BOOK 沼 RADIO

BOOK 沼 RADIO

「BOOK 沼 RADIO」は、オカ・コン・カフカの3人が、毎回、1冊の書籍を取り上げ、そこから生まれた問いに対して、具体と抽象を行き来しながら、答えを出そうとする。そんな対話番組です。3人で思考の沼を楽しんでいきます。 Notionページ→ https://tricky-wallaby-04e.notion.site/BOOK-RADIO-1ec73bca327f4adca851a40ab543134a?pvs=4 毎月第二、第四日曜日に更新予定。

  1. 4d ago

    #74 『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ著)

    今回は、コンの選書。 チョ・ナムジュさんの著書『82年生まれ、キム・ジヨン』(斎藤真理子 訳、筑摩書房)を取り上げます。 韓国で130万部を超え、日本でも社会現象となった本作は、ある日突然、別人が憑依したような言動を始めた33歳の女性、キム・ジヨンの半生を淡々と描いています。 その記録は、一人の女性の物語を超え、現代社会に根深く残る女性の生きづらさを浮き彫りにしています。 「日常に潜むマイクロアグレッションと無意識の連鎖」をキーワードに、議論は以下の3つのトピックを中心に展開しました。 ・「あるある」の中に隠された絶望:大きな事件が起きるわけではないが、兄弟で傘を分ける際や食事の優先順位など、日常の些細な場面に積み重なる「女だから」という理不尽。当事者ですら「当たり前」として流してきた痛みが、言葉によって暴かれていく衝撃について。 ・淡々としたカルテ調が呼ぶ「没入体験」:物語は精神科医のカルテという形式で非常に冷徹に綴られますが、それが逆に読み手の感情を激しく揺さぶり、「心の中で号泣した」「血が吹き出しそうな感覚」といった強烈な読後感を生む理由を考察します。 ・世代を超えて受け継がれる「呪縛」:祖母が孫の中で弟を一番可愛がる姿など、差別が家族や文化の中でナチュラルに継承されていく構造。韓国と日本の類似点や、徴兵制などの独自の背景も含めた社会の歪みを深掘りします。 この回では、自身の経験と重ね合わせ「しんどいと言えずに流してきたことが言葉になっている」と語るオカの激しい共感と、未読の状態から「男性としてどう響くのか」を慎重に探るカフカの視点、そして臨床心理学を学ぶ立場から「個人の性格ではなく文化的な形成」として本作を捉えるコンの分析を交えて議論します。 特に、読書会における男女の反応のズレ(ミステリー的なギミックとして消費してしまう危うさ)や、性別による「期待値の壁」をいかに超えるかという点について深く語り合います。 最終的に、私たちは「誰かを加害者に仕立ててヘイトをぶつけ合うのではなく、自分の中にあるマジョリティ性にも気づきながら、いかにお互いの『内側の声』を理解しようとするか」という、共生のための誠実なスタンスに立ち返ります。

    33 min
  2. Jun 13

    #73 『感情労働の未来』(恩蔵絢子著)

    今回は、オカの選書。 恩蔵絢子さんの著書『感情労働の未来: 脳はなぜ他者の“見えない心”を推しはかるのか?』(河出書房新社)を取り上げます。 1983年に提唱された「感情労働」という概念は、CAや看護師のように「相手に合わせて感情をコントロールする仕事」を指すものでした。しかし本書は、現代のSNSやあらゆる人間関係において、私たちが無意識に感情をすり減らしている現状を脳科学の視点から解き明かしています。 「感情の抑制と解放のバランス」をキーワードに、議論は以下の3つのトピックを中心に展開しました。 ・全方位に広がる感情労働:かつては職場における特定の職種に限定されていた「感情の負荷」が、今や友人関係、SNS、家族など、私たちの生活の全域にまで拡張されているという指摘。 ・「頭と心の乖離」という葛藤:キャリアを重ね「ちゃんとしなきゃ」と頭で理解しつつも、出産や育児などのままならない経験を経て、模範的な振る舞いに限界を感じているオカの現在地。 ・AIには代替できない「感情の深さ」:AIが得意とするのは、あくまで表質化された「言葉のレイヤー」の広さであり、人間が持つ「言葉にならない深い感覚」こそが人間同士の作用の本質であるという視点。 この回では、対人支援職の現場で「客観的であれ」と訓練されながらも、支援者自身の感情を扱うことの重要性を学び始めたコンの視点と、集団への適応と個の感覚の狭間で揺れるカフカの反応を交えて議論します。

    40 min
  3. May 23

    #72 『静かな時間の使い方』(安斎勇樹著)

    今回はカフカの選書。 安斎勇樹さんの著書『静かな時間の使い方』を取り上げます。 現代社会は、SNSのフォロワー数や会社のKPIといった「市場のスコア」、世間体などの「社会の規範」といった、著者が「ソーシャルノイズ」と呼ぶ情報に溢れています。 本書は、こうしたノイズから物理的に距離を置き、静かな時間の中で「リフレクション(内省)」を行うことで、自分自身の内なる声と言語化を取り戻す重要性を説いています。「分析的」と「物語的」という2つのリフレクション。 成果をロジックで振り返るだけでなく、自分の熱意や直感を「物語」として意味づけすることで、初めて自分の納得感につながるという視点です。 さらに、「信念」に至るためのステップアップとして、「感情」、「技術」、「興味」という3つの階層を丁寧にリフレクションする。そうすることで、自分の才能が発動する条件である「信念」が形を帯びてくるプロセスが紹介されています。 この回では、元アスリートとして「才能の有無」というアンフェアな世界にいた経験から、自身の信念を「フェア(対等)」であることだと再定義するカフカの自己分析と、復職後に「効率」だけを求めて働く中で「没入」という感覚を失い、バイタリティを削削されているオカの実感を交えて議論します。 特に、余裕がなくなった時に「相手のせい」にしてしまう衝動を、いかにしてリフレクションという「理性」で飼いならすかという切実な問いについて深く語り合います。 最終的に、私たちは「どれだけ時間やお金を確保しても、自分の内側の声を言語化しない限り満たされない」という、デジタル社会における幸福の核心に立ち返ります。

    37 min
  4. May 9

    #71 『嘔吐』(小川哲著)

    今回は、オカの選書。 小川哲さんの短編『嘔吐』(文芸誌「GOAT」掲載)を取り上げます。 本作は、ある中年男性が、ファンである女性作家のサイン会を「おじさんであること」を理由に追い出された、というブログを投稿することから始まります。一見、不当な差別に抗議する紳士的な告発に見えるこの文章が、SNSでの炎上や二次情報の流布を経て、読み手の「真実」を激しく揺さぶっていく物語です。 「認知の歪みと雰囲気の支配」「ロジック」と「感情」の対立。仕事のプロジェクトなどで、本来の目的(ロジック)を優先する人が、盛り上がっている場(感情)において「冷たい人」と見なされてしまうような、現代社会における正論の通じにくさ。 本人同士が納得していても、それを見た「第三者」への影響を考慮しなければならないSNS社会特有の監視構造と、そこから生まれる息苦しさについて考察します。 この回では、自身の仕事でのプロジェクト事例(目的と盛り上がりの乖離)を引き合いに出すオカの実感と、メタ的な視点で「客観視できる自分でいたい」と願いつつも、反射で動いてしまう人間の身体性を分析するカフカの視点を交えて議論します。 特に、「私たちは言葉の端々に宿る人間性をどこまで正しく受信できているのか」という、コミュニケーションの本質的な難しさを深掘りします。 最終的に、私たちは「情報の海の中で、いかにして自分自身の価値観を保ち、他者の痛みを想像し続けることができるのか」という、現代的な誠実さを問う問いに立ち返ります。

    33 min
  5. Mar 7

    #69 『母という呪縛 娘という牢獄』(齊藤 彩著)

    今回は、コンの選書。『母という呪縛 娘という牢獄』を取り上げます。 本書は、2018年に滋賀県で起きた、9年もの浪人生活を強いられた娘が実の母を殺害・遺棄した実在の事件を、記者による取材と被告となった娘の手記から解き明かしたノンフィクションです。 「母娘の共依存と支配」「教育虐待」「心理的な逃げ場のなさ」。傍目には逃げ出せるように見えても、当事者の心の中では「母を殺すか、自分が死ぬか」しか選択肢がないと感じるほど煮詰まった「牢獄」の闇について描かれています。 親による「過度な同一視」。母自身の不遇な生い立ちやコンプレックスを埋めるために、娘を「自分自身」だと思い込み、支配を強めていった歪んだ愛情の形とは。 この回では、親の意向と自分の意志の狭間で葛藤した過去を持つコンの実感を交えて話しています。特に、「愛情の裏返し」という名目で正当化される支配の残酷さや、誰もが一歩間違えれば「異常」とされる世界線に入りうる危うさについて深く語り合います。 最終的に、私たちは「他者を自分とは別の人間としていかに尊重し、理性で支配欲を制御し続けるか」という、家族関係の深淵にある問いに立ち返ります。

    40 min
  6. Feb 21

    #68『本なら売るほど』(児島 青 著)

    今回は、オカの選書。 漫画『本なら売るほど』を取り上げます。 「本をテーマにした漫画」といえば、名著の素晴らしさを語り合ったり、読書の崇高さや楽しさをキラキラと描いたりするものが一般的。しかし本作は、古書店を舞台に「本を手放す人々」や、必ずしも本を読み通せない人々の姿を描き、本と人との関わりが決して綺麗な側面だけではないというリアリティを肯定してくれています。 そこで今回は「読書への罪悪感」をキーワードに、3つのトピックを中心にお話ししました。 まず、本を読まない「本好き」の存在について。内容よりも本の情報や流通が好きだったり、買って満足してしまう「積読派」や、読んでいて寝落ちしてしまう人など、完璧な読書家ではない人々の心情を肯定する視点について。 次に、読書につきまとう「高尚さ」の呪縛について。本は綺麗に扱わねばならない、最後まで読まねばならないというプレッシャーと、そこから解放されて自由に(書き込みをしたり、途中でやめたり)本と付き合うことの豊かさ。 最後に、本のある空間の居心地の良さについて。コンの祖父の書斎の原体験や、カフカが感じる書店の安心感など、読む行為そのものよりも「本に囲まれる」こと自体が持つ、癒やしの効果です。 この回では、「積読」に引け目を感じていたオカが本作に救われたエピソードや、アスリート時代のカフカが「読めない時期」に感じた葛藤、そして図書館や書店に見える「人の生活」を愛するコンの感性を交えて議論します。 特に、「読書はオン(頑張る時)にするものか、オフ(休む時)にするものか」という問いや、本を崇高なものとして扱いすぎない「生活に溶け込んだ読書」のあり方について語り合います。 最終的に、私たちは「知識を得るための読書ではなく、ただその時間を味わうための読書とは何か」という、本との幸福な距離感を問う議論に立ち返ります。

    31 min
  7. Feb 7

    #67 『戦略的暇』(森下彰大著)

    今回は、カフカの選書。 森下彰大さんの著書『戦略的暇 人生を変える新しい休み方』を取り上げます。 スマホの登場以来、私たちは常に何かに接続し、隙間時間を埋めることに躍起になっている。 しかし本書は、デジタルデバイスへの「依存」から「共存」へとシフトし、意識的に「暇」を作り出すことこそが、脳のパフォーマンスを高め、人生を豊かにすると説いています。 今回は「良質な暇」をキーワードに、3つのトピックを中心に展開しました。 第一に、「良質な暇」と「悪質な暇」の違い。単なるうさ晴らしやSNSによるドーパミン消費(悪質)ではなく、軽い運動や瞑想、創作活動など、脳のデフォルト・モード・ネットワークを整える活動(良質)の重要性について。 第二に、現代を覆う「ナウイズム(今至上主義)」の弊害。SNSのタイムラインや即時的な成果に追われ、過去に学び未来を構想する「長い時間軸」での思考が失われている現状への警鐘。 第三に、反射から内省への転換。情報は「反射」的に消費させるように設計されています。そこから距離を置き、五感や身体感覚(内受容感覚)に耳を澄ませる時間の必要性を話しています。 最終的に、私たちは「空白の時間を恐れず、いかにして自分自身との対話を取り戻すか」という、デジタル社会におけるウェルビーイングの問いに立ち返ります。

    37 min

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