PEP Podcast

政策起業家プラットフォーム

政策起業家プラットフォーム(Policy Entrepreneur's Platform, PEP)が運営するポッドキャストチャンネルです。 以下の二つの番組を配信しています。 PEP Talk : 社会課題や政策を取り扱った書籍の著者にお越しいただき、書籍の背景等について伺う番組です。 PEP Think : 海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考える番組です。

  1. 4日前

    労働政策の最新論点:AI、社会保障、移民から考える 【海外シンクタンク記事分析】

    今回は、労働政策に関する直近三カ月の海外シンクタンクの記事を横断して分析します。 英語圏の国際機関・シンクタンク等による最近の論考10本をもとに、AI、社会保障・税制、子育て支援、フリーランス、移民、人手不足、GX人材といったトピックに関して整理します。 本エピソードは、各記事の翻訳や完全要約ではなく、労働政策上の論点整理です。特定の政策立場を推奨するものではなく、労働政策の最新の議論に関する見取り図を提供することを目的としています。 ■今回のトピック [00:00] イントロダクション [00:23] 今回の全体像 [03:12] 【論点1】AI 時代の労働政策 [04:01] 記事1: AI への労働者の曝露 [07:50] 記事2: 生成 AI 曝露のジェンダー差 [11:22] 記事3: AI 時代の労働の未来に向けた人間中心のビジョン [17:06] 【論点2】社会保障と働き方の制度設計 [18:03] 記事4: 変化する労働市場における普遍的社会保護 [23:15] 記事5: 独立請負人の誤分類問題 [28:43] 記事6: 労働課税の累進性と「税のくさび」 [34:19] 記事7: 仕事、保育、親になることへの移行のバランス [40:28] 【論点3】移民と人手不足 [41:14] 記事8: 移民と地域経済パフォーマンス [44:21] 記事9: Brexit が英国への移民流入に与えた影響 [49:25] 記事10: 労働力は足りているか?米国グリーン技能市場の事例 [56:55] 日本への示唆 ■紹介した論考 1. ILO Workers’ exposure to AI: What indicators tell us – and what they don’t https://www.ilo.org/publications/workers%E2%80%99-exposure-ai-what-indicators-tell-us-%E2%80%93-and-what-they-don%E2%80%99t 2. ILO Gen AI, occupational segregation and gender equality in the world of work https://www.ilo.org/publications/gen-ai-occupational-segregation-and-gender-equality-world-work 3. Brookings Institution A people-first vision for the future of work in the age of AI https://www.brookings.edu/articles/a-people-first-vision-for-the-future-of-work-in-the-age-of-ai/ 4. ILO Universal social protection in changing labour markets: Protecting workers in all types of employment https://www.ilo.org/publications/universal-social-protection-changing-labour-markets-protecting-workers-all 5. Economic Policy Institute Misclassifying workers as independent contractors is costly for workers and social insurance systems https://www.epi.org/publication/misclassifying-workers-as-independent-contractors-is-costly-for-workers-and-social-insurance-systems/ 6. OECD Taxing Wages 2026: The Progressivity of Labour Taxation in OECD Countries https://www.oecd.org/en/publications/taxing-wages-2026_3a5169ef-en.html 7. Urban Institute Balancing Work, Child Care, and the Transition to Parenthood: Findings from the District of Columbia New Parent Study https://www.urban.org/research/publication/balancing-work-child-care-and-transition-parenthood 8. Brookings Institution Metro Monitor 2026: The relationship between immigration and regional economic performance over the past decade https://www.brookings.edu/articles/metro-monitor-2026-immigration-and-regional-economic-performance/ 9. Centre for European Reform The impact of Brexit on immigration to the UK https://www.cer.eu/insights/impact-brexit-immigration-uk 10. Center for Global Development Do We Have Enough Workers? The Case of Green Skills in the US https://www.cgdev.org/publication/do-we-have-enough-workers-case-green-skills-us ■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。 ■YouTubeでも配信中 PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催 政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

    1時間5分
  2. 6日前

    石油危機が問い直す世界の脱炭素政策 【海外シンクタンク記事分析】

    「石油危機」は、脱炭素政策を止める理由になるのでしょうか。それとも、化石燃料への依存を減らす理由になるのでしょうか。 今回のテーマは、「石油危機が問い直す世界の脱炭素政策」です。世界の電力転換、気候外交の再設計、グローバルサウスのエネルギー移行を扱う3本の記事をもとに、化石燃料ショックの時代に脱炭素政策をどう位置付けるべきかを考えます。 ■キーワード クリーン電力:太陽光・風力が需要増を吸収/再エネが石炭を上回る/送電網・蓄電池・市場制度気候外交:地政学が協力条件を再定義/クリーンエネルギー安全保障/資金動員と連合の再設計石油危機:ホルムズ海峡リスク/グローバルサウスの脆弱性/重要鉱物と国家能力 ■今回のトピック [01:39] 再エネが担う電力需要増 — 化石燃料を増やさずに成長できるのか Ember のレポートをもとに、2025年の世界の電力転換を取り上げます。昨年度、世界の電力需要増のほとんどを太陽光発電と風力発電が吸収しました。低炭素電源の増加量も、世界の電力需要増を上回りました。 本エピソードでは、再生可能エネルギーが電力需要の伸びを支える中心技術になりつつあることを議論しました。再エネが石炭を上回ったことも、大きな転換点です。一方で、昼間の太陽光を「いつでも使える電力」に変えるには、送電網、蓄電池、市場制度の整備が欠かせません。クリーン電力をどれだけ早く整えられるかは、将来の製造業や立地戦略にも関わります。 出典: Ember, "Global Electricity Review 2026" https://ember-energy.org/latest-insights/global-electricity-review-2026 [23:25] 気候外交の構造変化 — 地政学が協力の条件を変える E3G の記事をもとに、気候政策が地政学と切り離せなくなっている状況を取り上げます。気候政策は、環境政策の一分野にとどまりません。エネルギー安全保障、貿易、産業政策、開発金融と結び付き、国際秩序そのものに影響を及ぼす政策領域になっています。 本エピソードでは、中東の対立、エネルギー市場、貿易ルート、インフレ、米国政府の気候協力からの後退、中国の供給網支配が、気候協力の条件を変えていることを議論しました。クリーンエネルギー安全保障、開発金融、気候資金、官民連携、COPやG7を通じた連合形成を、どのように設計し直すかが問われています。 出典: E3G, "Geopolitics and climate cooperation for a world in flux" https://www.e3g.org/news/geopolitics-and-climate-cooperation-for-a-world-in-flux/ [43:32] 石油危機が移行を試す — グローバルサウスの国家能力 New Security Beat の記事をもとに、2026年の石油危機を、グローバルサウスにおけるエネルギー移行のストレステストとして捉えます。 本エピソードでは、フィリピンの事例を通じて、燃料輸入への依存、再エネ導入の遅れ、重要鉱物の加工能力不足、規制能力の弱さが同時に表面化していることを議論しました。 フィリピンにはニッケル資源がありますが、国内で電池材料へ加工する力は十分ではありません。一方、インドネシアはニッケル加工を国内に取り込みました。ただし、その加工工程の多くは石炭火力に依存しています。産業化が進んでも、低炭素化と結び付かなければ、環境負荷を別の場所に移すだけになりかねません。石油危機は脱炭素を遅らせる理由ではなく、再エネ、電化、低炭素の鉱物加工、送電網、公共交通、社会保護を一体で設計する理由になります。 出典: New Security Beat, "A New Oil Crisis Stress-Tests the Global Energy Transition" https://www.newsecuritybeat.org/2026/04/a-new-oil-crisis-stress-tests-the-global-energy-transition/ ■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。 ■YouTubeでも配信中 PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催 政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

    1時間8分
  3. 5月13日

    成果に繋がるAI導入に必要なもの 【海外シンクタンク記事分析】

    「AIを使うこと」と「AIで成果を上げること」の間には距離があります。今回のエピソードでは、「成果につながるAI導入に必要なもの」をテーマに、医療AIの優先順位づけ、成熟したAI経済、政府調達制度という3本の記事を通じて、AI導入を技術選定だけで考えるのではなく、課題設定、長期的な採算、調達の設計として捉え直します。 ■キーワード 医療AI:課題起点の優先順位づけ/低リスク領域からの段階導入AI経済:トークン・API・クラウド計算資源/ワークフロー再設計/産業別の実用的AI応用政府調達:FAR改革/RFO/簡素化と標準化/共通インターフェースと現場裁量 ■今回のトピック [01:55] 医療AIの優先順位づけ — どのAIを使うかではなく、どの制約を解くか Tony Blair Institute for Global Change の記事をもとに、保健医療でAIを導入する際に、技術やベンダーからではなく、その国の医療制度の課題から出発すべきだという論点を取り上げます。本エピソードでは、人手不足、需要増、予算制約が重なる医療現場で、スタートアップの売り込みやデモの印象に振り回されないための手法として、AIの用途を6領域・23サブカテゴリに整理し、実現可能性、インパクト、拡張可能性、国家戦略との整合性から優先順位をつける考え方を議論しました。また、診断や臨床意思決定支援のような高リスク領域だけでなく、記録作成、予約、病床管理、在庫管理など、医療オペレーションを変える低リスク領域から段階的に導入する可能性についても考えます。 出典: Tony Blair Institute for Global Change, "“Where Do I Start?”: How Governments Can Prioritise AI Solutions for Health" https://www.institute.global/insights/public-services/where-do-i-start-how-governments-can-prioritise-ai-solutions-for-health [23:19] 成熟したAI経済 — AIを使わない場所まで設計する CSIS の記事をもとに、AI経済が成熟するためには、AIをもっと使うという単純な話ではなく、いつ、どこで、どこまで使わないかまで含めて経済価値を最大化する必要があるという論点を取り上げます。本エピソードでは、データセンター、トークン消費、API、クラウド計算資源のコストが見え始める中で、AIを既存業務に組み込むだけでは長期的な利益率を下げる可能性があること、AIの導入量ではなく、ワークフローやビジネスモデルを再設計できるかが競争力を決めることを議論しました。また、産業別のAI応用、データとプライバシーの規制、人材育成、電力やインフラ制約、そしてAIのコストをどう管理するかという実務的な論点にも触れています。 出典: Center for Strategic and International Studies, "Toward a Mature AI Economy: Policy Priorities for the Road Ahead" https://www.csis.org/analysis/toward-mature-ai-economy-policy-priorities-road-ahead [46:36] 政府調達の制度設計 — ルールを短くすれば速くなるのか Niskanen Center の記事をもとに、米国の連邦調達規則、FARの改革を題材として、調達制度を単純化することの隠れたコストを取り上げます。本エピソードでは、調達が遅く高いという問題意識は重要である一方、ルールを減らしすぎると共通の型まで消えてしまい、省庁や部署、担当者ごとに手続きが分裂する可能性があることを議論しました。公共部門でAIやクラウド、サイバーセキュリティのような仕様の固定が難しい技術を導入するには、現場裁量だけでなく、共通データ、評価基準、リスク管理、実務ガイド、横断的な学習ループが必要です。日本の中央政府や自治体調達、スタートアップ参入、デジタル、インフラ、防災、医療、研究開発にもつながる制度設計の論点として考えます。 出典: Niskanen Center, "The hidden cost of simplicity: Procurement reform’s fragmentation problem" https://www.niskanencenter.org/the-hidden-cost-of-simplicity-procurement-reforms-fragmentation-problem/ ■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。 ■YouTubeでも配信中 PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催 政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

    1時間13分
  4. 5月11日

    『働く力のインフラ』としての家族と制度 【海外シンクタンク記事分析】

    「家族」や「ケア」は、経済の外側にある私的な領域だと考えられがちです。しかし今回のエピソードでは、「働く力のインフラとしての家族と制度」をテーマに、卵子凍結、マレーシアの外国人配偶者ビザ、米国の保育・幼児教育政策という3本の記事を通じて、仕事を続けるか、子どもを持つか、どこで誰と暮らすかといった人生の選択が、実は細かな制度設計の積み重ねによって左右されていることを考えます。 ■キーワード 卵子凍結:平均年齢38歳データの一般化/20代後半から30代前半の情報提供/情報の非対称性外国人配偶者:LTSVP/就労権と在留資格/婚姻依存と家庭内暴力保育・幼児教育:ECE/需要側支援と供給側政策/保育人材・質・地域ミスマッチ ■今回のトピック [01:47] 卵子凍結の情報設計 — 将来の選択肢は「成功率」だけでは決まらない Works in Progress の記事をもとに、卵子凍結を「効くか、効かないか」という一元的な物差しだけで見るのではなく、何歳で、何個の卵子を、どの施設で、どの指標を見て判断するのかという情報設計の問題として取り上げます。本エピソードでは、悲観的な報道の多くが凍結時の平均年齢38歳のデータを一般化していること、卵子凍結は出産を保証する技術ではなく、将来の選択肢を残すオプションに近いこと、成功率やクリニック品質を広告ではなく公的データで比較する必要があることを議論しました。また、卵子凍結が普及することで、出産時期の遅れを個人の責任に押し込めてしまうリスクにも触れ、技術と制度の両方で選択肢を増やす社会をどう作るかを考えました。 出典: Works in Progress, “The truth about egg freezing” https://www.worksinprogress.news/p/the-truth-about-egg-freezing [22:34] マレーシアの外国人配偶者ビザ — 働けない配偶者を制度が生む Lowy Institute の記事をもとに、マレーシアの外国人配偶者が長期ソーシャル・ビジット・パス、LTSVPで滞在できても、就労がデフォルトでは認められていない問題を取り上げます。本エピソードでは、外国人配偶者がすでに国内にいる技能人材であるにもかかわらず、制度が家族の一員としてしか扱わず、労働市場への入口で摩擦を生んでいることを議論しました。就労承認にマレーシア人配偶者の同伴が必要になること、雇用主や州に就労許可が紐づくこと、婚姻が終わると在留と就労の基盤が揺らぐことは、人材政策としても人権政策としても逆機能しうるという視点です。日本についても、配偶者に基づく在留資格、離婚や別居、家庭内暴力、企業の採用時の不確実性を横断して考える必要があることを議論しました。 出典: Lowy Institute, “Foreign spouses in Malaysia are an untapped talent pool” https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/foreign-spouses-malaysia-are-untapped-talent-pool [41:31] 保育・幼児教育政策 — 補助金だけではケアは支えられない Equitable Growth の研究をもとに、米国の乳幼児期の保育・教育(ECE)を、子育て支援だけでなく、親の就労と子どもの発達を同時に支えるインフラとして取り上げます。本エピソードでは、保育補助や税額控除のような需要側支援は参加率や親の就労を高める一方で、質の改善には限界があること、公的な保育枠やプレKのような供給側政策にも対象や規模の制約があることを議論しました。また、保育は地域ごとの超ローカル市場であり、ある年齢層の公的枠拡大が別の年齢層の民間供給を減らす可能性があること、保育者の低賃金が家庭の保育費を下げる隠れた補助金として機能している可能性にも触れました。日本についても、待機児童が減る中で、単なる量の不足から、地域、時間帯、年齢、質のミスマッチへ論点が移っていくことを考えました。 出典: Equitable Growth, “How does early childhood care and education affect U.S. families and workers, and which policies support child participation and boost the quality of care?” https://equitablegrowth.org/research-paper/how-does-early-childhood-care-and-education-affect-u-s-families-and-workers-and-which-policies-support-child-participation-and-boost-the-quality-of-care/ ■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。 ■YouTubeでも配信中 PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催 政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

    1時間8分
  5. 5月6日

    『日本すごい』の正体は、実は地味な制度と足腰? 【海外シンクタンク記事分析】

    「日本すごい」と一言で済ませてしまうと、その強みを支えている地味な仕組みが見えなくなってしまうかもしれません。今回のエピソードでは、「『日本すごい』の正体は、実は地味な制度と足腰?」をテーマに、日本の鉄道、カナダの高速鉄道計画、そして日本の造船という3本の記事を通じて、日本の強みの作り方、そして直し方を考えます。 ■キーワード 鉄道:街を作る鉄道会社/駐車政策と土地利用/民営化と運賃規制新幹線:カナダ・Alto 計画/メガプロジェクトと国家能力/成立条件の輸出造船:1兆円規模の投資フレーム/米海軍の整備支援/三つの KPI に分けた再生 ■今回のトピック [01:40] 日本の鉄道はなぜ強いのか — 文化ではなく制度の組み合わせ Works in Progress の記事をもとに、日本の鉄道の強さを、定時運行や国民性ではなく、街づくり事業としての鉄道経営と、それを支える制度の束として読み解く視点を取り上げます。本エピソードでは、駅周辺の不動産や商業、生活サービスを展開できるようにする沿線開発モデル、住居系地域でも一定の店舗や学校、病院が共存できる比較的リベラルな用途地域制度、車庫証明のように駐車コストを利用者に負担させる駐車政策、そして運賃上限規制や公共目的に絞った資本補助と組み合わせた JR の民営化、こうした制度の組み合わせが日本の鉄道の高い利用率を支えていること、一方で地方の公共交通や民営化以外の側面、文化論を完全に否定しすぎることのリスクについても議論しました。 出典: Works in Progress, "The secrets of the Shinkansen" https://www.worksinprogress.news/p/the-secret-behind-japans-railways [22:50] 新幹線はカナダに移植できるか — 成功例の輸入リスク Macdonald-Laurier Institute の記事をもとに、日本の新幹線のファンを自認する著者が、カナダのトロント・ケベックシティ間の高速鉄道計画 Alto に反対する論考を取り上げます。本エピソードでは、600億から900億カナダドル規模、10年以上を要する巨大事業であり地元の土地収用や地域分断への反発も強いこと、日本の成功は地理や人口密度や継続的な建設能力に支えられていてカナダにそのまま適用できないこと、メガプロジェクトは費用超過や需要見積もりの誤りが頻発するという研究知見、トロント・モントリオール3時間という距離は航空からの転換が起きやすいゾーンに入るという推進派の反論、そして日本がインフラを輸出する際には新幹線そのものではなく新幹線を成立させる条件をいかに輸出できるかが問われること、機会費用として航空インフラや都市内交通との比較ポートフォリオで考える必要があることを議論しました。 出典: Macdonald-Laurier Institute, "Why the Toronto-Quebec high-speed rail line is a bad idea" https://macdonaldlaurier.ca/why-the-toronto-quebec-high-speed-rail-line-is-a-bad-idea/ [44:21] 日本の造船再生の現実的な勝ち筋 — 中国に勝つのではなく、同盟の整備基盤に Lowy Institute の記事をもとに、日本の造船業の再生を、世界一の商業シェアを取り戻す産業政策ではなく、米海軍の稼働率やインド太平洋の同盟運用、海上輸送の経済安全保障を支える後方能力として読み解く視点を取り上げます。本エピソードでは、日本の防衛物量の 99.6% を海上輸送が担うこと、米海軍が整備待ちや調達遅延を抱え最大 3 年の遅れも指摘されていること、3500 億円の政府基金と 1 兆円規模の官民投資フレームが分けて示されていること、量で中国に対抗するのではなく稼働率の引き上げや高品質、脱炭素船、同盟向けの標準を握る方向に活路があること、そして造船再生の目標を世界シェアの回復、国内海上輸送の安全保障、同盟国の整備支援という三つの KPI に分けて管理する必要があること、米艦の整備受け入れは仕事の受注ではなく契約や機密管理、部品認証を含む標準化プロジェクトとして見る必要があることを議論しました。 出典: Lowy Institute, "Japan aims for a shipbuilding revival" https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/japan-aims-shipbuilding-revival ■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。 ■YouTubeでも配信中 PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催 政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

    1時間9分
  6. 4月29日

    国家の能力を高める実装基盤 【海外シンクタンク記事分析】

    「国家能力」という言葉は、政府が大きいか小さいかという話ではなく、政策を実際に動かし、目標を達成する力を指します。今回のエピソードでは、「国家能力を高める実装基盤」をテーマに、承認プロセス、政策の予見可能性、資本市場の時間軸という3本の記事を通じて、国家戦略を最後まで動かすために何が必要なのかを考えます。 ■キーワード 行政の承認プロセス:承認インフラ/リスク比例型の手続き/監査ログと説明責任産業政策:予見可能性/長期予算/政治リスクプレミアム資本市場の時間軸:短期主義/長期資本/国力を高める資本主義 ■今回のトピック [01:46] 政府の承認プロセス — 国家能力を左右する「認可のインフラ」 a16z の記事をもとに、政府の仕事が遅くなる理由を、職員の意識や人数ではなく、承認や認可のインフラの問題として捉える視点を取り上げます。本エピソードでは、機関間の情報共有、同盟国への装備移転、情報公開、セキュリティ審査、許認可などで、実際の作業よりも承認プロセスが遅くなる構造を議論しました。重要なのは、規制をなくすことではなく、低リスクで反復的な案件を機械的に前処理し、高リスクで政治的な判断を要する案件に人間の判断を集中させることです。速さだけを目標にするのではなく、誤った承認、誤った拒否、再審査、監査ログ、説明責任を組み合わせながら、必要な慎重さを残したまま日常的な承認を滞留させない制度設計が求められます。 出典: a16z, "It takes too long to do things in the government" https://www.a16z.news/p/it-takes-too-long-to-do-things-in [21:14] 産業政策の予見可能性 — 補助金額より、政府の約束の信頼性 Factory Settings の記事をもとに、産業政策に必要なのは、より大胆な補助金メニューだけではなく、民間企業が政府の方針の継続性を信じられるような制度的な信頼性だという論点を取り上げます。本エピソードでは、半導体やレアアースなどで政府が民間市場に介入する際、支援が年度予算や曖昧な法的権限に依存していると、企業は長期投資に踏み切りにくくなることを議論しました。価格下限保証、購入保証、株式投資、長期に使える予算、独立性を持つ産業政策機関などは、単なる補助金ではなく、将来の市場ルールを設計するための手段です。一方で、長期予算や執行裁量を強めればよいだけではなく、監査、透明性、競争性、撤退条件、国民負担の見える化も同時に必要になります。 出典: Factory Settings, "How Uncertainty Could Kill US Industrial Policy" https://www.factorysettings.org/p/policy-uncertainty-will-kill-american [41:16] 資本市場の時間軸 — 補助金だけではなく、再投資の仕組みを変える ITIF の記事をもとに、米中の技術経済競争を、補助金や工場数だけでなく、企業が利益をどこに流すのかという資本市場の設計から捉える視点を取り上げます。本エピソードでは、金融資本主義が短期の株主還元を優先しすぎると、国家的に重要な産業への長期投資が不足しうるという議論を紹介しました。記事は、税制の組み替え、長期資本の育成、公的な投資ビークルを通じて、企業の利益を研究開発、設備、生産能力に振り向ける必要があると論じています。これは単なる株主資本主義批判ではなく、企業統治、税制、年金基金、アクティビスト投資、半導体政策、外交安全保障を、資本の時間軸という観点から接続する議論です。日本にとっても、補助金を出すだけではなく、政策金融、税制、政府調達、標準化、資本市場を束ねて考えることが重要になります。 出典: ITIF, "Mobilizing for Techno-Economic War, Part 3: Transforming Financial Capitalism Into National Power Capitalism" https://itif.org/publications/2026/04/13/mobilizing-for-techno-economic-war-part-3-national-power-capitalism/ ■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。 ■YouTubeでも配信中 PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催 政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

    1時間7分
  7. 4月27日

    平時にこそ行うべき国の「備え」 【海外シンクタンク記事分析】

    国家レベルの危機に直面したとき、問われるのは、その場の号令や決断力だけではありません。平時から、脅威をどう認識し、どこに予算を配分し、国民とどのように現実を共有してきたかが、危機対応の成否を左右します。今回のエピソードでは、「平時にこそ設計される国家能力」をテーマに、ニュージーランドの防衛戦略、日本の財政ルール、オーストラリアの危機コミュニケーションに関する3本の記事を通じて、防衛・財政・国民対話をどう接続するかを考えます。安全保障というと遠い戦争の話に見えますが、今回扱うのは、燃料価格、通信障害、輸入品不足、偽情報、災害対応、金利、社会保障、産業政策など、日常生活や政策選択に直結する備えです。共通しているのは、危機の前から信頼を積み重ねることの重要性です。防衛費をどう増やすか、債務をどう管理するか、国民にどう説明するかを別々に捉えるのではなく、社会が納得して支えられる国家能力として設計する視点が立ち上がってきます。 ■キーワード ニュージーランドの防衛戦略:GDP比2%/戦闘遂行能力/守られる小国から支える小国へ日本財政:金利正常化/成長見通しの検証/独立財政評議会と例外条項国民対話:戦略的コミュニケーション/平時の信頼形成/社会全体の安全保障 ■今回のトピック [02:27] ニュージーランドの防衛転換 — 守られる小国から支える小国へ Lowy Institute の記事をもとに、地理的な距離に守られてきたニュージーランドが、防衛費をGDP比2%へ引き上げ、戦闘遂行能力や抑止を語り始めていることを取り上げます。本エピソードでは、これは単なる防衛費増額ではなく、安全な島国という自己認識から、能力を持ち、同盟や地域ネットワークに接続する国への転換だと整理しました。価値観外交を続けるためにも、抑止、同盟、産業、レジリエンスが必要になること、海上交通、燃料、通信、サイバー、宇宙、災害対応まで含めて、安全保障を社会機能の維持として見る必要があることを議論しました。 出典: Lowy Institute, "New Zealand’s defence reckoning: From shelter to stormfront" https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/new-zealand-s-defence-reckoning-shelter-stormfront [27:25] 日本の財政ルール再設計 — 予測を誰が検証するのか Bruegel の論文をもとに、日本の財政問題を、借金の多さだけではなく、金利が上がる時代に成長見通しと財政ルールを誰が検証するのか、という制度の問題として取り上げます。本エピソードでは、日本の一般政府総債務がGDP比222%と高く、低金利と日銀の非伝統的な金融政策に支えられてきた前提が揺らぎつつあること、楽観的な成長シナリオでも債務が自然には安定しにくいこと、そして独立財政評議会や明確な例外条項が必要だという論点を議論しました。財政ルールは財政余地を潰す制度ではなく、危機対応や成長投資を市場や国民に信用される形で実行するための制度だ、という視点も取り上げています。 出典: Bruegel, "Debt sustainability in Japan and the case for a fiscal council" https://www.bruegel.org/working-paper/debt-sustainability-japan-and-case-fiscal-council [51:26] 平時からの安全保障対話 — 危機広報では信頼は作れない Lowy Institute の記事をもとに、危機が起きたときだけ首相が国民に語りかける国は、いざというときに信頼されるのか、という問いを取り上げます。本エピソードでは、オーストラリアの首相演説をきっかけに、危機時の説明の出来不出来ではなく、国際情勢、安全保障、国内生活のつながりを平時から説明してこなかったことが問題だと整理しました。戦略的コミュニケーションを広報ではなく国家運営の中核能力として捉えること、国民を単なる受け手ではなく参加する主体として扱うこと、スウェーデンやフィンランドのように社会全体で備える発想をどう実装するかについて議論しました。 出典: Lowy Institute, "Be informed, not just alert" https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/be-informed-not-just-alert ■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。 ■YouTubeでも配信中 PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催 政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

    1時間21分
  8. 4月22日

    良い社会実践を社会実装する方法 【海外シンクタンク記事分析】

    本エピソードでは、社会実装をプログラムの質だけではなく、広がる条件、支えるインフラ、評価の物差しの設計として捉え直します。一本目では、受益者が次の担い手になることで実践が広がる「恩送り」の発想から、伝播型の事業と継続支援型の事業をどう見分けるかを考えます。二本目では、良い家庭向け教育ツールがあっても広がらないのは、買い手や配布の基盤がないからであり、公共が最初の市場をつくる必要があるという議論を取り上げます。三本目では、北ウガンダの女子教育を題材に、就学率だけでなく、自立や尊厳、再入学、地域との接続まで支える教育のあり方を考えます。 3本に共通しているのは、良い解決策を一つつくるだけでは足りず、それが回る条件、測る指標、支える制度まで設計しなければ社会実装にはつながらないという点です。日本でも、広がらない理由はプログラムの質だけでなく、調達主体、配布チャネル、評価指標、制度全体の設計にあるのではないか。そんな問いを軸に、社会実装を構造的に考えていきます。 ■キーワード 伝播設計:恩送り(Pay-it-Forward)/伝播型と継続支援型/社会実践の評価軸の分化 市場形成:買い手・配布チャネル・信頼できる窓口/公共調達/親子の会話を増やす教育支援ツール 教育評価:自立・尊厳・再入学/地域経済との接続 ■今回のトピック [01:06] 恩送りの閾値 — 支援の持続可能性を、伝播の設計から捉え直す Stanford Social Innovation Review の記事をもとに、社会的実践の持続可能性を、資金が続くかどうかではなく、受益者が次の参加者や貢献者を生み出せるかどうかで捉え直す視点を取り上げます。本エピソードでは、伝播型と継続支援型を分けて考えること、伝播率だけでなく定着率や安全、タイムラグも見ていく必要があること、そして日本では元当事者や退職後人材に低負荷で具体的な役割を渡す設計が現実的かもしれないことを議論しました。 出典: Stanford Social Innovation Review, "The Pay-It-Forward Threshold" https://ssir.org/articles/entry/pay-it-forward-threshold [24:12] 市場をつくってから広げる — 良いツールより、買い手と配布基盤が先 Stanford Social Innovation Review の記事をもとに、親向けの有望な教育支援ツールが広がらないのは、親のやる気不足や技術不足ではなく、買い手、市場、配布チャネル、信頼できる窓口が欠けているからだ、という議論を取り上げます。本エピソードでは、教育の議論を調達論・市場設計論として読み替えること、家庭向け支援では同意、登録、評価、調達、配布を支える公的レールが必要なこと、そして見るべき指標はスクリーンタイムではなく、親子の会話や読み聞かせ、共同利用の増加であることを議論しました。 出典: Stanford Social Innovation Review, "Build the Market First, Then Fund Innovation" https://ssir.org/articles/entry/build-the-market-scaling-parenting-innovations [46:39] 就学率の先をどう測るか — 自立・尊厳・再入学まで支える教育へ Brookings の記事をもとに、北ウガンダの女子教育を、就学率や卒業率だけでなく、自立、尊厳、再入学、地域との接続まで含めて捉え直す視点を取り上げます。本エピソードでは、アクセス拡大が意味のある移行や機会に結びついていないこと、試験偏重やジェンダー固定的な職業訓練、復学支援や執行能力の弱さがボトルネックになっていること、そして実用技能、権利教育、心理社会的支援、地域経済との接続を束ねた教育設計が必要だという論点を議論しました。 出典: Brookings, "Reimagining education for girls in post-conflict Northern Uganda: Why a justice-oriented education approach matters" https://www.brookings.edu/articles/girls-education-northern-uganda-justice-oriented-livelihoods/ ■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていく番組です。 ■YouTubeでも配信中 PEP のYouTubeチャンネルはこちら:https://www.youtube.com/channel/UCT3kLHNfQJpO9gBAmAj3Bpg ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催 政策起業家プラットフォーム(PEP):https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館:https://ihj.global/

    1時間7分

番組について

政策起業家プラットフォーム(Policy Entrepreneur's Platform, PEP)が運営するポッドキャストチャンネルです。 以下の二つの番組を配信しています。 PEP Talk : 社会課題や政策を取り扱った書籍の著者にお越しいただき、書籍の背景等について伺う番組です。 PEP Think : 海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考える番組です。

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