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エンタメ・教育・ITの専門家が気になる話題を徹底解説!! 第1金曜日・・・映画解説・研究者 上妻祥浩さん 第2金曜日・・・ライブ配信ディレクター 斉場俊之さん 第3金曜日・・・熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗さん 第4・5金曜日・・・元RKKアナウンサー 宮脇利充さん ◆WEB https://rkk.jp/515news/ ◆メール 515@rkk.jp ★地上波ではRKKラジオ(熊本)FM91.4    AM1197で、毎週金曜日 午後5時15分から放送中。是非生放送でもお聴きください。

  1. ライブ配信ディレクターが振り返る“戦後最短”の衆院選――デジタル時代に再発見した「紙媒体」の価値

    6D AGO

    ライブ配信ディレクターが振り返る“戦後最短”の衆院選――デジタル時代に再発見した「紙媒体」の価値

    ――時間と情報をどう積み上げ、未来へつなぐか ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんが、戦後最短となった今回の衆院選を振り返ります。 デジタル戦略の専門家でありながら、斉場さんが今回最も注目したのは、意外にもアナログな「選挙公報」でした。 聞き手は、RKKの江上浩子です。 🔶 「生活の基盤」はどこへ? 争点の偏りへの違和感 今回の選挙戦、熊本県内(1区〜4区)では自民党が全議席を維持する結果となりました。 斉場さんは一有権者として、議論の「中身」に物足りなさを感じたと語ります。 「私は常に『地方の公共交通問題』を最大の関心事にしていますが、今回の争点は物価高対策と国のあり方(外交・外国人政策)に終始してしまいました 」 地方創生や、暮らしを支えるインフラの議論が置き去りにされたのではないか――。斉場さんは警鐘を鳴らします。 ▶ インフラの老朽化: 埼玉県八潮市の道路陥没事故のようなリスクへの備え ▶ 深刻な人手不足: 物流や福祉など、現場を支える人々への手当て ▶ 税のあり方: 社会保障財源である消費税を、安易に取り崩す議論だけで良いのか 「今困っている物価高への対策はもちろん必要ですが、将来のためにコツコツ積み上げるべき予算まで削り合っている状況には疑問を感じました 」 🔶 超短期決戦が招いた「SNS発信のトーンダウン」 ライブ配信のプロとして、各候補者のネット戦略にも注目していた斉場さん。しかし、16日間という超短期決戦の影響は顕著でした。 「準備時間が足りず、SNS発信がまばらになったり、Webサイトが更新されない候補者が目立ちました。結局、街頭で名前を連呼する旧来のスタイルが精一杯だったのでしょう」 そんな中、ネット戦略で対照的な動きを見せたのが新興勢力です。 ▶ チームみらい: 初の衆議院議席獲得。着実なネット戦略が成果に結びついた ▶ 参政党: 議席を伸ばしたものの、ネット上の熱量に対しては評価が分かれる形に 「平等なスタートラインに立ちにくい超短期決戦は、SNSでの深いメッセージ発信を難しくしてしまいました」 🔶 「同じ公約」への驚き――選挙公報から見える“個”の欠如 斉場さんが今回、最も驚いたと語るのが「選挙公報」です。 特に参政党の各区候補者が掲載した内容に、強い違和感を覚えたと言います。 「1区から4区までの候補者が、写真とプロフィール以外、全く同じ内容のものを掲載していました 。政党の考えが一致しているのは素晴らしいことですが、地域の実情をどう汲み取るかが抜け落ちています」 ▶ 地域代表としての言葉: 3区なら3区の、4区なら4区の課題に対する解決策を語るべき ▶ アウトプットの力: 限られた紙面で自分をどう出すかは、国会でどう力を発揮できるかに直結する 「『代議士』である以上、政党の考えを自分なりに噛み砕き、地域のためにどう反映させるのかを自分の言葉で見せて欲しかったですね」 🔶 フェイクと誹謗中傷の時代だからこそ「紙」が光る ITの最前線にいる斉場さんが、最後に強調したのは「紙媒体」の圧倒的な価値でした。 「ネットは便利ですが、フェイク動画や誹謗中傷合戦に溢れ、正しさの判断に疲れ果ててしまうのが正直なところです 」 それに対し、新聞に折り込まれる選挙公報などの紙媒体には、デジタルにはない3つの強みがあります。 不変性: 後から書き換えたり、消したりすることができない 検証可能性: 当選後、掲げた公約を守っているか証拠として残る 信頼の礎: 情報が移ろいやすい時代だからこそ、変わらない情報の「礎」が必要 🔶 次の世代へ「正しい選択」を渡すために 「日本も熊本も今、大きなうねりの中にいます。だからこそ浮足立つことなく、未来を着実に積み上げていく政治を期待したい。私たち有権者も、一時の感情ではなく残された情報をしっかり見極める力を持つべきです 」 デジタルの速さと、アナログの確かさ。 その両方を使い分けながら、当選した政治家たちがどう動くのかを監視し続けること。 それが、次の世代に誇れる社会を渡すための、私たちの責任だと感じさせるお話でした。 出演:ライブ配信ディレクター・斉場俊之さん/聞き手:江上浩子(RKK)

    13 min
  2. 2月は“絆と再生”の物語が豊作 上妻祥浩さんが語る注目の新作4本

    FEB 6

    2月は“絆と再生”の物語が豊作 上妻祥浩さんが語る注目の新作4本

    ――大切な人との「別れ」と、その先に見える「光」 映画解説研究者の上妻祥浩さんが、2月公開の注目作を語りました。 今月のテーマは「最期の時間、そして家族の形」。 大ヒット作『おくりびと』を彷彿とさせる感動作から、熊本・天草ロケが光るハリウッド作品まで、心に深く刻まれる4作品が揃いました。 聞き手は、RKKの江上浩子です。 🔶 最期の想いをつなぐ「ほどなく、お別れです」 (2月6日公開) 公式サイトはこちら👉 https://hodonaku-movie.toho.co.jp/ 浜辺美波さんと目黒蓮さんの豪華ダブル主演で贈る、葬儀の場を舞台にした物語。 亡くなった人の姿が見え、会話ができる特殊な能力を持つヒロインが、目黒さん演じる葬祭プランナーにスカウトされ、インターンとして働き始めます。 ▶ 事故や病で突然訪れる「死」にどう向き合うか ▶ 遺された家族が抱える“隠しごと”や“想い”をどう繋ぐか ▶ 自分自身や大切な人の「最期」を考える前向きなきっかけに 「葬儀というタブー視されがちな場を、寄り添いと再生のドラマとして描いています。特報映像だけでも胸に迫るものがあります」(上妻さん) 🔶 天草の美しい光景がスクリーンに「レンタル・ファミリー」 (2月27日公開) 公式サイトはこちら👉 https://www.searchlightpictures.jp/movies/rentalfamily 『ザ・ホエール』でアカデミー賞主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザー主演。 日本で暮らす落ち目の米俳優が、家族の代役を演じる「レンタル・ファミリー」の仕事を通じて、自身の孤独と向き合い成長していく物語です。 ▶ 全編日本ロケ。後半は熊本・天草が舞台 ▶ 柄本明さん演じる登場人物の出身地として天草が登場 ▶ 嘘から始まる「思いやりの連鎖」を描くヒューマンドラマ 「熊本ナンバーの軽トラに揺られるブレンダン・フレイザーと柄本明さんという、シュールながらも美しい光景は見逃せません。天草のありのままの自然が実に見事に撮られています」(上妻さん) 🔶 江戸の芝居小屋で真実を追う「木挽町のあだ討ち」 (2月27日公開) 公式サイトはこちら👉 https://kobikicho-movie.jp/ 直木賞受賞作の待望の映画化。柄本佑さんが、ある仇討ちの真相を探る侍を演じます。(父・柄本明さんの出演作と同日公開という「柄本ファミリー」の共演も見どころです) 。銀座の芝居小屋のそばで起きた、美談とされる「仇討ち」。しかしその裏には……。 ▶ ミステリー小説を読み進めるような、二転三転する鮮やかな展開 ▶ 堤真一さんをはじめとする豪華キャストが彩る江戸の情緒 ▶ 真実が明らかになった後の、爽やかで深い感動 「のらりくらりと話を聞きながら、核心に切り込む佑さんの演技が絶品。見終わった後の余韻が素晴らしい、極上のエンターテインメントです」(上妻さん) 🔶 葛藤と愛情のロードムービー「ぼくが生きている、ふたつの世界」 (2月27日 熊本市男女共同参画センターはあもにいにて上映) 詳しくはこちら👉 https://harmony-mimoza.org/hall_saiji/hall-other/202601171592 吉沢亮さんが主演を務め、耳の聞こえない両親のもとで育った息子(CODA:コーダ)の葛藤と絆を描きます。 ▶ 音のない世界と、聞こえる世界の間で揺れ動く繊細な心理 ▶ 通訳という役割を超えた、親子としての深い愛情 ▶ 吉沢亮さんの静かながらも熱い演技が光る名作 「家族だからこそぶつかり、分かり合いたいと願う姿に心が震えます。今回の特別上映会は、ぜひ多くの方に足を運んでいただきたい一作です」(上妻さん) 🔶 “いま”を大切に生きるためのメッセージ 「今月の4作品に共通しているのは、人と人との『接点』の尊さです。 お葬式、レンタル家族、仇討ちの裏側、そして親子の絆。 形は違えど、誰かを想う気持ちの美しさが描かれています」(上妻さん) 寒い冬、映画館の暗闇の中で、 誰かを大切に想う温かな“ひかり”を受け取ってみてはいかがでしょうか。 #浜辺美波 #目黒蓮 #柄本佑 #柄本明 #ブレンダンフレイザー #吉沢亮

    13 min
  3. 名字は誰のもの?「選択的夫婦別姓」から見える国家と個人の距離感

    JAN 30

    名字は誰のもの?「選択的夫婦別姓」から見える国家と個人の距離感

    本日のテーマは「選択的夫婦別姓」です。衆議院議員選挙では物価高や税制が注目されがちですが、その影で語られるこの問題は、実は「国家が個人の自由をどこまで制約していいのか」という人権の本質を突いています。宮脇利充さんが、各党の公約や世論のデータをもとに、いま私たちが考えるべき視点を整理します。 🔶 30年間動かない制度 ――政治の停滞と「廃案」の現実 1996年に法制審議会が導入を答申してから約30年。選択的夫婦別姓制度はいまだ実現していません。昨年の通常国会では20数年ぶりに審議が行われたものの、各党の思惑が絡み合い、衆議院解散に伴って再び「廃案」となりました。 宮脇さんは「これは単なる制度論ではなく、幸福追求権という国民の基本的な権利を国家がどう扱うかという問題だ」と指摘します。 🔵 各党の立ち位置(衆院選公約より) 導入に前向き: 立憲民主党、公明党、国民民主党、日本共産党、れいわ新選組 慎重(通称使用の法制化に留める): 自由民主党、日本維新の会 反対: 参政党、日本保守党 🔶 世論調査で見える「賛成多数」と「男女の温度差」 複数の世論調査では、いずれも「選択的」な別姓導入を支持する声が過半数、あるいは反対を大きく上回っています。 男女共同参画学協会連絡会調査: 67.2%が賛成 日本財団「18歳意識調査」: 47.6%が別姓を選べるようにすべきと回答(現状維持は20.5%) 連合(日本労働組合総連合会)調査: 46.8%が「選択できる方が良い」と回答 注目すべきは、賛成者の多くを女性が占めている点です。現在、結婚時に「夫の姓」に変える夫婦は約95%。宮脇さんは、自身の経験を振り返り「男性側は『当たり前』として名字を変える苦労やキャリアへの支障をリアルに考えてこなかったのではないか」と自省を込めて語ります。 🔶 「伝統」か「人権」か ――反対論の根拠を問い直す 法務省のホームページにも紹介されている反対意見についても、宮脇さんは冷静に分析します。 🔵 ここを深掘りする 「日本の伝統」という誤解: 夫婦同姓が義務付けられたのは1898年(明治31年)の明治民法から。歴史的に見ればわずか128年ほどの制度であり、「古来からの伝統」とは言い切れません。 「家族の一体感」の行方: 「同姓でなければ一体感が損なわれる」という意見に対し、宮脇さんは「では、世界で唯一、同姓を義務付けている日本以外の国々には、家族の一体感がないのでしょうか」と問いかけます。 🔶 世界で「日本だけ」という異常事態 法務省の資料によれば、法的に夫婦同姓を義務付けている国は、現在確認されている限り世界で日本だけです。他の国々では、別姓、同姓、あるいは結合姓など、多様な選択肢が認められています。 🔶 今日はここを持ち帰る:1票を投じるための「人権」チェックリスト 「選択的」の意味を正しく知る: 同姓がいい夫婦は同姓を選べる。「自由を広げる」制度であり、誰かに強制するものではないことを再確認します。 手続きの負担を想像する: 運転免許、パスポート、銀行口座、マイナンバー。名字を変える側の煩雑なコストに想像力を働かせます。 キャリアの継続性: 研究者やビジネスの世界で、積み上げた実績(氏名)が途切れることの不利益を「個人の問題」で片付けない。 他者の自由を認める: 公共の福祉に反しない限り、個人の生き方は尊重されるべきという「憲法の精神」に立ち返ります。 国家の姿勢を見る: 個人のアイデンティティである「名前」を国家がどう捉えているか。その姿勢は他の表現の自由や思想信条の自由への態度とも直結しています。 「自分の中にある当たり前(思い込み)を疑い、他者の生きづらさに耳を傾ける。そこから社会の多様性が始まります」(宮脇利充) 🔶 まとめ 「物価高だから、不景気だから、人権問題は後回しでいい」のか。宮脇さんは、この問題への態度こそが、その政党や候補者が「個人の尊厳」をどれだけ重んじているかのリトマス試験紙になると語ります。 明治以来の制度を思考停止で守るのか、それとも現代の生き方に合わせてアップデートするのか。次の一票を投じる前に、自分自身の「名前」への思いから考えてみたいテーマです。 出演:元RKKアナウンサー・宮脇利充さん/聞き手:江上浩子(RKK)

    13 min
  4. 正義のつもりの“袋叩き”が、社会を後退させる

    JAN 23

    正義のつもりの“袋叩き”が、社会を後退させる

    ――田中慎一朗校長が語る、SNS動画拡散と「プロセスの保障」 年末年始、SNS上で中高生による暴力動画が相次いで拡散され、大きな波紋を呼びました。 激しい非難、投稿者の特定、住所のさらけ出し――。 「悪いことをしたのだから当然だ」という世論が渦巻く中、熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長は、 「その『正義』のあり方が、実はさらなる悲劇を生んでいないか」と静かに問いかけます。 聞き手は、RKKの江上浩子です。 🔶 「事実(Fact)」は一つ、「真実(Truth)」は人の数だけある 事件が起きると、私たちは映し出された映像だけを見て、すべてを分かったつもりになりがちです。しかし田中校長は、物事には二つの側面があると言います。 「警察が調べるのは、いつ、どこで、誰が何をしたかという『事実』です。 しかし、その背景にある文脈やストーリーといった『真実』は、そこにいた人の数だけ存在します」 映像に映っていない場所で、何が起きていたのか。 ▶ なぜその行為に至ったのかという背景 ▶ その場にいた他の子たちは何を思っていたのか ▶ 映像を拡散させた側の意図は何だったのか 「目に見える断片だけで『徹底的に懲らしめろ』と袋叩きにすることは、果たして正義なのか。その攻撃自体が、また別の暴力になってはいないでしょうか」 🔶 「手続き保障」こそが、私たちが安心して生きるための砦 田中校長が強調するのは、未成年であっても「法的な手続き」を正しく経ることの重要性です。 「やったことに対しては、司法の場で、未成年であれば少年法などの手続きに基づき、きちんとした処遇が決定されるべきです。それが法治国家のルールです」 SNSによる私刑(個人の特定や個人情報の晒し)は、この「手続き」を無視した行為です。 ▶ 一方的な決めつけは、弁明や事実確認の機会を奪う ▶ 晒された側が世の中に恨みを持ち、根本的な解決から遠ざかる ▶ 「ばれないようにやる」という、より陰湿な思考を植え付ける 「『手続き保障』があるからこそ、私たちは安心して生きていけます。 それを無視して誰かを攻撃することは、回り回って自分たちの首を絞め、世の中を不安定にしていくことにつながるんです」 🔶 心理学「プロセスワーク」から見る、役割(ロール)の入れ替わり 田中校長は今、大学で「紛争解決学」を学ぶ中で、心理学者アーノルド・ミンデルが提唱した「プロセスワーク」という考え方に注目しています。 そこで語られるのは、「加害者」や「被害者」という役割(ロール)は、固定されたものではないということです。 「いじめている子が、別の場所では誰かにいじめられているかもしれない。 家庭での虐待や、社会からの抑圧に苦しんでいるかもしれない。 そう考えると、動画で加害者に見える子も、ある側面では『社会からいじめられている被害者』の役割を担っていることがあるんです」 役割はぐるぐると動き回ります。 ▶ 加害者が、SNSのバッシングによって過剰な被害者になる ▶ 正義を振りかざす視聴者が、無自覚に加害者へと転じる ▶ この連鎖が続く限り、問題の根本は解決せず、悲劇は繰り返される 「その子個人の問題として切り捨て、『自分の側には問題がない』と断定してしまうのは非常に危険です」 🔶 「犯人探し」ではなく「構造」に目を向ける 事件が起きるたびに、「家庭教育が悪い」「学校は何をしていた」と、誰かを責めることで決着をつけようとする風潮があります。 しかし、田中校長は「誰かに問題を落とし込む(押し付ける)こと」をやめるべきだと訴えます。 「なぜ子どもたちが動画を拡散させてしまうのか。なぜ暴力を止めることができなかったのか。 その『構造』そのものに、みんなで関心を持つべきなんです」 ▶ 特定の個人を責めて終わらせない ▶ 「モヤモヤ」をみんなで抱えながら、解決の姿勢を探る ▶ 大人が自分の襟を正し、子どもにどんな社会を見せるべきか考える 「子どもは大人の背中を見ています。 大人がSNSで誰かを袋叩きにする姿を見せながら、子どもに『暴力を振るうな』『いじめをするな』と言っても、説得力はありません」 教育の現場でも、家庭でも、そして社会全体でも。 簡単な「犯人探し」に逃げるのではなく、私たちが作るこの社会が、子どもたちをどう形作っているのか。 もう一度、謙虚に見つめ直す勇気が求められています。

    13 min
  5. 2026年は公共交通強化元年!? さいばの公共交通アップデート

    JAN 16

    2026年は公共交通強化元年!? さいばの公共交通アップデート

    「2026年は公共交通強化元年!?」をテーマに、ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんが、熊本の交通政策に起きている“ギアチェンジ”を読み解きました。聞き手は江上浩子(RKK)です。 斉場さんが注目したのは、年末の報道番組インタビューで、熊本市長と熊本県知事が公共交通を最前面に置き、しかも呼吸を合わせるように語ったこと。交通は市の境界線だけでは解けない課題だからこそ、県と市が同じ方向を向く意味は大きい——そんな問題意識から話が始まりました。 🔶なぜ今「公共交通強化元年」なのか 年末年始は、政治リーダーが「今年の抱負」を語る季節です。斉場さんは、その抱負の中で**“公共交通”が真っ先に出てきた**点を重く見ます。 ▶ 熊本市長が「公共交通を、県知事と徹底的にやりたい」と明言 ▶ 県知事が翌日、「2026年を強化元年に」と受けて返した 斉場さんの見立てはこうです。交通渋滞や移動の課題は、熊本市だけで完結しません。周辺自治体や県全体、そして交通事業者と一緒に動かないと、血流(=移動)が滞ったままになる。だからこそ、県と市が“同じ言葉”で踏み込んだことが、合図として強い。 🔶注目ポイント:県と市が「言い切った」ことのインパクト 政治の言葉は、ときに曖昧になりがちです。ところが今回は、斉場さんいわく「どちらにも取れる話」ではなく、方向性をはっきり言い切った。 ▶ 「徹底的にやる」=“市だけではなく県と組む”前提の宣言 ▶ 「強化元年」=県民に向けた、年単位の旗印 ここで生まれるのは期待だけではありません。期限や旗を立てた以上、市民・県民のチェックの目も厳しくなる。実行できなければ反動も大きい——斉場さんは、そこまで含めて「緊張感がある」と見ています。 🔶熊本市の新提案「運輸連合」とは何か 斉場さんが「さらにギアチェンジを感じた」と語ったのが、熊本市議会の特別委員会で示されたという「運輸連合」の提案です。  ポイントは、交通を「民間任せ」だけにしない発想。 ▶ 路線や本数、運賃などを、行政と事業者が協議し一体的に運営する▶ “採算が苦しいから減便・値上げ”の連鎖を、地域全体の設計で止める▶ 必要な移動を「公共サービス」として、持続可能な形に組み直す 斉場さんが評価したのは、提案そのものに加えて、資料に「これまでの取り組みの限界」や「根本解決ができていない」ことを明記していた点です。まず現状を認め、そのうえで仕組みを変える——ここに、これまでと違う手触りがある、と。  🔶市電は「期限つきメニュー」へ:三連接車・増便・信用乗車 交通の“目に見える変化”として語られたのが市電です。斉場さんが挙げた具体策は次の通り。 ▶ 三連接車の増備(長い車両を増やす)▶ 増便▶ 信用乗車(乗降の仕組みを見直す)▶ しかも「今年度末までに対策を整理」と期限を区切る 20260112104354-0001 「いつか頑張ります」ではなく、「いつまでに何を」が見えてきた。これが、2026年を“元年”と呼ぶ空気を支えている——という整理です。 🔶期待と注意点:期限を切った改革の光と影 斉場さんの話を、賛否両面で並べるとこうなります。 利点▶ 期限があると、議論が「実行計画」に落ちる▶ 市民・県民が検証しやすくなる(説明責任が立つ)▶ 交通は複数主体の課題なので、トップの意思が“連携の接着剤”になる 欠点▶ 期限だけ先行すると、現場の負担が増えやすい▶ 目標未達のとき、行政不信が強まる▶ 交通は運転手不足・コスト増など外的要因も大きく、調整の難度が高い だからこそ、斉場さんは「期待して見守る」だけでなく、市民側も提案して関わることを呼びかけます。 🔶私たちにできること:「主権者の交通」にする 交通は“誰かが用意してくれるもの”であると同時に、暮らしの設計図でもあります。 ▶ 「こうしてほしい」を、言葉にして届ける(意見募集・パブコメ等)▶ 使える区間は公共交通を“実際に使う”(需要が可視化される)▶ 自分の移動も見直す(時間をずらす、乗り換えを試す、選択肢を増やす) 血流を良くするには、心臓(行政)だけでなく、体全体(利用者)も一緒に動く必要がある。斉場さんの比喩を借りれば、そんなイメージです。 🔶さいごに:斉場さんの2026年目標 ちなみに斉場さんの個人目標は、前年に自転車で走った距離を更新して「1万km」。公共交通の話で熱くなったあとに、最後はちゃんと自分にも締切を課す——ここが斉場さんらしい、と思うわけです。 🔶まとめ:2026年が“元年”になる条件 ▶ 県と市のトップが公共交通を前面に出し、連携の意思を言い切った  ▶ 熊本市は「運輸連合」を提案し、仕組みから組み直す発想を示した ▶ 市電は三連接車・増便・信用乗車など、具体策と期限が見えてきた ▶ 期限を切った改革は、成功すれば追い風、失敗すれば反動も大きい ▶ 市民・県民も「提案と利用」で関わるほど、元年は現実に近づく

    13 min
  6. 家族の嘘と戦場の95分、そして“禁断”の青春~上妻祥浩さんが語る注目の新作3本

    JAN 9

    家族の嘘と戦場の95分、そして“禁断”の青春~上妻祥浩さんが語る注目の新作3本

    今月公開の映画から、聞き手の江上浩子(RKK)が、ゲストの上妻祥浩さんに「これはぜひ」と推された3本を、放送の空気感は残しつつ、読み物として整理しました。テーマはばらばらなのに、どれも“人が自分を守るために選ぶ行動”が、ちゃんと痛くて、ちゃんと愛おしい。そんなラインでつながっていました。 🔶『架空の犬と嘘をつく猫』|1月9日(金)公開 まず上妻さんが挙げたのは、日本映画『架空の犬と嘘をつく猫』。タイトルだけで、もう少し胸がざわつきます。犬は“架空”、猫は“嘘をつく”。つまりこの映画、最初から「現実の置き場所」がぐらりと揺れている。 物語の核にあるのは、家族が互いを傷つけないためにつく“やさしい嘘”です。けれど、やさしさは時に、嘘の免罪符にもなる。上妻さんが語ったのは、そうした嘘が積み重なっていく30年の時間です。少年だった主人公が大人になり、家族の中で「守るための嘘」と「嘘が生むひずみ」がせめぎ合い続ける。 ポイントは、嘘が単なる悪役ではないところ。嘘は人を苦しめもするし、同時に“生き延びるための仮設住宅”にもなる。だからこそ観る側も簡単に断罪できず、むしろ「家族って何だろう」「絆って何だろう」と問いが戻ってくる。嘘って、ちいさくても30年分ためると、だいぶ重い。雪だるまどころか雪崩です。 原作は寺地はるなさんの同名小説で、映画は佐賀県(さがけん)の風景の中で撮影されたことも触れられました。主演は高杉真宙さん。共演に伊藤万理華さん、深川麻衣さん、安藤裕子さん、向里祐香さん、安田顕さん、余貴美子さん、柄本明さんらが並び、家族という“逃げられない舞台”を、世代ごとの手触りで支えます。 公式サイト:https://usoneko-movie.com/公開日:1月9日(金) 🔶2本目:『ウォーフェア 戦地最前線』|1月16日(金)公開 2本目は一転して、アメリカ映画『ウォーフェア 戦地最前線』。上妻さんの紹介は明快で、「戦場のど真ん中に、観客を閉じ込めるタイプ」です。 共同監督・脚本はアレックス・ガーランドと、米軍特殊部隊出身のレイ・メンドーサ。設定は2006年のイラク、危険地帯ラマディ。特殊部隊の小隊が監視と狙撃の任務で建物に潜伏し、やがて包囲され、逃げ道のない状況に追い込まれる。 上妻さんが強調していたのは「過剰に盛らないのに、容赦もしない」という質感でした。序盤は何も起きない“待ち”が続き、その空白が逆に緊迫を増幅する。そして戦闘が始まった瞬間、映画は観客の呼吸まで奪いにくる。現場は混乱し、負傷者が出て、判断は遅れ、パニックが伝染する。映画的に気持ちよく整理されないまま、ただ「戦場はこういう場所だ」と突きつけてくる。 この作品は、観終わったあとに軽い感想が出にくいと思います。けれど、上妻さんが言うように、だからこそ“重く受けとめる”価値がある。戦争を「遠い映像」から「近すぎる体験」に引き寄せることで、私たちの想像力の怠け癖を、容赦なく叩き起こします。 公式サイト:https://a24jp.com/films/warfare/公開日:1月16日(金) 🔶『万事快調〈オール・グリーンズ〉』|1月16日(金)公開 3本目は日本映画『万事快調〈オール・グリーンズ〉』。上妻さんの言葉を借りれば、「とんでもない設定なのに、ちゃんと青春映画として成立して、見終わると妙に清々しい」。 舞台は田舎町。鬱屈を抱えた女子高校生たちが、現状を抜け出すために“一攫千金”を狙う。そして同好会「オール・グリーンズ」を結成し、学校の屋上で「禁断の課外活動」を始める——公式サイトも、その一線の危うさを隠さずに提示しています。 ここで大事なのは、彼女たちが最初から“悪い子”として描かれるわけではない点です。むしろ「どこにも行けない」「変えたいのに変えられない」という閉塞感が先にある。上妻さんが話していたのも、笑いとハラハラが同居しつつ、最後は観る側の心の奥に「わかる、わかるんだよ」と残る感触でした。 キャストは、朴秀美役に南沙良さん、矢口美流紅役に出口夏希さんのW主演。岩隈真子役は吉田美月喜さん。 公式サイト:https://www.culture-pub.jp/allgreens/公開日:1月16日(金)

    13 min
  7. 2025年、ロックの“作り直し”を担った世代へ追悼——宮脇利充さんが語る喪失と音楽の継承

    12/26/2025

    2025年、ロックの“作り直し”を担った世代へ追悼——宮脇利充さんが語る喪失と音楽の継承

    年末の挨拶回りが交わす「今年もお世話になりました」の一言。その短い言葉の背後で、2025年は“ロックを作り直した世代”の訃報が静かに重なりました。The Jam、New York Dolls、Gang of Four、そしてジミー・クリフ。宮脇利充さんが、熊本で体験した音楽映画の記憶とともに、喪失の意味と「会っておけばよかった」という後悔をたぐり寄せます。 🔶仕事納めの挨拶が、年末の空気を決める 年末が近づくと、街のあちこちで「今年もお世話になりました。よいお年を」という言葉が交わされます。いわゆる“仕事納めの挨拶回り”は、年賀状のように簡略化が進む私的な習慣とは違い、いまも残り続けています。ただ、その場は単なる儀礼ではありません。短い会話の中で、1年の失敗を笑い合ったり、来年の話がふっと芽を出したりする。年末の挨拶とは、忙しい日常のすき間に差し込まれる「小さな振り返りの時間」でもあります。 この日の「ニュース515+plus(RKKラジオ)」も、年内最後の放送回として、そうした“振り返り”にふさわしいテーマが選ばれました。解説を担当したのは元RKKアナウンサーの宮脇利充(みやわき・としみつ)さん、聞き手は江上浩子(えがみ・ひろこ)アナウンサーです。  🔶2025年——“ロックを作り直した世代”が静かに去っていく 宮脇さんが持ち込んだのは、2025年に亡くなった音楽家たちを悼むためのCDでした。 話題の中心にあったのは、パンク、ニューウェーブ、ポストパンク——つまり、70年代後半以降に「それまでのロックを一度壊して、作り直した」担い手たちです。 実際、2025年には象徴的な名前が相次いで報じられています。 ★The Jamのドラマー、Rick Buckler(リック・バックラー)さん(2025-02-17、69歳) ★New York Dollsのフロントマン、David Johansen(デヴィッド・ヨハンセン)さん(2025-02-28、75歳) ★Gang of Fourのベーシスト、Dave Allen(デイヴ・アレン)さん(69歳) ★60年代から独特の陰影を放った歌手・俳優のMarianne Faithfull(マリアンヌ・フェイスフル)さん(2025-01-30、78歳) ★そしてレゲエを世界に押し広げたJimmy Cliff(ジミー・クリフ)さん(2025-11-24、81歳)  ここで大事なのは、「有名人が亡くなった」という話だけではありません。 宮脇さんの言葉を借りるなら、時代の空気を変えた人たちが“鬼籍に入っていく”ことで、こちら側が音楽史の節目に立たされる、という感覚です。半世紀前の革命が、いまは追悼という形で私たちに届く。年末の静けさは、ときにそういう現実をよく見せます。 『ハーダー・ゼイ・カム』と、熊本で体験した“1日上映”の時代 番組では、ジミー・クリフさんが主演した1972年の映画『The Harder They Come(ハーダー・ゼイ・カム)』にも話が及びました。 宮脇さんが印象的に語ったのは、映画館でのロードショーではなく、市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)のような会場で“昼間に1日だけ”上映される——そんな見せ方が、当時は珍しくなかったという記憶です。 いまは音楽映画が次々に公開され、熊本でも老舗の映画館・電気館などで多様な作品がかかります。 しかし昔は、ロック映画は「観たい人が点で集まるイベント」に近かった。客席が数人しかいない日もあれば、逆に“ライブの熱”のような空気に包まれる夜もあった。宮脇さんの回想は、音楽の流行史というより、地方都市が文化を受け取るときの手触りを伝えていました。 🔶The Jamと「会っておけばよかった」という、取り返しのつかない話 番組後半で焦点になったのは、The Jamのドラマー、リック・バックラーさんの死でした。 The Jamの代表曲「Town Called Malice(タウン・コールド・マリス)」は1982年のシングルとして知られます。 その曲の勢いとは対照的に、話は“人間関係の停止”へ向かいます。 宮脇さんが紹介したのは、ポール・ウェラーさんが「長く話していなかった相手に、連絡しないまま時間が過ぎた」ことへの悔いを語った趣旨でした。実際に英音楽誌Uncutなどでも、ウェラーさんの追悼コメントが報じられています。  要するに、ここで語られた追悼の核心はこうです。音楽の歴史は、音の歴史である前に、人の歴史だということ。会わないままの年月は、ある日突然“終わり”に変わります。だから、迷ったら会っておく。声をかけておく。年末の挨拶回りがしぶとく残る理由も、案外そこにあるのかもしれません。 🔶受け取った音楽を、次の言葉へ 宮脇さんの語りは、追悼で終わりません。残された側ができるのは、音楽を“聴き直す”こと、そして“語り直す”ことです。過去の曲が、いまの生活の中でまた鳴り始める。その瞬間に、文化は相続されます。年末は、暦の区切りです。同時に、記憶の棚卸しでもあります。2025年の終わりに流れた数曲は、私たちに「何を受け取り、何を返すのか」を静かに問いかけていました。 解説:宮脇利充(元RKKアナウンサー)/聞き手:江上浩子(RKK)

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  8. 教育にお金は届いているか――校長が語る「見えにくい教育環境」のいま

    12/19/2025

    教育にお金は届いているか――校長が語る「見えにくい教育環境」のいま

    熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長は、「学校は子どもの幸せのための場であり、同時に社会全体の公共サービスだ」と繰り返し語ります。 しかし、その“教育環境”がどのような状態なのか、保護者や地域の人たちに意外と知られていない現実もあるといいます。 聞き手はRKKの江上浩子です。 🔶 見えにくい「校舎の現実」――トイレから分かること 田中校長が最初に挙げたのは、子どもたちが毎日使う「トイレ」でした。 出水南中学校の一例です。 ▶ 男子トイレ  ・個室が2つ  ・1つは和式、1つは洋式 ▶ 女子トイレ  ・個室が5つ  ・3つが和式、2つが洋式 温水洗浄便座(いわゆるウォシュレット)はありません。冬場は便座も冷たく、家庭のトイレ環境と比べると「かなりギャップがある」状態です。 家庭ではすでに多くが洋式・温水洗浄便座に移行している一方で、学校のトイレは和式がまだ多く残っているケースも少なくありません。 田中校長は、こうしたギャップが「学校を居心地の悪い場所にしている可能性がある」と指摘します。 「家ではウォシュレットなのに、学校のトイレが嫌で…という子は実際にいます。長時間過ごす場所だからこそ、細かい環境が心に影響するんです」(田中校長) 授業参観など短時間の訪問では見えない、日常の使いづらさや古さ。 それもまた、子どもたちが毎日身を置いている「教育環境」の一部です。 🔶 給食費無償化だけで「教育環境」は良くなるのか 近年、「給食費の無償化」や「私立高校授業料の実質無償化」が大きく報じられてきました。 田中校長も、給食費無償化そのものを否定するわけではありません。 「給食費の無償化は、子育て世帯の経済的負担を軽くするという意味ではとても良い取り組みです」(田中校長) ただし、それは主に「保護者の家計支援」であって、「学校の教育環境の改善」に直結しているとは限らない、とも強調します。 すでに、経済的に厳しい家庭には就学援助などの福祉制度があり、給食費や修学旅行費が免除される仕組みも整っています。 一方で、老朽化した校舎やトイレ、不足している人員といった“足元の環境”に十分なお金が回っていない現実も残ります。 「給食費の無償化が悪いとは言いません。ただ、同じお金を使うなら『子どもの学びの場そのもの』にも、もう少し回してほしいという気持ちは正直あります」(田中校長) 🔶 自治体によってこんなに違う? 教育環境格差という問題 田中校長が危機感を抱いているのが、自治体による「教育環境の格差」です。 熊本市には、小・中学校だけで約150校があり、それぞれの校舎を改修・更新していくには膨大な費用がかかります。 一方で、学校数が少ない自治体では、トイレの改修や設備投資、支援員の配置などに比較的手厚く予算を回せるケースもあります。 象徴的なのが「学習支援員・学級支援員」の配置です。 ▶ 出水南中学校(生徒約900人)  ・学習支援員は全校で1人のみ ▶ 他自治体の例  ・同程度の規模でも、4〜5人の支援員が配置されているケースもある 授業中に困っている子どものサポート、学習に遅れがちな子へのフォロー、不登校ぎみの生徒へのケアなど、本来支援員が担える役割は数多くあります。 しかし、人員が足りない学校では、そのほとんどを担任や少数の教員が背負わざるをえません。 「どの自治体に住むかは、子ども自身が選んでいるわけではありません。それなのに、住んでいる地域によって『受けられる教育環境』に大きな差が出ているのは、本来あってはならないことだと思うんです」(田中校長) 「教育は公共サービス」と考えるなら、一定水準の環境を全国どこでも確保できる仕組みが必要だ――田中校長は、国レベルでの議論を求めています。 🔶 「静かな教室」と「多様性の尊重」をどう両立させるか 教育環境の話は、施設やお金だけにとどまりません。 教室の雰囲気や指導のあり方も、子どもにとっては大きな環境要素です。 保護者アンケートを取ると、こんな声が同時に寄せられるといいます。 ▶ 「子どもの個性を大切にしてほしい」 ▶ 「あまり強く指導しないでほしい」 一方で、こんな声もあります。 ▶ 「授業中がうるさくて集中できないので、もっときちんとさせてほしい」 ▶ 「教室が騒がしいのがつらくて、学校に行きたくない子もいる」 つまり、「多様性の尊重」と「落ち着いた学習環境」は、どちらも大事なのに、現場ではしばしば緊張関係をはらんでしまいます。 「不登校の子どもたちの中には、『教室がうるさくて学ぶ意欲がそがれる』という理由で来づらくなっている子も確かにいます。 その一方で、『あまり厳しくしないで、個性を認めてほしい』という声もある。どちらかを切り捨てるのではなく、両方に目を向ける必要があります」(田中校長) そのバランスを、現在の教員数と業務量のまま、学校任せにしてしまっているところに無理があるのではないか――。 田中校長は、「少ない人数で大量の児童・生徒を任せてきたこれまでの仕組み自体を、社会全体で見直す必要がある」と訴えます。 🔶 「人が欲しい、お金が欲しい、安心できる施設が欲しい」 田中校長の本音は、きわめてシンプルです。 「人が欲しいし、お金が欲しいし、子どもたちが安心して過ごせる施設も整えてほしいんです」 給食費の無償化であっても、子ども本人の口に入るものの質や残菜の問題まで目を向ける必要があります。 ▶ 食材費高騰の中、限られた予算で献立を組む現場の苦労 ▶ 無償化で「タダ」になることで、かえって残菜が増えてしまう懸念 ▶ 食材費を抑えざるをえず、給食の質が下がるリスク 「給食費無償化そのものはありがたい取り組みです。ただ、『タダにすること』だけが一人歩きすると、質の低下や残菜増加につながる恐れもあります。子どもたちの“食”と“学び”をどう支えるのか、もう一段深いところで議論してほしいですね」(田中校長) 教員たちは、給食費が無償化されても自分の給食代はきちんと支払います。 だからこそ田中校長は、「お金が、確かに子どもたちと現場の利益になる形で届いてほしい」と願っています。 「教育に、もっとお金と眼差しを。子どもたちが安心して学べる環境を整えることは、社会全体の未来をつくることだと、多くの人に知っていただきたいです」(田中校長) 🔶 まとめ:見えにくい教育環境に、社会全体の視線を この記事で示されたポイントを整理すると、次のようになります。 ▶ 学校のトイレなど、基本的な施設が家庭よりも劣悪なままのケースがあり、子どもの「行きたくなさ」に直結している ▶ 給食費無償化や授業料無償化は、家計支援としては有効だが、「教育環境の底上げ」に直結しているとは限らない ▶ 自治体によって、支援員の配置数や施設整備の進み具合に大きな差があり、子ども本人の選択と無関係な「教育環境格差」が生まれている ▶ 教室の静けさを求める声と、多様性を尊重してほしいという声を両立させるには、教員任せではなく、人的・財政的な支援が不可欠 ▶ 「教育にもっとお金と眼差しを」という校長の訴えは、子どもだけでなく、社会の将来のための投資を求めるメッセージでもある 年が改まる節目に、子どもたちが毎日過ごしている「学校」という空間に、もう一度目を向けてみませんか。 教室の静けさ、トイレの快適さ、支援員の数――その一つひとつが、これからの社会を支える子どもたちの「土台」になっていきます。 【出演】熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗さん 【聞き手】江上浩子(RKK)

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エンタメ・教育・ITの専門家が気になる話題を徹底解説!! 第1金曜日・・・映画解説・研究者 上妻祥浩さん 第2金曜日・・・ライブ配信ディレクター 斉場俊之さん 第3金曜日・・・熊本市立出水南中学校 校長 田中慎一朗さん 第4・5金曜日・・・元RKKアナウンサー 宮脇利充さん ◆WEB https://rkk.jp/515news/ ◆メール 515@rkk.jp ★地上波ではRKKラジオ(熊本)FM91.4    AM1197で、毎週金曜日 午後5時15分から放送中。是非生放送でもお聴きください。