市場の風を読む

モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。

  1. Aug 7

    AIの新たな関与ルール

    弊社米国公共政策リサーチ責任者のアリアナ・サルバトーレが、米中間の緊張、輸出管理、そして国内規制が、AI産業の構造や主導権の行方にどのような影響を与えているのか、投資家が何に注目すべきかをどのように変えつつあるのかを解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社の米国公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが、米国でAIの未来が、政府によってますます左右されるようになっている状況について、AIがどこで構築されるのかから、米国企業や消費者がどの技術を利用できるのかまで、幅広く見ていきます。 このエピソードは8月7日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 AIは経済と社会を急速に変えつつあります。ですから今は、政府がその発展をどう管理していくのか、そのルールを考える上で重要な局面です。まず注目すべき分野は、特に米中競争の文脈におけるテクノロジー規制です。 さて、過去10年の大半において、政府のアプローチは、明確に国家安全保障上の意味合いを持つ比較的限られた技術群を規制しつつ、より広範な商業関係は維持するというものでした。しかし、輸出規制が経済のより多くのセクターに広がり、AIがソフトウェアから物理的なインフラへと移行する中で、国家安全保障に該当するものの定義は広がっています。 例えば、商務省はエンティティー・リストを拡大する可能性があります。そうなれば、米国のクラウド・プロバイダー、ソフトウェア企業、モデル・マーケットプレイスは、指定された中国の開発者に関連するモデルを削除する、あるいはサポートを停止することが求められます。 その後、議会は年次国防権限法やその他の政策手段を通じて、こうした規制をより持続的なものにする可能性があります。弊社は、AI Overwatch Actなどの複数の法案に注目しています。この法案は、最先端のAIチップの輸出を巡る規制を強化し、議会の監督権限を付与するものです。またMATCH Actは、規制をさらに上流の半導体製造装置にまで広げ、同盟国の製造業者との連携をより緊密にすることを目指しています。 これらの措置は、米国人が中国のモデルを利用することを直接禁止するものではありませんが、中国が将来のフロンティア・システムを訓練する能力を制約する可能性があります。 ただし、制限を課す可能性があるのは米国だけではありません。中国には、統合と市場参入をより重視した独自の政策手段をもっています。規制当局は、海外のモデルやAPIをブロックすることができます。また、現地での管理下での展開を義務付けることも、中国の独自のデータやコンテンツ基準を課すことも、サイバーセキュリティやエンティティー・リストに関する権限を使って国内代替品を促進することも可能です。 その結果として考えられるのは、AIエコシステムがますます明確に二つに分かれていくことです。これは、弊社が掲げる「二つの世界」という見方が、実際に形になっているということです。時間の経過とともに、世界のAI市場は、別々のテクノロジー・エコシステムへと二分されていくと弊社は考えています。 その姿は、米国が輸出規制、同盟国を中心としたサプライチェーン、そして主にクローズドなフロンティア・モデル・プラットフォームに依存する一方で、中国は国内ハードウェア、オープンウェイトのモデル、補助金を受けたコンピュート、そしてローカライゼーションを重視する、というものです。時間の経過とともに、この二分化は異なるチップ、モデル、標準、データ・ルール、流通チャネルを生み出す可能性があり、第三国は競合する技術基盤の間で立ち位置を探ることになります。 二つ目に注目すべき分野は、国内規制です。現在、規制環境はかなり分断されています。自動意思決定や子どもの安全など、特定の課題については、各州が先行して動いています。同時に、議会は、業界、消費者団体、国家安全保障当局者の間で競合する目標に向き合っています。 これまでのところ、証拠が示しているのは、政権が軽い規制アプローチを選好しているということだと弊社は考えています。つまり、広範な新しい免許制度ではなく、主に自主的な全国的枠組みです。ただし同時に、最先端モデルに対しては、より直接的な監督へと向かいつつあります。これには、モデルの公開前により積極的な役割を果たし、サイバーセキュリティや知的財産など、一定の保護が満たされていることを確認する可能性も含まれます。 業界が公に示している優先事項は、このアプローチとおおむね重なっているように見えます。一貫した連邦レベルの枠組み、より明確な責任基準、データ、コンピュート、電力へのアクセス、そしてモデルの学習を実質的に制限しない著作権ルールです。 もちろん、業界は一枚岩ではありません。フロンティア・モデルの開発企業とその他のプレーヤーの間には、微妙ながら重要な違いもあります。 では、これは投資家にとって何を意味するのでしょうか。政府がどのように反応するかは、AIが社会全体でどのように開発され、普及していくかを左右する上で、二つの主要な点から極めて重要になります。 第一に、規制はAIインフラのペースだけでなく、その地理的な分布も変えると弊社は見ています。 同時に、こうした制約は、オンサイト発電、燃料電池、蓄電など、ボトルネックを解消するソリューションの投資妙味を高める可能性があると弊社は考えています。 第二に、テクノロジーの二分化が進むことは、並行するサプライチェーンへの投資を支える要因になります。 ここでの重要なポイントは、政府がもはや業界を外側から規制しているだけではないということです。国内ルールを通じてAIがどれだけ速く発展するのかを、インフラ、許認可、ソブリンAI政策を通じてAIがどこで発展するのかを、そして輸出管理や市場アクセス規制を通じてどの技術が利用可能になるのかを、政府が方向付ける役割を担っているのです。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    AIの新たな関与ルール
  2. Aug 5

    FRBはどこまで持ちこたえられるのか

    短期金利から長期債利回りに至るまで、FRBの信頼性が試されています。債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、インフレ、ケビン・ウォーシュFRB議長の見通し、そして今後の選択肢についてお話しします。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社の債券リサーチ・グローバル責任者であるアンドリュー・シーツが、FRBは方針を維持できるのかについてお話しします。 このエピソードは8月5日にロンドンにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 FRBは、難しい仕事を担っています。 米国経済は、脳外科手術からハンバーガーの注文に至るまで、あらゆるものを含む複雑で多様なエコシステムです。FRBは、ほとんどの場合、短期金利というたった一つのシンプルな手段を使って、物価の安定と雇用を維持することを求められています。しかも、政府の政策や世界的な出来事が何をもたらすかをコントロールすることはできません。 現在、FRBはこの任務の一方、つまり雇用市場については、失業率が歴史的な低水準に近いことから、かなりうまくいっていると感じている可能性があります。一方で、物価の安定については、それほど成功しているとは感じていないでしょう。FRBが重視するインフレ指標に基づくと、過去5年間で米国経済全体の物価は20%超上昇しました。これは、インフレ目標の年率2%の場合に通常想定される上昇幅のおよそ2倍に相当します。 こうした複雑な状況の中で、新しいFRB議長であるケビン・ウォーシュ氏が登場します。 同氏は、在任中の方針として二つの変化を強調してきました。第一に、インフレは高すぎるため低下させる必要があるということです。第二に、FRBはこれまで市場に対してあまりにも多くを伝えすぎてきたということです。ウォーシュ議長は、そのことが投資家による過度なリスクテイクを助長した可能性があるだけでなく、FRBが行動するうえでの選択肢を狭める一因にもなってきたと考えています。 市場がいま消化しようとしているのは、この二つの目標の間に生じ得る緊張関係です。 何しろ、高インフレは目の前の課題です。FRBが物価上昇率を年2%程度に抑えたいと考えている世界において、FRBが重視するPCEインフレ率は、過去3カ月、6カ月、12カ月のいずれで見ても年率換算で3%を上回って上昇しています。最新のISM製造業景況感指数では、製造業者の間での価格上昇を示す指標が通常を大きく上回っています。 そうした状況に対して、FRBがこのインフレに対抗する一つの選択肢は、利上げを行うことだったはずです。しかし、FRBはそれを行いませんでした。もう一つの選択肢は、行動に踏み切る寸前であり、近く動く可能性が高いと示唆することでした。しかし、それも行いませんでした。 実際、弊社のエコノミストは、市場が直近のFRB会合でウォーシュ議長が明確な指針も行動も示さなかったことを、利上げのハードルがかなり高いことを示すものと受け止めたと考えています。さらに、FRBの2%インフレ目標を、より一般的で具体性に欠けるものへと再定義する可能性さえあると見たようです。 その結果、市場の反応は、インフレへの注目が弱まったことを示唆するものになりました。利上げの見通しは後退し、長期債利回りの上昇を主導役として、イールドカーブはスティープ化しました。期待インフレ率の指標は上昇し、米ドルは下落しました。 その後数日間で、市場はやや落ち着きを取り戻しました。しかし、その結果として、市場は今後発表されるインフレデータに対して、これまで以上に敏感になっていくでしょう。 弊社が予想しているように、今年後半にインフレデータが落ち着くのであれば、FRBのアプローチは正当化される可能性があります。データが、行動も、今後何をするのかについてのさらなるコミュニケーションも必要ないことを示すためです。 しかし、インフレが思い通りに落ち着かなければ、課題は一気に差し迫ったものになります。FRBの別のメンバーであるクリストファー・ウォラー氏は最近、「インフレを厳しくにらみつけ、こちらの鋭い視線の前で溶けて消えるのを待つ、という選択肢はない」と述べました。 市場は行動を求め、その行動を説明する枠組みも求めるでしょう。その時点までは、弊社の金利ストラテジストは、イールドカーブのスティープ化が続くと考えています。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    FRBはどこまで持ちこたえられるのか
  3. Aug 3

    再び重要になるクオリティ

    株式市場がモメンタム中心のサイクル初期の相場から、比較的規律のある企業が主役になるサイクル中期の相場に移行する局面では、投資家はクオリティの高い銘柄を選好すべきだ――そう考えられる理由を弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがご説明します。  このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、景気回復のサイクルが初期から中期に移行中であることについてお話しします。 このエピソードは8月3日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 ここ数週間、私がポッドキャストでお話ししたことの続きになりますが、ここで改めて、景気と市場がサイクルの初期から中期に移行しつつあるという重要な指摘を繰り返したいと思います。このように言うとストラテジストがよく使う言い回しのように聞こえるかもしれません。しかしこの指摘は、相場の主役、ポジションの取り方、そして今の強気相場の次の局面についてどう考えるべきかという3つの点に、非常にリアルに関わってきます。 ここ1年間の大半は、サイクル初期ならではの特徴や行動が報われる相場でした。具体的には、クオリティが比較的低くてベータの高い銘柄、そして利益が激増する業績見通し修正が相場を先導しました。これは理にかなったことでした。米国はローリング・リセッションを抜け出しつつありましたし、営業レバレッジが急速に改善したり、落ち込んでいた業績見通し修正が急激に改善したりしていたからです。しかし、景気のサイクルが成熟するにつれ、市場の目も肥えてくるのが普通です。そして、市場は難しい問いを投げかけます。成長するだけでは物足りない、安定した利益と大きな利益率、そしてフリーキャッシュフローの創出を維持しながら成長を維持できる企業はどれだ、と問い始めるのです。 言い換えれば、クオリティというファクターが再び重要になり始めるのです。 私たちは今、まさにその状況に置かれています。クオリティ株へのローテーションが始まったのです。以前相場をけん引した銘柄が、そのあおりを受ける場合もあるでしょう。しかし、たとえそうであっても、株式市場全体が弱気になっていく兆しであるとは私は思いません。S&P500 種株価指数は、非常にクオリティの高い大型株で構成されています。したがって、当面は株式市場の値固めが続くかもしれませんが、最終的にはクオリティ株へのローテーションが指数を下支えするでしょう。そしてこのローテーションは、S&P500 指数が8000という、弊社設定の年末の目標値に向けて上昇するのを後押しすると思われます。 先週の株式市場では、モメンタム株のポジションの巻き戻しが歴史的な規模で行われ、相場が急落しました。モメンタム株は大きく売られ、半導体株がその中心でした。弊社の発する情報をここ数ヵ月間フォローしてくださっているみな様にとっては、特に意外なことではないはずです。弊社では半導体株について考える際、銀関連株とのアナロジー分析という分析手法を用いていますが、実はこの手法が示唆したほぼその通りのところで、半導体株指数は底を打ちました。 このことは、半導体株が今後数週間のうちに反発し、売買のチャンスが生まれる可能性があることを示しています。しかし、それ以上に重要なのは、半導体株は年末にかけて相場の主役の座を取り戻すのに苦労するかもしれないということです。半導体株はサイクルの初期に活発に売買される銘柄の典型ですが、相場はクオリティ株主導のサイクル中期の相場にますます変わってきています。銀関連株とのアナロジー分析も同じ結論を支持するでしょう。 AIサイクルは終わっていないが、最も活発に売買されているAI関連株で手っ取り早く稼げる局面は終わったかもしれない――挑発的な言い方をするなら、そのようになるでしょう。AI投資サイクルにはまだかなり先がありますが、AI投資関連株なら何でも報われるという相場にはもうなっていません。今では投下資本利益率、導入、収益化、業務上の規律といった裏付けが求められています。先週見られたマイクロソフトとメタの株価パフォーマンスの違いがその良い例です。何の理由もないのにあれほどの差がついたわけではありません。あれは、設備投資に規律がはたらいているか否かが問われた結果です。市場は今、比較的慎重な投資に報いるようになっています。私が数ヵ月前から見てきたとおり、これからは設備投資の恩恵を受ける銘柄に、本物の下落圧力がかかってくるかもしれません。 私が今でも半導体株よりハイパースケーラーのほうを選好しているのはそのためです。なお、これには重要な但し書きがひとつ付きます。ハイパースケーラーの間で差が広がっているのです。ハイパースケーラー全体は、ここ4週間で半導体株をすでに30%アウトパフォームしています。私は、この展開がさらに数ヵ月間続く可能性があると考えています。中核事業が底堅く、AIのアプリケーション層にもエクスポージャーを有しているうえ、必要ならAIを活用して営業費用を削減できる力があることも過小評価されているからです。また、AIインフラやサービスを支える側であると同時に、自ら積極的にAIを活用していく企業群でもあります。しかし市場はもう、すべてのハイパースケーラーを同じように扱うことはしないでしょう。投資でリターンを計上し、規律ある設備投資であることを説明でき、かつ利益の質を維持できる企業が勝者になるでしょう。 AI導入が非常に重要になってきているのは、そのためでもあります。相場の次の局面で重視されるのは、どの企業がインフラを構築するかということだけではありません。どの企業がAIをより効果的に使えるかどうかもポイントになります。弊社のリサーチによれば、AIが投資理由の重要な要素で、価格決定力も「中立」から「強い」のレベルにある企業では、予想利益率がすでに改善しつつあります。このグループの相対的な純利益率はわずか3ヵ月で50ポイント拡大しており、今では市場全体の水準を400ポイント近く上回っています。誇大宣伝ではありません。例の営業レバレッジが新たな原動力を得て効いているのです。 このパズルにはもうひとつ、FRBという大きなピースがあります。ウォーシュ議長は先週、金利の据え置きを決めましたが、自身の反応関数については口を閉ざしたままです。FRBはフォワード・ガイダンスへの依存度を減らしてフィルターのかかっていない市場のシグナルへの依存度を引き上げたがっており、市場はまだそれに合わせようとしているところです。私はこれを、長期的には健全な展開だと思っていますが、移行がスムーズに進むことはめったにありません。この根固めが調整局面に転じてしまう最大のリスクは、10年物米国債の利回りが5%を超えるかどうかです。5%を超えれば株価倍率の重しになりかねません。それにFRBも、市場にガイダンスを行う以前のやり方に戻るか、安定している金利市場への流動性供給を増やすかのどちらかを強いられる恐れがあります。 まとめましょう。株式の強気相場はまだ終わっていませんが、様子が変わりつつあります。現在の景気回復が初期から中期のサイクルに移行するにつれ、株式市場ではクオリティの高い銘柄が求められるようになっています。半導体株が反発する可能性はあるものの、相場の主役には戻りそうにありません。その一方で、ハイパースケーラーは比較的高い株価パフォーマンスを見せ続ける可能性が大きいでしょう。そのなかで最も高いパフォーマンスをあげるのは、設備投資に比較的慎重な姿勢を示す企業でしょう。そしてそれ以上に重要なのは、AIの導入が約束から計測可能な利益率拡大要因に変わりつつあることです。こうしたことから今回のサイクル中期は、あまり寛大でなく、銘柄を選別する姿勢が厳しい相場だが、ローテーション

    再び重要になるクオリティ
  4. Jul 30

    AIインフラ関連株急落の盲点

    最近のAIインフラ関連株急落がファンダメンタルズ悪化ではなく、テクニカル要因によって引き起こされた可能性について、弊社のテーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者であるスティーブン・バードが解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は、投資家がAIインフラ関連株の急落を読み違えている可能性について、弊社テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者であるスティーブン・バードがお話しします。 このエピソードは7月30日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 最近のAIインフラ関連株急落を受け、「投資が実需を先行し過ぎているのでは?」といういつもながらの疑問が浮上しています。実際、市場は下落していますが、これは投資家による利益確定売り、ポジションの偏り、強制的な売却を反映したもので、ファンダメンタルズ悪化が主因ではないと私たちは考えます。今回の急落では3つの懸念が注目されましたが、これらに対する市場の反応は過剰と考えます。 1つ目の懸念は、企業がAIにどれほどの対価を支払う意思があるのかという問題です。現在、企業の従業員1人当たりのトークン支出、つまりAIモデルがリクエストを処理して回答を生成する際に支払われる費用は、中央値で月11ドル未満にとどまっています。 この支出は今後増える余地があると私たちは考えます。雇用主側からすると、経済的な魅力が非常に大きいからです。例えば、職場で使われるアプリケーション全体で見ると、タスク実行コストは2~5ドルになる可能性もあり、その場合、企業は55ドルの節約が可能になります。これからすると、企業のAI支出は今後、減少ではなく、増加する可能性の方が高いと私たちは考えます。 2つ目の懸念は、競争力に優れた中国のモデルを含む、効率性の高いモデルの普及を巡るものです。これは米中双方の政策レスポンスの影響を受ける問題でもありますが、一部の投資家はモデルの効率が高まれば計算需要が減る可能性を懸念しています。しかし、ジェボンズのパラドックスの典型例、つまりあるモノの利用コストが下がる、あるいは効率が高まれば、人々はそれをより多く使うようになるという流れ、を予測する私たちの見方は逆です。AIの場合、利用コスト低下がより多くのユーザーを惹き付け、利用頻度が高まれば、複雑なアプリケーションの経済性はより向上すると考えているからです。 需要拡大の規模は目を見張るもので、業界大手の見積によると、計算需要は6ヵ月ごとに倍増する可能性があります。これは、計算需要が5年間で1,000倍超に拡大することを意味します。こうした中、ハイパースケーラーの稼働IT負荷容量は、2028年までに2025年の約30ギガワットから約120ギガワットへと4倍増する可能性があります。 そして、これが3つ目の懸念です。データセンターは拡大し続けるための十分な電力を確保できるのかという、至極真っ当な問題です。米国のデータセンターは、建設中の施設と契約済みの送電網容量を合わせて約30ギガワットの電力を確保していますが、これは2026年から2028年にかけて必要とされる推定68ギガワットの半分にも満たない電力です。地域によっては送電網への接続に5~7年かかることもあり、熟練した電気技師、溶接工、配管工も不足しています。また、電気料金、税制優遇措置、送電網の更新費用の負担主体を巡る議論が地域社会で高まる中、地元の反対も強まっています。 こうした問題はAIインフラにとって大きな障害ではありますが、行き詰まりではなく、拡大を遅らせる要因の一つに過ぎないと私たちは見ています。オンサイト発電、燃料電池、エネルギー貯蔵、天然ガスタービン、既存の大電力施設の転用などにより、需給ギャップの一部を埋めることは可能と考えます。 最近のAIインフラ関連株の弱さを引き起こした主因は、ファンダメンタルズ悪化ではなく、テクニカル要因だと私たちは考えています。ゆえにAIの能力が高まり、利用コストが下がるに連れ、情報、計算能力、電力への需要は今後も増加し続けるでしょう。米中の政策判断が成長の行方を左右する中、世界市場は分断されていますが、経済性の著しい向上が継続的な投資を支え続けると考えます。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    AIインフラ関連株急落の盲点
  5. Jul 27

    選別色の強まる株式市場

    強気相場は新たな局面に入った、今後は銘柄のクオリティが重視される――そう思われる理由を弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがご説明します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、サイクルの初期から中期への移行と、それが投資家のポートフォリオにとってどんな意味を持つのかについてお話しします。 このエピソードは7月27日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 弊社はこれまで、株式相場のすそ野が広がると指摘してきました。時価総額の非常に大きな一握りの銘柄から、景気に比較的敏感な銘柄に物色の矛先が向かうというのがそのポイントです。弊社が唱えるローリング・リカバリーの文脈では、これは理にかなったことでした。ローリング・リカバリーとは、企業がコストをそぎ落としたところで売上高が再び増加に転じ、営業レバレッジが多くのセクターではたらくようになる局面のことだからです。 しかし今、ローリング・リカバリーの初期のサイクルは終わりつつあり、市場はクオリティ重視の相場に移り始めていると私は考えています。弱気相場に入るわけではありませんが、これまでとは異なる相場であり、投資家のポートフォリオには個別銘柄のレベルで影響が及ぶ恐れがあります。 サイクルが成熟するにつれ、投資家は低クオリティ株のベータに報いるのをやめ、フリーキャッシュフローやバランスシートの強さ、利益率、利益の安定性などを重視し始めます。相場が回復を断念するわけではありません。投資先を決めるときの選別が厳しくなるのです。 この状況を目にすると、私は2021年の初めから中ごろまでのことを思い出します。コロナ禍の後、最初の相場回復が一巡すると、相場の主導役はクオリティが低くて投機色の強い分野から、クオリティの高い銘柄に移っていきました。この間、S&P500種株価指数は上昇を続けていましたが、その間に相場の主役は変わっていたのです。 今日も同じような相場展開になっている、と私は考えています。S&P500種指数自体は、すでに高クオリティ株の割合が大きなベンチマークになっています。高クオリティ株の割合がおよそ42%で、低クオリティ株の割合がおよそ28%なのです。このため、低クオリティ株からの移行を市場が消化し続ける間も、S&P500指数には下支えの力がはたらく公算が大きいでしょう。 では、ボラティリティの高い展開になる可能性はまだあるのでしょうか。もちろん、あります。 戦争がエスカレートしたり、FRBが今週の会合で予想外の利上げに踏み切ったりすれば、市場は調整を続ける可能性があります。FRBの利上げへの移行や地政学的背景に対する投資家の不安感が続く場合、S&P500指数では7000が重要な下値支持線になると私は以前からみています。しかしここで重要なのは、強気相場が終わりつつあることではなく、主導役が代わりつつあることのほうです。 このシフトの最も重要なけん引役のひとつが、AIの導入です。サイクルの初めのころには、利益率拡大のカギは典型的な営業レバレッジにありました。売上高が経費よりも早いペースで回復すると生じる、あの効果です。しかし今後は、AIを効果的に利用し、コスト構造のスリム化を続け、生産性の伸びを売上高の増加に変えられるかどうかで利益率が決まる面が大きくなるでしょう。 クオリティが問題になるのはそのためです。強い価格決定力、強靭なバランスシート、AI導入を真の成長につなげる能力。今後はこれらを有する企業が、そうでない企業よりも高い評価を受けることになりそうです。 投資の理由においてAIが重要で、かつ価格決定力が「中立」から「強い」のレベルにある企業は今後、純利益率の予想値がメジアン(中位数)に位置する銘柄よりも400 bps近く改善する可能性があります。また弊社の集計によれば、S&P500指数構成銘柄のおよそ25%が、AI導入による無視できない効果が第2四半期に得られていると述べており、1年前の14%より割合が大きくなっています。例の営業レバレッジが新たな原動力を得て生まれている格好です。 これはAI関連株の主導役のローテーションにも影響を及ぼします。次の値固めの局面では、半導体関連株とハイパースケーラーの両方で株価に下押し圧力が加わる恐れがありますが、私はそれでも、今後は半導体関連株がハイパースケーラーをアンダーパフォームすると考えています。半導体関連株はサイクルの初期に上昇する典型的なグループであるうえ、業績見通しの上方修正率はピークをすでに超えてしまっています。対照的にハイパースケーラーは中核事業のクオリティが高く、AIエージェントのアプリケーション層へのエクスポージャーも有しているうえ、AIを使った効率向上によるコスト削減能力がまだ過小評価されています。 S&P500 指数全体については、私は2つの変数に最も注目しています。それは金利と原油価格です。債券市場はFRBの利上げもあり得ると考えて、相場に織り込みつつありますが、私は「金利据え置き」を引き続き基本シナリオにしています。利上げに踏み切ればタカ派的なサプライズとなるでしょうし、リスクのある手段だと言えましょう。ただ、仮に実行されても、増益の勢いを保ったまま2026年を終えるというポジティブな展開を減速させるにとどまり、脱線させるには至らないだろうと私は考えています。 もうひとつのワイルドカードが原油です。原油価格の持続的な上昇は株価に織り込まれておらず、株式投資家にとっては、保有銘柄のクオリティをワンランク挙げる理由がひとつ増えるにすぎません。 まとめましょう。株式市場における物色範囲の拡大は終わっていませんが、その形と主導役には変化が見られます。弊社では、注目のポイントをサイクル初期のベータからサイクル中期のクオリティに移しています。市場が求めているのは成長だけでなく、その成長を耐久性のあるフリーキャッシュフローと利益率拡大に変換できる企業でもあるからです。 クオリティというファクターが浮上してきたのはここ1ヵ月のことです。今こそこれを取り入れるべきです。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    選別色の強まる株式市場
  6. Jul 24

    市場の歴史をたどる旅

    過去から得られる手がかりをもとに、弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、規制緩和からボラティリティに至るまで、繰り返し現れるテーマが市場をどのように形づくっているのか、そしてなぜどのサイクルもそれぞれ異なる道筋をたどるのかを考察します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社債券リサーチ・グローバル責任者のアンドリュー・シーツが、オデュッセウスの物語から投資について何を学べるのかをお話しします。 このエピソードは7月24日にロンドンにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 多くの皆さんと同じように、私も今週、オデュッセイアを観ました。この物語が、作られてから2,700年以上たった今も人々を惹きつけていることは、普遍的なテーマが存在することを思い起こさせます。誇り、機転、決意、自制、あるいはその欠如といったものは、古代ギリシャの晩餐の場でも重要であり、今日投資をしているすべての人にも響くものです。 ただし、過去から教訓を引き出すことは、難しい面もあります。 金融市場の歴史はそれほど長いわけではありませんし、市場にはあまりに多くの変数があるため、同じ組み合わせが二度そろうことはありません。どの歴史的な時期が現在を最もよく表しているのかを判断する際には、常にある程度の判断や技巧、あえて言えばストーリーテリングが関わってきます。 こうした留意点はあるものの、弊社は年初見通しで、1997年から1998年、そして2005年から2006年が、現在の環境を考えるうえで最も有用なひな型の一部だと指摘してきました。 この見方は今も変わっていません。 これらの時期は、サイクルにはまだ先があり、株式がクレジットをアウトパフォームし、ボラティリティを保有することが望ましいことを示唆しています。この2つの時期はいずれも、企業活動が大きく活発化したことによって特徴づけられました。まさに現在見られているのも、そうした動きです。 弊社は、米国の設備投資が2026年に23%、2027年に26%増加すると予想しています。この支出の最大のけん引役はAIですが、エネルギーインフラの整備も一役買っています。また、企業の設備投資増加は、とりわけアジアを中心に、世界的なテーマであることは確かです。 次にM&Aです。これも過去のこの2つの時期に大きく増加しました。つい2024年初めの時点では、世界のM&A件数は異例なほど低迷しており、経済規模で調整すると30年以上の中でも特に低い水準にありました。しかし、現在はもはやそうではありません。さらに足元では、M&Aは前年に比べて64%増加しています。 重要な現在のマクロ経済指標も、過去のこの2つの時期にいくらか似ています。現在の米国コアPCEインフレ率、失業率、10年国債利回りの水準は、1997年、1998年、2005年、2006年に見られた平均にかなり近いものです。 そして米国の2年債と10年債の利回り格差、いわゆる2s10s(ツーテンズ)のイールドカーブについて言えば、当時はおおむねフラット化しており、現在もおおむねフラット化しています。 3つ目の類似点は、やや分かりにくいかもしれませんが、同じく重要な規制緩和です。1997年と1998年、そして2005年から2006年には、いずれも大きな金融規制緩和が見られました。そして今、再びそれが見られています。バーゼル・エンドゲームから、NAICのリスクウェイト、ソルベンシーIIの変更、欧州や韓国などでの貯蓄改革に至るまで、現在の流れは明確に規制緩和の方向にあるように見えます。 さらに単純に言えば、1997年と1998年、そして2005年から2006年は、現在の環境について私がよく耳にする2つの見方に対して、興味深いブックエンド型ストーリー構成を示しています。 1990年代後半はどうだったでしょうか。当時は、インターネットという変革的な新技術をめぐる期待の高まりと、より生産性の高い未来への展望によって特徴づけられていました。どこか聞き覚えがありませんか。@ では、2000年代半ばはどうだったでしょうか。当時は、非常に不均衡な経済と消費者ストレスの高まりによって特徴づけられていましたが、それでも、台頭する市場勢力からの一見尽きることのない投資需要に支えられて成長が続いていました。当時のその勢力は新興国市場でした。現在はAIです。これもまた、どこか似ています。 これらの時期が手掛かりになるのであれば、サイクルはおそらくまだ先があり、企業の積極姿勢はクレジットよりも株式に有利に働くはずです。 しかし、オデュッセウスの試練から何かを学ぶとすれば、その旅路では途中で多くの予想外の出来事が起こり得る、ということです。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    市場の歴史をたどる旅
  7. Jul 23

    データセンターを巡る政治的攻防

    政治的な反発が強まっているにもかかわらず、データセンターへの投資は減速していません。アリアナ・サルバトーレが、供給面の制約がむしろAI関連の設備投資を加速させる可能性がある理由を説明します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社米国公共政策リサーチ責任者のアリアナ・サルバトーレが、政治的な反発が一部で強まっているにもかかわらず、弊社がAI関連の設備投資は引き続き堅調になると見ている理由についてお話しします。 このエピソードは7月23日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 データセンターへの反発は、弊社が以前から追ってきたテーマですが、これが一段と大きくなっていることは、リスナーの皆さんにとって驚きではないでしょう。ただ、2026年に入ってから、その動きは大きく加速しています。弊社が追跡しているデータによると、2025年には推定1,560億ドル相当のプロジェクトが中止または延期されました。そして今年は第1四半期だけで、ほぼ同じ規模に達しています。 反対の声は、いくつかの方面から上がっています。 地域社会からは、電気料金の上昇、水利用に関する環境負荷、大規模建設が地域の生活の質に及ぼす影響について懸念が示されています。一方で、こうした反発は超党派の議員からも出ています。民主党、共和党双方の議員が所属する州議会では、この種の政策が進められています。 同時に、弊社は今年だけでAI関連の設備投資が1兆ドル弱に達すると予想しており、これはマクロ経済の成長見通しにおいて、ますます重要な要素になっていると考えています。 では、この一見矛盾する状況を、どのように整理すればよいのでしょうか。 第一に、そして最も重要な点として、弊社はこれを需要側のリスクというより、主に供給側のリスクだと見ています。こうした反発によって、コンピューティング需要の予測が大きく引き下げられるとは考えていません。むしろ、許認可の遅れ、送電網への接続制約、地域社会からの反対といった要因を通じて、その需要と、業界が新たな供給能力を稼働させる力とのギャップが拡大する可能性があります。 こうした政治的環境やインフラ環境がより難しくなっているにもかかわらず、ブライアン・ノワック率いる弊社のインターネット・チームは、AI関連の設備投資について引き続き前向きな見方を維持しています。ネオクラウド・プロバイダーを含むAI関連設備投資全体について、弊社のより広範なテーマ別推計は2026年におよそ8,700億ドルとなっており、ここからさらに上振れするリスクもあると見ています。 では、データセンター建設を取り巻く環境が厳しさを増す中で、なぜ投資はなお増えているのでしょうか。理由はいくつかあります。 第一に、AIエコシステムでは依然としてコンピューティング能力が不足しています。投資の緊急性は低下していません。実際、2028年の大統領選挙を前に社会的な反対や政治的不確実性が高まることで、ハイパースケーラーがプロジェクトを前倒しで開始する動きが促されている可能性があります。これは、弊社のクレジット・ストラテジストが、ここで想定し得るシナリオとして示しているものです。政治リスクや実行リスクがさらに大きくなる前に、需要を前倒しするということです。 第二に、データセンター建設にかかる期間が長期化しています。着工から稼働開始まで、現在ではプロジェクトに3年、あるいはそれ以上かかることもあります。そのため、政治的な反発が強くても、企業には将来の供給能力をかなり早い段階から開発し始める強い動機があります。 そして第三に、基調的な需要のシグナルは鈍化していません。弊社のアナリストがコンピューティング需要の重要な代替指標と見ている世界の週間トークン利用量は、1月初め以降増加しています。今年を通じて上昇しており、現在も増え続けています。 つまり、要するに反発は現実のものですが、それはデータセンターの建設拡大を止めるというより、その進め方を変えているように見えます。 そのため、弊社の基本シナリオは、条件付きで建設拡大が続くというものです。プロジェクトはより厳しい審査を受ける可能性が高く、遅延は長期化し、環境への影響や地域社会への便益に関する要件も増えると考えています。 しかし最終的には、それでもプロジェクトは完了にこぎ着けると弊社は見ています。その結果、コストが上昇する可能性があり、開発期間が長くなる可能性があり、また既存の最大規模のデータセンター市場から離れた地域へ、プロジェクトがより広く分散する可能性もあります。 また、オンサイト発電やビハインド・ザ・メーター型の発電への移行が加速する可能性もあります。事業者が長期化する送電網接続プロセスへの依存を減らす方法を模索する中で、燃料電池、タービン、エネルギー貯蔵の重要性は一段と高まっています。そして、こうしたソリューションを前面に打ち出せる企業にとっては、これが追い風となる可能性があります。 一方、弊社の米国株式戦略チームは、今後数カ月について、半導体よりもハイパースケーラーを相対的に選好する見方を維持しています。昨日、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストであるマイク・ウィルソンが説明したように、これは、設備投資規律に市場が再び注目していることを、ハイパースケーラーが織り込み始めた初期段階にあると、同チームが見ているためです。 以上を総合すると、データセンターに対する反発の高まりは、AIインフラ建設のペース、コスト、地理的分布にとって、正真正銘のリスクを意味していると弊社は見ています。 ただし繰り返しになりますが、これは需要だけの話ではなく、供給の話でもあります。そして、やや逆説的ではありますが、こうした制約によって生じる希少性と不確実性は、設備投資を減らすのではなく、むしろ前倒しさせる結果になる可能性があります。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    データセンターを巡る政治的攻防
  8. Jul 22

    より多くの銘柄が強気相場に参加

    弊社、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、市場のけん引役が半導体以外にも広がっている理由と、目先のボラティリティにもかかわらず投資家がどこに投資機会を見いだせるのかについて解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードでは、弊社最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、最近の市場のボラティリティが道理にかなっている理由について説明します。 このエピソードは7月22日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 相場の広がりを捉える取引が戻ってきており、その勢いは増しています。弊社は先週、この見方を示しました。重要なのは、この相場の広がりが今後も続く可能性が高い明確な理由があるという点です。市場の中でも特に資金が集中していた分野の一つである半導体が、モメンタムを失っているのです。 これまでもお話ししてきたように、これはAIサイクルが終わったという判断ではありません。ただ、株価は成長率の変化に反応するものであり、期待が高まりすぎて、もはや上振れ余地を見込めない水準に達することがよくあります。 業績修正は行き過ぎた水準に達する傾向があり、その後、資金は、ファンダメンタルズは改善しているものの投資家のポジションがまだ軽い、次の投資先を探し始めます。これは、貴金属やエネルギー株など、今年前半に他の主導的なグループで起きたことと何ら変わりません。 思い出していただきたいのですが、弊社が最初に相場の広がりの見立てを示したのは、11月の見通しの中ででした。弊社の見方では、2025年4月に循環的な景気後退が終わった後、経済は新たな拡大局面に入っていました。市場はこの流れを織り込み始めていましたが、イラン紛争によってその動きが中断されました。原油価格が上昇し、FRBに対する期待がよりタカ派的な方向に変化する中で、投資家はAI関連取引、特に半導体に再び集中しました。 6月に、私はこうした業績修正がピークに近づいている可能性が高いと指摘しました。ハイパースケール企業の株価が出遅れ始めたことが、最初の兆しでした。半導体は最終的にハイパースケーラーの支出に依存しているため、こうした乖離は通常、長くは続きません。これは設備投資の拡大が終わるという意味ではありません。ただし、支出する側は、キャッシュフロー低下に対する市場の懸念に対応するため、やみくもな熱狂から、より規律ある局面へ移行しつつあるのかもしれません。 弊社はこれまでにも、このパターンを見てきました。ChatGPTが登場して以降、ハイパースケーラー株と半導体株の間で、このような強弱の行き来が3回起きています。今回は4回目の調整であり、その間はハイパースケーラー株が半導体株をアウトパフォームする可能性があります。数週間前から、ハイパースケーラーは半導体を30%近くアウトパフォームしています。 もう一つの結果として、主要株価指数は目先、下落して推移する可能性があります。投資家が殺到している大型株の主導グループが巻き戻される局面では、その下で市場の内容が改善していても、指数は不安定に見えることがあります。 ここが重要な違いです。指数は苦戦するかもしれませんが、相場の広がりはなお機能し得ます。S&P500が年末までに8000へと向かう前に、今後1カ月の間に一時7000まで下落しても驚くべきではありません。この弱さを利用して、株式ポジションを積み増す局面と考えています。 弊社は引き続き、一般消費財、運輸、バイオテクノロジーを選好しています。 一般消費財は、相場の広がりという見方を表す、比較的分かりやすい投資対象の一つであり続けています。家計の支出シェアはサービスから財へ戻りつつあり、財の価格設定は改善し、業績修正も強まっています。運輸は、輸送量が安定し、価格設定が改善する中で、業績修正の改善が続いています。バイオテクノロジーは、金利低下の恩恵を受けやすい分野の中でもより魅力的なものの一つです。特に、私が考えるように政策期待がタカ派的すぎるのであれば、なおさらです。 最後の点に関連して、FRBを巡る環境は重要です。6月のFOMC会合では、フォワードガイダンスは限定的になり、インフレの道筋が政策を左右することが示されました。先週発表されたインフレ指標が予想を下回ったことで、FRBは利上げではなく据え置きを続けられるはずです。この見方を債券市場が完全に織り込むには、さらにいくつかのデータが必要かもしれません。 結論として、相場の広がりは進み始めていますが、混み合ったモメンタム取引の巻き戻しと同時に起きているため、心地よく感じられないかもしれません。そして、その巻き戻しのプロセスはまだ終わっていない可能性があります。市場の主導権が移り変わる時には、通常このような展開になります。 春のように、出だしは波乱含みでも、最終的には落ち着いた展開になることが多いでしょう。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。

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