おうちで診る医療|名古屋発!ごうホームクリニックの在宅医療ポッドキャスト

ごうホームクリニック

「在宅医療って、実際どうなの?」 『おうちで診る医療』は、名古屋市天白区のごうホームクリニックがお届けする在宅医療のポッドキャストです。 ご本人の「おうちで過ごしたい」という願いを支える現場から、在宅医療の実践知や日々の工夫をお伝えします。 高齢者の「いつもと違う」に気づく視点、急変時に確認したいこと、ご家族との対話、訪問診療チームの連携。人工呼吸器を使う方や、医療的ケアが必要なお子さんの在宅生活についても取り上げます。 医療・介護に携わる方の学びに。そして、ご自宅での療養や介護に向き合う方が、状況を理解し、相談するための手がかりに。 移動中や家事の合間に、「聴く在宅医療」をお楽しみください。

  1. 5日前

    【災害・停電】電気が消えた最初の1時間、何から手をつける|#332

    在宅医療の現場で停電が起きたとき、最も危険なのは「機械が止まったこと」そのものではなく、「あと何分もつのかを誰も知らないまま時間が過ぎること」です。人工呼吸器の内部バッテリーは機種によって概ね数時間、在宅酸素療法(ざいたくさんそりょうほう)の酸素濃縮装置(さんそのうしゅくそうち)に至ってはバッテリーを内蔵していない機種が主流で、電気が消えた瞬間に供給が止まります。吸引器(きゅういんき)も同様に、充電が切れていれば分泌物(ぶんぴつぶつ)の除去ができなくなります。つまり発災直後の最初の1時間は、「治療」ではなく「残り時間の計算」と「電源の付け替え」と「情報の流し方」で勝負が決まります。 朝の回で見たとおり、停電は「数時間で戻るだろう」という前提がしばしば裏切られます。発災直後に必要な判断は、「今どうするか」ではなく「3時間後、12時間後、72時間後に、この家の電源はもつのか」という時間軸の判断です。 この回では、アラームが鳴ったときの一般的な初動手順や、酸素トラブル全般の対応には踏み込みません。あくまで「電源が失われた」という一点に絞り、バッテリー残量の管理、外部電源への切替、用手換気(ようしゅかんき)への移行判断、ボンベへの切替と残量計算、そして誰にどの順番で連絡するかという段取りだけを扱います。現場の看護師、介護職、ケアマネジャーが、停電の第一報を受けた瞬間から動けるようにすることが目的です。

    【災害・停電】電気が消えた最初の1時間、何から手をつける|#332
  2. 5日前

    【災害・停電】停電72時間、誰から助けに行くか決めていますか|#331

    災害時、在宅医療の現場で最初に起きるのは「電気が止まること」です。建物が無事でも、電気が止まった瞬間から、人工呼吸器(じんこうこきゅうき)も、酸素濃縮装置(さんそのうしゅくそうち)も、吸引器(きゅういんき)も、エアマットレスも、冷蔵庫の中のインスリンも、すべてが止まります。2018年9月の北海道胆振東部地震(ほっかいどういぶりとうぶじしん)では道内のほぼ全域にあたる約295万戸が停電するブラックアウトが発生し、2019年9月の台風15号では千葉県を中心に最大約93万戸が停電し、地域によっては復旧までおおむね2週間を要しました。停電は「数時間で戻るもの」ではないという前提に立つ必要があります。 なぜ72時間なのか。発災直後の72時間は、行政も消防も救助活動に資源を集中させる時間帯であり、在宅療養者への公的支援が届きにくい空白の時間だからです。言い換えれば、最初の3日間は、普段その方を知っている私たち在宅医療・介護のチームが支えるしかありません。その3日間に、限られた人数のスタッフが、道路が寸断された地域で、誰のところから回るのか。これを発災後に考え始めると、必ず間に合いません。 本テーマの視点は「平時の備え」です。災害時に特別な力を発揮することは誰にもできません。できるのは、平時に決めておいたことを、そのまま実行することだけです。今回は、医療機器依存度による優先度の分け方、個別避難計画(こべつひなんけいかく)と避難行動要支援者名簿(ひなんこうどうようしえんしゃめいぼ)、そして患者・家族と決めておく連絡手段という3点に絞って整理します。

    【災害・停電】停電72時間、誰から助けに行くか決めていますか|#331
  3. 5日前

    【災害・停電】電動ベッドが平らに戻らない、5階に取り残される|#330

    災害や停電が起きたとき、在宅医療の現場で最初に止まるのは「生活を支えていた電気仕掛けの住環境」です。電動ベッドは角度がついたまま固まり、エアマット(体圧分散マットレス)は数時間かけてしぼみ、エレベーターは止まり、エアコンも換気扇も動きません。医療機器のバックアップは平時から話題になりますが、ベッド・マット・エレベーター・室温という「生活動作と住環境」の停止は、見落とされたまま当日を迎えることが少なくありません。 月曜の回で触れたとおり、大規模停電は数日から、地域によってはおおむね2週間続いた例があります。つまり私たちが想定すべきは「48時間から1週間、電気のない家で寝たきりの方をどう守るか」という問いです。 さらに集合住宅では、停電が「垂直方向の孤立」を生みます。エレベーターが止まるだけでなく、受水槽(じゅすいそう)の加圧給水ポンプが止まって水も出ない。5階に住む要介護5の方は、ベッドが傾いたまま、マットがしぼみ、水も運べず、室温だけが上がっていく、という三重苦に置かれます。この回では、機器の選定論や熱中症予防の一般論ではなく、電気が来ない数日間に現場スタッフと家族が手で何をするか、に絞って整理します。

    【災害・停電】電動ベッドが平らに戻らない、5階に取り残される|#330
  4. 5日前

    【災害・停電】とろみ剤が尽きた日の、食べる・飲むの守り方|#329

    災害や長時間の停電が起きたとき、在宅療養者の生死を分けるのは、実は人工呼吸器や酸素だけではありません。嚥下(えんげ)機能が落ちている方にとっては、とろみ調整食品(増粘剤・ぞうねんざい)が尽きること、嚥下調整食のレトルトが底をつくこと、そして冷蔵庫が止まることが、そのまま脱水と低栄養、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)に直結します。呼吸器や吸引器の電源確保は多くの事業所でチェックリスト化されていますが、「とろみ剤があと何日分あるか」を把握している在宅チームは、まだ多くありません。 ここで厄介なのは、嚥下障害のある方では「水があるのに飲ませられない」という独特の事態が起こることです。一般の避難者であれば配給されたペットボトルの水を飲めば済みますが、中間のとろみが必要な方にとって、とろみのつかない水は飲料ではなく誤嚥(ごえん)の原因物質になります。逆に、誤嚥を恐れて水分を絞れば、数日で脱水から傾眠(けいみん)やせん妄(せんもう)、腎機能低下へ進みます。災害時の嚥下管理とは、この二つのリスクの綱引きを、限られた物資のなかで現実的に調整する作業にほかなりません。 この回では、平時のとろみの付け方や水分摂取の工夫といった基礎は扱いません。扱うのは、災害に固有の三つの論点です。すなわち、嚥下調整食と経腸栄養剤(けいちょうえいようざい)を何日分どう積むかという備蓄量の設計、飲料水が限られた状況での必要量の見積もりと優先順位づけ、そして停電下での栄養剤と要冷蔵薬剤の管理です。明日の訪問から、持ち物リストと支援計画書に書き足せる形でお伝えします。

    【災害・停電】とろみ剤が尽きた日の、食べる・飲むの守り方|#329
  5. 5日前

    【災害・停電】避難所に行けない家族へ、背負わない準備リスト|#328

    在宅医療の対象となる方の多くは、災害が起きても避難所へ行けません。人工呼吸器(じんこうこきゅうき)や在宅酸素療法(ざいたくさんそりょうほう)を使っている、ストレッチャーでなければ移動できない、認知症があって集団生活に耐えられない、終末期で移動そのものが苦痛になる。理由はさまざまですが、結論は同じです。「逃げる」という一般的な防災の答えが、そのままでは使えない人たちがいます。そして、その現実を最も重く引き受けているのが同居家族です。 今週くり返し見てきたように、大規模停電は数日から、地域によってはおおむね2週間続くことがあります。この「数日から2週間」という時間軸は、在宅で電気に依存した療養をしている方にとって、生命に直結する長さです。にもかかわらず、多くのご家庭で備えは「家族の頭の中」にしかありません。頭の中にある備えは、その人が不在のとき、あるいは動揺しているときには存在しないのと同じです。 このテーマのタイトルを「背負わない準備リスト」としたのには、二つの意味があります。一つは物理的な意味で、要介護者を背負って階段を下りるような避難は現実的ではなく、荷物も背負えないという前提に立つこと。もう一つは心理的な意味で、家族が一人で全部を背負い込まない仕組みをつくることです。在宅医療スタッフの役割は、災害時に駆けつけることではありません。駆けつけられない前提で、平時に「紙」と「手順」と「役割分担」を家の中に置いておくことです。この資料では、備蓄リストと手順書、避難するか在宅にとどまるかの判断、平時に渡しておく緊急時カードという三つの具体策を扱います。

    【災害・停電】避難所に行けない家族へ、背負わない準備リスト|#328
  6. 5日前

    【災害・停電】うちのBCP、停電の夜に本当に動くか|#327

    在宅医療の現場でBCP(ビーシーピー、業務継続計画)という言葉はすっかり定着しました。介護保険サービスでは、二〇二一年度の報酬改定で自然災害と感染症のBCP策定が義務づけられ、三年間の経過措置を経て二〇二四年四月から完全義務化されています。つまり今、書類としてのBCPを持っていない事業所はほとんどありません。問題は、その紙が停電の夜に動くかどうかです。 想定すべきは大地震だけではありません。台風による長期停電では、携帯電話の基地局も非常用電源が尽きて圏外になった地域が広く出ました。在宅医療にとっての災害とは、建物が壊れることよりも、電気が止まり、電話がつながらず、人工呼吸器や吸引器を使う利用者さんの家に誰が行くのかを、情報が乏しいまま決めなければならない状況のことです。 この回で扱うのは、平時の顔の見える関係づくりや会議の進め方ではありません。そこは前提として、通信が途絶えた夜に、誰がどう安否を取り、誰が参集(さんしゅう、職員が所定の場所や役割に集まること)し、誰の家から先に回るのかという、BCP固有の意思決定の設計に話を絞ります。そして、その設計を行政・地域包括支援センター・他事業所とどう分担するか、訓練でどう壊して直すか、という三点を掘り下げます。

    【災害・停電】うちのBCP、停電の夜に本当に動くか|#327
  7. 5日前

    【災害・停電】水が出ない5日目、それでもケアは続く|#326

    災害対応の話は、どうしても発災直後の72時間に集中しがちです。しかし在宅医療の現場で本当に苦しくなるのは、むしろその後です。水道が止まったまま4日、5日と経過すると、備蓄した水はほぼ底をつき、紙オムツや尿取りパッドの残りが数えられるほどになり、ゴミの収集も止まったままになります。訪問するスタッフ自身も被災しており、訪問できる件数は平時の半分以下。この「継続期」こそ、在宅療養者の皮膚と排泄と内服が一気に崩れる時期です。 実際、過去の災害では断水の長期化が繰り返し起きています。2016年の熊本地震では最大で40万戸を超える断水が発生し、地域によっては復旧に数週間を要しました。2024年の能登半島地震では、水道の復旧が数か月単位に及んだ地域もありました。一方で、国が家庭備蓄として推奨しているのは最低3日分、できれば1週間分です。つまり「備蓄が想定どおりに持っても、断水のほうが長く続く」という事態は、例外ではなく標準的なシナリオだと考えるべきです。 そしてもう一つ押さえておきたいのが、災害関連死(さいがいかんれんし)の存在です。熊本地震では、建物倒壊などによる直接死よりも、その後の環境悪化や持病の増悪(ぞうあく)による関連死のほうが多かったことが知られています。在宅で療養を続ける人にとって、断水5日目は命に直結する環境です。今回は、平時の褥瘡(じょくそう)予防やオムツ選びの総論ではなく、「水と物がない中で、何を削り、何を絶対に守るか」という優先順位の判断に絞って整理します。

    【災害・停電】水が出ない5日目、それでもケアは続く|#326
  8. 5日前

    【災害・停電】処方箋がないとき、災害時に薬をつなぐには|#325

    災害が起きたとき、在宅療養者にとって最初に尽きるものは食料でも水でもなく、薬であることが少なくありません。多くの在宅患者は14日分から30日分の処方を受けていますが、発災が「次回処方の3日前」だった場合、備蓄は実質ゼロに近い状態です。かかりつけ医は被災して休診、薬局はシャッターが下り、停電でレセコン(調剤報酬計算システム)も止まる。手元には薬の袋だけ、あるいはそれすらない。こうした場面で現場が最初に口にするのが「処方箋がないから薬は出せない」という思い込みです。 しかし法律は、この状況をあらかじめ想定しています。医薬品医療機器等法(いやくひんいりょうききとうほう、通称は薬機法=やっきほう)第49条第1項は、処方箋医薬品を処方箋なしに販売・授与することを禁じていますが、その条文には「正当な理由なく」という限定が付いています。そして厚生労働省の通知(平成26年3月18日 薬食発0318第4号「処方箋医薬品等の取扱いについて」)は、正当な理由の一つとして、大規模災害時に医師等の受診が困難な場合、あるいは医師等からの処方箋の交付が困難な場合を明記しています。つまり、処方箋がなくても薬を渡せる扉は、はじめから開いているのです。 そして、この扉を開ける鍵を持っているのは薬剤師や医師だけではありません。「この方はこの薬を何ミリグラム、1日何回飲んでいます」という情報を、停電下・身分証なしの状況で提示できる人が鍵を握ります。訪問看護師、介護職、ケアマネジャーが日常的に接している情報こそが、災害時には処方箋の代わりに機能します。本稿は、その準備と判断の具体論に絞ります。

    【災害・停電】処方箋がないとき、災害時に薬をつなぐには|#325

番組について

「在宅医療って、実際どうなの?」 『おうちで診る医療』は、名古屋市天白区のごうホームクリニックがお届けする在宅医療のポッドキャストです。 ご本人の「おうちで過ごしたい」という願いを支える現場から、在宅医療の実践知や日々の工夫をお伝えします。 高齢者の「いつもと違う」に気づく視点、急変時に確認したいこと、ご家族との対話、訪問診療チームの連携。人工呼吸器を使う方や、医療的ケアが必要なお子さんの在宅生活についても取り上げます。 医療・介護に携わる方の学びに。そして、ご自宅での療養や介護に向き合う方が、状況を理解し、相談するための手がかりに。 移動中や家事の合間に、「聴く在宅医療」をお楽しみください。

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