこで、少し意地悪な質問をしてみたいと思います。今この時点からの最大のリスクが強気すぎることではなく、市場がやるべき仕事をやった後なのに慎重すぎることだとしたら、どうしますか。 弊社は先日出版したアウトルック、中間見通しでこうした疑問に取り組んでいます。具体的には、12ヵ月後のS&P500指数の目標を、増益見通しの上方修正だけに基づいて8300に引き上げました。実を言えば、バリュエーションについては一段と低下することを想定しています。S&P500指数の予想EPSについては、 およそ 約5%引き上げました。ローリング・リカバリー、AIの導入、財政政策による下支え、そして拡大を続ける設備投資サイクルなどを背景に営業レバレッジが効くと考えました。 利益動向は非常に重要な点です。石油ショックのせいで景気循環が終了した以前のサイクルでは、ショックに襲われる前の時点で、利益はすでに明らかに伸び悩んだり減少したりしていました。しかし、現在起きていることはその反対です。利益はすでに高水準にあり、増加のペースも加速しています。S&P500指数構成銘柄の、第1四半期利益の中央値ベースの利益サプライズは6%になり、過去4年で最も強い水準でした。また、業績見通しを上方修正する企業の割合も、決算発表シーズン当初はわずか5%でしたが、今では22%にまで戻っています。サイクル後半で石油ショックに見舞われた従来のパターンとは、背景がかなり異なっているのです。 AIについても、市場コンセンサスが形成されてきたとみられる分野です。AIが労働市場を混乱させるという言説は、実際の導入のスピードを先行しています。企業業務へのAI実装は初期段階で、今のところAIは、労働市場を破壊する鉄球というよりも利益率を高める追い風であるように思われます。企業は無駄の少ない経営を行い、従業員の採用を減らし、単に解雇するのではなくAIがもたらす真の利益の定量化を始めています。AIという技術の導入は予想よりも緩やかに進むことになりそうですが、過剰雇用が懸念されていることは間違いなく、その懸念が間接的に収益性を高める原動力になっています。 妨げられていないこの強気相場にとっての最大のリスクは、やはり金融政策と流動性です。FRBがハト派色を弱め、流動性のニーズが強まっていることから、金利は上昇基調にあり、株式と債券は再び負の相関関係になっています。米国債10年物利回りで4.5%という水準はバリュエーションにとって重要です。 FRBの利下げがなくても株式市場はうまくいきます。企業の利益の伸びが順調でFRBが金利を据え置いている状況でも、非常に底堅いリターンが得られる場合があるのは歴史の教えるところです。真のリスクは流動性にあります。民間経済が投資と回復のために必要としている資本の額をFRBと米財務省が過小評価しないかどうかがポイントになります。 究極的には、そのような流動性のニーズに対処する手段をFRBも財務省も持っており、今年も積極的に利用しています。ただ、流動性の供給には衰えるときと盛り上がるときがあり、今はちょうど衰えようとしている時期です。そのため、株式市場は短期的に脆弱な状況に置かれています。 もし株価の調整が続くようなら、投資家はそれを好機と考えるべきです。ローリング・リカバリーの恩恵を享受する分野、具体的には資本財・サービス、金融、一般消費財の3分野へのエクスポージャーを高めるチャンスとして利用すべきでしょう。1年前の「解放の日」をもって終了したローリング・リセッションからの回復については言うまでもありませんが、利益・設備投資サイクルのすそ野の広さはまだ過小評価されています。 結論はいたってシンプルです。今年に入って見られた調整は、バリュエーションについて言えば大方の評価よりも重要な出来事であり、業績は改善する一方だということです。道のりはなだらかなものにはならないでしょうから、調整局面があれば、まだ続くと弊社がみている業績改善の広がりに備える手段として利用するべきでしょう。 これだけはぜひ覚えておきましょう。目の前に現れたエビデンスが「当たり前」だと思われるころには、チャンスはもう過ぎ去っているのが普通なのです。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    10分
  8. 不安なブームにひるまない投資

    5月15日

    不安なブームにひるまない投資

    原油価格や地政学的要因によりボラティリティが高まっているものの、投資家は2026年も引き続き積極的な姿勢を維持すべきだと考えられる理由を弊社チーフ・クロスアセット・ストラテジストのセリーナ・タンがご説明します。 このエピソードを英語で聴く。   トランスクリプト    市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は弊社チーフ・クロスアセット・ストラテジストのセリーナ・タンが、世界の各地域と資産クラスの弊社中間見通しについてお話しします。 このエピソードは5月15日 にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 ガソリンスタンドの価格表示を見て戸惑ったり、航空券の予約をためらったり、また確定拠出型年金「401(k)プラン」の残高をチェックすることが普段より少し多くなっていたりしたら、それはもう、今の市場を動かしている力が何であるかをわかっていらっしゃる証拠です。エネルギーの価格と地政学の動きは今、正真正銘の不確実性を作り出しています。しかしその不確実性という覆いをめくれば、企業がまだ投資を行っていること、企業業績も持ちこたえていること、そしてAIが世界経済で最大級の設備投資サイクルになりつつあることが分かります。 2026年の後半に向けて弊社が、前向きだが、油断は禁物だというメッセージを発しているのはそのためです。 「前向きに」の部分から見ていきましょう。市場全体でみれば、ファンダメンタルズ(基礎的条件)はマクロもミクロもリスク資産を下支えしています。米国の経済成長も持ちこたえる公算が大きいでしょう。 投資家にとってこのことはコア債券よりも株式を、そして先進国株式――とりわけ米国株式――を選好することを意味します。弊社の米国株ストラテジストによるS&P500種株価指数の2027年半ばの目標は8300で、これを支える予想増益率は2026年が23%、2027年が12%となっています。今の相場の勢いは業績の改善がもたらしているのです。 印象的なデータをひとつご紹介しましょう。S&P500指数構成銘柄を、第1四半期利益の市場予想に対する実際の利益の比率が高い順に並べ直したところ、その中間に位置する企業の値はプラス6%になりました。これは4年ぶりの大きな値です。また、会社側の業績見通し引き上げの流れも急速な広がりを見せました。 この強さは、大部分がAIで説明されます。AIは設備投資のテーマになっていますが、最近ではますますクレジット市場のテーマにもなってきています。弊社は1年前、トップクラスのハイパースケーラーによる設備投資の合計額を、2026年と2027年のそれぞれで4500億ドルと予想していました。しかし今では、2026年をおよそ8000億ドル、2027年を1兆1600億ドルにそれぞれ上方修正しています。AIインフラ、すなわちデータセンターや電力、半導体、ネットワークといった分野は今後数年間、株式やクレジット、金利、さらにはコモディティの相場を形作ることになるでしょう。しかし、ここで弊社のメッセージの後半、すなわち「油断は禁物」が重要になってきます。 AIブームには別の側面があります。データセンターの建設、半導体の製造、そして電源システムやネットワークの構築には多額の投資が必要です。企業がそのすべてを手持ちの現金で賄うことはないでしょう。多くが借り入れを行います。したがって社債が、特に米国の優良企業の社債がこれまで以上に市場に供給されることでしょう。すると、こうした企業の財務がたとえ健全に見えるとしても、投資対象になり得る新発の社債がそれほど多くなれば、投資家はこれまでよりも有利な条件を求めてくるかもしれません。したがって、AIは企業業績を下支えする一方で、クレジット市場にはいくらか圧力をもたらす恐れがあるのです。 エネルギー価格も大きなリスクを突き付けています。弊社の基本シナリオは、紛争はエスカレートせずにホルムズ海峡が徐々に再開されることを想定していますが、これから生じうる展開は異例なほど多種多様であるように思われます。弊社の見通しでは、原油価格と、中東からの供給ショックの長さが唯一最大の変数です。原油の値上がりは消費者にも企業にも、事実上の税金のような影響をもたらします。 以上の理由から弊社では、リスクオンに傾きつつもバランスの取れた資金配分を推奨しています。株式をオーバーウエイト、コア債券をアンダーウエイト、そしてそのほかの債券、コモディティ、キャッシュはベンチマークのウエイトを維持するという内訳です。株式については、弊社では米国株を選好します。企業業績が好調に見えることと、リスク・リワードがほかの地域の株式よりも良好だと思われるためです。欧州株と日本株にも上昇余地がありますが、欧州はエネルギーの混乱の影響を比較的受けやすいと言えます。一方新興国については、一部で強さが見られるものの、市場全体を下支えする材料がマクロとミクロの両面で乏しい状況です。 こうしたことはすべて、まだサイクルが終点に到着していないことを示しています。ただこの先の道のりは数ヵ月前の想定よりも起伏が多く、幅が狭く、エネルギー情勢にも影響されやすくなっているように思われます。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    8分

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番組について

モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。

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