エンタメビジネス実況中継

朝日けけ。

エンタメ業界で15年、漫画・アニメ・ゲーム・キャラクターIPの新規事業を立ち上げてきた朝日けけが、いまそこで起きているビジネスの動きを毎回1つピックアップ。ひとりで、ときにはゲストとともに30分語り続けます。分析でも解説でもない、「実況中継」です。 asahikeke.substack.com

  1. 8h ago

    IPは最初からIPじゃない。

    ガンダム、キティ、アンパンマン、マリオ。これらの名前を聞くと、ほとんどの日本人は知らないことはないでしょう。一方で今や日本を代表する IP となったこの4つの作品も、実は最初から人気だったり、大きく利益を出していたり、順風満帆な道を通ってきたわけではないんですよね。 半世紀経った今となっては、莫大な売上と利益をもたらすこれらの「IP」と呼ばれる作品、およびその権利ですが、世の中に出た最初の時に、ここまで大きくなると見抜いた方も存在しないのではないでしょうか。 本記事ではそんなエンタメビジネス界隈でIP、アイピーと叫ばれる時代において。現在、日本を代表する IP たちも、生まれた時は IP には見えてないよねという「ジレンマ」について解説していきます。 まずは『機動戦士ガンダム』。 だれもが知っていますよね。いまでは世界的なIPとなった作品ですが、最初のテレビアニメは当初52話までの予定だったのに、全43話で終了しています。公式資料では、低視聴率と当時の関連商品の不振を背景に、予定より短い話数で放送終了になったんですよね。 それでも、最初のガンプラが発売されたのは1980年7月で放送終了から半年のことでした。ちなみにアニメ放送中に発売されていた商品と、この初代ガンプラはまったくの別のものです。 次にみんな大好き『ハローキティ』の最初商品であるプチパースは人気商品でした。それでも、3代目のデザイナーであるサンリオの山口裕子さんが担当になる1980年ごろには、キキ&ララのほうが人気だったそうです。つまり谷だったんですよね。そこから服やポーズ、物語を増やし、1984年には友だちのタイニーチャムが登場。それがきっかけで、1985年にキティはサンリオのトップセールスに返り咲きました。 『アンパンマン』の最初は、1969年に現れ、はじめは大人向けのメルヘンな作品として展開されたが、1973年に幼児向けの絵本になりました。現在まで続くテレビシリーズが始まったのは1988年です。原型から19年経って絵本に、そして絵本から15年が経ってアニメになっている。 1981年の『ドンキーコング』は、成功したゲームでした。ただ、プレイヤーが動かす主人公は、まだ「ジャンプマン」「ミスター・ビデオ」などと呼ばれていました。その人物がマリオという名前を持ち、1983年には『マリオブラザーズ』、1985年には『スーパーマリオブラザーズ』の主人公になります。 IPの定義 本題に入る前にまず、IPの定義について簡単にまとめましょう。直訳すると知的財産の意味で、主にアニメ、漫画、ゲームのキャラクター、音楽など、作品そのものや権利を指します。ただ、これだとどんな作品も IP になりますよね。 イラストを1枚描いたらIPなのか 漫画の読み切りを描いたらIPになるのか 漫画の連載が始まったらIPになるのか 私は違うと思います。それらはまだIPではなくて、作品です。なぜなら私はIPの定義を、「時間に耐え、感情を動かすもの」だと考えるからです。※詳細は記事にまとめていますので、併せてどうぞ。 エンタメ業界・エンタメビジネスにおける「IP」とは何か? この定義では、生まれた時点ではまだIPではありません。テレビアニメであり、キャラクターイラストであり、漫画であり、ゲームあり、キャラクターたちです。 こう考えると、人が最初につくれるのは、作品までです。それがどれだけ時間に耐えられるかは、生まれた日に決められません。 やめる理由ならいくらでもある 話を戻しましょう。冒頭でご紹介した4つの国民的な IPも、最初からずっと大成功だというわけではなく、 ガンダムは、テレビ放送の初期不振。 キティは、最初の商品が売れたあとの低迷。 アンパンマンは、主なターゲットと届け方の変更。 マリオは、成功したゲームの無名のキャラから、名を持つメインキャラへ移った例です。 道のりは、ぜんぶ違います。 ただし4つに共通するのは、最初の結果や一度の不調だけでは、その作品の可能性を測れないということです。 もちろん、新しい作品の視聴率・読者数・閲覧数・売上といったわかりやすい指標を見て、次の予算を決めることは、とても合理的です。企業なら絶対にそうするでしょう。人もお金も有限ですからね。会社は利益を求める。数字を無視して、すべての作品を継続することはできません。 ただ、4つの事例を見て思うのは、作品の黎明期において足元の数字が悪いからといって、「その媒体の後続を止める判断」と「作品そのものを終了にする判断」は、まったく別だということです。 なぜなら、いま足元で出ている数字は、その作品を「どの範囲まで」評価できているのかを、まだ測りきれていないかもしれないからです。 初回のアニメ実績で判断していたら、2500億の IP は存在していない ガンダムがその答えを教えてくれています。 初代ガンダムのテレビ放送は、1979年4月から1980年1月まででした。 最初のガンプラが発売されたのは、その半年後です。 当時の視聴率と商品の売れ行きが測ったのは、それぞれテレビ放送と、その時点で売られていた商品への反応です。もちろん、それらは後の商品需要を予測する材料にはなります。ただ、放送終了後に店頭へ並ぶガンプラへの反応を直接測った数字ではありません。商品そのものが、まだ売られていなかったからです。 初代ガンダムは、放送中に見えた数字だけでは、まだ売られていないガンプラへの反応まで測れません。そこまでを同じ物差しで評価しようとすると、どうしても範囲が広くなりすぎてしまいます。 とはいえ、これは当時の終了判断が間違いだった、と責める話ではありません。その時点で見える数字と商品の状況から、限られた予算を配り直す。運営する側としては、きわめて合理的な判断です。 大事なのは、テレビ放送への判断を、そのまま作品の「終わり」と同一視しないことです。そうしなければ、放送とは別の場所で、あらためて反応を確かめる余地を残せます。 要するに、最初の1回やってダメだったからといって終了判断せず、諦めずに次の一手を打つ、ということですね。 続けるとは、次の届け方を試すこと 「続ける」と聞くと、同じ作品を同じ場所へ置き続ける姿を想像しがちです。でも、四つの公開年表に並んでいるのは、むしろ変化です。 ガンダムには、再放送とプラモデルという別の接点ができました。 キティは、服を着て、ポーズを持ち、物語と友だちが増えていきました。タイニーチャムは、その試行の一つです。タイニーチャムだけが人気を戻した、とまでは言えません。 アンパンマンは、大人向けのメルヘンから幼児向けの絵本へ移り、さらに現在まで続くテレビシリーズになりました。1973年の絵本から、1988年に始まった現在のテレビシリーズまでが15年です。 マリオはゲームから別の媒体へ移ったわけではありません。一つの成功作の主人公が名前を持ち、自分の名を冠した作品の中心へ移りました。変わったのは、呼び方と役割と、作品の設計です。 だから、続けることを「時間だけを延ばすこと」「同じことを続ける」だとは考えません。 受け手のなかに残った反応を見つけ、その反応を頼りに別の商品、別の受け手、別の役割でもう一度試す。続けるとは、次に出会う場所をつくることです。 終了を決める前に では、いま数字が弱い作品をどう見るか、考えればいいのか それは、 三つの順番で見るようにしています。 一つ目は、その数字が何を測ったのかです。 動画の再生数なら、その尺、その配信面、その時期に再生された回数です。商品の売上なら、その商品、その価格、その売り場で成立した金額です。どちらも大切な数字ですが、作品のあらゆる届け方をまとめて測った数字ではないんですよね。 その作品のポテンシャルは、本当に測りきれているでしょうか。最初に選択したメディアの数字だけを信じて、それだけを見ていると、視野が狭くなってしまうことがたくさんあります。 例えば、ちいかわはコロナ禍の X(旧Twitter)で一気に認知を広げて話題になりましたが、その本来の破壊力を測るのは、やっぱり店頭に並んだときのグッズの可愛さです。「つい買ってしまう」ぬいぐるみの破壊力です。それらを身の回りに置いたときの「体験」のほうだと思うんですよね。 だからこそ

    IPは最初からIPじゃない。
  2. 3d ago

    エミー賞ノミネートの地下鉄インタビューYoutube『Subway Takes』から学ぶ、人を惹きつける映像の作り方。

    「地下鉄で見知らぬ人の持論を聞くだけの番組が、40億再生の人気番組を退けてエミー賞に届いた」 ニューヨークの地下鉄のホームで、通りすがりの人にメトロカードそっくりのマイクを向ける。「あなたの持論を聞かせてください」とお願いして、司会がその場で賛成したり反対したりする。台本なし、演出なし、編集は最小限。それだけの番組『Subway Takes』が、累計7.5億再生、ブランドタイアップ1件あたり約3,000万円、そして2026年7月にエミー賞ノミネートまで届きました。 同じ舞台で落ちたのが、累計40億再生を超える『Hot Ones』です。YouTubeが賞レースに本格参入したFYCキャンペーンの結果、再生数で5倍以上ある番組が届かなかった場所に、Subway Takesだけが通りました。この結果は、再生数では説明がつきません。 理由は「AIに作れないもの」だと考えています。一回性、即応性、場所の制約、予測不能性。ライブ音楽、スポーツの生観戦、2.5次元、ポッドキャスト、没入型ドームのCosm、リアリティショー。AIが正しくてそれっぽいものを無限に作れるようになるほど、この4つを持つコンテンツの相対価値は上がっていきます。複製できない「現物」の価値が上がるのも、同じ構造です。 そしてSubway Takesは、場所、道具、ルールという、たった3つの制約でその全部を自動的に生み出す構造になっていました。創設者のカリーム・ラーマは「フォーマットを変えなかった」と語っています。これは頑固さではなく、変える必要がなかったということだと思うんです。 ▼話したこと ・累計7.5億再生、タイアップ1件約3,000万円、副大統領候補も出演した地下鉄インタビュー番組 ・カマラ・ハリスの回は本人の持論が振るわず、双方合意でお蔵入りになっていた ・YouTubeのFYCキャンペーンで、40億再生のHot Onesは届かずSubway Takesが通った ・「作れること」の価値がゼロに近づく時代に、逆に価値が上がるものは何か ・一回性・即応性・場所の制約・予測不能性という4つの共通項 ・レコード、ポケモンカード、ラブブ。複製できない「現物」も同じ構造で上がる ・場所×道具×ルールの3制約が、AIに作れないコンテンツを自動的に生み出す装置になる ▼note記事 エミー賞ノミネートの地下鉄インタビューYoutube『Subway Takes』から学ぶ、人を惹きつける映像の作り方 https://note.com/keke_ent/n/neb31b88a895f ▼朝日けけ。SNS note:https://note.com/keke_ent X:https://x.com/keke_ent substack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe

    エミー賞ノミネートの地下鉄インタビューYoutube『Subway Takes』から学ぶ、人を惹きつける映像の作り方。
  3. 5d ago

    K-フレグランス(韓国香水ブランド)から学ぶ「世界観の設計図」

    いい香りだから、売れる。香水って、そういうものだと思うじゃないですか。わたしも、ずっとそう思っていました。 でも、いま世界で伸びている韓国の新興香水(K-Fragrance)ブランドは大手ではなく、少量生産で作家性の強い、小さな作り手たちなんです。 その顔ぶれを並べてみると、どうもいい匂いだから人気、という話じゃないんですよね。 BLACKPINKのJennie(ジェニー)が広告に立つTAMBURINS(タンバリンズ)。 "Dirty Rice(蒸したご飯)"という名前の香水を、平気で売るBORNTOSTANDOUT(ボーントゥスタンドアウト)。 後者は2022年にソウルで生まれて、たった2年で60カ国に進出しました。2025年には、あのロレアルが出資しています。 彼らの発信やブランドビジネスの設計を追っていくと、あることに気づきます。肝心の、香りそのものの話を、驚くほどしていないんです。本記事では、 「なぜ"香りの良さ"で差別化しないブランドが、香水という土俵で世界を獲れるのか」 という問いを解いていきます。 このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 韓国の香水が、香りの話をあまりしない理由 端的に言えば、こういうことです。 TAMBURINSもBORNTOSTANDOUTも、香りという"中身"を、いちばん最後につくっている。先に作っているのは、 模倣されづらい世界観 のほうなんですよね。 わたしはこれを『逆順の設計』と呼んでいます。模倣されやすいものほど、後に回す。 香水でいちばん模倣されづらいものって、匂いだと思うじゃないですか。でも、彼らは世界観を選んだのです。 この順番が、わたしたちの常識と、逆さまなんですよね。 普通は、中身で勝負するはずだった 香水は、嗅覚の商品です。だから中身=香りで勝負する。この考え自体は、間違っていません。実際、韓国ブランドも香りの質には妥協していない。 NONFICTION(ノンフィクション)は、名香を数多く手がけた世界的調香師Maurice Roucel(モーリス・ルーセル)を起用しています。中身は、ちゃんと一流なんです。 でもね、ここに落とし穴があります。 一流の調香師は、お金を払えば、どのブランドでも起用できる。つまり香りは、いちばん模倣されやすい層でもあるんですよね。今日すばらしい香りを作っても、明日には似たものが出てくる。いまは、いい香りを分析して近い処方に寄せる技術も、昔よりずっと安く、速くなりました。だから香りは、追いつかれるのがいちばん早いんです。ここを主戦場にするほど、消耗戦になっていく。香りだけで積み上げたブランドは、砂の上に建っているようなものなんですよね。 だから、香りを「最後」に作る ひとつ、先に断っておきます。ここで言う「最後」は、品質の手抜きでも、開発の後回しでもありません。香りを"差別化の切り札"として、最後まで前面に立てない。そういう設計上の順序のことです。 そのうえで、ここからが構造的に面白いところです。 世界で伸びている韓国ブランドを横に並べると、きれいに共通する順序が見えてきます。ひと言で言える思想。物語になる名前。行くこと自体が体験になる店。生活に棲みつく日用品。そして、海外の一流小売と資本による信用。香りは、この一番うしろに置かれている。 面白いのは、この順序が「たまたま」ではないことです。どのブランドも、判で押したように同じ順番で積んでいく。つまりこれは、誰かの偶然の成功譚ではなく、なぞれば再現できる設計なんですよね。 わかりやすいのが、BORNTOSTANDOUTです。創業者のJun Lim(ジュン・リム)は、もともと投資銀行にいた人でした。お金の集め方をいちばんよく知っている人が、最初の旗艦店には外部の資本を一切入れていません。生涯の貯金と退職金を注ぎ、銀行からは借りられるだけ借り、集めていたアートも全部売って、ソウルの漢南(ハンナム)に建てています。本人いわく、あの店はいまも「実質は銀行のもの」なんだそうです。ロレアルという資本が来たのは、そのずっとあと。世界観が固まってから、お金が来ている。順序が、はっきりしているんです。 「思想・名前・店」という武器で、香りを囲う もう少し、具体的に見てみます。外から見れば、彼らはただの香水ブランドです。でも設計図を開くと、そこにあるのは香りの会社ではなく、世界観の会社なんですよね。 ひとつ目は、ひと言の思想です。 BORNTOSTANDOUTは 「人と違うために生まれた」 という反抗。NONFICTIONは 「日常の静かな物語」という内省 。 TAMBURINSは 「異形の美」。 彼らは香りではなく、まず態度やスタンスを決めている。これは香りと違って真似ができません。真似したら、ただの物真似に見えてしまうからです。 ふたつ目は、名前です。 BORNTOSTANDOUTには"Dirty Rice(蒸したご飯)"という香りがあります。 別のブランドVilla Erbatium(ヴィラエルバティウム)は、"Rice Makgeolli(マッコリ)"を本気で香水にした。 ELOREA(エロレア)にいたっては、いまはもう使われない古い韓国語から、名前をつけています。日本で言えば、甘酒や味噌を、パリの一等地で香水として売るようなものなんですよね。変だからこそ、忘れられない。 香りは、嗅がないと伝わりません。でも名前は、嗅ぐ前に会話を生む。物語を生む。しかもマッコリのような固有名は、海外の人にとって「翻訳できる物語」になります。その土地に昔からあるものを使うことで、そこに培われた時間の価値と物語を、商品に込めることができるのです。名前の良し悪しは、結局この一点なんだと思います。その名前だけで、会話が起きるか。 みっつ目は、店です。 TAMBURINSの母体は、あのGentle Monster(ジェントルモンスター)を運営するIICOMBINEDという会社。店を「売り場」ではなく「美術館」のように作ることで知られてきた会社です。 そのノウハウを、そっくり香りに移植した。だから彼らの店は、商品を買う場所というより、ひとつの作品を見にいく場所になっている。 写真を撮りたくなる。 人に話したくなる。 店が、そのまま広告になっているんです。 エンタメで言えば、常設展やポップアップで"作品世界を歩ける"ようにする発想に近いと思います。 香りという模倣されやすいブランド核を、 思想とネーミングと店という、模倣されにくいレイヤーで、ぐるりと囲っている。これが、彼らの真似されづらい独自の武器なんですよね。 時間を稼いで資産を築く 武器は、もう一段あります。 ただし、ここから外側は、少し役割が変わります。 思想・名前・店が"真似そのもの"を遅らせるのに対して、もう一段は、競合が遅れている間に、客の生活習慣やスタイルを固め、ブランドの格を固めていく。稼いだ時間を、資産に変える層なんです。 彼らは香水にかぎらず、匂いを扱う商材、つまりフレグランス全般にラインナップを広げています。なかには、香りと一緒にコーヒーを出す併設カフェを持つブランドもある。香水は、年に何度も買うものではありません。 でもハンドクリームなら、毎日使う。低い頻度の主役の空白を、高い頻度の日用品が埋めて、ブランドのことを忘れさせない設計です。生活のなかに、静かに棲みついていく。エンタメで言えば、ライセンスやグッズや音楽で日常の接点を増やすのと、狙いは同じなんですよね。 そして最後に、信用です。無名の香りに「格」を後づけするために、彼らはHarrods(ハロッズ)やSephora(セフォラ)のような、格式のある一流デパートやセレクトショップの棚を取りにいきます。 あの店が置いている、という事実そのものが、第三者のお墨付きになる。ロレアルの出資も、役割は同じです。 自分たちで世界観を固めきったあとに、外の信用を借りにいく。ここでも、順序は崩していません。もし逆にしたら、どうなるか。世界観が固まる前に大きな資本や大型の棚が入ると、いろんな都合が混じって、あの尖った思想が少しずつ丸くなっていくんです。 だから彼らは、順番を守るために、我慢していると読めるんですよね。 「順番」にこだわる理由 正直に言うと、この順序の話は、わたしにとって他人事ではないんです。 エンタメ事業を統括していた頃、数え

    K-フレグランス(韓国香水ブランド)から学ぶ「世界観の設計図」
  4. Aug 14

    アメリカ映画4割減なのに、日本映画は史上最高の理由

    今回は、ワーナーの5年間の実験、劇場版の「格」、そして入場者特典・応援上映・長い劇場期間で日本の劇場が積み上げた「待てないもの」の設計を整理しました。TOHOシネマズの料金改定が示す「場所の値段」への転換までを、数字とともに読み解いていきます。 ▼話したこと ・2021年ワーナー「Project Popcorn」の代償——ノーランは『オッペンハイマー』をUniversalへ持ち込み去った ・本丸は赤字ではなく観客の学習——「6週間待てば家で観られる」は5年経っても消えない ・StatSignificantの分析:配信専用作品は公開週1位でも翌週には会話から消える ・劇場版が付くと格が上がる理由——予算・宣伝・社内の扱いと最初の口コミの語り部 ・日本の劇場が売るのは「待っても手に入らないもの」——コナンの日付入りイラストや応援上映 ・『鬼滅の刃』無限列車編は配信まで約1,720日、アメリカの45日の約38倍という防波堤 ・TOHOシネマズ7月改定で全国一律が終焉——「待てない」は設計でつくり輸出もできる ▼note記事 アメリカ映画4割減なのに、日本映画は史上最高の理由 https://note.com/keke_ent/n/n5f2a2b4c6dd6 ▼朝日けけ。SNS note:https://note.com/keke_ent X:https://x.com/keke_ent substack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe

    アメリカ映画4割減なのに、日本映画は史上最高の理由
  5. Aug 14

    ジャンプ作品10年分214作を数えてわかった、アニメ化のタイミングと閾値。

    「ジャンプがもう漫画雑誌には見えないんです。」 単行本全2巻で完結した『タコピーの原罪』が、連載終了から3年近く経ってアニメになりました。一方で『とんかつDJアゲ太郎』は連載開始から約1年7ヶ月、『僕のヒーローアカデミア』や『ラーメン赤猫』は約1年9ヶ月でアニメ化。完結した小さな作品が何年も経って拾われ、走り出した作品はあっという間に空へ上がっていく。この落差は、いったい何なのか。 「アニメ化がいつ、連載何話・単行本何巻で、どういう閾値で決まるのか」を測ったものが見つからなかった。だから朝日けけは、週刊少年ジャンプ本誌と少年ジャンプ+、この10年で連載された214作品を、連載開始日・単行本発売日・アニメ化の発表時期と放送時期まで、ひとつずつ数えました。 そうしたら、ジャンプという場所が「漫画雑誌」には見えなくなってきた。閾値とは、これより小さいと反応しないが、これを超えると反応する、その境目のこと。ジャンプは当たってから動くのではなく、当たりそうな瞬間にもう動いている。鬼滅の刃はアニメ化発表時に単行本11巻、呪術廻戦は7巻、ヒロアカは5巻。どれも物語が完結するずっと手前での決定でした。 今回は214作の実測データから、アニメ化のタイミングと「5巻」という閾値、本誌26%とジャンプ+83%というアニメ化率の意味、そしてジャンプが「一体型のIP発射台」であることを、ロケットのメタファーで言語化しました。 ▼話したこと ・連載開始からアニメ放送までの中央値は約3年半、最速はとんかつDJの約1年7ヶ月、最長は忘却バッテリーの約6年 ・アニメ化は完結後ではなく、鬼滅11巻・呪術7巻・ヒロアカ5巻という序盤〜中盤の発表——現場では半年〜1年前から水面下で動いている ・本誌新連載のアニメ化率は約26%、2016年組は36%、2019年は9%——多くの年で7〜8割はアニメにならず終わる ・アニメ化率26%は選別がゆるいのではなく厳しいから——週刊連載・読者アンケート・打ち切りは超高速オーディション ・『5巻前後まで上昇できるか』が閾値——ロケットの第1段切り離しに成功した機体は8割超が軌道に乗る ・ジャンプ+主要作のアニメ化率は約83%——デジタルの強みは率ではなく、当たりを見抜く早さと正確さ ・タコピーの原罪に象徴される発見力と、連載→打ち切り→アニメ→Netflix/Crunchyrollへ続く一体型IP発射台としてのジャンプ ▼note記事 ジャンプ作品10年分214作を数えてわかった、アニメ化のタイミングと閾値 https://note.com/keke_ent/n/nd0932652b585 ▼朝日けけ。SNS note:https://note.com/keke_ent X:https://x.com/keke_ent substack:https://substack.com/@asahikeke Get full access to エンタメビジネス実況中継 at asahikeke.substack.com/subscribe

    ジャンプ作品10年分214作を数えてわかった、アニメ化のタイミングと閾値。
  6. Aug 10

    TikTokでバズって売れた音楽アーティストは、全員当たるまでやめなかった人。

    TikTokの話になると、だいたいこの筋書きで語られます。無名の子がスマホ1台で弾き語りを上げたら火がついて、事務所から連絡が来て、気づいたら紅白に出ていた、みたいなサクセスストーリー。 わたしもそう思っていました。でも前回の記事を書いていて気づいたんですが、どうもそう簡単じゃないらしいと。 だから、この3年で名前が広まった8組のアーティストは、火がつく前に何をしていたのか。それを1組ずつ調べたんです。デビュー日、最初の投稿日、それ以前の所属、過去に出した曲。 結果、素人は一人もいませんでした。 いちばん短い人でも、火がつくまでに1年半の助走がありました。長い人は10年です。しかも何人かは、バズる前にすでにメジャーデビューまで済ませてる。 先に書いておくと、仕込みだったという話ではありません。8組とも、火がついた瞬間は本人にも事務所にもタイミングは読めていません。ただ、火がついたときに立っていた場所が、全員素人ではなかったという話です。 このsubstackでは「エンタメビジネス実況中継」と題して、エンタメやポップカルチャーについてビジネスとプロデューサー視点で発信しております。すこしでもこういった話題に興味があれば、ぜひ無料購読をよろしくお願いします。 imaseはバズる8ヶ月前にデビュー 「NIGHT DANCER」がTikTokで広がったのは2022年の夏です。そして翌2023年2月には、韓国のMelonでJ-POPとして初めて総合チャートのTOP100に入りました。のちに最高17位まで上がっています。日本の曲が海外で聴かれる流れを、いちばん象徴的に作った1曲だと思っています。 このとき、imaseさんはすでにメジャーデビューしていました。 デビュー曲「Have a nice day」の配信リリースは2021年12月19日です。「NIGHT DANCER」がリリースされたのは2022年8月19日なので、ちょうど8ヶ月前になります。つまり「バズって事務所に入った」ではなく、「メジャーデビューして8ヶ月後に当たった」なんですよね。順番が、違います。 ここでいうメジャーデビューは、配信シングル1曲です。 さらにさかのぼると、ギターを手にしたのが2020年11月ごろ、DTMを始めたのが2021年1月ごろ。TikTokに初めてオリジナル曲を投稿したのは2021年5月です。そのときのキャプションが、「音楽経験0の素人がオリジナル曲作ってみた(dtm歴4ヶ月)」でした。 このキャプションが、たぶん誤解の始まりです。本人は事実を書いているだけなんですけど、これを見た人は「素人が一発で当てた」と受け取ります。 実際には、初投稿から「NIGHT DANCER」のリリースまで1年3ヶ月あります。ギターを手にした2020年11月から数えると、TikTokで「NIGHT DANCER」が広まるまで1年6ヶ月です。この記事では、後者を助走と呼びます。 AKASAKIは、4本目で当たっている AKASAKIさんも同じ構造でした。 ギターを始めたのが2022年、16歳のとき。TikTokに初投稿したのが2023年9月で、「曲名ください」というキャプションをつけたオリジナルの弾き語りでした。 そこからシングルを出していきます。2024年4月に1stの「弾きこもり」、7月に2ndの「波まかせ」、同じ7月に3rdの「夏実」。この「夏実」が先に少し伸びました。そして同じ7月に、4曲目となる「Bunny Girl」のサビをTikTokに投稿しています。曲としてのリリースは、3ヶ月後の10月2日でした。 当たったのは、4曲目でした。 「Bunny Girl」のリリースは2024年10月2日、ストリーミング累計1億回突破の発表が2025年2月5日です。Billboard JAPANの総合ソング・チャート「Hot 100」には10月9日付で40位で初登場しています。初投稿から数えると、当たるまでに10ヶ月。 ギターを始めた日から数えると、2年かかっています。 3本目で少し伸びて、4曲目で当たった。そういう順番です。でもわたしが見ているのは弾数のほうで、3曲出せる体制を先につくったから4曲目が撃てた、と読むほうが実務に近い気がするんですよね。曲を出すには録って、ミックスして、配信登録して、ジャケットを作らないといけません。それを4回まわせる状態にあったこと自体が、助走です。 同じ形は、友成空さんにもあります。2021年3月31日、高校生活最後の日に5曲入りの音源『18』でデビューしていて、2022年11月にはBiSHの「I」を作詞作曲で提供しています。「鬼ノ宴」のデモをTikTokに投稿したのが2023年11月で、その翌月にはエイベックスのcutting edgeから「改札」を配信。 デビューから数えて、2年8ヶ月目の火でした。 楽音は6年 いま日本と韓国でいちばん再生されている「mosi mosi?」の楽音(ささね)さんも、初めて表に出た人ではありません。 2020年からモデルとして活動していて、TikTokでカバー投稿を始めたのが2025年3月。約1年でフォロワーが50万人を超えました。そのうえで、2026年4月22日に初のオリジナル曲を出しています。 モデル活動の開始から数えると、6年が経っていました。 素人の1曲目ではありません。しかもこの曲は本人の宅録ではなく、向田民子さんという作家がプロデュースしています。向田さんの言葉では「単なる楽曲提供ではなく、楽音というアーティストの楽曲プロデュースをさせていただいた形」だそうです。 50万フォロワーという土台と、プロの作家。この2つが揃った状態で撃った1曲目が、初週でTikTok総再生4億回でした。4億!!!!!! tuki.は13歳から たぶん、この8組でいちばん「シンデレラ」に近いのがtuki.さんです。中学3年生の弾き語りが、Billboard JAPANのHot 100で1位まで行ったので。 でも、TikTokに弾き語り動画を投稿し始めたのは13歳からでした。約1年半でフォロワーが50万人を超えていて、いちばん伸びた動画は1,860万回再生です。 「晩餐歌」を投稿したのは2023年7月で、13歳から数えて2年目です。50万人にいつ届いたかまでは公表されていませんが、少なくとも「晩餐歌」が最初の1本ではありませんでした。オリジナルを出すより先に、聴く人のほうが積み上がっていた人です。 1年半以上、弾き語りを上げ続けた人が、その先で自分のオリジナルを出した。そう書くと、ぜんぜんシンデレラの話じゃないんですよね。 起点の取り方は人によって違うので、棒の長さそのものを比べる図ではありません。見てほしいのは、どこを起点にしてもゼロから始まっている人が一人もいないことのほうです。 ここまで並べてくると、8組に共通しているものが1つあります。全員、火がつく前に何かを1周終えている、ということです。才能はもともと8組とも一流です。そこに新しく加わったのが、その1周ぶんの時間でした。 モナキのセカンドチャンス いちばんはっきり出ているのがモナキです。 純烈のリーダー・酒井一圭さんがプロデュースした「セカンドチャンスオーディション」から生まれた4人組で、開催は2023年10月。名前のとおり、一度どこかで順番が来なかった人が、もう一度立つ場所をつくるための企画です。メンバーの平均年齢は33歳でした。 デビュー曲のサビをTikTokに先行配信したのが2026年2月。メジャーデビューが4月8日。そして6月30日、TikTok上半期トレンド大賞2026で大賞を受賞しています。受賞理由に「デビュー前にして7億回再生を突破」と書かれていました。 ここで面白いのが、このバズがメンバーもスタッフも全員想定外だったと本人たちが言っていることなんですよね。 狙って当てたわけではない。偶然です。 でも、当たったあとが速かった。デビュー当日のイベントに約2,500人を集めて、8月にはZeppを3本押さえています。デビューから4ヶ月です。 平均33歳の4人が、なぜ4ヶ月でZeppを3本回せるのか。そこに至るまで、それぞれの場所で長く場数を踏んできた人たちだからだと思います。ステージの立ち方も、カメラの前での間の取り方も、イベントの動かし方も、もう体に入っている。 火がついた瞬間に、組み立てるほうが誰も慌てなかった。 M!LKの10年3ヶ月 同じことが、グループの側にもあります。 https://sd-milk.com/ M!LKは2014年11月24日に結成されて、「イイじゃん」の先行配信が2025年2月17日。10年3ヶ月です。この間に2023年10月22日には横浜アリーナで1万2,000人の単独公演をやっています。バズる前から、アリーナに立てるグループでした。 ME:Iは『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』から生まれた11人組ですが、番組シリーズ最多の1万4千人を勝ち抜いています。応募して選ばれなかった人が1万3千人以上います。この記事の後半で出てくる「

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