PEP Podcast

政策起業家プラットフォーム

政策起業家プラットフォーム(Policy Entrepreneur's Platform, PEP)が運営するポッドキャストチャンネルです。 以下の二つの番組を配信しています。 PEP Talk : 社会課題や政策を取り扱った書籍の著者にお越しいただき、書籍の背景等について伺う番組です。 PEP Think : 海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考える番組です。

  1. 2日前

    AIをめぐる国家戦略のトレードオフ 【海外シンクタンク記事分析】

    AI をめぐる国家戦略は、「規制をどう設計するか」「フロンティア AI へのアクセスをどう確保するか」「開発競争に参加するのか、それとも活用で価値を出すのか」という配分問題になりつつあります。今回のエピソードでは、①AI政策を「国家安全保障・経済安全保障・社会的安全」のトリレンマとして整理する Foreign Affairs の記事、②米中優位の中で中堅国がフロンティア AI へのアクセスを確保するための「Capability Club(能力クラブ)」構想を提案する ECFR の記事、③ EU がフロンティア開発競争ではなく、規制の公正な執行と AI 活用(Apply AI)で強みを活かすべきだと論じる Bruegel の記事、の3本の記事を手がかりに、AI 時代の国家戦略と制度設計の論点を整理します。 ■今回のトピック [01:46] AI 政策のトリレンマ ― 国家安全保障・経済安全保障・社会的安全は同時に最大化できない Foreign Affairs の論考では、AI政策の目標を「国家安全保障」「経済安全保障」「社会的安全」の3つに整理し、これらは同時には最大化できないというトリレンマとして説明しています。記事では、現実的な制度設計として、AIのリスクに応じた課税と安全研究への税額控除、政府データを活用した高品質な評価・テスト環境(National Data Repository)、危険なモデル公開を止めるための規制枠組みなどが提案されています。本エピソードではさらに、オープンウェイトモデルの扱い、モデル評価の標準化、監査やログ管理など実装面の課題を整理するとともに、日本の含意として評価・監査基盤やデータ管理など周辺領域の制度整備とビジネス機会についても議論しています。 出典: Foreign Affairs, "The AI Trilemma" https://www.foreignaffairs.com/united-states/ai-trilemma [20:46] AIミドルパワーの戦略 ― 「依存か主権AIか」を超える Capability Club フロンティア AI の開発が米国と中国を中心に進むなかで、中堅国がどのように AI へのアクセスを確保するかという戦略課題を扱います。ECFR の論考では、フロンティア AI を自国で完全に開発する「主権AI」と、大国に依存する戦略の二択ではなく、中堅国同士の連携による「Capability Club(能力クラブ)」という第三の道を提案しています。提案の柱は、共同研究開発や新しい技術アプローチへの投資、計算資源やデータなど AI インフラの共同整備、そしてグローバルサウスに対する第三の選択肢の提示です。本エピソードでは、クラブの加盟条件や費用負担、輸出管理やセキュリティ審査など実装上の課題、さらに計算資源だけでなくデータや顧客基盤、電力・冷却などの物理インフラが次のボトルネックになる可能性についても議論しています。 出典: ECFR, "Capability Club: How the EU Can Lead the Fight for AI Middle Powers" https://ecfr.eu/article/capability-club-how-the-eu-can-lead-the-fight-for-ai-middle-powers/ [41:34] 欧州 AI 戦略の選択 ― フロンティア競争か、Apply AI か EU は AI 規制の先導者である一方、フロンティアモデル開発では米国や中国に後れを取っています。Bruegel の論考は、欧州がフロンティア AI 開発競争に全面的に参入するよりも、規制の公正な執行と AI 活用の拡大によって競争力を高める戦略を提案しています。本エピソードでは、規制の公平な執行が市場の信頼を高める可能性や、AI 活用を進めるうえでのデータアクセスやインフラ投資の重要性について整理するとともに、オープンソース AI の利点とリスク、規制執行に必要な監査人材や評価基盤といった実装上の課題についても議論しています。また、AI を重要サービスの基盤技術として捉え、計算資源の確保をレジリエンスの観点から考える必要性についても触れています。 出典: Bruegel, "Europe's Artificial Intelligence Strategy Should Be Built on European Strengths" https://www.bruegel.org/first-glance/europes-artificial-intelligence-strategy-should-be-built-european-strengths ■こんな方におすすめ AI 政策を、倫理や理念だけでなく制度設計や実装の観点から整理したい方フロンティア AI へのアクセスをめぐる国際連携や同盟の設計に関心がある方AI 規制と AI 活用の関係を、産業政策や競争力の視点から理解したい方■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていくポッドキャストです。 ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催者 政策起業家プラットフォーム(PEP): https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館: https://ihj.global/

    1時間
  2. 4日前

    AI時代のエネルギー覇権 【海外シンクタンク記事分析】

    エネルギー大国の条件が変わりつつあります。地下に何があるかではなく、電力インフラをどう設計し統合できるかが重要になる、という構造変化を、中国・アメリカ・EUの3つの視点から読み解きます。中国のクリーンエネルギー・サプライチェーン支配、AIの電力制約を捉える「ワットの法則」、EUのエネルギーガバナンスの断片化。3本の記事を通じて、日本のエネルギー安全保障と産業競争力の課題を考えます。 ■今回のトピック [01:02] 中国型エネルギー・ドミナンス ― サプライチェーン統合とシステム一括輸出 エネルギー覇権の条件が、化石燃料の産出量ではなく、発電・送電・蓄電のシステム全体を設計し、融資や保守まで含めて一括輸出できる能力に移りつつあるという問題提起です。中国はクリーンエネルギーのサプライチェーンを高密度に統合し、グローバルサウスへのシステム丸ごとの提供で影響力を拡大しています。一方、米国はトランプ政権下で化石燃料中心のエネルギー政策を採り、送電網の老朽化や中国依存がAI競争や軍事の電化におけるボトルネックになりつつあると指摘されています。エピソードでは、中国側の脆弱性(過剰投資・過剰設備)にも触れつつ、同盟国間での分業・標準化・ファイナンスの設計、重要鉱物の調達多元化、そして日本の電化サプライチェーンにおけるビジネス機会についても議論しています。 出典: Foreign Affairs, "Energy Dominance With Chinese Characteristics" https://www.foreignaffairs.com/united-states/energy-dominance-chinese-characteristics [23:44] 「ワットの法則」の台頭 ― 電力供給がAIイノベーションの天井になる構造変化 AIの競争力は、誰が良いGPUを作れるかだけでなく、誰が電力を確保して無駄なくAIの出力に変換できるかで決まるという「ワットの法則」を提唱した記事を紹介します。半導体の微細化とデナード・スケーリングによる自動的な効率改善が崩れた今、AI時代のスケーリングは電力制約下でのフルスタック最適化(メモリ・ネットワーク・ストレージ・スケジューラ)による効率、すなわち「トークン/ジュール」で決まると主張されています。エピソードでは、AIファクトリーという視点でピーク性能よりも稼働率・運用効率を重視すべきこと、輸出規制を時間稼ぎと位置づけ国内構築とセットにすべきという提案、水や変圧器など電力以外のインフラ制約、そして「電力同盟」という同盟再編のロジックについても議論しています。 出典: CSIS, "The Rise of 'Watt's Law' and Why Power Could Put a Ceiling on American Innovation" https://www.csis.org/analysis/rise-watts-law-and-why-power-could-put-ceiling-american-innovation [46:45] EUエネルギー統合の課題 ― 断片化したガバナンスが投資を阻害する構造問題 EUのエネルギーシステムには莫大な追加投資が必要であるにもかかわらず、データの不透明性・インフラ計画の分断・政策調整の弱さという三つの構造的欠陥が投資を阻害していると分析した記事を紹介します。非公開の専有モデルへの依存、需要予測の食い違い、ENTSO-E主導の閉鎖的な計画プロセス、NECPの形骸化が具体的に指摘されています。エピソードでは、透明な参照シナリオによる資本コスト低下の可能性、調整の失敗を解決するための配分問題の補償メカニズム、オープン化の限界(セキュリティ・市場操作リスク)、そして日本の地域間連系の制約やデータ整備の遅れとの構造的類似性についても議論しています。 出典: Bruegel, "Better Coordination for a More Efficient European Energy System" https://www.bruegel.org/policy-brief/better-coordination-for-a-more-efficient-european-energy-system ■こんな方におすすめ 電力系統・変圧器・蓄電池など「電化のボトルネック」周辺でビジネス機会を探っている方AI政策やデータセンター誘致を、GPU確保の先にある電力・立地・冷却の実務まで含めて設計したい方エネルギー安全保障を原油・LNG調達だけでなく、重要鉱物・製造・保守運用まで一体で捉え直したい方 ■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていくポッドキャストです。 ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催者 政策起業家プラットフォーム(PEP): https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館: https://ihj.global/

    1時間5分
  3. 2月27日

    ロボット・デジタル規制・デジタル主権の議論に潜む『死角』【海外シンクタンク記事分析】

    今回は、ロボット化・デジタル規制・デジタル主権という3つの領域で、政策議論が見落としがちな「死角」に焦点を当てます。 ■今回のトピック [01:37] ロボット導入がキャリアの上昇経路に与える影響 ロボット化の影響を雇用や賃金の変動だけで捉えると、見落としてしまう変化があります。Brookingsの研究チームが着目したのは、より良い職種へ移動する確率、すなわちキャリアの上昇経路が細くなるという現象です。この研究は、「キャリアバリュー(キャリア価値)」という新しい指標を用い、移動確率と賃金を組み合わせた期待生涯獲得の代理指標として分析しています。キャリア価値の低下の3分の2は賃金、3分の1はキャリア経路の劣化によるものとされ、その影響は住宅投資、教育投資、政治行動にまで及ぶ可能性が示されています。日本への含意として、製造業のロボット密度が世界5位(従業員1万人あたり419台)という高水準にある中で、失業率や賃金だけでなく、職業移動やキャリアの隣接性を定点観測する統計設計の必要性、離職せずに学べるリスキリング支援の拡充、企業内のキャリアの梯子の再設計などを取り上げました。 出典: Brookings, "Robotization and occupational mobility" https://www.brookings.edu/articles/robotization-and-occupational-mobility/ [23:56] 規制の「非関税攻撃」化──韓国クーパンの事例から考える通商リスク 韓国の競争規制をめぐり、米国議会がアメリカのテック企業への差別的攻撃として調査を開始した事例を取り上げます。ITIFが提唱する「Non-Tariff Attacks(非関税攻撃的措置)」という概念を軸に、国内規制として正当に見える措置が特定の外国企業に集中したとき通商カード化する構造が論じられます。GDPRの罰金の8割が米国企業であるという数字や、セクション301の適用、相互措置の制度化といった実務的ルートも提示されています。一方で、差別的意図の立証の困難さ、報復の常態化が同盟国間の規制協力を傷つけるリスク、クーパンが米国企業か韓国の巨大プラットフォームかという見え方のずれについても批判的に検討しています。日本への示唆として、デジタル規制の設計における透明性・比例性・一貫性の実装、規制の通商化を前提とした経済安全保障との整合性の点検、省庁縦割りの克服などが語られています。 出典: ITIF, "Washington Should Draw a Line in the Sand on Korea to Defend U.S. Tech Leadership" https://itif.org/publications/2026/02/06/washington-draw-line-korea-defend-tech-leadership/ [44:14] 「デジタル主権」の前に生産性を──カナダの議論から考える優先順位 デジタル主権の確保を急ぐ前に、デジタル技術の活用能力を底上げすべきではないかという問題提起です。カナダでは国産クラウドやデータの国内保管、半導体の内製化といった供給側の議論が盛り上がる一方で、企業のデジタルツール導入率そのものが課題になっています。記事は、デジタル主権を国内基盤の構築と同一視するのではなく、グローバル市場のベストインクラスの技術を国内企業や機関が統合して生産性を上げる方向で設計すべきだと主張しています。エピソードではさらに、主権をアクセス制御・監査・暗号鍵・法域といった設計要件として捉え直す視点や、需要側の生産性を基盤とした3層構造の考え方が議論されています。 出典: Research Money, "Productivity, not flag waving, should drive Canada's digital strategy" https://www.researchmoneyinc.com/article/productivity-not-flag-waving-should-drive-canada-s-digital-strategy ■こんな方におすすめ ロボット化やAI導入を、雇用の「数」だけでなくキャリア経路の観点から考えたい方デジタル規制の設計が同盟国との通商摩擦にどうつながるか把握しておきたい方デジタル主権と生産性向上を両立する政策・事業戦略を整理したい方 ■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていくポッドキャストです。 ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催者 政策起業家プラットフォーム(PEP): https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館: https://ihj.global/

    1時間7分
  4. 2月23日

    政策実装を左右する政治力と国のオーナーシップ | PEP Think

    今回は、地政学リスクの長期見通し、脱炭素を動かす「資産と政治力」の設計、そしてスケールした施策がなぜ止まるのかという実装の条件を、3本の記事から考えます。 ■今回のトピック [01:28] 2036年の世界像──専門家調査が示す10の主要論点 72か国447人の地政学・将来予測の専門家への調査をもとに、2036年の世界を10の論点で整理した記事を取り上げます。63%が「世界は今より悪化する」と回答するなか、米中パワーバランス、台湾有事リスク、NATOの将来、ウクライナ戦争の凍結紛争化、AIとAGI、核拡散、気候変動と水リスク、多国間主義の弱体化、ドル体制と暗号資産などが同時に語られます。専門家の属性や直近ニュースの影響といったバイアスにも触れつつ、リスクが高まる一方でそれを抑える制度の筋力が弱まっているという見取り図が示されます。 出典: Atlantic Council, “Welcome to 2036: What the world could look like in ten years, according to nearly 450 experts” https://www.atlanticcouncil.org/content-series/atlantic-council-strategy-paper-series/welcome-to-2036/ [27:20] 排出量から資産へ──脱炭素を動かす政治力の設計 Noema Magazine に掲載されたトロント大学の政治学者ジェシカ・グリーンの論考をもとに、気候政策を排出量の技術的管理ではなく、化石燃料資産オーナーとグリーン資産オーナーの政治力という観点から捉え直します。国際課税やISDSの見直し、産業政策や補助金、保護主義の設計などを通じて、化石燃料側の政治力を制約し、グリーン資産側の政治連合を育てるという提案が語られます。資産を軸にした政策設計の意義と、副作用としての政治対立や国際制度との整合性の難しさにも触れます。 出典: Noema Magazine, “It’s Time to Target the Political Power of Polluters” https://www.noemamag.com/its-time-to-target-the-political-power-of-polluters/ [46:12] スケールしても続かない──国のオーナーシップと実装の条件 Stanford Social Innovation Review の記事をもとに、グローバルヘルスの現場で一度スケールしたデジタル施策が数年後に止まる現象を取り上げます。政府とのパートナーシップは必要だが十分ではなく、意思決定権、データ統制、予算、人員、業務プロセスの組み替えまで含めた「国のオーナーシップ」がなければ持続しないという主張です。6つのシフトによる段階整理、タンザニアの事例、調達や予算化だけでは所有にならないという指摘、信頼と運用能力の重要性などが語られます。 出典: Stanford Social Innovation Review, “Scale That Lasts: A framework for moving from government partnership to country ownership” https://ssir.org/articles/entry/scaling-global-health-innovations ■こんな方におすすめ 台湾有事や米中競争の長期シナリオを前提に、自社のリスク設計を見直したい方GXや脱炭素投資を、排出量ではなく“資産と政治力”の観点で再整理したい方社会実装がなぜ続かないのかを、制度や運用設計の観点から整理したい方■PEP Thinkとは PEP Think は、世界のシンクタンクの最新の論考を手がかりに、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていくポッドキャストです。 ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催者 政策起業家プラットフォーム(PEP): https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館: https://ihj.global/

    1時間10分
  5. 2月18日

    経済安全保障の実装へ——国家と市場の新しい境界線 海外シンクタンク記事から考える産業政策のあり方 | PEP Think

    今回のエピソードでは、経済安全保障を実装していくうえで、国家と市場の境界線がどのように引き直されつつあるのかを取り上げます。補助金や融資に加えて、政府が株式を持つこと、重要鉱物を官民で備蓄すること、そして中堅国としての産業ポジションの確保戦略という論点を、制度設計とガバナンスの観点から整理します。 ■今回のトピック [01:54] 政府が戦略企業の株主になる──エクイティ投資のガバナンス設計 CSIS の論考を手がかりに、米国の産業政策が補助金・融資中心から、政府が株式を取得する段階に入っている、という論点を扱います。政府が株主になると、配当を取りにいくのか、経営にどこまで関与するのか、失敗時の責任をどう置くのかといった論点が一気に増えます。Intel への投資(約100億ドル、持分約9.9%)を例に、政治化やえこひいき、規制当局としての役割との利益相反をどう避けるか、議決権や取締役会の扱い、出口の条件、成功指標の設計、さらに同盟国や第三国からどう見られるかまで、実装上の論点を確認します。 出典: Center for Strategic and International Studies (CSIS), Understanding Federal Equity Investments in Strategic Companies https://www.csis.org/analysis/understanding-federal-equity-investments-strategic-companies [25:50] 重要鉱物の官民備蓄を保険にする──Project Vault の制度設計と論点 Project Vault に関する CSIS の 記事をもとに、重要鉱物の供給途絶リスクを、単なる在庫ではなく保険型の仕組みとして扱う発想を紹介します。国防備蓄ではなく民生製造業の経済安全保障を想定し、OEM が必要な品目や品位、量を定義し、コミットメントとフィーで費用を分担するという制度の形が提示されます。放出条件を事前の合意に基づく透明な基準で運用することや、在庫回転を制度に組み込むこと、初期は現実的にグローバル調達を前提にする点、同盟国にも拡張し得る枠組みである点が論点になります。あわせて、ガバナンス、損失負担、価格や保管費のリスク帰属、60品目を運用する現場の複雑さ、大手中心になりやすい構造、中小サプライヤーへの波及、モラルハザードをどう抑えるかといった実装上の課題も検討します。 出典: Center for Strategic and International Studies (CSIS), Project Vault: A Pillar of Economic Security https://www.csis.org/analysis/project-vault-pillar-economic-security [45:16] 中堅国の産業戦略──戦略的不可欠性と選択の制度化 ITIF の論考をもとに、中堅国が自給自足でも資源依存でもない形で、同盟国から見て不可欠な地位をどう築くかを扱います。あらゆる機能を国内で複製する誘惑(包括的なデジタル主権や国内クラウド義務化など)と、資源だけを掘って外に出す資源依存の道の両方を避け、少数の領域に集中して交渉力をつくるという整理が中心です。重要なのは、何を作るかだけでなく、何を作らないかを明確な基準で決め、声の大きい分野に資金が流れる事態を避けることです。さらに、レアアースなど重要鉱物の中流工程を担う場合に必要になる国家の実装能力(許認可、電力、技能人材、社会的合意など)や、調達・契約で統制を効かせる発想も確認します。日本にとっても、戦略分野の選定を「指定」だけで終わらせず、基準とプロセスを制度として組み込めるかが焦点になります。 出典: Information Technology and Innovation Foundation (ITIF), Strategic Indispensability or Strategic Irrelevance https://itif.org/publications/2026/02/03/strategic-indispensability-or-strategic-irrelevance/ ■こんな方におすすめ 経済安全保障を、補助金や規制の是非だけでなく、資本・備蓄・調達を含む実装として捉え直したい方政府の株式出資に伴うガバナンス、利益相反、説明責任、出口設計に関心がある方重要鉱物の供給途絶リスクを、官民でどう分担し、どんなルールで備えるかを検討したい方中堅国として、同盟国との分業の中で不可欠な産業ポジションを取りにいく戦略に関心がある方政策資本が入りやすい市場環境で、企業・スタートアップとしてのコンプライアンスと事業戦略を考えたい方■PEP Think とは PEP Think は、海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスと政策のこれからを一緒に考えていくポッドキャストシリーズです。 ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催者 政策起業家プラットフォーム(PEP): https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館: https://ihj.global/

    1時間1分
  6. 2月16日

    "グリーン転換の三重苦"が国際秩序の再考を促す - 気候適応投資、EU の気候目標と対中デリスキングのジレンマ、気候正義と排出責任 | PEP Think

    今回のエピソードでは、「"グリーン転換の三重苦"が国際秩序の再考を促す」をテーマに、気候適応への投資、EU の気候目標と対中デリスキングのジレンマ、そして気候正義と排出責任をめぐる3本の記事を取り上げます。 ■今回のトピック [01:46] グローバルサウスの気候適応投資──コストではなく安全保障と成長の投資 Atlantic Council の「Climate adaptation: The investment the Global South cannot afford to delay」をもとに、気候ショックが医療・電力・物流・食料などを止める「安全保障リスク」になっている現状と、それに対する適応投資の重要性を紹介します。1ドルの適応投資が平均10ドル超の便益を生むとされるにもかかわらず、民間気候ファイナンスのうち適応向けは最大でも5%程度にとどまり、保険カバー率も約10%と低いこと、気候ショックが財政悪化と信用力低下を通じて借入コストを押し上げる悪循環を生んでいることを整理します。そのうえで、都市・システム単位での連鎖的な便益に着目した案件形成、ブレンデッドファイナンスやリスクシェアを通じた民間資金動員、適応を「人道支援」ではなく財政安定・成長・信用コストの観点からの投資と捉え直す意義、日本のODAや民間金融が果たし得る役割について議論します。 出典: Atlantic Council, “Climate adaptation: The investment the Global South cannot afford to delay” https://www.atlanticcouncil.org/blogs/africasource/climate-adaptation-the-investment-the-global-south-cannot-afford-to-delay/ [19:11] 欧州の対中デリスキングとクリーンテック依存──「重力」からどう抜け出すか ECFR の論考を手がかりに、中国が世界の製造業の28%、とくに太陽光パネル・EVバッテリー・風力発電部品などクリーンテック分野で圧倒的な供給力を持つなかで、欧州グリーンディールの「船体」が Made in China になっているというパラドックスを取り上げます。脱炭素を進めるほど中国依存が深まり、依存を減らそうとするとコストと政治的反発が増えるというジレンマ、EU内部で気候目標・産業競争力・対中観が異なる4つの陣営(懐疑派・移行推進派など)に分かれている構図を紹介します。その上で、長期リスクの可視化、レジリエンス・プレミアムのコスト負担を誰が担うのかという透明な議論、対立する陣営それぞれの「言語」で説得する必要性、といった論点について議論します。日本においても、どのようにして脱炭素と経済安全保障を切り離さずに設計し、クリーンテック供給網の多様化・リサイクル・代替材開発をどう進めるか、といった議論の必要性があることを確認します。 出典:European Council on Foreign Relations, "Don’t look down: How Europeans can escape China’s clean-tech gravity" https://ecfr.eu/publication/dont-look-down-how-europeans-can-escape-chinas-clean-tech-gravity/ [45:38] 32社が世界排出の半分──気候正義と企業責任・国際支援 Lowy Institute の「Climate change is a shared problem that needs shared solutions」をもとに、2024年の世界のCO2排出の半分がわずか32社の化石燃料企業に由来し、そのうち上位20社の17社が国有企業であるという分析を紹介します。責任を「みんなの問題」としてぼかすのではなく、特定の生産者・国有企業に引き寄せることで企業責任・課税・規制・訴訟など具体的な政策ツールに結びつける視点、同時にUNFCCCの「共通だが差異ある責任と各自の能力」の原則に立ち返り、歴史的排出・一人当たり排出・能力の違いを踏まえた負担配分が必要だという議論を整理します。そのうえで、化石燃料企業への責任追及と、先進国による気候ファイナンス・技術移転・損失と被害への拠出を「抱き合わせ」で進めないと政治的に持続可能な移行にならないという提案、日本がエネルギー安全保障や開発戦略と結びついた国有企業問題をどう捉えるべきかを考えます。 出典:The Interpreter, "Climate change is a shared problem that needs shared solutions" https://www.lowyinstitute.org/the-interpreter/climate-change-shared-problem-needs-shared-solutions ■こんな方におすすめ 気候適応への投資を「コスト」ではなく安全保障・財政・成長の観点から捉え直したい方欧州の対中デリスキングやクリーンテック産業政策の議論から、日本のGX・経済安全保障を考えたい方少数の化石燃料企業・国有企業に集中する排出責任と、気候ファイナンス・企業責任の設計に関心がある方 脱炭素、エネルギー安全保障、開発金融を一体の政策課題として捉え、日本のビジネス・政策の前提を見直したい方 ■PEP Think とは PEP Think は、海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズです。 ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催者 政策起業家プラットフォーム(PEP): https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館: https://ihj.global/

    1時間6分
  7. 2月11日

    産業政策と通商の新局面 - 補助金と関税、デカップリングの現在地を海外シンクタンク記事から読み解く | PEP Think

    今回のエピソードでは、「産業政策と通商の新局面」をテーマに、産業補助金の条件設計、通商秩序の転換、関税ショック後の貿易再編に関する3本の記事を取り上げます。 ■今回のトピック [01:13] 産業政策の条件設計──ミッションと公共リターン Foreign Affairs 掲載の「Making Industrial Strategy Great Again」を手がかりに、産業政策の成否は補助金の規模ではなく、ミッションの明確さと公的投資のリターン設計で決まるという議論を紹介します。インターネットやGPS、製薬産業など、リスクは公的部門が負いながら果実は民間に独占されてきた歴史を振り返りつつ、バイデン政権のCHIPS法とインフレ抑制法が、自社株買い制限や労働基準、職業訓練、保育支援、利益分配条項などの条件を補助金に付けた意義と限界を整理します。そのうえで、トランプ政権でインテル出資の条件が緩和され、「創造なき収奪」と批判されるモデルに変質したプロセスを検討し、日本の半導体・経済安保投資で「家計への成果」「生活への成果」をKPIに組み込む必要性を議論します。 出典: Foreign Affairs, “Making Industrial Strategy Great Again” https://www.foreignaffairs.com/united-states/making-industrial-strategy-great-again [20:10] 通商秩序の転換──ルールベースからディールベースへ 同じく Foreign Affairs 掲載の「The Case for Upending World Trade」をもとに、WTO に代表される普遍的なルールベースの通商秩序は、冷戦終結と米国覇権、新自由主義的コンセンサスが重なった1990年代の歴史的例外にすぎない、という視点を紹介します。レーガン政権期の日米自動車自主規制、半導体301条関税、プラザ合意など、個別案件を実務的に処理した通商プラグマティズムの系譜を振り返りつつ、トランプ関税の問題点を認めながらも、安全保障協力条項や重要鉱物を巡るセクター別ディールなど「実務的ツールボックス」として評価すべき点を整理します。そのうえで、ルール軽視・ディール偏重が中堅国の予見可能性を損ないうるリスクや、ルールの利点(報復連鎖の抑制、取引コスト低下)にも目を向けながら、日本がどのレベルでルールを維持し、どこからディールを標準化すべきかを考えます。 出典: Foreign Affairs, “The Case for Upending World Trade” https://www.foreignaffairs.com/united-states/case-upending-world-trade [38:28] 関税ショック後の貿易再編──デカップリングは貿易崩壊か Bruegel の分析「European and Chinese exports kept growing despite the 2025 Trump trade shock」をもとに、2025年のトランプ関税ショックが米中貿易と世界貿易に与えた影響を、月次データを用いた分析から読み解きます。米国の中国からの輸入が12カ月で45%減少した一方で、中国の輸出総額は2025年12月時点で前年比6.6%増となり、ASEAN・EU・その他市場向けの輸出増が米国向け減少を相殺したこと、EUも米国向け減少を英国・スイス・ノルウェー・トルコ等への輸出で補い記録的水準を維持したことを紹介します。さらに、鉄鋼での赤字縮小とリショアリングの可能性、自動車やアルミで関税が期待どおり機能していない点、金輸出など特殊品目が米貿易赤字の一時的改善を歪めている点を検討し、「デカップリング=貿易崩壊」ではなく「流路の再編」と捉えるべきだという含意を議論します。日本企業にとって、迂回貿易や原産地規則、サードカントリー経由のシフトを含めたサプライチェーン再設計と、関税ショックの早期警戒・コンプライアンス支援のビジネス機会についても考えます。 出典: Bruegel, “European and Chinese exports kept growing despite the 2025 Trump trade shock” https://www.bruegel.org/analysis/european-and-chinese-exports-kept-growing-despite-2025-trump-trade-shock ■こんな方におすすめ 半導体やGXなど、日本でも拡大する産業補助金の「条件設計」をどのように考えるべきか関心がある方 トランプ関税や重要鉱物クラブ化をきっかけに、ルールベースの通商秩序の今後とディール型外交の利点・リスクを整理したい方 米中デカップリング後の中国・EUの輸出動向や、関税ショックがサプライチェーンに与える影響をデータで把握したい方 産業政策、通商政策、サプライチェーン戦略を一体として捉え、日本の政策・ビジネスの前提を見直したい方 ■PEP Think とは PEP Think は、海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズです。 ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催者 政策起業家プラットフォーム(PEP): https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館: https://ihj.global/

    57分
  8. 2月10日

    欧州の産業政策の転換点 - 海外シンクタンク記事で紐解く伊独連携、ETS改革、グローバルサウスへの影響 | PEP Think

    2026/02/10:音声に一部不備があったため、再投稿いたしました。 今回のエピソードでは、「欧州産業政策の転換点」をテーマに、伊独連携、EU排出量取引制度(ETS)、ブリュッセル効果に関する3本の記事を取り上げます。 ■今回のトピック [01:02] 新しい欧州推進力としての伊独連携 ECFR の記事「When in Rome: The Italian-German motor in action」を手がかりに、ローマ会談で合意された伊独の行動計画と安全保障協力の中身を紹介します。南欧・中東欧に政治資本を持つイタリアと、北欧・オランダなど財政規律を重んじる国々から信頼を得るドイツの組み合わせが、従来の仏独主導とは異なる地域横断的な連合構築力を持つとする議論を取り上げます。32ページの行動計画、外相・防衛相による年次2+2協議、防衛産業協力(レオナルド×ラインメタル、BROMO、Eurodrone、防空プログラム)、重要鉱物調達での対中依存低減など、伊独アクションプランの柱を解説し、日本にとっての外交・産業政策上の含意を考えます。 出典: European Council on Foreign Relations, “When in Rome: The Italian-German motor in action” https://ecfr.eu/article/when-in-rome-the-italian-german-motor-in-action/ [20:52] 炭素価格の再設計──ETSを産業投資の原資へ Bruegel の論考「Europe’s emissions trading system is an ally, not an enemy, of industrial competitiveness」をもとに、EU排出量取引制度(ETS)の見直し議論を整理します。2005〜2020年にETSがEU全体の排出を14〜16%削減しつつ、企業の利益や雇用への影響は限定的だったとする実証研究や、2008〜2019年に15セクターで260〜460億ユーロのウィンドフォール・プロフィットが生じた推計、電力部門の約30%に対し産業部門の排出削減が9%未満にとどまったというデータを紹介します。無償配分継続に厳格な条件を付すこと、ドイツの気候・変革基金(KTF)を例にオークション収入の使途を真の脱炭素投資に整合させること、EUレベルの収入取り分を拡大して産業転換への投資に充てることという3つの提案を取り上げ、ETSをキャップ・アンド・トレードからキャップ・アンド・インベストへ転換する構想と、日本のGX経済移行債や今後の国内ETS設計への示唆を議論します。 出典: Bruegel, “Europe’s emissions trading system is an ally, not an enemy, of industrial competitiveness” https://www.bruegel.org/analysis/europes-emissions-trading-system-ally-not-enemy-industrial-competitiveness [35:08] ブリュッセル効果とグローバルサウスのイノベーション Information Technology and Innovation Foundation の記事「How the Brussels Effect Hinders Innovation in the Global South」をもとに、GDPRなどのEUデジタル規制がグローバルサウスにもたらす影響を検討します。ブリュッセル効果を価値観の自発的共有ではなく「規制帝国主義」と位置付ける議論を紹介し、域外適用や十分性認定制度を通じてEU型ルール導入を迫るメカニズムを整理します。十分性認定16件のうちグローバルサウスはアルゼンチンとウルグアイのみであること、ケニアのデータ保護法とデータローカライゼーション要件が越境データフローやオープンガバメントデータ公開に与えた影響、南アフリカとインドネシアで総生産高がそれぞれ9.1%、7.8%減少した推計や、GDPR後に欧州企業のデータ保存量が26%減り利益が8.1%縮小した研究結果などを取り上げます。そのうえで、APEC越境プライバシールール(CBPR)システムのような柔軟で相互運用可能な枠組みを例に、グローバルサウスが自国の開発段階や実装能力に応じた規制を模索すべきだとする提案を紹介し、日本のデータガバナンスやデジタルパートナーシップ戦略への示唆を考えます。 出典: Information Technology and Innovation Foundation, “How the Brussels Effect Hinders Innovation in the Global South” https://itif.org/publications/2026/01/26/how-brussels-effect-hinders-innovation-in-global-south/ ■こんな方におすすめ 欧州の伊独連携や防衛協力、重要鉱物戦略など、政治と産業政策が結びつく新しい動きに関心がある方EU ETSの見直し議論や、無償配分、ウィンドフォール・プロフィット、オークション収入の使途といった制度設計の具体論を押さえたい方GDPRをはじめとするEUデジタル規制がグローバルサウスのイノベーションやデータガバナンスに与える影響を知りたい方欧州の産業政策・気候政策・デジタル規制の最新議論から、日本の制度設計やビジネス機会のヒントを得たい方■PEP Think とは PEP Think は、海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考えるポッドキャストシリーズです。 ■登壇者 馬田 隆明(PEP ディレクター) ■主催者 政策起業家プラットフォーム(PEP): https://peplatform.org/ 公益財団法人 国際文化会館: https://ihj.global/

    57分

番組について

政策起業家プラットフォーム(Policy Entrepreneur's Platform, PEP)が運営するポッドキャストチャンネルです。 以下の二つの番組を配信しています。 PEP Talk : 社会課題や政策を取り扱った書籍の著者にお越しいただき、書籍の背景等について伺う番組です。 PEP Think : 海外シンクタンクの議論を日本語で読み解き、日本のビジネスや政策への含意を考える番組です。

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