市場の風を読む

モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。

  1. 北米貿易の将来

    6D AGO

    北米貿易の将来

    米国・カナダ・メキシコ協定(USMCA)の見直しを前に、弊社公共政策リサーチ責任者のアリアナ・サルバトーレが、2025年に示した「より深い貿易統合」という見通しが今も有効かどうかについて解説します。 このエピソードを英語で聴く。   トランスクリプト    「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は、弊社公共政策リサーチ責任者、アリアナ・サルバトーレが、間もなく予定されているUSMCAの見直しについて、そして去年昨年から環境がどのように変化したのかについて、弊社の見通しを解説します。 このエピソードは2月11日 にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 去年昨年秋にお伝えしたとおり、米国・メキシコ・カナダ協定、いわゆるUSMCAは、2026年に初めての義務的な見直しを迎えます。当時、弊社はリスクがやや上振れ方向に傾いていると指摘しました。協定に組み込まれている構造的なセーフガードが、下振れリスクを抑え、大半のシナリオを北米における貿易統合を維持し、時間をかけて深化させる方向へと導くと考えているためです。 この枠組みは、現在も概ね維持されていると考えています。ただし、ここ数か月のいくつかの動きを踏まえると、より深い統合が実現するタイミングや構造は、当初の想定とはやや異なる可能性が出てきました。交渉担当者が個別の問題を解消し、限定的なアップデートを行うというシナリオは依然として想定していますが、AIに関する新たな章や、重要鉱物、中国の対メキシコ投資に対するより明確な歯止めといった、より野心的な幾つかの政策目標については、2026年半ばの期限までに正式な形で盛り込むことは、以前より難しくなっていると見ています。 では、去年昨年示した弊社の基本ケースは、今どのような姿を保っているのでしょうか。 弊社は引き続き、協定自体は維持され、いくつかの未解決の争点、具体的には、自動車の原産地規則、労働分野の履行手続き、そして一部のデジタル貿易規定、が解決されるという結果を予想しています。 中国に関する論点についても、去年昨年の見方は変わっていません。 メキシコは、迂回輸出のリスクを低減し、米国の貿易優先事項との整合性を高めるために、段階的な対応を進めると見ています。ただし、2026年半ばまでに、完全に制度化された執行メカニズムが導入される可能性は低いでしょう。なお、USMCAには10年ごとのエスケープ条項があり、少なくとも2036年までは協定が有効であるため、破壊的な貿易ショックが起きる確率は、構造的にかなり低いと考えられます。 変わりつつあるのは、進む方向そのものではなく、スピードと形式です。 より包括的な合意が最終的に実現する可能性はありますが、その時期は先送りされるか、あるいはUSMCA本文の改定ではなく、補足的な協定という形を取るかもしれません。当然ながら、その場合は、議会の裏付けがないことによる執行リスクが伴います。 弊社では、正式な見直しは2026年半ば頃にまとまると引き続き予想していますが、より深い制度的な統合が、さらに先の時期にずれ込む、あるいは並行的な枠組みを通じて進む可能性は、以前より高まっています。また、期限が近づく中で、3か国すべてが交渉期間の延長を決定し、不透明感がさらに長引くシナリオも考えられます。 では、こうした動きはマクロ経済や市場にとって、どのような意味を持つのでしょうか。 メキシコにとっては、引き続き、米国への無関税アクセスを維持することが極めて重要です。基本ケースでは、自動車や電子機器を中心とした製造業の統合が続くと見ています。ただし、政策当局が議論してきたような、より戦略的な新章が盛り込まれない場合、メキシコは「安定してはいるものの、本格的なニアショアリング加速には至らない」という、これまでと同様の立ち位置にとどまることになります。これは去年昨年の弊社見通しと整合的ですが、短期的には、急速なより深い制度的統合というシナリオに対するリスクが、一段と明確になってきたと考えています。 為替市場については、不確実性が低下することによる恩恵は見込まれるものの、その効果は緩やかなものになるでしょう。 原協定に目に見える形で新たな要素が加わらない場合、短期的な市場インパクトは限定的になると見ています。 カナダについても、影響は一長一短です。見直しを巡る短期的な変動リスクは、市場で十分に織り込まれていない可能性がありますが、限定的な合意は中期的に米ドル/カナダドルの下落圧力につながると考えています。 経済全体については、弊社は去年昨年、中国からのサプライチェーン分散が完全に進まなくても、この見直しは「北米を一体的な製造拠点として強化するものになる」と指摘しました。この点については、現在も基本的に変わっていないと考えています。ただし、より野心的な統合ルートの一部は、より先の時期に持ち越されるか、もしくはUSMCAの正式な章立てではなく、別の枠組みを通じて実現される可能性がある、という新たなニュアンスが加わります。 結論として、弊社の基本ケースは引き続き、「不確実性を抑えつつ、北米貿易の中核的な恩恵を維持し、主要な資産クラスの成長を支える、現実的で慎重な結果」です。 一方で、一部の戦略的な機会は当面棚上げされ、より深い連携は先送りされ、やや長い時間軸で進む、あるいはより柔軟な枠組みを通じて進むことになる可能性が高まっていると見ています。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    8 min
  2. 中南米の3つの変化がグローバル・ポートフォリオを再編しうる理由

    FEB 9

    中南米の3つの変化がグローバル・ポートフォリオを再編しうる理由

    めったに見られない「春」が中南米に近づいている可能性がある――弊社中南米チーフ・株式ストラテジストのニコライ・リップマンはそう指摘しています。地政学、ピークに達した金利、そして選挙という3つの要素がそろい、投資主導の成長サイクルが始まる環境を整え、株価に大幅な上昇余地をもたらすというのがその理由です。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は弊社の中南米チーフ・株式ストラテジストのニコライ・リップマンが、投資家が中南米に注目すべきである理由についてお話しします。 このエピソードは2月9日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 弊社リサーチのコアとなる投資テーマは実にシンプルです。中南米地域は現在「トリフェクタ」つまり、3つの重要な変化に直面しており、投資家がこれまで慣れ親しんだ同地域の投資ストーリーとは大きく異なる局面を示唆しているとみています。グローバルな人工知能(AI)設備投資サイクルを背景に、中南米においても投資サイクルもしくは設備投資サイクルに移行し、従来の消費サイクルから完全に逸脱するサイクルに、同地域が向かう可能性があると弊社はみています。  現在の中南米地域のGDPは、およそ6兆ドルあります。しかし、世界株式の主要ベンチマークであるMSCIオールカントリー・ワールド株式指数における中南米株式の割合はおよそ訳0.80%にすぎません。率直に言って、これではこの広大な地域を投資家が見逃してしまうのも無理はありません。しかし、3つの主な要因のおかげでこの状況が変わりつつあります。 第1の要因は、多極化がますます進むこの世界での地政学の変化です。これについては、貿易のルール、安全保障における優先事項、そして描き換えられつつあるサプライチェーンに見られるとおりです。資本や投資も、こうしたルール変更に伴って動いていくことがよくあります。ご承知のように、中南米における米国の優先事項は明らかに変化してきましたし、それに伴って中南米諸国の優先事項やインセンティブも変化しています。 第2に、中南米の金利はピークに達している可能性が高く、2026年に低下に転じる公算があります。借り入れコストが低下すれば、工場、インフラ、AI、その他あらゆる種類の新規投資のための資金調達が容易になり、実現可能性が高まります。さらに言えば、中南米地域ではほとんどすべての国において国内資本市場の規模と成長に大きな変化が見受けられます。これは改革の成果であり、以前と異なる新しいサイクルだとみて間違いありません。 そして最後に、選挙が中南米地域全体で政策の重要な変化につながる可能性があります。コロンビアとブラジルの選挙が近づくなかで、財政責任重視に向かう兆候が多くの国で見られるのです。すでにアルゼンチン、チリ、メキシコでは、新しい政策立案者が従来のポピュリズムをやめた様子が見受けられます。 したがって地政学、金利、各国の選挙の3要素を合わせると、「中南米の春」が来るかもしれないという弊社のテーマの核心にたどり着きます。現状と決別して財政再建、金融緩和、そして構造改革へと舵を切るかもしれない、ということです。そして弊社では、この動きは投資家の信認回復と民間資本の誘致につながる可能性があると考えています。弊社の「春」シナリオでは、経済成長率がブラジルとメキシコで6%、アルゼンチンで7%にそれぞれ上昇し、チリは4%にとどまる、そして金利は上昇ではなく低下するとみています。中南米地域の再評価を後押しするシナリオです。 そして、多くの投資家が見逃していると思われる強力な要因がもうひとつあります。それは、すでに指摘した過去のサイクルとの大きな違いは、中南米諸国の国内貯蓄です。中南米の現地のポートフォリオは今日(こんにち)はるかに大きくなっており、資本市場の懐も深くなっているうえ、そのポートフォリオの中身は債券に大きく偏っています。内訳をみますと、75%が債券で25%が株式です。ブラジルでは債券の割合がさらに大きく、90~95%にも達しています。もしこの半分でも株式にシフトすれば、現地の資本市場の厚みをさらに増しつつ、下値を底堅くすることにもなり得るでしょう。バリュエーションが下支えされるのです。地域全体で言うなら、このような大変化の影響を最も大きく受けるセクターは金融サービス、エネルギー、公益、ヘルスケアとなるでしょう。 中南米はこれまで、多くのことが悪化しうる地域とみられてきたように思われます。そこで弊社はその逆の問いを立てました。好転しうることは何か、と考えてみたのです。もし前述の3つの要素、すなわち地政学、金利のピーク、選挙の3点によってこれまでよりも投資を奨励する政策や設備投資サイクルが可能になれば、中南米地域がコモディティと労働力の供給元というこれまでのイメージから、投資主導の色彩がこれまでよりもはるかに強い成長エンジンというイメージに転じることもあり得るでしょう。 こうしたことから弊社では、投資家は今すぐ中南米地域に目を向けるべきだ、「春爛漫」になるまで待っていてはいけないと考えています。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    7 min
  3. 新しいFRB議長、新しい市場シグナル

    FEB 2

    新しいFRB議長、新しい市場シグナル

    弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、ケビン・ウォーシュ氏の次期FRB議長指名が市場にどのような影響を与えるかについてお話しします。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は、弊社の 最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、ケビン・ウォーシュ氏の次期FRB議長への指名がもたらす影響についてお話しします。 このエピソードは2月2日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 1月30日にトランプ大統領は、ケビン・ウォーシュ氏を次期FRB議長に正式に指名しました。ウォーシュ氏について市場で語られている評価は比較的分かりやすく、FRBのバランスシート規模に対してタカ派寄りであり、金利については現在の指導部より柔軟で、無制限の流動性供給にはあまり積極的ではない、とみられています。こうした人物像は概ね正しいのですが、なぜ今ウォーシュ氏なのか、今回の指名でどのような問題を解決しようとしているのか、というより重要な問いには答えていません。 私の見方では、その答えは政治ではなく、市場の動きから始まります。ここ数か月、貴金属価格は放物線を描くように上昇し、同時にドル安が続いてきました。現政権は、特に経済全体のリバランス戦略の一環として、ドル安は本質的に悪いことではないと明確に述べていますが、「管理された下落」と「無秩序な下落」には大きな違いがあります。これがなぜこれほど重要なのかを理解するには、視野を広げて状況を俯瞰する必要があります。現政権は、20年以上にわたり積み上がってきた巨額の債務負担を、最終的には経済成長によって乗り越えるという同じ目標のもと、3つの側面から米国経済のリバランスを同時に進めようとしています。現時点で歳出削減だけで対応するのは、経済的にも政治的にも現実的ではありません。名目成長こそが、唯一現実的な道筋なのです。 現在の戦略は、より供給サイドに重きを置いています。すなわち、関税やドル安によって貿易構造を見直し、過度の消費から投資主導の経済へと転換し、移民政策の実施や規制緩和を通じて格差に対応するというものです。狙いは、政府ではなく企業が資本配分の判断を行える環境を整えるとともに、給付ではなく賃金を通じて所得を押し上げていくことにあります。もしこれが機能すれば、名目成長が加速し、生産性向上に支えられたより健全な実質成長とのバランスが実現していくはずです。 市場は、ある程度すでにこのストーリーを織り込み始めています。昨春以降、景気敏感株がアウトパフォームし、市場の広がりが改善し、市場の牽引役は前のサイクルを支配していたメガキャップ銘柄から交代し始めています。中小型株も再び存在感を見せています。これはまさに、私の中心シナリオである「よりホットだが短い」景気拡大の中盤で見られる典型的な動きです。 同時に、金価格の急騰は、別の動きが起きていることを示しています。貴金属がこれほど動くときは、投資家が「最終局面」に疑問を抱き始めているサインです。 そこで登場するのが、ケビン・ウォーシュ氏です。今回の指名には、FRBのバランスシートに対する信認を回復し、こうした懐疑の勢いを和らげる狙いがあると考えられます。金曜日の値動きからすると、その狙いは奏功しました。金と銀は急落し、ドルは小幅に上昇し、株式と金利は比較的安定していました。この組み合わせは時間稼ぎを可能にします。そしてこの戦略が機能するには、まさにその「時間」が不可欠なのです。 市場がこのストーリーを信じているかを測る最良の方法の一つは、S&P500と金価格の比率を見ることです。これは、生産的な成長への信認を測るシンプルで強力な指標です。直近の比率の急落は、主に金価格の上昇によるものでしたが、金曜日の急反転は、記録的な下落幅となった金価格の低下が主因でした。 とはいえ、懐疑的な見方が消えたわけではありません。むしろ、政権側が市場のシグナルに注意を払い、信認回復の必要性を理解していることを示しています。もし比率の回復が続くとすれば、まずは金価格の下落と流動性引き締め期待の高まりが先行し、その後、生産性向上に牽引された企業利益の成長加速が続く可能性が高いでしょう。この過程では、株式を含む他のリスク資産が短期的に調整リスクにさらされることも考えられます。 結論として、現在の「経済を過熱させる」政策は、従来の政策ミックスよりも持続的な成長を実現できる可能性が高いと考えています。ただし、その道のりはスムーズではなく、市場の信認は行きつ戻りつしながら進んでいくでしょう。市場の反応の仕方、特に金価格、ドル、設備投資動向といったシグナルに注目すれば、この戦略が最終的に成功するかどうかが分かるはずです。私はこれこそが、短期的には不安定さがあっても、2026年に向けて強気のスタンスを維持できる最善のアプローチと考えています。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    8 min
  4. 市場の好調が続く公算が大きいのはなぜか

    JAN 30

    市場の好調が続く公算が大きいのはなぜか

    一部の投資家の懸念にもかかわらず、バリュエーションはしばらく予想以上に高止まりしそうだ――市場の主要な指標がそう示唆していることについて、弊社債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが解説します。  このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが、変化が連日押し寄せてくるように感じられるこの世界での、安定への重要な道しるべについてお話しします。 このエピソードは1月30日 にロンドンにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 モルガン・スタンレー・リサーチでは、2026年には財政、金融、規制の3政策の緩和がさらなるリスクテイク、企業活動、アニマル・スピリッツを下支えするとの見方を中核的なテーマのひとつに位置付けています。たしかにバリュエーションはすでに高いのですが、世界の非常に多くの地域で多くの力が、景気の刺激という全く同じ方向にはたらいていることから、バリュエーションは想定よりも高い水準に、かつ想定よりも長い間とどまる可能性があります。 米連邦準備制度理事会(FRB)、イングランド銀行、欧州中央銀行(ECB)そして日本銀行は、政策金利を市場の想定よりも大幅に下げるか、市場の想定よりも小幅な引き上げにとどめるだろうと弊社では考えています。また米国、ドイツ、中国そして日本の政府が歳出を増やすため、財政政策も景気を刺激するスタンスが続くとみています。そして、私がこのポッドキャストで先日お話ししましたように、頻繁に変わるわけではありませんが規制がこの方程式には欠かせない項目でが 、規制がさらにリスクを取ることを後押しする方向に向かっています。 もちろん、景気を刺激する要素が多く揃い過ぎていたら、帆を何枚も広げたボートのように、制御不能になるかもしれないという懸念はあります。地政学の逆風が渦を巻き、金の価格がこの1年で2倍になっただけに、政府も、そして財政・金融・規制の3政策も変化が大きすぎるのではないかと思っている投資家は少なくありません。 こうした懸念を具体的に表現すればどうなるでしょうか。たとえば、私が投資家にお話しするときには、次のように言い換えられると思っています――私たちがいま目にしているのは、将来のインフレ率の予想の急上昇なのか? 国債のボラティリティは今後大きくなるのか? 米ドルのバリュエーションはフェアバリューから劇的に乖離してしまったのか? クレジット市場にはストレスの初期の兆候が現れているのではないか? 以上の疑問に市場でのプライシングに基づいてお答えするなら、今のところ、答えはいずれも「ノー」です。まず、向こう10年間の消費者物価指数(CPI)上昇率の市場予想は2.4%前後です。実際、これは2024年や2023年のそれとさほど変わりありません。次に、向こう1年間の米国金利の予想ボラティリティは、今年1月1日時点でのそれよりも低下しています。米ドルについては、いろいろな報道が飛び交っていますが、ブルームバーグのデータに基づく購買力平価に基づいて言うなら、おおむねフェアバリューに当たる水準で取引されています。そして、リスクの重要な先行指標だと長らくみなされているクレジット市場は、多くの地域で非常に好調であり、歴史的と言えるほどタイトなスプレッドがまだ続いているのです。 米国の外交政策の不確実性、日本の金利の大きな動き、そしてそれ以上に大きな金価格の動き。これらはすべて、マクロ経済環境が不安定になるかもしれないという投資家の懸念を強めてきました。無理もないと思います。ですが今のところ、市場に基づく安定性の主要指標の多くはまだ持ちこたえていると弊社ではみています。 以上のお話しは事実ですが、ファンダメンタルズについての見方、具体的には企業の利益成長についての弊社の前向きな見方は、相場を下支えし続ける可能性があると弊社では考えています。ただし、これらの道しるべに大きな変化が生じれば、話が 変わってくる恐れがあります。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    6 min
  5. 米政府閉鎖の再発リスクとその影響について

    JAN 28

    米政府閉鎖の再発リスクとその影響について

    弊社グローバルリサーチ副責任者のマイケル・ゼザスが、米国で新たな政府閉鎖が起きるリスクについて、投資家が注意すべき点と、過度に反応すべきでない理由を解説します。 このエピソードを英語で聴く。   トランスクリプト    「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日のエピソードは、弊社グローバルリサーチ副責任者のマイケル・ゼザスが、今週後半に米国政府が閉鎖される可能性について、投資家として何を心配すべきか、そして何を心配する必要はないのかをお話しします。 このエピソードは1月28日 にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 ここ数週間、投資家の皆さまは、さまざまな政策リスクが市場に与える影響を考える必要がありました。たとえば、ベネズエラでの軍事行動による原油供給や新興国市場への影響、イランでの軍事行動の可能性、さらにはグリーンランドをめぐる米欧関係の分断リスクなどです。 それと比べると、今回の米政府閉鎖の可能性は、やや小さな問題のように思えるかもしれません。しかし、優れた投資家はすべてのリスクをしっかり管理します。そこで、この問題を整理していきましょう。 現在、上院では予算をめぐる交渉が続いており、民主党は最近の出来事を受けて、移民取締りの運用方法について、ルールの厳格化と監督強化を求めています。共和党側も一定の歩み寄りを示してはいるものの、最大の制約はスケジュールです。下院は来週初めまで休会しているため、たとえ上院が今週中に採決を行っても下院が対応できず、一時的に政府資金が途切れる可能性があります。そのため、「今週末に短期間の政府閉鎖が起き、下院が再開した後に短いつなぎ予算が成立する」という展開は十分にあり得ます。これは、どちらの政党も閉鎖を望んでいないというよりは、戦略について完全に合意できていないうえ、時間が不足していることが理由です。 もちろん、ひとたび閉鎖が起きると、長引くリスクもあります。しかし、弊社の基本シナリオでは、経済への影響は限定的になるとみています。歴史的に、政府閉鎖は、影響を受ける職員や政府請負業者にとって大きな負担となりますが、マクロ全体への影響は比較的軽く、また元に戻りやすい傾向があります。政府支出の多くは後から執行されますし、成長率への一時的な悪影響も、予算が復活すれば比較的早く解消されるためです。経験則では、「全面閉鎖の場合、1週間続くごとに、四半期ベースのGDP成長率を年率換算で 0.1ポイント押し下げる」程度とされています。そして、今回はすでに複数の歳出法案が可決済みであるため、想定されるのは「部分的な閉鎖」です。その場合、影響はさらに小さくなります。 市場についても、反応は比較的穏やかになる可能性があります。政府閉鎖が企業収益やインフレ、またはFRBの見通しといった、資産のパフォーマンスを左右する重要な市場ドライバーを大きく変えることはほとんどありません。そのため市場は、こうしたノイズを受け流して、より本質的な材料に目を向ける姿勢が続くと考えられます。 最後に、政治状況についても触れておきます。ただし、多くの投資家が考える意味とは少し違う観点で重要です。今回の政府閉鎖リスクは、大統領および共和党の支持率低下につながる一連の動きの延長線上にあります。そのため、多くの投資家は「この状況が中間選挙にどう影響するのか、そして政策はどう変わるのか」と弊社に質問されます。 一見すると、こうした政治力学は、共和党が厳しい中間選挙を迎える可能性を示唆しているように見えるかもしれません。しかし、弊社としては、まだ確かな結論を出すには早すぎると考えています。そして仮に結論が出たとしても、それが市場にとって本当に重要かどうかは別の話です。 第一に、市場にとって最も重要な政策、たとえば貿易、規制、産業戦略、リショアリング、そして近年ではAI関連政策などは、議会ではなく大統領権限で進められているものが多い点です。つまり、短期的な政治の揺れでは、その方向性が変わりにくいのです。 第二に、去年 成立した法人の設備投資を促す税制優遇措置について、仮に議会で撤回の動きがあったとしても、大統領はほぼ確実に拒否権を行使するとみられます。 これらの政策は、2026年の経済見通しにとって重要な要素です。  総合すると、議会のスケジュールを原因とする今回の政府閉鎖の可能性は、注意して観察すべきリスクではありますが、過度に反応すべきものではありません。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    7 min
  6. 香港不動産市場の反転上昇

    JAN 27

    香港不動産市場の反転上昇

    弊社のアジア・ゲーミング・ロッジングおよび香港・インド・不動産リサーチ責任者プラヴィーン・チョウダリーが、ここおよそ約10年で初めて、香港の主要不動産セクターが同時に成長局面に入っている背景についてお話しします。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は、アジア・ゲーミング・ロッジングおよび香港・インド・不動産リサーチ責任者プラヴィーン・チョウダリーが登場します。世界の投資家が常に注目しながらも、十分に理解されていないことの多い 香港不動産市場 を取り上げます。 このエピソードは1月27日 に香港にて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 ニューヨーク、ロンドン、シンガポールの投資家が、なぜ香港の不動産動向を気にする必要があるのでしょうか。答えはシンプルです。香港は世界でもっともグローバルな影響を受けやすい不動産市場の一つであり、香港でサイクルが転換すると、アジア全体の流動性、資金フロー、そしてマクロ・センチメントの変化を映し出すだけでなく、時に先取りして示すことがあるためです。 そして現在、2018年以来初めて、香港不動産の主要3部門、すなわち住宅価格、香港中環(セントラル)のオフィス賃料、小売店舗市場が同時に上昇に向かっています。このそろっての上昇はほぼ10年ぶりのことです。  この変化を生み出している要因とは まず牽引役となっているのが住宅用不動産です。住宅価格は2018年から30%下落した後、ようやく底を打ち、2026年は力強い回復の年になりそうです。弊社では、2025年に5%上昇したあと、2026年には10%超の価格上昇を見込んでおり、2027年もさらに上昇すると考えています。この市場コンセンサスに反した見方を支えるのは、主に3つの要因です。 1つ目は政策です。2024年2月、香港政府は中国本土や海外の買い手にとって負担となっていた追加印紙税をすべて撤廃しました。印紙税とは不動産の購入時や売却時にかかる税金で、政府が需要を調整したり、税収を確保したりする主要な手段となっていました。この追加負担がなくなったことで、とくに中国本土の買い手にとっては、香港での不動産売買が格段にスムーズで、ペナルティのないものになりました。実際、撤廃後は中国本土の買い手による購入比率が全体の50%に達し、以前の10-20%から大きく跳ね上がっています。 では、なぜこの見通しがコンセンサスと異なるのでしょうか。一般的には、中国本土の住宅市場が弱いと香港の住宅価格は上がらないと考えられているためです。2025年中頃の市場コンセンサスでは、この回復はHIBOR(香港銀行間金利)の急低下に対する一時的な反応に過ぎないとの見方が大半でした。 しかし弊社は、需給のミスマッチ、賃料上昇と金利低下によるポジティブキャリー、そして中国と世界をつなぐ金融ハブとしての香港の役割がいまだ健在であることが主要な要因だと考えています。 2つ目に、需要の基礎的な部分が着実に強まってきています。香港の人口はコロナ期に減少しましたが、2025年前半には再び増加に転じ、750万人に達しました。 さらに、各種の「人材誘致スキーム」により2025年のビザ承認数は14万人と、コロナ前のおよそ約2倍に増えています。新規世帯の形成も長期平均を上回り、中国本土の買い手も非常に大きな購買力となっています。 3つ目の要因は、アフォーダビリティ(購入しやすさ)です。住宅価格は数年にわたって下落が続いた結果、家計にとっての「購入しやすさ」が長期平均まで戻りました。実際、価格と所得の比率は2011年頃の水準まで改善しています。ここに米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げの影響を受けた住宅ローン金利の低下が加わることで、抑制されていた需要が再び戻りつつあります。 さらに「資産効果」も見逃せません。2025年にはハンセン指数がおよそ約30%上昇し、株式市場の反発は歴史的に不動産購入に波及しやすい傾向があります。住宅市場の回復が加速する中、香港のオフィス市場や小売店舗市場にも新たな楽観ムードと活発な動きが広がっています。 つまり全体として、香港の不動産市場は単に「安定している」のではなく、「転換」しています。住宅価格の10%超の上昇、中環オフィス市場の持ち直し、小売店舗市場の環境改善、これらが同じ年にそろって起きており、これは2018年以来もっとも明確な好転シグナルです。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    7 min
  7. 2026年の相場を方向付ける4つの主要テーマ

    JAN 26

    2026年の相場を方向付ける4つの主要テーマ

    今年のカギとなる投資テーマは何なのか、それらは市場と経済にどう影響するのか。モルガン・スタンレーの考えを弊社テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者のスティーブン・バードが解説します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト   「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は弊社テーマ別リサーチおよびサステナビリティリサーチ・グローバル責任者のスティーブン・バードが、2026年の市場と経済の特徴を決める4つの主要なテーマについてお話しします。 このエピソードは1月26日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 さて、最近の市場のノイズやひっきりなしに生じる相場の変動にうんざりなさっていませんか。もしそうなら、 それはあなただけではありません。今日では、短期的な相場の変動をいかに無視するか、そして世界を本当の意味で変えているもっと大きなトレンドにいかに焦点を合わせるかを理解することが、投資家にとって最も高いハードルの一つになっています。 モルガン・スタンレー・リサーチでは以前から、市場について考察する際、特にボラティリティが極端な時期に考察する際に、テーマ分析を重視しています。テーマというレンズを1枚挟むとノイズを避けやすくなり、経済、産業、社会を作り変える構造的な力に注意を集中しやすくなるからです。実際、この見方はすでに成果を上げています。2025年には弊社のテーマ別株式カテゴリーがMSCI世界株価指数を平均で16%、S&P500種株価指数を同27%アウトパフォームしました。長期的な投資テーマはアルファを強力に押し上げうるという弊社の見方を、まさに裏付ける成績でした。 2026年の弊社の枠組みは4つのテーマを軸にしています。人工知能(AI)とテクノロジーの普及、エネルギーの未来、多極化世界、社会の変化という4つです。このうち3つは 去年昨年からの持越しですが、いずれも大きな変化を見せています。残る1つは、弊社の以前の考察を大きく拡張させたものです。 1つ目の「AIとテクノロジーの普及」はこれまで通り重要ですが、明らかに成熟・進展しています。 2025年にはAIにできることが急激に増えていることに注目が集まりましたが、2026年にはその性能が非線形的な改善を遂げていることと、AIにできることと現実世界での導入レベルとのギャップが拡大していることが強調されるようになっています。ここで重要なのは、ソフトウェアとハードウェアの効率が高まっているにもかかわらず、コンピューティング需要はその供給を大きく上回ってしまうと思われることです。AIを利用するケースが増え、その内容も複雑化するにつれて、インフラが――とりわけコンピューティング・パワーと呼ばれる処理能力が――決定的な足かせになってしまうのです。 2つ目はエネルギーの未来です。ここにきて新たに緊急性を帯びてきているテーマです。先進国のエネルギー需要は横ばいで推移すると長らく想定されてきましたが、足元では増加傾向に転じつつあります。AIインフラとデータセンターがその主な要因です。2025年に比べますと、このテーマは供給面の話から政策に注目する話へと広がりを見せています。エネルギー・コストの上昇は消費者の目にもますます明らかになっており、いわゆる「エネルギーの政治」という概念が浮上しています。政策立案者は、一つの施策を優先するならほかの施策を後回しにしなければならない「トレード・オフ」があるときでさえ、安くて頼りになるエネルギーの確保を優先するよう迫られています。また、電力網を不安定にしたり家計の負担を増やしたりせずに電力を確保する新しい戦略も登場しつつあります。 3つ目は多極化世界です。これも去年昨年のテーマをもとにしていますが、輪郭がより鮮明となっています。各国が安全保障、耐久力、自給自足などを重視するにつれ、グローバル化の崩壊が続いています。2025年以降は重要な投入財、たとえばエネルギー、原料、防衛力、先端技術などにアクセスできるかどうかが、競争上の優劣を決める傾向が鮮明になっています。特に、2025年のパフォーマンスが最も高かったテーマ別カテゴリーはこの多極化世界の影響を強く受けていました。地政学や産業の変化が市場での運用成果に直接つながることが浮き彫りにされた格好です。 そして、いま最も大きな変化が見られるのは4つ目の主要テーマです。弊社では「社会の変化」と呼んでいますが、これは「長寿」に関する以前の考察を拡張させたものです。この新しい枠組みでは、社会に影響を及ぼしているグローバルな力を幅広くとらえています。具体的には、AIに起因する労働の混乱とその後の展開、人口の高齢化、消費者のし好の変化、K字型経済、健康な老後を目指す取り組み、多くの地域でみられる厳しい人口動態などがあげられます。これらの変化は政府の政策、企業の戦略、そして経済成長にますます影響をもたらしており、そのインパクトは投資家の一般的な予想よりもはるかに多い産業に及んでいます。 重要なのは、お話ししたこれらのテーマが単独で機能するわけではないことです。AIはエネルギー需要を加速させます。エネルギー・コストは政治を動かし、政治はサプライ・チェーンや国家の優先順位に影響を与えます。そしてこれらのすべてが、雇用から消費パターンに至る社会の変化に直接つながっていくのです。テーマ別投資の威力はこれらの交点を、すなわち複数の力が意外な過程を経て互いに強めあうところを理解することにあるのです。 要約しますと、2026年の投資において最も重要なのは何かと問われたら、それは経済成長率の話だけで済むことではありません。重要なのは構造です。テクノロジー、エネルギー、地政学、そして社会はどのように変化するのか。それを理解することが、機会とリスクが本当はどこに向かっているのかを知る最も明快な方法かもしれません。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

    8 min
  8. 市場の規制緩和という追い風

    JAN 15

    市場の規制緩和という追い風

    米国政府による規制緩和の取り組みはどのような影響をもたらすのか。銀行のバランスシートから資産のバリュエーションに至るまで、弊社債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが展望します。 このエピソードを英語で聴く。 トランスクリプト  「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。 本日は債券リサーチ・グローバル責任者の アンドリュー・シーツが、緩和政策の中心テーマのひとつについて、そして米国モーゲージ債券市場の最新動向についてお話しします。 このエピソードは1月15日 にロンドンにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。 向こう1年間についての弊社の考察で重要なのは、金融政策と財政政策、そして規制政策の3つが同時に緩和されるという異例な展開になっていることです。このようなことは、通常なら起こりません。この種の支援策は、経済が今よりもはるかに厳しい状況に陥っているときにのみ講じられるのが普通です。しかも、弊社の予測によれば2028年末までに人工知能(AI)とデータセンター関連で3兆ドルを超える投資が行われるという、非常に大きな相場下支え要因があります。それと並行して3つの緩和政策が実行されていくのです。 このすそ野の広い緩和策はグローバルなテーマでもあります。日本では、財政がさらに拡張されるとの期待から株価が上昇しています。欧州では、ドイツが歳出を拡大し続けるとみられる一方、欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行は市場予想を上回る幅で政策金利を引き下げると思われます。 しかし、昨今よく見られるように、話の中心にいるのはやはり米国です。 弊社では、米国のコアインフレ率が目標水準を上回っていても、FRBは今年も利下げを続けると考えています。また、米国政府による歳出は歳入をおよそ 約1兆9000億ドル上回る見通しです。関税収入による調整があるものの 「大きく美しい一つの法案(OBBBA)」による減税が発効するためです。 しかし、私が今日注目したいのは、景気刺激策という3本脚の腰かけを支える3本目の脚です。おそらく、人々の関心を最も集めるのは金融政策と財政政策の緩和でしょうが、実は規制緩和という重要な政策レバーもこれら2つと同じ方向に入れられるのです。規制政策はわかりにくく、若干退屈な話題になりうることも否めません。しかし、金融市場がどのように機能するかを考えるときには、極めて重要になります。規制は、多くの種類の資産の買い手に刺激をもたらします。銀行・保険セクターという非常に重要なセクターの買い手にとっては、特にそうです。 まず、ある資産が魅力的に映るためにはどれほどの価格で売買される必要があるか、特定の市場参加者が保有できる(あるいは、できない)資産の量はどの程度か、といったことは、規制によってほぼ当然に決まることがあります。規制政策は世界金融危機の発生を受けて劇的に厳しくなりましたが、ここにきて緩和され始めています。弊社の米国銀行株アナリストによれば、金融規制にとって重要な一歩となる自己資本ルールの最終化が今年のうちに実施され、金融システム上重要な巨大金融機関(GSIB)のバランスシートに計5兆8000億ドル前後もの貸し出し余力が生じる見通しです。また12月半ばには、通貨監督庁(OCC)と連邦預金保険公社(FDIC)が、2013年に導入した貸付のガイドラインを撤回しました。このガイドラインのために、銀行はこれまで、比較的多額の債務を抱える企業への貸し付けをあきらめてきました。 そしてつい先週には米国の現政権が米国のエージェンシー MBS、すなわちファニーメイとフレディマックが2000億ドルのモーゲージ債を購入してバランスシートで保有すると発表しました。この重要な市場で急激にスプレッドを縮小する大きな動きだと言えます。このように、投資家にとっては読み取るべきポイントがいくつかあると弊社では考えます。金融、財政、そして規制という3つの分野で同時に緩和政策が講じられれば、過熱していてバリュエーションが割高になっているかもしれない市場が下支えされることになります。 また、これら政府系MBSの具体的な見方については、私の同僚ジェイ・バコウと弊社モーゲージ戦略チームが、この変化は急速に相場に織り込まれていると考えています。そして、政府系MBSスプレッドに魅力があるという以前の見方から中立に転じています。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェアいただけますと幸いです。

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モルガン・スタンレーが配信する金融ポッドキャスト「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)では、マーケットに影響を与える様々な事象について当社のソートリーダーによる考察をお届けします。

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