令和7年度第13回入院・外来医療等の調査・評価分科会において、入院時の食事療養に関する現状分析と今後の課題が報告されました。食費基準額は約30年ぶりに引き上げられたものの、医療機関の給食経営は依然として厳しい状況が続いています。この報告書では、食費基準額の引き上げ効果の検証結果、嚥下調整食の評価の必要性、食堂加算の実態と課題が明らかにされました。
入院時食事療養の基準額は令和6年6月に1食当たり30円、令和7年4月に更に20円引き上げられました。しかし調査結果では、給食の質が向上したとの回答はわずかで、全面委託施設の約半数は給食委託費を増額し、直営施設の約半数は食材を安価なものに変更するなどの経費削減を行っていました。また嚥下調整食は特別食加算の対象外ですが、必要とする患者は一定数存在し、普通食より食材費が高いという課題があります。分科会では、患者負担増を含めた食費基準の更なる見直し、嚥下調整食の特別食加算への追加、食堂加算の要件見直しなどが提言されました。
食費基準額引き上げの効果と医療機関の対応
食費基準額は約30年ぶりに段階的な引き上げが実施されましたが、医療機関の給食運営に十分な改善をもたらしていません。令和6年6月の30円引き上げと令和7年4月の20円引き上げにより、1食当たりの総額は640円から690円となりました。この引き上げは食材費高騰への対応として実施されましたが、一般所得者の自己負担は460円から510円に増加し、低所得者には配慮した負担額が設定されています。
基準額引き上げ後の医療機関の対応を調査した結果、令和6年6月から令和7年3月の期間と令和7年4月以降で大きな変化は見られませんでした。全面委託施設では約46%が給食委託費を増額したと回答し、一部委託や完全直営施設では約47%が食材料を安価なものに変更するなどの経費削減を実施していました。給食の質が上がったと回答した施設は全面委託で4.2%、一部委託で1.6%、完全直営で3.1%に過ぎず、基準額の引き上げが直接的に給食の質向上につながっていない実態が明らかになりました。
委託事業者からの値上げ要請も相次いでおり、令和6年6月以降、全面委託の約7割、一部委託の約5割の医療機関が委託事業者から値上げの申し出を受け、契約変更に対応していました。完全直営の医療機関の3.6%(22施設)は、給食運営を委託から完全直営に切り替えるという選択をしていました。この対応は、委託費の上昇により直営化の方が経営的に有利と判断した結果と考えられます。
分科会では、米などの食材費や人件費が更に高騰している現状を踏まえ、財源確保が困難であれば患者負担増も含めた見直しの検討が必要との意見が出されました。また経営努力により食材の組合せを変えて対応する場合、食事の質への影響が懸念されるため、給食のコスト構造を踏まえた実態把握と対応の検討が必要との指摘もありました。病院給食が赤字で提供されている実態を患者や国民に理解してもらった上で、一部自己負担での引き上げを検討することも選択肢の一つとの意見も出されています。
嚥下調整食の課題と特別食加算への追加検討
嚥下調整食は現在特別食加算の対象ではありませんが、必要とする患者は一定数存在し、その評価の必要性が指摘されています。栄養摂取が経口摂取のみの患者のうち、急性期病棟では約1割、包括期病棟では約2割、慢性期病棟では約4割が嚥下調整食の必要性があることが調査で明らかになりました。特に急性期一般入院料1では経口摂取のみの患者の約8%、回復期リハビリテーション病棟入院料1では約18%、療養病棟入院料1では約38%が嚥下調整食を必要としています。
嚥下調整食は普通食より食材費が高いという課題があります。嚥下機能に配慮した食形態の調整や、見た目を改善した調理には特別な技術と手間が必要となり、それがコスト増につながっています。しかし見た目を改善し、適切な栄養量を確保した嚥下調整食の提供により、エネルギー摂取量の増加やADL(日常生活動作)の改善が認められたとの報告もあり、その医療的効果は明らかになっています。
分科会では、嚥下調整食が必要な患者は一定数いるにもかかわらず特別食加算の対象となっていない点について、検討すべきではないかとの意見が出されました。また見た目や栄養量に配慮した嚥下調整食の取組は進めるべきだがコストがかかるため、どう整理するか検討の余地があるとの意見もありました。現在の特別食加算は腎臓食、肝臓食、糖尿食など15種類の疾病治療食が対象となっていますが、嚥下調整食は含まれていません。
嚥下調整食を特別食加算の対象とすることで、医療機関は質の高い嚥下調整食を提供するインセンティブが働き、結果として患者の栄養状態改善とADL向上につながる可能性があります。ただし加算の追加には財源確保の課題もあるため、診療報酬改定での慎重な検討が求められます。
食堂加算の算定実態と要件見直しの必要性
食堂加算は一定基準を満たす食堂を備えた病棟の入院患者に食事を提供した場合、1日につき50円を算定できる制度です。算定率は約7割と高い水準にありますが、実際の食堂利用状況には課題があることが明らかになりました。食堂の有無を調査した結果、施設全体では65.0%が食堂を有していますが、急性期一般や特定機能病院では58.0%、地域包括ケアや回復期リハビリテーション病棟では77.0%、療養病棟では92.0%と、病棟機能により食堂の設置状況に差がありました。
食堂での食事の状況を詳しく見ると、「希望する患者のみ食堂で食事をしている」が最も多く、全体で32.5%を占めています。「自分で移動が可能な患者は食堂で食事をしている」は18.3%、「病室で食事を希望する患者以外は食堂で食事をしている」は15.1%でした。一方で「新型コロナウイルス感染症の流行以前は食堂を使用していたが、現在はしていない」が13.2%、「新型コロナウイルス感染症の流行以前から食堂はあるが、使用していない」が9.3%と、食堂を設置しているにもかかわらず使用していない医療機関も一定数存在しています。
病棟機能別に見ると、急性期一般や特定機能病院では「希望する患者のみ食堂で食事をしている」が34.0%と最も多く、次いで「新型コロナウイルス感染症の流行以前は食堂を使用していたが、現在はしていない」が14.2%でした。地域包括ケアや回復期リハビリテーション病棟では「希望する患者のみ食堂で食事をしている」が26.4%、療養病棟では「自分で移動が可能な患者は食堂で食事をしている」が33.0%と最も多くなっています。
分科会では、食堂加算を算定していても食堂を使用していない実態があるのであれば、加算の在り方について検討が必要ではないかとの意見が出されました。食堂での食事は患者の社会性維持やリハビリテーション効果が期待できる一方で、感染対策や人員配置の問題から実際の運用が困難な場合もあります。加算要件の見直しにあたっては、食堂の実質的な利用状況を評価する仕組みの導入や、病棟機能に応じた柔軟な要件設定が検討課題となります。
多様なニーズへの対応と特別料金の現状
入院患者の多様なニーズに対応して、医療機関は患者から特別の料金の支払いを受けて特別メニューの食事を提供することができます。現行の制度では1食当たり17円を標準とする追加料金の目安が示されていますが、この金額設定の妥当性について疑問が呈されています。調査結果によると、約8割の医療機関は行事食の対応を追加料金なしで実施し、約2割から3割の医療機関は選択メニューやハラール食等の宗教に配慮した食事の対応を追加料金なしで行っていました。
行事食は季節の節目や記念日に提供される特別な食事で、患者の生活の質向上に寄与する取組です。多くの医療機関がこれを通常の食事療養の範囲内で提供していることは、患者サービスの観点から評価できます。しかし選択メニューやハラール食などの個別対応は、食材の調達や調理工程の管理に追加的なコストが発生するにもかかわらず、多くの施設が追加料金を徴収せずに対応している実態が明らかになりました。
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