令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、ポリファーマシー対策と薬剤情報連携に関する検討結果が報告されました。この報告では、退院時の薬剤情報連携における評価の不均衡、ポリファーマシー対策の診療報酬評価の低活用、今後の制度改善の方向性という3つの重要な課題が明らかになりました。
退院時の薬剤情報連携では、保険薬局への情報提供は診療報酬で評価されているものの、医療機関への情報提供は評価対象外となっています。ポリファーマシー対策の評価では、薬剤総合評価調整加算の算定医療機関が全体の16.7%にとどまり、薬剤調整加算の算定回数は令和5年時点で全国で月当たり約2,680件、薬剤適正使用連携加算の算定回数は令和6年8月でわずか13件という極めて低い水準です。分科会では、回復期での対応強化、外来患者への評価拡大、質重視の評価への転換が提言されました。
退院時の薬剤情報連携における評価の課題
退院時の薬剤情報連携において、薬剤師の関与は質の高い指導につながるものの、連携先による評価の格差が課題となっています。
薬剤師が退院時の薬剤指導に関与する施設では、退院処方薬のみならず入院時持参薬なども含めた質の高い説明・指導を実施した割合が高くなります。この関与により、患者は退院後の薬剤管理について適切な情報を得ることができます。
しかし、この情報連携の評価には大きな格差があります。保険薬局への薬剤情報連携は、退院時薬剤情報連携加算として診療報酬上の評価対象となっています。一方、医療機関等に対して薬剤情報連携を実施しても、情報連携元である医療機関における退院時薬剤情報管理指導料等の評価の対象となっていません。
この評価格差は、実際の算定状況にも表れています。退院時薬剤情報管理指導料の算定回数は令和5年時点で月当たり約27万件であるのに対し、退院時薬剤情報連携加算の算定回数は令和4年時点で約1万件(10,386件)にとどまっており、大きな格差があります。退院時薬剤情報連携加算を実施していない施設は63.8%にのぼります。実施していない理由としては、他の業務負担が大きいこと、情報提供文書の作成にかかる労力が大きいことが上位を占めました。また、情報提供先の薬局がわからなかったこと、情報提供文書は医療機関宛に出すことが多いため対象外であることなども理由として挙げられました。
退院時薬剤関連情報連携における実施項目では、急性期・高度急性期病院から最も提供されていた項目は「退院処方一覧」でした。次いで「入院時持参薬や退院処方以外に継続服用が必要な薬剤に関する情報」、「入院中に変更となった処方に関する変更理由」が多く提供されています。連携先については、薬局の割合が最も高く62.1%であり、続いて医療機関が26.6%となっています。
ポリファーマシー対策の診療報酬評価の実態
ポリファーマシー対策の診療報酬評価は、算定医療機関・算定回数ともに極めて低い水準にとどまり、制度の実効性が課題となっています。
薬剤総合評価調整加算の算定医療機関は、病院全体の16.7%にすぎません。この加算は、患者の入院時に持参薬を確認し、関連ガイドライン等を踏まえて慎重な投与を要する薬剤等を確認するものです。その上で、医師、薬剤師、看護師等の多職種による連携の下で薬剤の総合的な評価を行い、処方内容の変更を実施します。
薬剤調整加算の算定回数は、令和5年時点で全国で月当たり約2,680件という低い水準です。この加算は、薬剤総合評価調整加算の算定要件を満たした上で、退院時に処方する内服薬が2種類以上減少した場合、または退院日までの間に抗精神病薬の種類数が2種類以上減少した場合などに算定できるものです。薬剤総合評価調整加算の算定回数が令和5年時点で月当たり約7,790件であることを考えると、実際に減薬まで至るケースは約3分の1にとどまっています。
薬剤適正使用連携加算の算定状況は、さらに深刻です。地域包括診療料・加算等の算定患者が入院・入所した場合に、入院・入所先の医療機関等と医薬品の適正使用に係る連携を行った場合の評価ですが、令和6年8月における算定回数はわずか13件でした。
算定が進まない理由は複数あります。薬剤適正使用連携加算を算定していない理由としては、「当該加算の存在を知らなかったため」が最も多く、次いで「内服薬の種類数を減らすことが困難である患者が多いため」が多い結果となりました。
薬剤総合評価調整加算を算定していない理由としては、「入院期間中に2種類以上の減薬を実施することが難しいため」が最も多くなっています。入院中に2種類以上の減薬を実施することが難しい理由として、「入院期間が短いこと」が43%、「処方の変更に対する反応を確認しながら1剤ずつ減量する必要があるため」が41%を占めました。
病院におけるポリファーマシー対策については、他職種から病院薬剤師に対する期待が大きい反面、実施が困難な状況があります。急性期では在院日数が短く十分な介入ができないこと、また人手不足で対象患者の抽出や検討する時間を確保できないことなどから、病院薬剤師が十分に取り組めない場合が多くなっています。
今後の改善に向けた方向性
分科会では、回復期での対応強化、算定要件の見直し、質重視の評価への転換という3つの改善方向が提言されました。
回復期での対応強化については、急性期病棟での限界を踏まえた意見が出されました。急性期病棟では、在院中に減薬してその後の経過を確認することは困難であり、回復期以降の病棟で対応すべきであるとの意見がありました。また、回復期病棟等での薬剤情報連携の状況についても示してほしいとの意見があり、その評価を検討すべきではないかとの意見が出されました。
算定要件の見直しについては、現状の要件が厳しすぎるとの指摘がありました。薬剤適正使用連携加算の算定回数は極めて少なく、算定要件が厳しすぎるのではないかとの意見が出されました。現状では入院・入所患者を対象とした評価となっていますが、他院にも併せて通院する外来患者について、処方内容、薬歴等に基づく相談・提案を他院へ行った場合には、評価の対象としてはどうかとの意見がありました。
質重視の評価への転換については、薬剤数だけでなく対策の質を評価すべきとの意見が出されました。ポリファーマシー対策について、薬剤数ではなく、ポリファーマシー対策が適正に実施されているか、質を評価すべきとの意見がありました。「抗コリン薬リスクスケール」や「高齢者施設の服薬簡素化提言」等を踏まえ、検討すべきとの意見が出されました。
まとめ
ポリファーマシー対策と薬剤情報連携については、退院時の情報提供先による評価格差の解消、ポリファーマシー対策の評価制度の実効性向上、回復期での対応強化と質重視の評価への転換が求められています。薬剤総合評価調整加算の算定医療機関が16.7%、薬剤調整加算が月当たり約2,680件、薬剤適正使用連携加算が月13件という低い算定実績は、制度の抜本的な見直しの必要性を示しています。分科会での議論を踏まえ、今後の診療報酬改定において、これらの課題に対する具体的な改善策が検討されることが期待されます。
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