弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、FRBの政策金利、政府機関の一部閉鎖、関税といった不確実要因がある中でも、株式が底堅さを保つと考えられる理由について、詳しく解説します。
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トランスクリプト
「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。
本日は、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、最近の株式市場に関する懸念と、その変化の兆しについてお話しします。
このエピソードは11月10日 にニューヨークにて収録されたものです。
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現在、決算シーズンの真っ際中です。表面的には銘柄ごとのばらつきが大きいように見えるかもしれませんが、実際には成長の裾野が広がるポジティブな動きが見られます。具体的には、中央値の銘柄が過去4年間で最も高い利益成長率を記録しており、S&P500構成企業の売上高の予想超過率も過去平均の2倍に達しています。これらは、業績回復が広がり、価格決定力が関税の影響を相殺するほど強まっている明確な兆候です。
市場の弱含みを示す他の予兆にも注目しています。この1週間で、業績予想修正の季節的な軟調局面は終わりを迎えたようです。参考までに言うと、この指標は10月21日に6%まで落ち込みましたが、現在は11%に回復しています。特に、ソフトウェア、運輸、エネルギー、自動車、ヘルスケア分野が回復を牽引しています。
こうした業績予想修正の回復が見られる一方で、先週の市場全般は他の2つのリスクによって重い展開となりました。1つ目のリスクは、10月のFOMCで示されたFRBのハト派姿勢の後退です。FRBは12月の追加利下げは既定路線ではないと示唆しました。そのため、米国株式市場がこの会合当日にピークを打ったのは偶然ではありません。同時に、投資家は第3四半期の成長データにも注目しています。もし予想以上に強い結果となれば、市場が期待するほどのハト派的な対応がFRBから得られず、株価の高止まりに必要な後押しにならない可能性があります。
私はFRBのハト派姿勢の後退が株式市場のリスクであることを強調してきましたが、労働市場にも次第に不調の兆候が広がっているという点は重要です。これは、政府機関の一部閉鎖に直接関係する部分もありますが、民間の雇用データを見ると、政府部門以外でも雇用市場が減速しつつあることは明らかです。このため、市場には「FRBの利下げが遅れる」という緊張感が生まれ、4月以降の回復が失速するリスクが高まっています。
労働市場の弱さと、「景気を過熱させる」という政権の方針が重なることで、最終的には市場が現在予想している以上にハト派的な政策をFRBが打ち出す可能性が高いと考えています。しかし、政府の雇用統計でこの傾向が確認されない限り、FRBは株式市場が望むほど速いペースでは動かないでしょう。
市場が注目してきたもう1つのリスクは、政府機関の一部閉鎖そのものです。これらの要因が株価に影響を与えている主な経路は2つあると思われます。1つ目は、銀行準備金の最近の減少に見られる流動性の引き締まりです。政府機関の閉鎖により、政府職員や各種プログラムへの支払いが減少しています。閉鎖が間もなく終われば、これらの支払いが再開され、流動性拡大につながります 。
政府機関の閉鎖による2つ目の影響は、多くの労働者が一時帰休となり、SNAP(補助的栄養支援プログラム)などの給付が停止されたことで、消費支出が減少したことです。その結果、一般消費材企業の業績予想修正が相次ぎました。幸い、政府機関の閉鎖がまもなく終わり、こうした市場の懸念が和らぐ可能性があります。
最後に、関税について、最高裁判所の判断が近いうちに発表されます。先週、関係する銘柄がこの展開にどう反応するかが話題となりました。全体的には、最も影響を受けるとみられる銘柄の株価の反応はごくわずかでした。これはいくつかの要因によるものと考えています。まず、トランプ政権は既存の関税に代わる措置を講じるために他の多くの権限を利用する可能性があるということです。次に、仮に最高裁が関税を覆した場合でも、払い戻しにかなりの時間がかかり、2026年までずれ込む可能性があるということも要因でしょう。
では、これらすべてのことは何を意味するのでしょうか。季節的な業績不振と政府機関の閉鎖は終わりを迎えつつあり、最近軟調だった株式市場に一定の安堵感をもたらすはずです。しかし、景気過熱を目指す政府の方針にFRBが完全にコミットするまで、ボラティリティーは続くとみています。
最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。
Informations
- Émission
- Chaîne
- FréquenceTous les jours
- Publiée10 novembre 2025 à 08:00 UTC
- Durée7 min
- Épisode134
- ClassificationTous publics
