徒然なる自動車業界の将来動向

#1-174 【Short】インド乗用車市場の現在地

=====ショートバージョン=====インドの電気自動車(EV)市場の現状を包括的に概説しています。インド政府が「自立したインド」国内産業振興を最優先し、2030年までにEV普及率を高める野心的な目標を掲げています。しかし、この市場は、既存の四輪車オーナーではなく二輪車からの「初回アップグレード層」によって牽引されているため、価格許容性(アフォーダビリティ)が競争原理を支配しており、高額な知能化技術(ADAS)の普及は著しく遅れているという非対称な進化を示しています。また、EVの心臓部であるバッテリーセルと半導体ほぼ100%を輸入に依存しているという経済安全保障上の脆弱性最大のリスクであるとし、インド政府がPLI(生産連動型優遇策)やISM(半導体ミッション)を推進してサプライチェーンの国内垂直統合を国内コングロマリット(特にTataグループ)に強制している点を強調しています。さらに、インド政府は高い輸入関税地政学的規制(対中国)を用いて、安価な中国製EVの流入を意図的にブロックし、市場を選別的に開放しているという、極めて政治的な産業保護戦略をとっていることも示されています。