渡部龍朗の宮沢賢治朗読集

渡部製作所

Audibleで数々の文学作品を朗読してきたナレーター 渡部龍朗(わたなべたつお) が、宮沢賢治作品の朗読全集の完成を目指し、一編ずつ心を込めてお届けするポッドキャスト。 ▼ 朗読音声とテキストがリアルタイムで同期する新体験オーディオブックアプリ「渡部龍朗の宮沢賢治朗読集」iOS版 / Android版 公開中 ▼ 【iOS】https://apps.apple.com/ja/app/id6746703721 【Android】https://play.google.com/store/apps/details?id=info.watasei.tatsuonomiyazawakenjiroudokushu 幻想的で美しい宮沢賢治の言葉を、耳で楽しむひとときを。 物語の息遣いを感じながら、声に乗せて広がる世界をお楽しみください。

  1. いちょうの実

    7시간 전

    いちょうの実

    📖『いちょうの実』朗読 – 千の子どもたちの旅立ちの朝🍂✨ 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『いちょうの実』。 空のてっぺんがまるでカチカチに焼きをかけた鋼のようにつめたく澄みきった明け方。東の空が桔梗の花びらのようにあやしい底光りをはじめる頃、丘の上の一本のいちょうの木に実った千人の子どもたちは、いっせいに目を覚まします。きょうこそが、旅立ちの日——。 「ぼくなんか落ちるとちゅうで目がまわらないだろうか」と不安を口にする子、水筒にはっか水を用意して仲間に分けようとする子、「あたしどんなとこへいくのかしら」「どこへもいきたくないわね」「おっかさんとこにいたいわ」と別れを悲しむ女の子たち。木のいちばん高いところにいる男の子たちは「ぼくはきっと黄金色のお星さまになるんだよ」と空への憧れを語り合い、別の子は魔法の網を持って杏の王様のお城のおひめ様を救う冒険を夢見ています。くつが小さいと困る子、おっかさんにもらった新しい外套が見つからなくて泣きそうになる子——千人の子どもたちそれぞれに、不安も希望も夢も、そして母への思いもあります。 おかあさんであるいちょうの木は、あまりの悲しみに扇形の黄金の髪の毛を昨日までにみんな落としてしまいました。そしてきょう、まるで死んだようになってじっと立っています。 星がすっかり消え、東の空が白く燃えるようにゆれはじめたとき——光の束が黄金の矢のように一度にとんできました。子どもらはまるでとびあがるくらいかがやきます。北から氷のようにつめたい透きとおった風がゴーッと吹いてきます。「さよなら、おっかさん」「さよなら、おっかさん」——。 この物語には、別れの朝の空気がすみずみまで満ちています。冷たく澄んだ明け方の空、霜のかけらが風に流される音、桔梗色から白光へと移りゆく東の空——そうした繊細な自然描写の中で、いちょうの実である子どもたち一人ひとりの声が丁寧に拾い上げられていきます。不安と希望、悲しみと期待、現実的な心配事と無邪気な空想が、千通りの小さな声となって語られます。子どもたちがそれぞれに準備をし、互いに励まし合い、別れを惜しみ、それでも旅立たなければならない——その一つひとつの会話に耳を傾けていると、あたかも自分もその木の下に立って、子どもたちの旅立ちを見守っているような感覚に包まれます。 母と子の別れ、成長と旅立ち、そして自然の営み。冷たい北風とあたたかな陽の光。悲しみの中にある祝福。この物語が描き出す、ある秋の朝の光景を、朗読でじっくりとお聴きください。

    11분
  2. 化物丁場

    11월 2일

    化物丁場

    📖『化物丁場』朗読 – 軽便鉄道の車窓から語られる、何度も崩れる工事現場の不思議🚂🏔️ 雨が五六日続いた後の朝、やっとあがった空には、まだ方角の決まらない雲がふらふらと飛び、山脈も異様に近く見えています。黄金の日光が青い木や稲を照らしてはいますが、なんだかまだほんとうに晴れたという気がしない、そんな不安定な空気の中、「私」は西の仙人鉱山への用事のため、黒沢尻で軽便鉄道に乗り換えます。 車室の中では、乗客たちが昨日までの雨と洪水の噂で持ちきりです。そんな中、「私」のうしろの席で、突然太い強い声が響きます。「雫石、橋場間、まるで滅茶苦茶だ。レールが四間も突き出されてゐる」——線路工夫の半纒を着た男が、誰に言うとなく大きな声でそう告げたのです。ああ、あの化物丁場だな。「私」は思わず振り向きます。 化物丁場——それは、鉄道敷設の際に何度も何度も理由もなく崩れ続けた、不思議な工事現場のことでした。雨が降ると崩れる。けれども、水のせいでもないらしい。全くをかしい、と工夫は言います。黒くしめった土の上に砂利を盛ったこと、それでもそれだけでは説明のつかない、あの場所の不気味さ。 工夫が語り始めたのは、十一月の凍てつく空気の中での体験でした。百人からの人夫で何日もかかって積み直した砂利が、すっかり晴れた夜、明け方近くに突然崩れ落ちる。アセチレンランプの青白い光の中、みんなが見ている前で、まだ石がコロコロと崩れ続ける様子。技師は目を真っ赤にして怒鳴り散らし、工夫たちは、一度別段の訳もなく崩れたのなら、いずれまた格別の訳もなしに崩れるかもしれないと思いながら、それでも言いつけられた通りに働き続けます。 乱杭を打ち込み、たき火を焚いて番をする夜もありました。五日の月の下、遠くで川がざあと流れる音だけが響く中で過ごす時間。そして十二月に入り、雪が降り、また崩れ——何度も何度も繰り返される崩壊と積み直し。今年はもうだめなんだ、来年神官でも呼んで、よくお祭をしてから、コンクリーで底からやり直せ、と工夫たちは言い合いながらも、雪の中で作業を続けていったのです。 走る汽車の車窓から見える青い稲田、白く光る線路、栗駒山の青い姿。現実の風景の中で語られる、何度も崩れる工事現場の話。それは何を意味しているのか——技術と自然、人間の営みと土地の記憶、そして説明のつかない出来事。雨上がりの不安定な空気の中、軽便鉄道は西へ西へと進んでいきます。 この物語は、軽便鉄道という日常的な空間の中で、偶然乗り合わせた線路工夫の語りを通して展開されます。幻想的な世界ではなく、現実の鉄道工事という具体的な労働の場面を舞台にしながら、そこに不可解な出来事が幾重にも重なっていく構成。雨上がりの不安定な天候、行き交う雲、近く見える山脈といった自然描写が、語られる出来事の不思議さを一層際立たせています。何度崩れても積み直し続ける工夫たちの姿と、それでもなお崩れ続ける場所——語り手の淡々とした口調の中に滲む、説明のつかないものへの畏れ。軽便鉄道の車窓から見える東北の風景とともに、この不思議な体験談を朗読でお楽しみください。 #鉄道 #月

    22분
  3. まなづるとダァリヤ

    10월 26일

    まなづるとダァリヤ

    📖『まなづるとダァリヤ』朗読 – 丘の上で輝きを競う花たちと、星空を渡る鳥の物語🌸🌙 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『まなづるとダァリヤ』。 果物畑の丘のいただきに、ひまわりほどの背丈を持つ黄色なダァリヤが二本と、さらに高く赤い大きな花をつけた一本のダァリヤがありました。南から荒れ狂う風も、初めて吹き渡る北風又三郎の笛も、この立派な三本のダァリヤを揺るがすことはありません。 赤いダァリヤは、花の女王になろうと願っていました。「こればっかしじゃ仕方ないわ。あたしの光でそこらが赤く燃えるやうにならないくらゐなら、まるでつまらないのよ」——その言葉には、誰よりも輝きたいという強い思いが込められています。黄色なダァリヤたちは、日ごとに美しさを増していく赤い花を賞賛し、その後光の大きさに目を見張ります。 夜ごと星空の下を飛び渡るまなづるは、赤いダァリヤに声をかけながら、向こうの沼の方へと消えていきます。そこには、つつましく白く咲く一本のダァリヤがありました。まなづるはいつも、静かにその白い花に挨拶を交わしていくのです。 太陽は毎日かがやき、赤いダァリヤの美しさは日を追うごとに増していきます。コバルト硝子の光の粉が舞う空の下、黄水晶の薄明が沈み、藍晶石のような夜が訪れ、また琥珀色の朝が来る——季節は秋へと深まり、丘の果物たちも色づいていきます。けれども、美しさを極めようとする赤いダァリヤの姿に、ある日、黄色な花たちは何か恐ろしいものを感じ取ります。「あたしたちには何だかあなたに黒いぶちぶちができたやうに見えますわ」——それは桔梗色の薄明の中での、おずおずとした告白でした。 丘の上で輝きを競う花たち、夜空を渡る鳥、そしてつつましく咲く白い花。光と影、美しさと移ろい、声高な願いと静かな存在——それらが交錯する秋の日々の中で、この物語は静かに、しかし確かに何かを語りかけてきます。宮沢賢治が描く花たちの世界は、きらびやかな色彩と詩的な言葉に満ちながら、同時に深い静けさを湛えています。 果物畑の丘に咲くダァリヤたちの、ある秋の物語。朗読でじっくりとお楽しみください。 #傲慢

    13분
  4. おきなぐさ

    10월 19일

    おきなぐさ

    📖『おきなぐさ』朗読 – 銀の糸をまとう小さな花の、光と風の物語🌸✨ 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『おきなぐさ』。 「うずのしゅげを知っていますか」——そう語りかけられて始まります。植物学ではおきなぐさと呼ばれるこの花は、黒朱子の花びらと青白い銀びろうどの葉を持ち、まるで黒い葡萄酒を湛えた変わり型のコップのように見えます。まっ赤なアネモネの従兄、きみかげそうやかたくりの花のともだち——この小さな花をきらいなものはありません。 語り手は、花の下を往き来する蟻に尋ねます。「おまえはうずのしゅげはすきかい、きらいかい」。蟻は活発に答えます。「大すきです。誰だってあの人をきらいなものはありません」。黒く見えるこの花は、お日様の光が降る時には、まるで燃え上がってまっ赤に見えるのだと蟻は教えてくれます。花を透かして見る小さな生き物たちには、この花の真の姿が見えているのです。銀の糸が植えてあるようなやわらかな葉は、病気にかかった仲間のからだをさすってやるために使われるのだといいます。 向こうの黒いひのきの森の中のあき地では、山男が倒れた木に腰掛けて、じっとある一点を見つめています。鳥を食べることさえ忘れて、その黝んだ黄金の眼玉を地面に向けているのは、かれ草の中に咲く一本のうずのしゅげが風にかすかにゆれているのを見ているからです。 やがて場面は、小岩井農場の南、ゆるやかな七つ森のいちばん西のはずれへと移ります。かれ草の中に咲く二本のうずのしゅげ。まばゆい白い雲が小さなきれになって砕けてみだれ、空をいっぱい東の方へ飛んでいく春の日。お日様は何べんも雲にかくされて銀の鏡のように白く光ったり、またかがやいて大きな宝石のように蒼ぞらの淵にかかったりします。山脈の雪はまっ白に燃え、野原は黄色や茶の縞になり、掘り起こされた畑は鳶いろの四角なきれをあてたように見えます。 その変幻の光の中で、二本のうずのしゅげは夢よりもしずかに話し合います。「ねえ、雲がまたお日さんにかかるよ」「走って来る、早いねえ」——雲のかげが野原を走り、山の雪の上をすべり、まるでまわり燈籠のように光と影が交互に訪れます。西の空から次々と湧き出てくる雲、どんどんかけて来ては大きくなり、お日様にかかっては雲のへりが虹で飾ったように輝く様子を、二人はじっと見つめているのです。 そこへ風に流されて降りて来たひばりが、強い風の苦労話をします。「大きく口をあくと風が僕のからだをまるで麦酒瓶のようにボウと鳴らして行く」と。しかしうずのしゅげは言います。「だけどここから見ているとほんとうに風はおもしろそうですよ。僕たちも一ぺん飛んでみたいなあ」。ひばりは答えます。「飛べるどこじゃない。もう二か月お待ちなさい。いやでも飛ばなくちゃなりません」。 それから二か月後。丘はすっかり緑に変わり、ほたるかずらの花が子供の青い瞳のように咲き、小岩井の野原には牧草や燕麦がきんきん光っています。風はもう南から吹いていました。春の二つのうずのしゅげの花は、すっかりふさふさした銀毛の房にかわっていました。そしてその銀毛の房はぷるぷるふるえて、今にも飛び立ちそうです——。 光と影、風と雲、生き物たちの声が交わる野原で、小さな花が見つめるものは何か。黒く見えながら赤く燃える花。銀の糸をまとう葉。そして風を待つ銀毛の房。蟻や山男やひばりとの対話を通して、一本の植物の静かな時間が丁寧に描き出されていきます。変幻する春の光、すきとおった風、そして飛び立つ瞬間——野原に咲く小さな花の、見えないものを見る力と、やがて訪れる旅立ちの時が、詩的な言葉で綴られていきます。 朗読でじっくりとお楽しみください。 #星座

    15분
  5. 畑のへり

    10월 12일

    畑のへり

    📖『畑のへり』朗読 – 小さな蛙たちが見た畑の不思議な一日🐸🌾 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『畑のへり』。 麻が刈り取られた後、畑のへりに一列に植えられていたとうもろこしが、ようやく立派に目立つようになりました。小さな虻やべっ甲色の透き通った羽虫たちが代わる代わる訪れて挨拶していきます。とうもろこしには頂上にひらひらした穂が立ち、大きな縮れた葉のつけ根には尖った青いさやができていました。風にざわざわと鳴る、穏やかな畑の一日——。 そこへ一匹の蛙が跳んできて、このとうもろこしの列を目にして仰天します。上等の遠眼鏡で確かめた蛙は、何かを見るや否や、恐怖のあまり一目散に逃げ出しました。逃げた先で出会ったもう一匹の蛙に、息を切らせながら語るその姿——遠眼鏡に映ったものは、蛙の目には恐ろしい存在として映ったようです。兵隊なのか、幽霊なのか、何やら物々しい装いをした不気味な一団が、そこに並んでいたというのです。 しかしもう一匹の蛙は遠眼鏡で確かめて、落ち着いて答えます。あれは恐ろしいものではない、ただのとうもろこしだと。けれども最初の蛙は納得しません。その装いのおかしさ、常識外れの贅沢さを次々と指摘します。二匹の議論は続き、世の中にはさまざまな不思議な姿をした生き物がいるのだという話になっていきます。 そうこうしているうちに、人間が実際に畑に現れます。二匹の蛙は葉陰に隠れ、遠眼鏡でその様子を観察し始めます。人間がとうもろこしに何かをしている様子は、小さな蛙たちの目にはどのように映るのでしょうか。彼らの会話からは、見慣れた日常の光景が、まったく別の意味を帯びた出来事として解釈されていく様子が伝わってきます。 この物語では、畑という身近な場所が、小さな生き物たちの視点を通して見ると、まったく別の世界に変わります。とうもろこしは謎めいた存在になり、人間は不思議な力を持つ生き物になる——蛙たちの会話を通して描かれるのは、見る者によって世界がいかに異なって見えるかということ、そして私たちが当たり前だと思っている日常が、別の目から見ればどれほど奇妙で驚くべきものかということです。 蛙たちのユーモラスな会話、誤解と納得、恐怖と安心が入り交じる軽快なやりとり。畑のへりで繰り広げられる小さな騒動は、やがて静かに幕を閉じます。さやを失ったとうもろこしは、それでもやはり穂をひらひらと空に揺らしているのです。 風にざわめく畑の穂、透き通った羽虫たち、そして遠眼鏡を覗き込む二匹の蛙——日常の風景の中に潜む不思議と、小さな生き物たちの生き生きとした世界を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #蛙 #動物が主人公 #人と動物

    10분
  6. 革トランク

    10월 5일

    革トランク

    📖『革トランク』朗読 – 失敗と見栄と、ある青年の帰郷🎒🚂 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『革トランク』。 楢岡の町に出て工学校の入学試験を受けた斉藤平太。いくつかの幸運が重なって、どうにか卒業までこぎつけた彼は、村に戻って建築設計の看板を掲げます。茶色の乗馬ズボンに赤ネクタイという出で立ちで、村の建物の設計を請け負った平太。あちこち忙しく監督して回りますが、どうも大工たちの様子がおかしい。みんな変な顔をして下ばかり向き、なるべく物を言わないようにしているのです。 工事が完成したとき、平太は自分の致命的な設計ミスに気づきます。すっかり気分を悪くした彼は、そっと財布を開け、わずかな所持金を確かめると、その乗馬ズボンのまま、故郷を離れて東京へと逃げ出しました。 東京での暮らしは厳しいものでした。言葉の訛りもあって仕事が見つからず、ついには倒れてしまいます。区役所に助けられ、撒水夫として働き始めた平太は、実家にもっともらしい理由をつけた葉書を送ります。しかし村長である父からの返事はありませんでした。 それから二年。苦しい日々を過ごしながらも、平太は建築の仕事に戻り、監督として働くようになります。そんな彼のもとに、母の病を知らせる電報が届きます。 月給をとったばかりだった平太は、立派な革のトランクを買います。けれども中に入れるものは、着ている服以外には何もありません。親方から要らない設計図を貰い、それをぎっしりと詰め込んだのでした。 故郷の停車場に降り立った平太。大きな革トランクを担いで、野道を歩き、渡し場へとたどり着きます。夕暮れの川辺、せきれいが水面すれすれに飛び、月見草が咲いています。そこに集まってきた子供たちは、その立派なトランクを珍しがります——その声を聞きながら、平太は何とも言えず悲しい、寂しい気持ちになるのでした。 この物語には、失敗から逃げ出した青年の姿が、ユーモアと哀愁を帯びて描かれています。繰り返される独特のフレーズが、どこか滑稽でありながら、人生の不条理さをも感じさせます。田舎と都会、見栄と現実、そして帰郷——夕暮れの川辺で立派なトランクを前にする平太の姿に、人間の弱さと切なさが静かに響きます。 朗読でじっくりとお楽しみください。 #衝動

    15분
  7. タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった

    9월 28일

    タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった

    📖『タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった』朗読 – 春の野原で繰り広げられる少年の不思議な一日🌿🌞 静かに語られる物語の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『タネリはたしかにいちにち噛んでいたようだった』。 早春の朝、ホロタイタネリという少年が、冬の間に準備した藤蔓を叩きながら、不思議な節回しの歌を口ずさんでいます。「西風ゴスケに北風カスケ」という独特の囃子詞が繰り返される中、窓の外に広がる春の野原の輝きと、陽炎の誘いに抗えなくなったタネリは、仕事を放り出して飛び出していきます。 藤蔓を噛みながら野山を駆け回るタネリが出会うのは、まだ冬の眠りから覚めない木々たち、不思議な思考を漏らす生き物、そして一羽の美しい大きな鳥。春の息吹と冬の名残が混在する風景の中で、タネリは様々な存在に話しかけ、歌いかけ、遊びを求めます。時に相手にされず、時に恐ろしい何かに出会い、時に心を奪われるような美しいものを追いかけて。 野原から丘へ、湿地から森へと続くタネリの放浪は、子どもの純粋な好奇心と孤独が入り混じる一日の冒険となっていきます。即興の歌や呪文のような言葉遊びが物語を彩り、現実と幻想の境界があいまいになる春の一日が、独特のリズムとともに展開されていきます。 早春の風景を舞台に、自然の事物と対話を試みる少年の姿が描かれるこの物語。タネリが一日中噛んでいたという藤蔓、繰り返される「西風ゴスケに北風カスケ」という囃子詞、そして春の野山で出会う不思議な存在たち。宮沢賢治独特の言葉のリズムと、土着的でありながら幻想的な世界観が織りなす、春の一日の物語を朗読でじっくりとお楽しみください。 #冒険 #人と動物 #衝動 #少年

    20분
  8. 氷河鼠の毛皮

    9월 21일

    氷河鼠の毛皮

    📖『氷河鼠の毛皮』朗読 – 極北へ向かう列車で繰り広げられる奇妙な冒険❄️🚂 極寒の地へ向かう列車で繰り広げられる奇妙な冒険の世界へようこそ。今回お届けするのは、宮沢賢治の『氷河鼠の毛皮』。氷がまるでお菓子のような形をしているほど寒い北の地から、風に吹き飛ばされて切れ切れにやって来たという、不思議な語り口で始まる物語です。 十二月二十六日、イーハトヴは激しい吹雪に見舞われていました。町は白だか水色だかわからない雪の粉でいっぱいになり、風は絶え間なく電線や枯れたポプラを鳴らし続けています。そんな中、夜八時のベーリング行最大急行に乗り込む人々がいました。北極の近くまで行くのですから、みんなすっかり用意を整えています。着物は厚い壁のように着込み、馬油を塗った長靴を履き、トランクにまで寒さ対策を施して。 車内には様々な人々が乗り合わせていました。その中でも特に目を引くのは、顔の赤い肥った紳士でした。毛皮を一杯に着込み、二人前の席を取り、アラスカ金の大きな指環をはめ、十連発の素敵な鉄砲を持った、いかにも元気そうなその人物。彼はイーハトヴのタイチと名乗り、ラッコ裏の内外套、海狸の中外套、黒狐表裏の外外套、さらには氷河鼠の頸のところの毛皮だけで作った上着まで身につけていました。四百五十匹分もの氷河鼠の毛皮で作られたその上着は、実にぜいたくなものでした。タイチは黒狐の毛皮九百枚を持って帰るという賭けをしたのだと、得意げに語ります。 同じ車内には、堅い帆布の上着を着て愉快そうに口笛を吹いている若い船乗り、痩せた赤ひげの男、商人風の人々など、それぞれに事情を抱えた乗客たちが座っていました。列車は吹雪の中を一生懸命駆け抜け、やがて雪は止み、青い月が鉄色の冷たい空にかかりました。野原の雪は青白く見え、唐檜やとど松が真っ黒に立ってちらちらと窓を過ぎていきます。 酔いが回ったタイチは、帆布一枚だけの船乗りの青年に毛皮を貸そうと申し出ますが、青年は月とオリオン座の空をじっと眺めて答えません。氷山の稜が桃色や青にぎらぎら光って、列車は極北の地へと向かって進んでいきます。 この物語は、語り手自身が「風に吹き飛ばされて来た切れ切れの報告」と述べているように、断片的で幻想的な語り口で進んでいきます。極寒の地へ向かう列車という閉ざされた空間で、贅沢な毛皮に身を包んだ人間と、その毛皮の持ち主である動物たちとの対立が描かれます。人間の欲望と自然界との緊張関係、そして意外な結末へと導かれる展開は、読む者を不思議な世界へと誘います。寒さと温かさ、豪華さと質素さ、支配と反抗といった対比が織り成す、北の国からの幻想的な物語を、朗読でじっくりとお楽しみください。 #傲慢 #鉄道

    25분

소개

Audibleで数々の文学作品を朗読してきたナレーター 渡部龍朗(わたなべたつお) が、宮沢賢治作品の朗読全集の完成を目指し、一編ずつ心を込めてお届けするポッドキャスト。 ▼ 朗読音声とテキストがリアルタイムで同期する新体験オーディオブックアプリ「渡部龍朗の宮沢賢治朗読集」iOS版 / Android版 公開中 ▼ 【iOS】https://apps.apple.com/ja/app/id6746703721 【Android】https://play.google.com/store/apps/details?id=info.watasei.tatsuonomiyazawakenjiroudokushu 幻想的で美しい宮沢賢治の言葉を、耳で楽しむひとときを。 物語の息遣いを感じながら、声に乗せて広がる世界をお楽しみください。

좋아할 만한 다른 항목