生成AIの活用が企業の競争力を左右する時代、その裏側で「シャドーAI」という新たな脅威が静かに広がっています。利便性を求めて従業員が個人的に利用するAIサービスが、気づかぬうちに重大な情報漏洩の温床となるリスクを、企業はどのように管理すればよいのでしょうか。公式ツールを導入するだけでは、この問題は解決しないかもしれません。
今回は、IT調査・コンサルティングの国内最大手、株式会社アイ・ティー・アールでシニアナリストを務める入谷光弘さんをゲストにお迎えし、「IT資産管理」の視点から生成AI時代のリスクと対策の最前線を解き明かします。
前半は、クラウド化やテレワークによって様変わりしたIT資産管理の現状から議論を始め、企業の公式ツールだけでは満足できない従業員が生み出す「シャドーAI」の実態と、そこに潜む情報漏洩リスクについて深く掘り下げました。
■□ ハイライト □■
IT資産管理、激変の20年: かつてはPCやサーバーといった物理的な「モノ」の管理が中心でしたが、クラウドやテレワークの普及で、管理対象はSaaS、そして「ID」そのものへと拡大しました 。なぜ今、資産管理の重要性がかつてなく高まっているのか、その構造的変化を解説します 。
新たな脅威「シャドーAI」の罠: 会社が正式に生成AIを導入しても、それが自分の業務に合わない、使いにくいと感じた従業員が、より便利な別のAIサービスを個人で使い始めてしまう―― 。この「シャドーAI」がなぜ発生するのか、生産性向上の裏で静かに進行するリスクのメカニズムを考察します。
あなたの会社も?気づかぬうちに進む情報漏洩: シャドーAIが引き起こす最大のリスクは、機密情報や顧客情報、そして自社の知的財産の漏洩です 。ある調査では、シャドーAIによるインシデントで最も漏洩したのは「顧客の機密情報(65%)」でした 。従業員に悪意がなくとも、企業の競争力の源泉が外部に流出する危険性を語ります。
人手不足という現実: 中堅・中小企業の苦悩: 生成AIの活用が不可欠と理解しつつも、セキュリティ対策まで手が回らないのが多くの企業の現実です。特にIT人材の不足は深刻で、セキュアな運用体制を構築することの難しさを指摘します。
<ゲスト・プロフィール>
入谷 光弘(いりや・みつひろ)さん
株式会社アイ・ティ・アール シニアアナリストhttps://www.itr.co.jp/company/analyst/mitsuhiro-iriya
外資系IT市場調査会社において15年間アナリストに従事し、ITインフラストラクチャ、システム運用管理、アプリケーション開発プラットフォームの領域について、市場・技術動向に関する調査とレポート執筆、ユーザー企業に対するアドバイザリー業務、ベンダーのビジネス・製品戦略支援を担当。クラウドサービス市場およびソフトウェア市場の国内における調査責任者も務めた。また、複数の外資系ITベンダーにおいては、事業戦略・企画の立案、新規事業調査、競合調査・分析にも携わった。イベントやセミナーでの講演やメディアへの記事寄稿の実績を多く持つ。 2023年3月よりITRのアナリストとして、主にクラウド・コンピューティング、インフラストラクチャ、開発プラットフォーム、システム運用管理の分野を担当。グリーントランスフォーメーションに関する市場・技術動向調査にも従事する。
■□ 収録後記 □■
入谷さんとのお話を通じ、生成AIという強力なツールの「光」の部分だけでなく、その裏側に広がる「影」の管理が、いかに現代の企業にとって喫緊の課題であるかを改めて痛感しました。
特に印象的だったのは、「会社が良かれと思って導入した公式AIが、逆にシャドーAIを生む引き金になりうる」という指摘です 。これは、単にツールを提供すればDXが進むという安易な考えへの警鐘であり、従業員の利用実態にまで目を配ることの重要性を示唆しています。
また、シャドーAIへの対策は、現時点では完璧な技術的解決策がなく、ガイドラインの策定や従業員教育といった地道な運用面の努力に頼らざるを得ないというお話も、多くのIT部門担当者が直面する現実だと思います 。
今回の前編は、後半で語られる「独自LLM(大規模言語モデル)のリスク」や「AI vs AIのセキュリティ攻防」といった、より未来の脅威を理解するための重要な土台となります。自社のITガバナンスのあり方を見つめ直すきっかけとして、ぜひお聴きいただければ幸いです。
(ホスト:JCGR 川端隆史)
Informações
- Podcast
- FrequênciaDuas vezes/mês
- Publicado25 de setembro de 2025 às 21:00 UTC
- Duração26min
- Temporada2
- Episódio18
- ClassificaçãoLivre