SUNDAY MORNING WAVE

東北大学災害科学国際研究所の今村文彦教授が地震・津波をテ-マにわかりやすく解説する『地震に自信を』を中心に、防災・減災に役立つ情報と音楽をお送りします。

  1. hace 4 días

    【地震に地震を】AI時代の防災・減災「哲学と学び」(2026年8月2日 今村文彦先生)

    AIの進化に伴い様々な利活用が行われていますが、その中で、「倫理、哲学」や「問いを立てる力」が注目されています。特に、人命の確保や想定外の事態に直面する「防災・減災」の分野で重要になると思われます。その重要性、課題、今後の注意点は以下の通りです。・防災における「哲学と学び」の重要性:AIはデータから避難ルートや被害予測を迅速に算出できますが、最終的な意思決定には人間の考えや倫理など哲学が不可欠です。自分の命が助かること、周りの方達を助けることなどでは、多くの葛藤や板挟みが生まれています。同様に、救助資源の投入先やインフラ復旧の順位など、災害時に発生する「正解のない倫理的ジレンマ」は、データ計算ではなく人間の倫理(哲学)でしか判断できません。・想定外への対応力:AIは過去データの最適化が得意な反面、激甚化する複合災害には対応できません。「AIの予測が通じない場合はどうするか」という不確実な問いを立て、泥臭くシミュレーションを重ね、地域の強靭性を高めることが求められています。・AI防災が直面する課題:AIへの過度な依存は人間の「思考の浅薄化」を招き、災害時に致命傷となり得ることも懸念されています。避難指示アプリへの依存は「通知がないから安全」という油断や、通信障害による途絶時にどう動いていいか分からないといった、デジタル依存型の脆弱性を生み出します。 ・今後の注意点: AIという強力な道具を得た現代だからこそ、人間の思想や倫理が災害時の命(明暗を分ける)の格差に直結します。平時から「人間独自の思考の深み」を鍛えておくことこそが、最大の減災となると考えます。

    【地震に地震を】AI時代の防災・減災「哲学と学び」(2026年8月2日 今村文彦先生)
  2. 27 jul

    【地震に自信を】カムチャッカ地震・津波から1年:遠地津波と酷暑避難の課題(2026年7月26日 今村文彦先生)

    2025年7月30日に発生したカムチャツカ半島沖の巨大地震(M8.8/8.7)から1年が経過しました。日本国内での揺れは殆どなかったのですが、広範囲に津波警報・注意報が発表され、当時の遠地津波とその対応について多くの教訓を残しました。以下にその要点をまとめます。1. 発生メカニズムと周期の謎この地震はプレート境界型の海溝型巨大地震です。従来の地震学では、同規模の超巨大地震の再来には「数百年の周期」が必要とされていましたが、わずか73年という短いサイクルで発生し、これまでの定説を大きく覆しました。2. 遠地津波の脅威と避難の盲点数千キロ離れた震源から伝播する遠地津波には、国内災害とは異なる特有の危険性があります。国内の最大震度は2にとどまり、揺れの体感がなく危機感を抱きにくい盲点があります。また、海底地形(例えば,天皇海山列)で波が反射し、変動は丸2日以上継続しました。第一波の到達から約12時間後に最大波を観測した地域もあり、「第一波が引いても戻らない」ことや「車避難による渋滞リスクの回避」が鉄則となります。3. 酷暑下での長時間避難という課題災害が発生した7月末は各地で最高気温40℃を超える酷暑でした。津波警報等が長時間継続したため、エアコンのない避難所や日陰のない高台で待機する住民の熱中症リスクが急上昇し、過酷な環境下での体調管理という二次災害への課題が浮き彫りとなりました。4. 今後に向けた防災のアップデート過酷な気象環境と遠地津波から身を守るため、以下の対策と意識の更新が必要です。情報の即時キャッチ: 体感の揺れがなくても、スマホやTVの津波情報に素早く反応する。季節に応じた避難セットの常備:夏は飲料水や塩分補給、冷却グッズ、冬は防寒着やカイロなど、非常持ち出し袋の中身を季節ごとに入れ替える。避難先環境の事前把握:徒歩避難を前提としつつ、指定された高台や避難ビルに日陰や冷暖房設備があるかを事前に確認しておく、などが大切です

    【地震に自信を】カムチャッカ地震・津波から1年:遠地津波と酷暑避難の課題(2026年7月26日 今村文彦先生)
  3. 20 jul

    【東北大学防災UPDATES!】防災まちづくり大賞30周年~伊良林小学校ホタルの会の紹介(2026年7月19日 佐藤翔輔先生)

    2026年7月19日 災害科学国際研究所災害実践推進部門・防災社会推進分野准教授 佐藤翔輔先生 阪神・淡路大震災を契機に総務省「防災まちづくり大賞」が創設され、昨年で30周年を迎え、過去の受賞団体の「その後」を取材・紹介した記念誌が発行されています。記念誌の編纂に伴い紹介された長崎県「伊良林小学校ホタルの会」の取り組みについて紹介します。この活動は、1982年の長崎大水害で児童や家族が犠牲になったことをきっかけに始まり、記憶の継承と慰霊を目的に40年以上続けられています。小学校の委員会と地域団体が連携し、ホタルの飼育や放流、清掃活動、鑑賞会などを行っています。児童はホタルを守り育てる経験を通じて命の尊さを学び、環境教育、防災教育、地域連携が融合した深い取り組みへと発展しています。この活動が長く続く災害伝承のコツとして「災害伝承だけを目的にしないこと」があり、人づくりを中心に据えている点にあると私は考えています。ぜひ、防災まちづくり大賞への応募をご検討ください。 防災まちづくり大賞30周年記念誌 https://www.fdma.go.jp/mission/bousai/ikusei/item/ikusei002_07_kinenshi_30th.pdf

    【東北大学防災UPDATES!】防災まちづくり大賞30周年~伊良林小学校ホタルの会の紹介(2026年7月19日 佐藤翔輔先生)
  4. 20 jul

    【地震に自信を】建物別地震計測の現状と期待(点検優先)(2026年7月19日)

    現在の日本における「建物別地震計測(強震観測)」は、単なる揺れの記録から、「地震直後の建物の安全性判断」や「早期復旧」へとその役割が大きくシフトしています。従来、建物内の地震計は「設計時の想定通りか」を確認する研究的な側面が強かったですが、現在は「被災度判定の迅速化」が最大の目的となっています。そのために、即時被災度判定システムとして、地震発生直後に建物内の複数のフロアや基部で計測されたデータ(加速度や変位)を自動解析し、建物の損傷状況をリアルタイムで推定する開発が進んでいます。リアルタイムの計測データを建物の構造解析モデル(デジタルツイン)にインプットし、目に見えない構造内部の損傷を早期に把握する技術が導入され始めています。 広域な地震が発生した際、すべての建物を即座に詳細調査することは不可能です。そこで、地震計データを用いた「点検優先順位付け」が重要になります。計測データによる絞り込み、建物ごとの揺れの大きさを自動取得。構造設計時に設定された「管理基準値」を超過した建物から、技術者による目視点検(被災度区分判定)を行うようアラートを出す仕組みになります。被災していない可能性が高い建物の点検コストを削減でき、本当に危険な建物へのリソース集中が可能になります。超高層ビルや大規模複合施設では、多くの自治体で条例により設置が義務付けられており、地震直後のエレベーター停止制御や、居住者への速やかな避難誘導に活用されています。さらに、重要インフラ・病院では、地震直後の「運用継続の可否」を判断するため、計測データに基づいたエンジニアリング判断が定着しています。 このように技術は進歩していますが、社会実装には課題も残されています。 どの程度の揺れで「点検が必要」と判断するかの基準(しきい値)を、建物の構造特性(免震、制震、耐震など)に応じてより高精度に設定する必要があります。また、データはあっても、損傷の深度を判断するには専門知識が必要であり、この判定プロセスのさらなる自動化・AIによるサポートが急務となっています。

    【地震に自信を】建物別地震計測の現状と期待(点検優先)(2026年7月19日)
  5. 13 jul

    【地震に自信を】最近の地震活動の特徴と今後の注意(2026年7月12日 今村文彦先生)

    最近の地震活動は、おもに日本海溝・プレート境界周辺でM7クラスの大規模な地震が連鎖している点が大きな特徴です。   2025年12月8日:青森県東方沖(M7.5、最大震度6強)   2026年4月20日:三陸沖(M7.7、最大震度5強)※太平洋岸に津波警報・注意報   2026年6月25日:岩手県沖(M7.2、最大震度6強)そこでは、体に感じない速度で断層が動く「スロースリップ」(ゆっくりすべり)が観測されており、これが周辺のひずみを変化させ、一連の大規模地震を誘発している可能性が指摘されています。「未破壊領域」への応力集中も指摘されており、直近の岩手県沖の地震は、過去の巨大地震(1968年十勝沖地震など)の活動域の中で、これまで大きく割れずに残っていた「中央部」付近で発生しました。一方、関東地方でも中規模地震が発生しています。4月1日の茨城県南部(M5.0、最大震度5弱),6月16日群馬・埼玉県(M5.5、最大震度5弱)、6月26日山梨県(M5.6、最大震度6弱)など、プレート境界を震源とする地震が散発的に発生しており、引き続き注意が必要です。   大きな地震が発生した直後は、さらに規模の大きな地震が続けて発生する確率が平常時よりも高まります。気象庁や内閣府から「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が発表された際は、数日〜1週間程度、すぐに避難できる態勢を整える。海域で発生する浅い大規模地震では、津波が発生します。「揺れたらすぐ、より高く安全な場所へ避難する」を徹底しましょう。また、屋内の安全対策の再点検や備蓄品の確認、家族間の連絡手段や安否確認方法を決めておくことも重要です。

    【地震に自信を】最近の地震活動の特徴と今後の注意(2026年7月12日 今村文彦先生)
  6. 6 jul

    【東北大学防災UPDATES!】後発地震注意情報に伴う住民対応の調査結果(2026年7月5日 佐藤翔輔先生)

    2026年7月5日 災害科学国際研究所災害実践推進部門・防災社会推進分野准教授 佐藤翔輔先生 2025年12月に発生した青森県東方沖の地震後、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が初めて発表されました。私たちの研究グループでは、全国調査(災害科学国際研究所と㈱サーベイリサーチセンター)と宮城県調査(宮城県防災推進課と災害科学国際研究所)で、それぞれ住民対応の実態を調査しました。「日頃からの地震への備え・再確認」は12項目すべてで、宮城県は全国を上回っていました。全国的には「窓ガラスの飛散防止」や「簡易トイレの確保」など揺れ・火災への日頃の備えの再確認項目において未実施が目立ちました。さらに、就寝中および外出中のすぐに避難できる態勢の維持、非常持出し品の携帯といった「特別な備え」である3項目を推奨期間である1週間継続できた人はわずか数パーセントに留まり、実施率の低さが課題として浮き彫りになりました。これは宮城県も同様です。東日本大震災前の事前地震での備えが被害軽減に繋がった事例を踏まえ、1週間程度は備えを継続できるよう住民対応を改善していく必要があります。

    【東北大学防災UPDATES!】後発地震注意情報に伴う住民対応の調査結果(2026年7月5日 佐藤翔輔先生)

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