SUNDAY MORNING WAVE

東北大学災害科学国際研究所の今村文彦教授が地震・津波をテ-マにわかりやすく解説する『地震に自信を』を中心に、防災・減災に役立つ情報と音楽をお送りします。

  1. 5日前

    【地震に地震を】クラカタウ島噴火と津波(2026年9月20日 今村文彦先生)

    インドネシア・スンダ海峡に位置するクラカタウ(およびその跡地に生まれたアナク・クラカタウ)は、火山体の崩壊や海洋噴火に伴う大規模津波を繰り返し引き起こしてきた世界的に知られる活火山です。・1883年8月26日〜27日 巨大噴火・大津波(噴火警戒レベル6の超巨大噴火) 山体が劇的に崩壊、海水の急激な流入を伴う大爆発により、最大40m超の巨大津波が発生。スンダ海峡沿岸(ジャワ島・スマトラ島)で36,000人以上が死亡し、数百の沿岸集落が流失。噴煙が高度約80km(成層圏)まで達し、大量のエアロゾルにより地球の平均気温が翌年約1.2℃低下したと言われています。・2018年12月22日 アナク・クラカタウ山体崩壊・津波(噴火警戒レベル3)継続していた噴火活動により、1927年以降に成長した新島「アナク・クラカタウ」の南西斜面が海中へ滑り落ちる巨大山体崩壊が発生。大きな地震を伴わなかったため地震警報が出ないまま津波が沿岸へ到達。ジャワ島西部およびスマトラ島南部の沿岸に数メートルの津波が押し寄せ、430人以上が死亡、14,000人以上が負傷・被災。山体崩壊により島の標高が約338mから約110mへと一気に減少し、島自体の体積も約3分の2が消失。・2026年9月5日アナク・クラカタウ山噴火(噴火警戒レベル2〜3)9月4日深夜から5日午前にかけて連続的な噴火が発生し、夜間には溶岩噴泉や地鳴り・轟音が観測されました。噴煙・火山灰の高度は最大で上空約15,000mに達し、火口から半径3km以内への接近および一切の立ち入り活動が禁止されています。ジャカルタは東南アジアの主要ハブであるため、シンガポール、クアラルンプール、シドニー、ドーハなどを結ぶ国際線の欠航・遅延が相次ぎ、国際物流や人流に直接的な滞りを与えています。

    【地震に地震を】クラカタウ島噴火と津波(2026年9月20日 今村文彦先生)
  2. 9月14日

    【地震に自信を】千葉豪雨の被害とワンコイン浸水センサー(2026年9月13日 今村文彦先生)

    令和8年8月千葉豪雨(気象庁命名)は、線状降水帯による想定超えの集中豪雨が原因で、都市部を中心に甚大な内水氾濫をもたらしました。この概要と今後の対策、および「500円センサー」の導入効果について紹介します。  局地的な激しい雨により排水機能が追いつかず、千葉市をはじめとする各地で大規模な道路冠水や床上・床下浸水が発生しました。排水ポンプ場の機能停止やマンホールからの溢水など、都市型水害の特徴が顕著に表れました。ハード面の対策として、1時間あたり65mm前後を想定した従来の雨水貯留槽や調整池の増設、下水道管の補強・大口径化、排水ポンプの耐水化および仮設能力の強化が進められていますが、各家庭での雨水貯留タンクや浸水対策用防水板の設置助成、ハザードマップの再周知、そしてIoT技術を用いたリアルタイム浸水監視体制の構築が急務とされています。   その中で、国土交通省や自治体が実証実験を進めている「ワンコイン浸水センサー(機器や通信費が1台あたり数百円〜数千円規模の低価格浸水検知端末)」は、非常に有効で即効性の高い浸水対策です。従来の河川水位計は高額で設置場所が限られていましたが、低価格センサーであればアンダーパス、準用河川、内水氾濫が起きやすい住宅街の側溝などに大量設置でき、地域の「死角」をなくせます。また、水が到達した瞬間に自動でデータを送信するため、通行止めの早期実施や住民への迅速な避難呼びかけにつながります。  ただし、多くのワンコインセンサーは「一定の水位に達したか」という検知が主目的であり、「水位がどれくらいの速度で上がっているか」という連続データ測定には従来の精度の高い水位計との組み合わせが必要です。大規模な貯留施設や下水管の拡充には数年から数十年かかりますが、ワンコインセンサーのような低コストIoTを網羅的に配置することは、今すぐできる防災力の底上げとして非常に効率が良いアプローチと言えます。

    【地震に自信を】千葉豪雨の被害とワンコイン浸水センサー(2026年9月13日 今村文彦先生)
  3. 9月7日

    【地震に自信を】2026年ベネズエラ地震・コロンビア地震の特徴(2026年9月6日 今村文彦先生)

    南米で発生した2つの地震について紹介します。 ・ベネズエラ地震(6月24日)は、モーメントマグニチュード(Mw)7.2の地震発生からわずか約39秒後にMw 7.5の地震が連続発生した「二重地震(ダブルイベント)」で、浅い横ずれ断層運動が主因でした。震源付近のヤラクイ州や首都カラカス近郊のラ・グアイラ州など北部沿岸部に破壊が集中し、死者5,000人超、建物の倒壊とインフラ途絶により大規模な仮設避難生活が強いられています。 ・コロンビア地震(8月10日)は、チョコ県を震源とするMw 7.4〜7.5、深さ約110kmの「中深発地震」でプレートの沈み込み帯が起因です。広域へ揺れのエネルギーが伝播し、コロンビア全土およびエクアドル、パナマ、ベネズエラでも震動を観測。地滑りや都市部の建物倒壊により死傷者が多数発生し、国家非常事態が宣言されました。   ふたつの地震の共通点として、南米北部の複雑なプレート境界部に位置するため、隣接する広域の中南米諸国にまで揺れが及び国境を越える影響があったことやインフラ寸断による救援の難航があげられます。また、耐震性の低いレンガ・コンクリート建造物の崩壊が多発したほか、余震や地滑りによるさらなる崩落リスクが避難活動を阻害しました。 今後の復興・防災における課題として、孤立地域の救助と人道支援や大規模避難民の住環境の再建への支援体制、特異な地震パターンへの備えと耐震化などが考えられます。

    【地震に自信を】2026年ベネズエラ地震・コロンビア地震の特徴(2026年9月6日 今村文彦先生)
  4. 8月31日

    【地震に自信を】熊本地震から1ヶ月が経ちました(2026年8月30日 今村文彦先生)

    令和8年熊本地震は、7月28日16時27分頃に発生した内陸浅部を震源とする大規模地震です。直近の被害状況やこれまでに明らかになっている特徴、今後の主な課題を紹介したいと思います。震源は熊本県熊本地方、深さ約16 km、マグニチュード 7.1で、熊本県宇城市、八代郡氷川町で震度7、熊本市南区で震度6強、その他周辺市町村で震度5強〜6弱を観測しました。国内での震度7の観測は2024年能登半島地震以来です。8月中旬時点の集計で、死者39名、負傷者300名以上、全半壊含め1万3,000棟以上の住家被害があり、イオンモール熊本での爆発・崩落事故や、八代市の製紙工場での煙突崩落などが生じました。九州自動車道や主要国道の損傷・通行止め、また、ピーク時には数万戸規模の断水が発生しました。2016年の熊本地震から約10年というタイミングで、再び同地域を震源とするM7クラスの大揺れに見舞われました。復興を遂げつつあった地域基盤や住民の心理面に二重の大きな影響を与えています。①  周期1〜3秒の強い揺れと産業・商業施設被害:横ずれ断層型特有の激しい揺れが平野部を中心に広がり、木造住宅のみならず工場煙突の折損や大型商業施設の一部破壊・爆発事故など、大規模建築物や産業インフラへの大きなダメージが目立ちました。②  酷暑・真夏の避難環境:7月下旬〜8月初旬の最高気温が35℃を超える連日の猛暑の中で発災したため、避難所や車中泊、自宅の片付け現場における熱中症リスクが急増しました。・断水や停電が続く中、冷房設備の整った避難所の確保や給水態勢の強化が最優先課題です。環境悪化や車中泊に伴う体調不良(熱中症・エコノミークラス症候群・感染症)による「災害関連死」を防ぐ取り組みが求められています。 ・宇城市や八代市など一部地域で断水の完全解消まで期間(8月末頃見込み)を要しており、生活用水・飲料水の安定供給と幹線道路の早急な本復旧が急がれます。・10年前の熊本地震の記憶がフラッシュバックするなど、被災者の精神的負担が深刻化しています。長期的なメンタルヘルスケア態勢(PTSD・トラウマ対策)の構築が必要です。 ・避難地域の防犯と生活再建:空き巣等の不法侵入犯罪を防止するための巡回警備の徹底と、住家被害認定・り災証明書発行手続きの迅速化による住宅再建支援が求められます。

    【地震に自信を】熊本地震から1ヶ月が経ちました(2026年8月30日 今村文彦先生)
  5. 8月24日

    【地震に自信を】南海トラフ地震臨時情報(2024年)(2026年8月23日 今村文彦先生)

    2024年8月8日、宮崎県沖の日向灘を震源とするマグニチュード7.1の地震が発生したことを受け、気象庁は制度運用開始(2019年)以来初めてとなる「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表しました。1週間の呼びかけ期間(8月8日〜8月15日)を経て呼びかけは終了しましたが、初の運用であったからこそ見えてきた成果・効果と混乱(振り返り)、そして今後の課題が明確になりました。成果・効果としては、個人や家庭での非常持出品のチェック、避難経路や安否確認手段の再確認など、平時の備えを再点検する直接的なきっかけとなりました。また、多くの自治体や事業者で、南海トラフ地震対策計画や初動対応フローを実地で検証する「社会実験」的な役割を果たしました。しかし、発表時期が夏休み・お盆休みの直前であったため、沿岸部を中心とする旅館・ホテルの大量キャンセル、海水浴場の開設中止、夏祭りや花火大会などイベントの延期・中止が相次ぎました。また、スーパーや薬局などで、水、パックご飯、米、防災用品の売り切れや品薄が発生しました。「注意」と「警戒」の区別がつかず、「〇月〇日に必ず巨大地震が来る(予知)」と誤解されたり、SNS上で偽情報・デマが拡散する事態が発生しました。 今後に向けた改善策・展望として下記が挙げられます。 ①情報発信の強化と一元化;臨時情報発出時には内閣府と気象庁が速やかに合同で記者会見を開き、「何をするべきで、何をしなくてよいか(過度な自粛や買いだめを控えること)」をわかりやすく発信する態勢を整備。②直感的で伝わりやすい図解広報;「平常時」「注意」「警戒」の際にとるべき行動パターンを、視覚的に理解できるピクトグラムやイラストを用いて平時から周知。③事業継続(BCP)と生活の両立;自治体や観光事業者、交通機関などが一律に自粛するのではなく、「避難態勢を整えた上で社会経済活動を継続する」ための実用的な標準マニュアルの更新。

    【地震に自信を】南海トラフ地震臨時情報(2024年)(2026年8月23日 今村文彦先生)

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