おうちで診る医療|名古屋発!ごうホームクリニックの在宅医療ポッドキャスト

Go Ito

「在宅医療って、実際どうなの?」その疑問に現場の医師がお答えします。 名古屋市天白区の「ごうホームクリニック」は、24時間365日対応の機能強化型の在宅クリニックです。約600名の患者さんの「おうちで過ごしたい」という願いに寄り添い、年間100件超の看取り・緊急往診、人工呼吸器を使う方や医療的ケアが必要なお子さんの在宅サポートなど、地域の在宅医療を支えています。 このポッドキャストでは、病院では教わらない在宅医療の実践知をお届けします。 ・高齢者の「いつもと違う」を見逃さないプロの眼 ・在宅での急変時、何を見て何を伝えるか ・ご家族への説明で大切にしていること ・訪問診療チームの連携の実際 医療・介護に携わる専門職の方の学びに、そしてご家族の介護に向き合う皆さんの安心につながれば幸いです。 移動中でも、家事をしながらでも、「聴く在宅医療」をぜひご活用ください。

  1. 4日前

    300玄関の空気が変わる瞬間、気づけますか

    在宅医療・介護の現場は、病院と決定的に違う点があります。それは「相手の領域(テリトリー)に、こちらが一人で入っていく」ということです。病院なら、ナースコールを押せば同僚が来ます。廊下には人がいます。しかし訪問先では、玄関のドアが閉まった瞬間から、私たちは応援のいない密室にいます。この構造そのものが、暴力やハラスメントのリスクを高めています。 厚生労働省が委託して行った介護現場のハラスメント実態調査では、サービス種別によって差はあるものの、利用者やその家族から何らかのハラスメントを受けた経験があると答えた職員が、おおむね四割から七割に及ぶという結果が報告されています。訪問系サービスでは、密室性と単独訪問という条件が重なるため、特に注意が必要だとされています。つまりこれは、一部の不運な職員に起きる例外的な事故ではなく、この仕事に構造的についてくるリスクだということです。 そしてもうひとつ大切なのは、暴力やハラスメントは「突然」起きることが少ない、ということです。多くの事例を振り返ると、その前に必ずと言っていいほど小さなサインが出ています。玄関の照明が消えている。いつもと違う靴がある。施錠(せじょう)の音がする。声のトーンが低い。アルコールのにおいがする。こうした予兆(よちょう)に気づき、撤退するか、体制を変えるかを判断できるかどうか。そして、その判断を個人の勇気ではなく組織のルールとして支えられるかどうか。この回では、この二つを具体的に扱います。

  2. 4日前

    299「次も同じ人が訪問に行く」をやめた日

    在宅医療・介護の現場では、訪問先が利用者の生活空間そのものです。密室性が高く、応援をすぐに呼べず、逃げ道も限られる。この構造的な脆弱さ(ぜいじゃくさ)ゆえに、利用者や家族からの暴力・暴言・セクシュアルハラスメントは、病院よりも深刻化しやすいことが指摘されています。厚生労働省が公表した介護現場におけるハラスメント対策マニュアルでも、訪問系サービスは単独訪問が原則であることがリスク要因として明記されています。 それでも現場でしばしば起きるのが、「あの人は担当のAさんじゃないと怒るから」「新人を行かせたらもっと荒れる」という理由で、被害を受けた職員が翌週も同じ家に一人で行く、という運用です。これは一見すると利用者本位の継続性の尊重に見えますが、実態は個人の我慢に依存したリスク管理であり、再発防止の観点では最も避けるべき形です。被害を受けた本人が担当を外れられないかぎり、事業所としては「何も対策を取っていない」のと同じ状態が続きます。 この資料では、視点を再発防止に置きます。つまり、起きてしまった一件をどう処理するかではなく、二度目を起こさないために訪問の形をどう組み替えるか、という話です。鍵になるのは三つ。複数名訪問・時間帯変更・担当交代という手段の使い分け、利用者と家族への申し入れと合意形成の進め方、そして契約解除に至る前の段階的対応です。「次も同じ人が行く」をやめた日から、事業所のハラスメント対策は始まります。

  3. 4日前

    298夜10時の訪問、ひとり、車の中というリスク

    在宅医療・在宅介護の現場では、24時間対応が当たり前になりつつあります。夜10時に鳴るオンコール、暗い住宅街の路上に停めた一台の車、玄関先でひとりきりになる数十分。この時間帯に起きていることは、医療行為だけではありません。移動そのもののリスク、単独で密室に入るリスク、そして利用者や家族からのハラスメントのリスクが、同時に重なります。日中であれば「誰かが見ている」「すぐ応援が来る」という前提が、夜間には一気に崩れます。 ハラスメントについては、国も対策を進めています。厚生労働省の「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」や、全国訪問看護事業協会が作成した訪問看護職員向けの暴力・ハラスメント対応マニュアルでは、被害を個人の対応力の問題にせず、事業所として組織的に備えることが繰り返し強調されています。調査では、訪問系サービスに従事する職員のおよそ半数が、利用者や家族から身体的暴力、精神的暴力、セクシュアルハラスメントのいずれかを受けた経験があると報告されています。決して「運が悪い人だけの話」ではありません。 さらに見落とされがちなのが、移動と車です。訪問と訪問の間の運転は通勤ではなく業務であり、事故は労働災害になり得ます。夜間は交通事故の件数そのものは昼間より少ない一方で、死亡事故に占める割合は高く、視認性の低下と疲労が重なる時間帯です。夜10時に、疲れた頭で、知らない細い道を、慣れない駐車場所を探しながら走る。この状況を「気をつけて運転してね」という声かけだけで乗り切らせているとしたら、それは仕組みの不足です。この資料では、夜間オンコール訪問の安全確保、位置共有と応援要請の仕組み、そして交通・駐車・悪天候時の訪問可否判断という三つの観点から、明日から動かせる対策を整理します。

  4. 4日前

    297記録を充実させる事が自分の身を守るかもしれません

    在宅医療・介護の現場では、職員は「利用者の生活の場」という閉じた空間に、多くの場合ひとりで入っていきます。病院なら同僚の目があり、防犯カメラがあり、応援がすぐ来る。訪問先にはそのどれもありません。全国訪問看護事業協会が厚生労働省の老人保健健康増進等事業として実施した調査では、訪問看護職員のおよそ半数が、利用者や家族から身体的暴力・精神的暴力・セクシュアルハラスメントのいずれかを受けた経験があると回答しています。厚生労働省の「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」でも、訪問系サービスは被害経験割合が高いサービス類型として明確に位置づけられています。 問題は、被害が起きたときに現場に残るものが「本人の記憶」しかない、という点です。数か月後に労働災害(労災)の申請をする、あるいは民事訴訟や刑事手続に進む段になって、頼りになるのは当時の記録だけです。ところが実際の記録を見ると、「対応困難」「威圧的だった」「セクハラあり」といった評価の言葉ばかりで、何が起きたのかが復元できないものが少なくありません。評価だけの記録は、相手方から「主観にすぎない」と一言で崩されます。 もう一つの背景として、事業者側の法的責任があります。労働契約法第五条は、使用者が労働者の生命・身体等の安全を確保するよう配慮する義務、いわゆる安全配慮義務(あんぜんはいりょぎむ)を定めています。職員が被害を報告していたのに事業所が何もしなかった場合、事業者自身が責任を問われます。つまり記録と報告は、職員を守る道具であると同時に、事業所を守る道具でもあります。この回では「裁判や労災の場面で使える記録とは何か」を、書き方・報告ルート・証拠保全の三点から整理します。

  5. 4日前

    296患者さん・利用者さんから怒鳴られた時の初動を検証する

    在宅医療・在宅介護の現場は、病院のように守衛やナースコール、応援を呼べる同僚がすぐそばにいる環境ではありません。私たちは、鍵のかかる他人の住まいに、多くの場合ひとりで入っていきます。そこで利用者さんやご家族から突然怒鳴られたとき、逃げ場も証人もない状況で、数十秒のうちに判断を迫られます。訪問先での暴言(ぼうげん)や威圧(いあつ)は、単なる「気まずい出来事」ではなく、職員の心身の健康と、その後のサービス継続そのものを左右する重大なリスク要因です。 各種の実態調査では、訪問系サービスに従事する看護職・介護職のおおむね4割から5割が、利用者やご家族からの暴力・暴言・セクシュアルハラスメントを経験していると報告されています。しかも訪問という業務特性上、その多くは目撃者のいない密室で起きています。にもかかわらず、現場では「これくらいは我慢するもの」「認知症の周辺症状(BPSD、行動・心理症状)だから仕方ない」「自分の説明が悪かったのかもしれない」と個人の内側で処理されてしまい、事業所に報告されないケースが少なくありません。報告されなければ組織は動けず、同じ職員が同じ家で同じ目に遭い続けます。 このPodcastでは、怒鳴られた「最初の5分」に焦点を当てます。なぜ5分かというと、この時間帯に決まることが三つあるからです。ひとつは自分の身体的安全、つまり殴られずに家を出られるかどうか。ふたつめは関係性の行方、つまり相手の興奮が鎮まる方向に向かうか、さらに燃え上がるか。そして三つめは、後から組織として対応できるだけの事実が残るかどうかです。この三つは、勇気や根性ではなく、あらかじめ決めておいた手順で守ります。距離の取り方、退出動線(たいしゅつどうせん、その場から安全に出るための経路)の確保、撤退の判断基準、そして直後の連絡・記録。この四つを、明日の訪問から使える形で整理していきます。

  6. 4日前

    295撤退を決めるのは現場ではなく事業所

    訪問看護、訪問介護、居宅介護支援といった在宅サービスは、スタッフが一人で利用者宅という密室に入っていく働き方です。病院や施設のように同僚の目や防犯設備がなく、何かが起きても即座に助けを呼べません。この構造そのものが、暴言、身体的暴力、セクシュアルハラスメント(性的いやがらせ)といった被害が起こりやすい土壌になっています。厚生労働省が2018年度に実施した「介護現場におけるハラスメントに関する調査研究」では、利用者や家族等から何らかのハラスメントを受けた経験がある職員が、サービス種別により約4割から7割にのぼることが示されました。訪問系サービスでは、とくにセクシュアルハラスメントの割合が高い傾向が報告されています。 それにもかかわらず、現場では「私が我慢すればサービスが続く」「断ったら利用者さんが困る」「ケアマネさんに迷惑がかかる」といった理由で、被害が報告されないまま抱え込まれがちです。ここで確認したいのが、本資料のサブテーマである「撤退を決めるのは現場ではなく事業所」という原則です。訪問を続けるか、いったん中止するか、契約を解除するか。この判断は、恐怖や罪悪感のただ中にいる担当者が一人で背負うものではありません。事業者には労働契約法第5条に定められた安全配慮義務があり、組織として判断し、組織として利用者・家族に説明し、組織として行政や保険者へつなぐ責任があります。 もう一つ重要なのは、ハラスメントに見える行為のすべてが「悪意」ではないという視点です。認知症(にんちしょう)の行動・心理症状、せん妄(せんもう)、脱抑制(だつよくせい)、疼痛(とうつう)や低酸素による不穏、薬剤の影響など、医学的に説明できる状態像が背景にあることは珍しくありません。だからこそ、一人の職員の主観ではなく、多職種で情報を持ち寄り、医学的評価と労働安全の両面から組織として判断する仕組みが要ります。「我慢」でも「感情的な撤退」でもない、第三の道を用意することが本テーマの核心です。

  7. 4日前

    294床が見えない家、噛む犬、消えない煙

    在宅医療の現場は、病院と決定的に違う点があります。それは、そこが「相手の生活の場」であり、こちらが環境をコントロールできないという点です。物であふれて床が見えない居室、玄関を開けた瞬間に飛びかかってくる犬、在宅酸素療法(ざいたくさんそりょうほう)を使いながら消えることのないたばこの煙。これらはどれも、利用者本人の生命リスクであると同時に、訪問するスタッフの身体と健康を脅かす労働安全の問題でもあります。 近年、この領域は「個人の我慢」から「組織のリスクマネジメント」へと明確に位置づけが変わりました。厚生労働省は2019年度に介護現場におけるハラスメント対策マニュアルを作成し、その後も事例集や研修手引きを追加しています。訪問系サービスは、密室・単独・長時間という三条件がそろうため、暴力・セクシュアルハラスメント・過剰要求のリスクが構造的に高い職種です。そして住環境そのものが持つ危険、すなわち不衛生・動物・煙は、「ハラスメントではないが安全を脅かす要因」として、同じ土俵で評価されるべきものです。 一方で、私たちは環境が劣悪だからという理由だけでケアを打ち切ることはできません。むしろ、床が見えない家にこそ、転倒を繰り返し、褥瘡(じょくそう)を抱え、社会から孤立した人がいます。求められるのは、撤退か我慢かの二択ではなく、リスクを言語化し、記録し、組織で共有し、環境に介入しながら訪問を継続する技術です。この資料では、その具体的な手順を三つの重点テーマで整理します。

  8. 4日前

    293暴言の奥にある「怖い」を聞き取る

    訪問診療や訪問看護、訪問介護の現場では、玄関を開けた瞬間に怒鳴られる、ケアの最中に手を払いのけられる、電話口で「二度と来るな」と言われる、といった場面が珍しくありません。厚生労働省が2019年に公表した「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」の基礎となった調査(2018年度の老人保健健康増進等事業)では、利用者本人からハラスメントを受けた経験がある職員は、サービス種別によっておおむね4割から7割、家族等からのハラスメント経験も1割から3割程度という結果が示されました。訪問系サービスは密室性が高く、支援者が一人で対応する場面が多いため、リスクはより大きくなります。 一方で、在宅の現場で起きる暴言や拒否のかなりの部分は、「悪意ある加害」ではなく「恐怖や混乱の表出」です。認知症(にんちしょう)の行動・心理症状(BPSD、びーぴーえすでぃー。行動と感情面にあらわれる症状のこと)、せん妄(せんもう。急性に起こる意識と注意の障害)、精神疾患、そして介護者側の限界状況。いずれも「怖い」「どうしていいか分からない」「助けてと言えない」という感情が、怒りという形をとって表に出てきます。ここを読み違えると、私たちは本人を「困った人」に仕立て上げ、関係を断ち切ってしまいます。 ただし、背景を理解することと、暴力や性的な言動を我慢することは、まったく別です。この資料が目指すのは、背景理解(なぜそうなるかを見立てる力)と、境界線の設定(安全を守る線を引く力)の両立です。この二つは対立しません。むしろ、正しく線を引けるチームだけが、関係を切らずに支援を続けられます。

番組について

「在宅医療って、実際どうなの?」その疑問に現場の医師がお答えします。 名古屋市天白区の「ごうホームクリニック」は、24時間365日対応の機能強化型の在宅クリニックです。約600名の患者さんの「おうちで過ごしたい」という願いに寄り添い、年間100件超の看取り・緊急往診、人工呼吸器を使う方や医療的ケアが必要なお子さんの在宅サポートなど、地域の在宅医療を支えています。 このポッドキャストでは、病院では教わらない在宅医療の実践知をお届けします。 ・高齢者の「いつもと違う」を見逃さないプロの眼 ・在宅での急変時、何を見て何を伝えるか ・ご家族への説明で大切にしていること ・訪問診療チームの連携の実際 医療・介護に携わる専門職の方の学びに、そしてご家族の介護に向き合う皆さんの安心につながれば幸いです。 移動中でも、家事をしながらでも、「聴く在宅医療」をぜひご活用ください。

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