市場の風を読む

モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。

  1. 4日前

    コーヒーから缶飲料へ:米国で進むカフェイン摂取の変化

    若い世代が、カフェインの摂取スタイルを変えつつあります。弊社の米国家庭用品・飲料アナリスト、ダラ・モーセニアンが、エナジードリンクへの需要の高まりが、今後長年にわたって飲料の消費習慣にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 今回は、米国家庭用品・飲料アナリストのダラ・モーセニアンが、米国の次世代の消費者が、毎日のカフェイン摂取のあり方をどのように大きく変えつつあるのかを解説します。 このエピソードは8月31日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 何世代にもわたって、米国人にとってカフェインといえばコーヒーでした。朝起きてポット一杯のコーヒーをいれるか、コーヒーショップに立ち寄って一日を始める、というのが定番でした。 しかし、今では状況が違います。若い消費者は、一日のスタートを切るための選択肢がはるかに多い環境で育ってきました。最近、コンビニエンスストアやジム、大学の図書館に足を運ぶと、カフェインを摂取する手段として、エナジードリンクがますます有力な選択肢になっていることが分かります。 こうしたカフェイン入り飲料を飲む量が増えている理由は、とても単純です。より多くのエネルギーを得たいからです。過去3カ月間にエナジードリンクの摂取量を増やした消費者のうち、61%が、もっとエネルギーが必要だったと回答しています。 新しいものを試してみたいという気持ちも重要です。44%が新しいフレーバーを試すことを理由に挙げ、37%が新しいブランドを試していると回答しました。 およそ3,000人の米国消費者を対象に弊社が実施した調査では、今後もエナジードリンクには大きな成長余地があることが示されています。現在エナジードリンクを飲んでいる消費者に尋ねたところ、今後3カ月間に摂取量を増やすと答えた人の割合は、減らすと答えた人の割合を19ポイント上回りました。これは弊社の過去の調査結果を大きく上回っており、男女いずれにも当てはまります。 おそらくさらに興味深いのは、摂取量を増やすと見込んでいるのが誰なのかという点です。人口動態は、従来よりエナジードリンクの消費を左右する重要な要因となってきました。若い世代は、従来のコーヒーや炭酸飲料に代えて、エナジードリンクを選ぶ傾向を強めています。弊社の調査で特に重要なのは、25~34歳と35~44歳の年齢層が、今後摂取量を増やす意向を最も強く示したことです。これは、非常に若い時期からエナジードリンクを取り入れた消費者が、年齢を重ねてもこのカテゴリーから離れていないようであることを意味します。つまり、その習慣をそのまま持ち続けているのです。 また、カフェイン入り飲料の市場はゼロサムではないことも重要です。確かに世代ごとの好みは変化していますが、市場全体のパイは実際に拡大しています。カフェイン入り飲料の中で最もシェアを伸ばしているのはエナジードリンクですが、弊社の調査では、エナジードリンクの摂取量の増加分のうち、コーヒーから直接切り替えた分はわずか20%、炭酸飲料から直接切り替えた分は22%でした。つまり、需要の大半は実際、カフェイン入り飲料全体にとって純増分なのです。 今後については、エナジードリンクがカフェイン入り飲料の中で最も成長率の高い分野となり、年率で一桁台後半の成長が続くと弊社は予想しています。手の届く価格で楽しめるちょっとしたぜいたく品として定着するにつれ、アルコール飲料やスナックなどに取って代わる動きさえ見られます。特にこの動きはGLP-1によって後押しされており、減量によってエネルギーが低下した消費者のカフェイン需要も一段と高まっています。 したがって、エナジードリンク・カテゴリーでは、力強い一桁台後半の成長が続く可能性が高いとみています。過去15年間の年平均成長率は9%でした。今後も、先ほどお話しした需要の押し上げ要因に加え、価格設定が合理的な環境にあることから、この成長率は持続する可能性が高いとみています。 そして、エナジードリンクの売上高の勢いは、その多くが新製品やイノベーションに支えられています。その中には、無糖飲料も含まれます。無糖飲料は、より健康に良いと受け止められています。特に女性を中心に新たな消費者を引きつけているほか、比較的年齢の高い消費者も、年齢を重ねても引き続きこうした商品を飲み続けています。 エナジードリンクは、値上げ幅がより大きかった他の飲料カテゴリーと比べて、価格面での手頃さも増しています。利便性も魅力の一つです。最近コーヒーからエナジードリンクに切り替えた消費者のうち、57%が1本当たりのカフェイン量が多いことを理由に挙げ、45%が利便性を挙げました。半数近くがエナジードリンクの味を好み、45%がフレーバーの種類が豊富であることを理由に挙げています。 エナジードリンクが、さらに多くの場所で販売される余地もありそうです。弊社の調査では、消費者の47%が、自動販売機で購入できればエナジードリンクをもっと買うと回答しました。また、46%がファストフード店やファストカジュアル店、37%がコーヒーショップで購入できればもっと買うと答えています。実際、私の同僚のブライアン・ハーバーが担当する多くのコーヒーショップでは、顧客の好みに合わせて作るエナジードリンクが登場しています。ここでも、市場全体のパイが拡大しているのです。単に炭酸飲料やコーヒーからシェアを奪うという話ではありません。 このように、米国のカフェインを摂取する習慣は根強く、しかも広がり続けています。若い消費者には、より多くのフレーバー、より多くの商品形態、そして一日のさまざまな場面にカフェインを取り入れるための、より多くの方法があります。そして、こうしたカフェイン入り飲料への嗜好は、消費者が年齢を重ねても弱まっていないようです。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    コーヒーから缶飲料へ:米国で進むカフェイン摂取の変化
  2. 8月28日

    米国債務拡大に対するワシントンの動き

    米国の債務が予想を上回るペースで増える中、11月の中間選挙から読み取れるワシントンの動きについて、弊社米国公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが考察します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は、米国の財政政策が再び注目されている理由と、来る中間選挙から読み取れる債務の全般的な先行きについて、弊社の米国公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが解説します。 このエピソードは8月28日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 財務省が最近発表した国債買い戻しを受け、米国の財政政策が再び投資家の注目を集めています。買戻しが発表された週、債務総額は大方の予想より数ヵ月も早く大台を超え、初めて40兆ドルに達しました。 弊社のアンドリュー・シーツが指摘するように、債務総額はとても膨大です。ただ、より注目すべきは、金額そのものではなく、増大する債務が経済の足かせになり始めているかどうかという点です。 現時点において、米国債市場で信用問題が生じているとは言い切れません。しかし、そうだからこそ、財政が再び議論の俎上に載っています。その背景には、様々な理由があると私たちは考えます。 景気後退に陥っていないにもかかわらず、米国は大規模な財政赤字に陥っています。弊社エコノミストによれば、赤字は2027年までGDP比6%前後で推移する見込みで、有権者は高水準で推移する債務を明らかに懸念しています。 それでは、ワシントンではなぜ緊縮財政がもっと議論されないのでしょう。その答を簡単に言えば、政治的インセンティブが緊縮財政と相反するためだと私たちは考えます。 単純化し過ぎることを承知で言えば、財政健全化、つまり赤字削減には、歳出削減か増税のいずれかを実行する必要があります。しかし、そうした選択に伴う政治的代償は即座に表面化します。したがって、特に選挙を控えた時期には、タイムリミットを伴う重大な決定や既存制度に対するリスクが争点として浮上しない限り、与野党どちらにもそうした政策変更に前向きになるインセンティブがないと考えます。 では、選挙後はどうでしょう。中間選挙そのものが財政政策の軌道を修正するきっかけになると私たちは考えていません。ただし、その後の方向性を知る有効な手掛かりにはなると思います。私たちは特に2つの点に注目しています。 1つ目は社会保障です。11月の中間選挙で最大の争点になる可能性は低いものの、老齢・遺族保険信託基金問題のタイムリミットが徐々に迫っているため、債務を巡るより広範な議論の行方を占う試金石として役立つかもしれません。 最新の評議員報告書では、老齢・遺族保険信託基金が2032年第4四半期に支払能力を失うと予測されており、このまま法改正がなければ、予定給付額の約78%しか賄えなくなる可能性があるとのことです。ただし、この問題の争点としての重要性は、今年11月の中間選挙よりも2028年の大統領選挙でより高まりそうです。この年の選挙で勝利した人物が、基金が枯渇する時期に大統領の座に就いているからです。 それでも、11月の中間選挙からは、政治的な争点がどこに収斂しつつあるかを読み取ることはできると思います。最近の世論調査からすると、有権者にはかなり一貫した傾向が見られ、すなわち、有権者は政治家に行動を取るよう求めており、幅広い給付削減よりも、高所得者への増税を支持する様子が読み取れます。また、所得分布の最上位層を対象にするものに限れば、給付削減にも比較的前向きであるようです。 2026年中間選挙の候補者の多くが社会保障税の課税対象となる所得上限の引き上げに足並みを揃えたり、一部の共和党候補が受給開始年齢の引き上げといった主張を選挙運動で前面に出さなくなったりした動きには、こうした背景があると考えます。 候補者が打ち出すこうした政策のうち、実際にどれが勝利に繋がるかを見定めれば、財政政策の先行きを予想するのに役立つと私たちは考えます。特に有権者のかなりの割合がこうした給付に依存するニューハンプシャー州やメーン州の上院選では、どの政策変更が有権者の共感を呼び、最終的な制度修正に反映されるかを探る有効な手掛かりが得られる可能性があります。 2つ目は、選挙後のより幅広い財政環境です。例えば11月の選挙でねじれ議会となれば、政府予算や債務上限の成立期限が近づく度に、財政を巡る不透明感が強まり易くなります。ただし、この2つが市場におよぼす影響は大きく異なります。政府予算の場合、不成立に伴う政府機関閉鎖の主な影響は、間接的なものにとどまる傾向があると考えます。予算不成立によって政府機関による調査が滞ったり規模が小さくなり、その結果として統計の公表が遅れたり、サンプル数の制約で調査結果の質が低下したりする可能性を想像してみてください。 その場合、投資家や米連邦準備制度理事会は、時には数週間にわたって不完全な情報に基づく意思決定を迫られてしまいます。一方、債務上限の影響はより直接的なものです。そしてその影響は、米国短期国債市場で最も顕著に表れます。期限となり得る時期の前後に満期を迎える短期国債は、投資家がその限られた期間のデフォルト・リスクを織り込まなければならないため、ほかの短期指標と比べて価格が下がる傾向があるからです。この問題が最終的には解決するとの見方を基本シナリオが織り込んでいたとしても、このことに変わりはありません。 つまり、私たちの全体的な考え方はこうです。債務が40兆ドルを超えたからといって、財政がただちにワシントンの最優先課題になる可能性は低い。それでも中間選挙は、政治的なインセンティブが変わり始めているかどうかを見極める機会となる。具体的には、政治家の社会保障を巡る姿勢と、より広くは、予算期限を巡る政治的対立を受け入れる度合がどの程度かという点がより明らかになると考えています。 いずれにせよ、財政政策は今後数年にわたってニュースの見出しを飾る話題になると私たちは考えています。とりわけ2028年の大統領選挙シーズンが近づくに連れ、こうした傾向は強まりそうです。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    米国債務拡大に対するワシントンの動き
  3. 8月26日

    米国の債務増加が問題になり始めるのはいつか

    弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、金利上昇と米国債務の増加が、いつ、どのように単なる抽象的な懸念では済まなくなるのかを解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社債券リサーチ・グローバル責任者、アンドリュー・シーツが、金利の上昇と債務の増加が、実際にどの時点から問題になるのかを解説します。 このエピソードは8月26日にロンドンにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 米国は、建国後約240年間で、およそ20兆ドルの連邦債務を積み上げました。そして、直近のわずか10年間で、さらに20兆ドルの債務を積み増しました。 投資家にとっての問題は、第一に、この債務負担がいつ経済活動にブレーキをかけ始めるのか、さらに悪いケースとしては、現在の比較的落ち着いた状況を揺るがすようなストレスをいつ生み出し始めるのか、ということです。 では、1つ目の問いから見ていきましょう。 債務が経済活動に影響が及ぶまでのハードルは、かなり高いようです。AIをめぐる活発な動きがあるにもかかわらず、米国企業の債務は、経済全体に占める比率で見ると、この10年間ほぼ変わっておらず、実際、パンデミック前の水準を下回っています。 米国の家計部門のバランスシートは、さらに健全です。家計債務の対GDP比は、コロナ禍前を下回り、2000年の水準も下回っています。しかも、これだけでは家計の強さを十分に表していない可能性があります。債務の多くは、過去の低金利局面の低い住宅ローン金利で固定されている一方、バランスシートの反対側にある家計資産は大幅に増え、過去最高水準に達しているためです。 金利とエネルギー価格が上昇しているにもかかわらず、今年、消費者と企業がともに予想以上の底堅さを保ってきた理由の一端は、ここにあるのかもしれません。 公的部門と民間部門のバランスシートに見られるこうした傾向の違いは、米国に限ったものではありません。欧州でも政府債務が増える一方、それ以上に民間部門の債務削減が進んでいます。日本では公的部門の借り入れが増える一方、民間部門のレバレッジはかなり安定しています。 経済の公的部門と民間部門のこうした違いには、政策上の選択がある程度反映されています。政府は、課税と歳出のバランスをどう取るかを決めます。そして米国に限らず、多くの国がこの10年間に減税を進める一方、公的部門の借り入れ増加を増やしてきました。 そうした選択を踏まえれば、民間部門の財政状態に比べて公的部門の財政状態が悪化することは、特に驚くようなことではありません。 健全なバランスシートのおかげで、米国の家計と企業が金利上昇の影響を受けにくくなっているとすれば、ストレスの兆候はどこに表れるのでしょうか。 これほど多額の債務があるにもかかわらず、米国債市場は今のところ、実際にはかなり落ち着いています。米国のインフレ期待は年初来でほぼ変わっておらず、債券市場の予想変動率も歴史的な低水準にあります。 実際、米財務省が最近、債券市場に介入したことが投資家にとって大きな驚きとなった理由の一つは、こうした通常のストレス指標が見られなかったことです。むしろ、利回り上昇が市場により大きな影響を及ぼし始める時点は、別の要因、つまり資産配分に左右される可能性があります。 現在、30年物米国債の利回りは、その期間の予想インフレ率をおよそ3%上回っています。米国の長期投資適格社債の利回りも、再び6%を超えています。そのため、利回り上昇がいつ問題になり始めるのかという問いは、企業がいつ借り入れをやめるのか、あるいは消費者がいつ支出を控えるのかということよりも、投資家がいつ、株式より債券のほうが割安だと判断するのか、ということに関係しているのかもしれません。 今のところ、弊社のリサーチでは、そうした変化を示す明確な証拠は確認されていません。ファンドフローのデータや市場間の相関関係を見ても、株式から大規模な資金再配分が起きているとは考えにくく、力強い利益成長が株式のバリュエーションを支える材料になっています。 ただし、弊社はこれらの指標を今後も注視していきます。当面は、米国債務の増加と米国債市場への介入によって、米ドルが下落する可能性があると考えています。特に、高金利通貨でありながら債務水準がはるかに低い通貨、つまり豪ドルに対して、米ドルが弱含む可能性があります。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    米国の債務増加が問題になり始めるのはいつか
  4. 8月24日

    市場はより熱く、より短いサイクルに直面

    債券は、投資家がこれまで期待してきた避難先としての役割を、もはや果たせない可能性があります。弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、インフレ、利回り、リスクの関係が変化していることについて解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、マクロ市場の情勢が変化していることについてお話しします。 このエピソードは8月24日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 ここ数週間で、金利、原油、金、暗号資産が大きく動きました。これは株式にとって何を意味するのでしょうか。 まず、投資家は依然として、これらの市場をそれぞれ別々の市場の物語として捉えています。しかし実際には、いずれもコロナ禍をきっかけに始まった同じレジーム転換の一部です。6年以上前、景気後退が最も深刻だった時期に、私は投資家はインフレの再来に備えるべきだと主張しました。当時、それは市場のコンセンサスから大きく外れた見方でした。 当時、世界はデフレのことで頭がいっぱいで、10年米国債利回りは1%を下回り、株式は大きく売られ、金は1オンス当たり1,500ドル前後で推移していました。しかし、コロナ禍への政策対応、私が「ヘリコプターマネー」と呼んだものが、状況を一変させました。それは40年にわたるディスインフレのレジームの終わりを示し、投資家が対応すべき投資環境が大きく変わったことを意味していました。 これはまた、弊社の「ラン・イット・ホット」という投資テーマの土台でもあります。インフレが戻ってきた世界では、サイクルはより短くなり、政策はより事後対応型になり、主導役の交代もより頻繁になる可能性があります。これは1982年から2020年までの時期とは大きく異なります。 当時は、インフレ率と金利が低下するなかで、景気サイクルは8年から10年にわたって続くことができました。現在は、むしろ第二次世界大戦後の時代に近い世界にあります。名目GDP成長率はより力強く、インフレはより根強く、景気のボラティリティは高まり、債券市場はもはや、かつてのようにリスク資産にとって追い風ではなくなっています。要するに、債券の長期的な強気相場はコロナ禍とともに終わったのです。これは、あらゆるタイプの投資家にとって極めて大きな意味を持ちます。 金利に関する私の短期的な見方も、主流とは異なります。多くの投資家は、債務と財政赤字が原因で金利が上昇していると言っています。私はそうした要因を否定しているわけではありません。ただ、より大きな要因は力強い名目GDP成長率であり、それは実際にはパンデミック以降の積極的な財政政策の結果だと考えています。現在は財政優位の時代にあり、この環境では、財務省とFRBは市場を混乱させることなく財政赤字を賄う方法を見つけざるを得ません。 私は、財務省による最近の国債の買戻しをそのように解釈しています。これは量的緩和でも、イールドカーブ・コントロールでもないと思います。プログラムの規模がそこまで大きくないからです。むしろ、市場機能と安定した金融環境を維持するための、もう一つの政策手段にすぎません。したがって、先週の貴金属と暗号資産の大きな動きを見ると、私には、金融環境が一段と引き締まれば、より大規模な介入に向けた第一歩にすぎないと市場が考えていることを示しているように見えます。 株式については、これらすべてが、弊社が推奨してきたクオリティへのローテーションを一段と裏付けています。半導体が主導し、利益予想修正の広がりの変化率が6月にピークを付けて以降、市場では主導役が大きく変わりました。1年にわたって出遅れていたクオリティ・ファクターは、アウトパフォームし始めています。これは、景気後退後の回復が成熟するにつれて弊社が想定していた動きそのものです。 高いフリーキャッシュフロー、高い粗利益率、安定した売上高成長、そして設備投資対売上高比率の低さといったファクターはいずれも機能してきました。歴史的なモメンタムの巻き戻しが起きたにもかかわらず、S&P500がほとんど調整しなかったことに不満を感じている投資家もいます。しかし、クオリティが再び選好されているのであれば、それは極めて自然なことです。S&P500は、世界で最もクオリティの高いベンチマークの一つです。個別銘柄レベルでの主導役は今後も変化し続けるかもしれませんが、S&Pの指数としての主導性が薄れる可能性は低く、むしろ強まる可能性さえあります。 短期的なリスクは引き続き原油です。ブレント原油価格はここ数週間で上昇しています。そして、原油価格の上昇は、歴史的に見て、原油価格の下落が株式の追い風になることよりも、はるかに信頼性の高い株式の逆風となってきました。弊社の株式に対するなお建設的な見方は、原油価格が急落することを前提としているわけではありません。必要なのは、単に原油価格の上昇が止まることです。ホルムズ海峡が閉鎖されたままであることを理由に原油価格が再び急騰すれば、投入コストに圧力がかかり、利回りと債券ボラティリティが押し上げられ、市場の不安定化が再び生じる可能性があります。 結論として、「ラン・イット・ホット」のレジームは健在です。それは株式を支えます。しかし同時に、サイクルを短くし、ローテーションを増やし、投資家に時にはより戦術的な対応を迫ります。私は現在、大型のクオリティ株、AIを導入する企業、そして海外の指数よりもS&P500を選好しています。 原油リスクについてはエネルギー株でヘッジし、この回復局面と強気相場の次の段階を進むなかで、常に周囲に注意を払っておいてください。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    市場はより熱く、より短いサイクルに直面
  5. 8月21日

    AI構築に対応するクレジット市場の変化

    AIで巨額の資本が必要とされることが、企業によるクレジット市場での資金調達方法を変えつつあります。弊社のチーフ債券ストラテジスト、ヴィシー・ティルパターが、この夏の主要な資金調達の動きを検証します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社のチーフ債券ストラテジスト、ヴィシー・ティルパターが、2026年夏の最大のポイントがAI関連の資金調達活動とクレジット市場の進化である理由を考察します。 このエピソードは8月21日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 2026年の夏は、最終的には、新たなモデルの発表や画期的な半導体ではなく、資本市場がAIインフラ整備の需要にどれほど迅速に適応しているかを浮き彫りにしたAI資金調達の進展によって記憶されることになるかもしれません。 弊社の分析の出発点に変わりはありません。コンピュート、すなわち計算資源の需要は供給を引き続き上回っています。ハイパースケーラーが将来の処理能力を確保するために資本を追加投入するなか、AIインフラ設備投資の見通しは上方修正されています。 弊社の株式調査チームでは現在、4大ハイパースケーラーによる2027年の設備投資の総額は前年比で57%増えると見込んでいます。これらの支出計画は、そうした投資が25%を超える投下資本利益率を生み出し得るとの確信が強まっていることの反映です。 それと同時に、設備投資の実行から収益化までのタイムラグは、当面のキャッシュ創出に引き続き圧力を加えています。弊社アナリストによる4大ハイパースケーラーの2027年フリーキャッシュフロー予想も、下方修正され続けています。 クレジット・アナリストの視点から見ると、これは2027年に資金調達ギャップが拡大することを意味しています。つまり、クレジット市場ではAI関連のクレジット発行が引き続き高水準で推移すると考えられます。一連の投資からのキャッシュフローが追いつき始めるまでは、資金調達をさらに増やす必要さえあるかもしれません。 この夏のクレジット・スプレッドの動きも、同じように示唆に富んでいます。ハイパースケーラーのクレジット・スプレッドは大きく拡大しました。ただ、その拡大の幅よりも注目されるのは、資金調達チャネル間で差が出ていることです。 例えば、スプレッド拡大が最も顕著だったのは無担保債でした。発行額が急増したうえ、投資家はAI投資サイクルに伴う、より幅広いリスクにさらされたままでした。対照的に、データセンターABSやCMBSのスプレッド拡大は、はるかに穏やかでした。 これらの証券は、すでに建設済みで電力も供給され、リース契約も結ばれている稼働資産を裏付けとしており、契約に基づくキャッシュフローがおおむね確立されています。発行ペースが比較的抑制されていたことも相まって、こうした特徴は、無担保債市場で見られたレベルの相場変動から証券化商品を守ることに寄与したのです。 クレジット市場間で生じている差は、発行体のインセンティブや資金調達コストへの感応度の違いの反映でもあり、今後の発行量を左右することになるでしょう。信用力の高い層では、平均でAA前後の格付けを得ている大手ハイパースケーラーが、大きな資金需要と、高格付けを活用できる柔軟性を併せ持っています。 これらの発行体は、高水準の投下資本利益率を予想していることから、借入コストが多少変化してもあまり反応しません。AIエコシステムにおける最も信用力の高い参加者の資本調達が、資金調達コストが上昇したという理由だけで大きく減速することは考えにくいでしょう。 信用力のもっと低い層では、その逆が当てはまります。信用力の低いハイパースケーラーや、かつてのビットコイン・マイナーやREITなども含むデータセンター開発会社は、バランスシートを背景とする柔軟性が低く、資金調達コストの上昇への許容度も低くなります。こうした借り手にとって、スプレッドの拡大はより大きな制約となります。つまり、資金調達コストが将来の供給を安定させる、自然な調整弁になるのです。 AI資金調達の次の局面も、かなり異なる姿になりそうです。追加的な設備投資の対象が、データセンターの建屋から、サーバーや半導体をはじめとするコンピュート機器、さらにはエネルギー関連の資産へと移行していくからです。こうした資産の一部は、すでにハイイールド債やレバレッジド・ローンを通じて資金調達が終わっていますが、コンピュート・インフラは資産単位でのファイナンスに特に適しており、プライベート・キャピタルの役割がより大きくなります。 大規模なコンポーネント・ファイナンスの台頭は、最も信用力の高い発行体が自らの高い格付け余力に加え、強固なバランスシートを活用することで可能になると考えられます。弊社は、これらの発行体が今後、バックストップ契約や、信用補完措置、残価保証の提供を積極的に提供することで、民間資本による大規模なAIインフラ資産プールを引き受けるのを後押しすると予想しています。 AIが単なる技術革新の成長局面から資本集約型の成長局面へと成長する中で、資金調達の細かな違いを理解することがますます重要になっています。AI構築の次の局面では、資本の流れを理解することが、イノベーションそのものの流れを理解するのとほぼ同じくらい重要になる可能性があるでしょう。AIはもはや単なるテクノロジーの物語ではありません。資本市場の物語としての側面も、ますます強まっているのです。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    AI構築に対応するクレジット市場の変化
  6. 8月19日

    エルニーニョが市場にもたらす波及効果

    チョコレートや砂糖の価格からエネルギー市場、インフレに至るまで、エルニーニョの影響は今後、天気予報の枠を大きく超えて広がる可能性があります。弊社中南米アグリビジネス・アナリストのジュリア・リゾが、どこで最初に影響が及ぶ可能性があるのかを解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社の中南米アグリビジネス・アナリストであるジュリア・リゾが、エルニーニョが太平洋からコモディティ市場、食品価格、そして投資家のポートフォリオへどのように影響を及ぼし得るのかについてお話しします。 このエピソードは8月19日 にサンパウロにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 ブラジルの降雨パターンや、西アフリカのカカオ栽培の状況を日頃から追っている方は少ないかもしれません。しかし、チョコレートや食料品、電気代が値上がりすれば、身近に感じるでしょう。そして、それらを結び付ける先にあるのがエルニーニョです。エルニーニョは太平洋の海水温上昇に伴って発生し、世界の気象パターンに影響を与える現象です。エルニーニョは雨の降る地域を変え、作物、電力市場、輸送、インフレの見通しを左右します。 現在、2026年第4四半期に非常に強いエルニーニョが発生する確率は95%となっています。観測史上75年超の中でも最も強力な現象の一つとなる可能性があります。タイミングと発生場所は非常に重要です。作物への被害は、暑さや豪雨が、作付け、開花、収穫の限られた時期に重なるかどうかに左右されることが多いためです。 最も直接的な影響は、まずコモディティ市場に表れる可能性が高いとみられます。砂糖は、天候要因による価格上昇の恩恵を最も受けやすいコモディティの一つです。カカオも需給が逼迫しているように見えます。穀物はより複雑です。大豆については、南米全体の生産量が差し引きで減少する材料が必要です。ブラジル北部での問題は、アルゼンチンやブラジル南部での作柄改善によって相殺される可能性があります。トウモロコシはさらにタイミングへの依存度が高くなります。目先の重要な材料は引き続き米国の天候と作柄です。 次に何が起きるかは、農産物市場の枠をはるかに超えて重要になります。食料は、エルニーニョがより広い経済に波及する主な経路であり、その影響は通常1年遅れで表れます。そのため、インフレへの影響は2027年の論点となる可能性があります。 中南米では、追加的なインフレリスクが最も大きいのはペルー、ブラジル、コロンビアに集中しており、圧力の大半は2027年に到来するとみられます。これは中央銀行にとって重要です。天候ショックは薄れることがあります。そのため、政策当局者は食料価格の当初の上昇を一時的なものとして見過ごすことがよくあります。より大きな懸念は、食料コストの上昇が、インフレ期待や賃金、家賃、あるいは経済全体のその他の価格に影響し始める可能性があることです。コロンビアは、そうした二次的影響が金融政策を複雑にし得る最も影響が表れやすい国とみられます。 インドとインドネシアも、経済的な影響を大きく受けやすい国です。これらの国では、農業が生産と雇用の大きな割合を占めています。インドは特に影響を受けやすい国です。農業はGDPのおよそ18%、雇用の43~45%を占めており、食料は消費者物価バスケットのおよそ36%を占めています。記録的な食料備蓄が一定の下支えになる可能性はありますが、生育期が不調に終われば、農村部の所得を圧迫し、食料インフレを高止まりさせる可能性があります。 経済的な影響は大きく異なります。農産物価格の上昇は農家の所得を支え、食品・農業サプライチェーンの一部に恩恵をもたらす可能性があります。一方で、家計や食品メーカー、穀物や砂糖に依存する企業にとってはコスト増につながり得ます。暑さや乾燥により電力価格が上昇する市場では電力・公益事業会社が恩恵を受ける可能性がある一方、大雨は影響を受けやすい地域の輸送ルートや空港を混乱させる可能性があります。 過去の資産価格から得られるシグナルは限定的であり、これは幅広いマクロ取引というよりも、地域ごとのエクスポージャーを詳しく見極める必要がある作業です。降雨量、作物の生育タイミング、在庫、そしてコスト上昇を消費者に転嫁できるかどうかが、最終的にどこに負担がかかるかを左右ことになります。 エルニーニョは太平洋で始まるかもしれませんが、その市場への波及効果は、西アフリカのカカオ農園から、食料品売り場、電力網、あるいは中央銀行の会合にまで及ぶ可能性があります。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    エルニーニョが市場にもたらす波及効果
  7. 8月18日

    韓国株:調整局面から健全な回復へ

    韓国株式市場は歴史的な上昇と急激な調整を経て、転換点に近づいている可能性があります。弊社の韓国・チーフ株式ストラテジスト、ジュン・ソクが、次のサイクルにはより強固な土台と、より多くのセクターの参加が必要になることについて、ご説明します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 今回のエピソードでは、弊社の韓国・チーフ株式ストラテジスト、ジュン・ソクが登場します。韓国株式市場が急激なリセット局面から、よりすそ野の広い持続可能な回復に向かいつつある可能性とその理由について解説します。 このエピソードは8月18日にソウルにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 韓国株式市場は、長期投資家でさえもスマートフォンをつい確認してしまいそうな値動きとなっています。2026年上半期にKOSPIは101%もの急上昇を遂げ、その後7月30日までにピークから38%超下落しました。しかし、市場は現在、より持続的な回復に向かいつつあるように見えます。 第一の理由はバリュエーションです。KOSPIの予想株価収益率、つまり今後1年間の予想利益に対する株価の水準を示す指標は5倍を下回り、2004年以来の低水準となりました。弊社のキャピチュレーション指数もマイナス2.53まで低下しました。この指数は市場のモメンタムと売られた銘柄の幅広さを組み合わせたもので、投資家の不安がどれほど広範に広がっているかを知るのに役立ちます。マイナス2を下回る水準は、大きな危機局面を除けば、底入れ圏を示していることがよくあります。 第二の理由は、強制的な売りが和らぎつつあるように見えることです。これまでレバレッジは両刃の剣として作用してきました。上昇相場を支える一方で、投資家がポジションの縮小を強いられる場面では相場の下落をより急激なものにしてきたのです。レバレッジ型の個別株ETFの資産は6月のピークから約70%減少し、信用取引の買い残も減少しています。また、ヘッジファンドは典型的なリスク削減サイクルのおよそ4分の3を完了させました。簡単に言えば、最も激しい売りはすでに峠を越えた可能性があります。 それでも、より健全な回復には、テックセクターの反発だけでは不十分です。AIインフラが先進的なメモリーの需要を引き続き押し上げているため、テックは今後も中心的な存在です。モルガン・スタンレー・リサーチでは、大手テックプラットフォームによる支出の世界合計が2026年に8,050億ドル、2027年には1兆2,000億ドルに達すると予想しています。これは大きな機会を生み出しますが、同時に設備投資、半導体価格、競争環境の変化に対して市場が敏感になり続けることも意味します。 ここで支えになるのが韓国経済全体です。実質GDP成長率は2四半期連続で3%を上回り、2025年の1.1%から大きく加速しました。通年の成長率は現在、3%台半ばに着地する可能性が高くなっています。一般的に韓国の成長率は2%程度です。重要なのは、改善が輸出以外にも広がっていることです。消費が回復しつつあり、観光はパンデミック前の水準を上回りました。政府は今年2,300万人の外国人旅行者の受け入れを目標にしています。 一方で、これには負の側面もあります。インフレ率は6月に3.2%に達し、韓国銀行は政策金利を2.75%に引き上げました。慎重な利上げサイクルが続けば、2027年第1四半期までに金利は3.5%に達する可能性があります。金利の上昇は金融セクターの利益に寄与する可能性がありますが、その一方で家計や企業の資金借り入れコストを押し上げます。 市場流動性の源泉も変化しています。上半期の株価上昇の大半は国内個人投資家がけん引しましたが、レバレッジ規制が厳格化するなか、次の上昇局面を左右するのは海外投資家になる可能性が高いとみられます。コーポレートガバナンス改革と、企業の資本管理の改善も、海外投資家のより幅広い参加を促す可能性があります。 弊社は、2027年6月までにKOSPIが9,000を目指すとの見方を引き続き維持しており、強気シナリオでは10,500、弱気シナリオでは5,500を想定しています。次の局面は、これまでよりも安定的でバランスの取れたものになる公算が大きいでしょう。テクノロジーに加えて、資本財、金融、ヘルスケア、通信、生活必需品も寄与するとみています。 韓国株には、まだ上昇余地があります。ただし、より重要なシグナルは質かもしれません。つまり、利益の底堅さ、規律ある資本管理、そしてより幅広い銘柄の参加です。株式市場の初期の上昇は、スピードと一部の主導銘柄への集中によって支えられていました。次の局面には、よりすそ野の広い、より持続的な支えが必要になるでしょう。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    韓国株:調整局面から健全な回復へ
  8. 8月14日

    英国は見直される余地がある

    弊社債券リサーチ・グローバル責任者、アンドリュー・シーツが、根強いネガティブな見方にもかかわらず、投資家が英国資産の安定性とパフォーマンスを見過ごしている可能性がある理由を検証します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関する弊社の考察をお届けします。   本日のエピソードでは、弊社債券リサーチ・グローバル責任者、アンドリュー・シーツが、英国には、より良い見直しの余地がある理由についてお話しします。 このエピソードは8月14日にロンドンにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 この10年は、英国にとって厳しい時期でした。ブレグジットはまさに経済面での大きな地殻変動であり、その後、英国にとって最大の貿易相手である欧州大陸との経済的な結びつきが弱まったことで、経済活動はより弱く、より複雑になりました。 その後、新型コロナウイルスが英国経済に大きな打撃を与えました。ロシアによるウクライナ侵攻を受けたエネルギー価格の急騰も同様です。政治面での変動も大きく、過去10年で7人の首相が誕生しました。そして現在、英国の成長率は弱く、インフレ率は高すぎ、GDP比で見た債務は増加しています。 さらに、新型コロナ後の世界では、AIを含むテクノロジーの収益力と影響力がますます大きくなっていますが、英国市場はまるで別の時代に取り残されているようにも見えます。米国株式市場で時価総額上位10社のうち8社はテクノロジー企業です。一方、英国では上位20社の中にテクノロジー企業は1社もありません。 英国の先行きに弱気になることは、私が目にする中でも最もコンセンサスに近い見方の一つだと言ってよいでしょう。しかし、その見方は誤解を招くこともあります。市場における単純なストーリーが、そのまま正しいことはほとんどありません。 まず、英国市場は退屈で停滞しており、テクノロジー企業が少ないために取り残されている、という見方から考えてみましょう。これはまったく事実ではありません。8月上旬までの時点で、S&P500種指数は過去5年間で85%のリターンを上げています。では英国市場はどうでしょうか。リターンは82%です。また、過去12カ月を見ても、英国市場と米国市場のパフォーマンスはよく似ています。要するに、見た目だけで判断してはいけない、ということです。 一方、英国の通貨には、世界の投資家がこの島国を敬遠(けいえん)している兆しは見られません。過去10年で、英国ポンドは実際に米ドルに対して価値を上げています。この間(かん) 、米国経済と米国市場のパフォーマンスが非常に力強かったことを考えると、これは注目に値します。また、他の主要国の通貨と比べてもかなり印象的です。同じ期間に、日本円、ブラジル・レアル、インド・ルピー、韓国ウォンはいずれも大きく下落しました。相対的に見れば、英国の通貨はアウトパフォームしてきたのです。 もちろん、英国の成長率は低いです。弊社では、今年の成長率をわずか1%と予想しており、米国の2%強を下回ります。ただし、英国がどのような逆風に直面してきたのかという点は注目に値します。英国では家計部門と企業部門がどちらも貯蓄率を高めており、それが同時に起きています。そして貯蓄が増えるということは、支出と経済活動が減ることを意味します。 これを少し文脈に当てはめてみると、米国家計は現在、可処分所得のおよそ3%しか貯蓄していません。英国では9%を超えています。ですから、英国の貯蓄率がこれ以上上昇しなくなるだけでも、あるいは低下に転じれば、今後の成長にとって大きな支えになるでしょう。 しかし、弊社は大きな論点、つまり財政問題を避けているのでしょうか。結局のところ、弊社では、英国の一般政府債務のGDP比率は今年およそ96%になると予想しており、これは第二次世界大戦以降でも最も高い水準の一つです。ただし、これはグローバル市場の話であり、相対的な状況が重要だと考えています。 そこで、英国の債務対GDP比率96%について考える際には、他の国の数字も見てみましょう。この比率は中国で120%、フランスで120%、米国で125%、イタリアで138%、日本で208%です。そして、これらすべての国の中で、政府の赤字が2025年に比べて2027年に大幅に縮小すると弊社が考えているのは英国だけです。また、年初来で見ると、英国の10年国債利回りの上昇幅は、米国や日本の利回り上昇幅を下回っています。 英国の新首相の誕生は、新たな政策の可能性を高めるものであり、投資家はこれを注意深く見守る必要があります。英国は引き続き、世界のエネルギー価格の変動に敏感です。それでも弊社では、英国をめぐる根本的なストーリーは、一般に語られているよりも、より複雑で前向きなものだと考えています。 市場のパフォーマンスはこの見方を裏付けており、そして、多くの場合、期待値のハードルは低いのです。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    英国は見直される余地がある

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モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。

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