愛知県高浜市を舞台にしたボイスドラマです(CV:山崎るい)
【ストーリー】
<シーン1/2025年:いきいき広場の建物内>
■SE〜いきいき広場の環境音
「陶芸アーティストが祝辞ゲスト〜!?」
思わず、エキセントリックな声が出てしまった。
私は、高浜市の施設で働く職員。
今年は文化スポーツグループのお手伝いで
「20歳のつどい」の開催準備を手伝っている。
まあ、高浜市なんだから、別に陶芸家が祝辞を述べたって
なんの不思議もないんだけど。
いや実は私、20年前に陶芸家のタマゴと付き合ってたんだよね。
まさか、その彼じゃあないでしょうけど、ドキっとするじゃない。
この20年間で一番驚いたかも。
ビビったときのクセで、思わず目の上のホクロをさわる。
もう・・
ずうっと「死なない程度に生きて」きてるっていうのに。
とにかくもう、考えないようにしよう。
って言っても仕事だから、情報はどんどん入ってくる。
どうもゲストは、海外で地味に活躍している陶芸アーティストらしい。
で、高浜出身。そりゃそうよね。
■SE〜高浜港駅前の環境音(雑踏)
ふう〜。
外へ出て、深呼吸。
気分を変えようと、自販機でお茶を買ったとき、
ふと目の端になにかが映った。
横断歩道を高浜港駅の方から歩いてくる・・・おばあちゃん?
ちょっとヨタってるけど、大丈夫かしら?
考えるより先に足が動く。
そこへ、駅のロータリーから猛スピードで車が突っ込んできた。
「おばあちゃん!あぶない!」
■SE〜急ブレーキの音
とっさにおばあちゃんを庇い、地面に受身の姿勢で倒れる。
瞬間、目が合った。
あれ、このひと、どこかで会ったことあるかも・・
そう思っているうちに、意識が遠のいていった・・・
<シーン2/2005年:「成人式」直前の会場(衣浦グランドホテル)>
■SE〜公民館の環境音/「成人おめでとう!」の声
『大丈夫ですか?』
「はい・・・ありがとうございま・・」
えっ?
ここどこ?
高浜港駅じゃない。なんか、記憶にあるような・・
『歩けますか?』
「あ、ああ、はい・・・だいじょう」
「え・・・あなたは・・・?」
『はい、今から成人式なんです』
わ、わ、わたし〜っ!?
お気に入りの椿の振袖。
気が強そうな表情も、目の上のホクロも。
あ〜ホクロさわってるし。
ビビってんのか、私に!?
落ち着け。落ち着け。
かんばん。かんばん・・入口の看板。
2005年・・高浜市成人式?
え〜!?
じゃあここは衣浦グランドホテル〜!?
20年前にタイムリープしたってこと?
ボイスドラマじゃあるまいし。
『ホントに、大丈夫ですか?』
「今日、二十歳の集いなの?」
『いえ、成人式です』
そうか。
でもなんで?
私が20年前に召喚されたのはなぜ?
■SE〜ハイヒールの足音
と、そこへ駆けてきたのは・・
「ママ!?」
『ママ!』
『え?』
「あ、いや別に・・どうぞ」
『ママ、来なくてもいいって言ったでしょ』
『一生に一度の成人式?』
『ふん。成人式じゃなくたって、今日も明日も、一生に一度よ』
いや、2度目なんだけどな・・
そっか、私、20年前から、ママとうまくいってなかったんだ。
え?どうしてだっけ?
『私、成人式終わったら、彼の工房へ行くから』
『当たり前じゃない!だって陶芸家になるんだもん』
『冗談でもないし、寝ぼけてもない!』
・・そうだった。
私、短大出たら陶芸の道へ進もうと思ってたんだ。
『別に反対されたって、関係ないから』
そりゃ反対するよねえ。せっかく大学で介護福祉士の資格までとったのに。
それに、陶芸のセンスなんてまったくないでしょ、あんた・・・ってか私。
『とにかく帰ってよ。私、ひとりで式に出る』
あーあー。
さっさと行っちゃって。
しょうがないなあ。
なんか単なるわがままじゃん。ガキっぽい。
でも、これ、私の選択?
だった・・よね・・たしか。
残されたママ、どうしたんだろう。
え?
涙!?
やだ。やめてよ、ママ。
思わず、つい、声をかけてしまった。
「あのう・・」
『え?・・はっ・・』
「二十歳の集い・・じゃなくて、成人式の付き添いですか?」
『あ、はい・・』
つい声かけちゃった・・どうしよう。
『でも、ちょっと娘と言い争いしちゃいまして』
私のこと、気づいてないみたいだからいっか。
『お恥ずかしいところを』
「いえいえ、人ごとじゃないですから」
『あなたのお子さんも?』
「いや、私は独身なので」
『それじゃ・・』
「昔を思い出しちゃって」
『ああ。わかります』
「ホント?」
『ええ、私もここで成人式あげましたから』
へえ〜、ママもここで成人式挙げたんだ。
私がはにかむと、ママもだんだん笑顔になっていく。
『私、結構おませさんだったから、
つきあってた彼のバイクで会場の中央公民館へのりつけて』
「うっそ!?知らなかった」
『そりゃそうでしょ』
「ですよね」
『成人式終わったら、そのまま温泉旅行へ行っちゃったんです』
「マジ!?」
『うん、いまで言うと冬ソナのヨン様みたいな感じ?』
うおお・・レジェンドの韓ドラ!
「で?で?その人とはどうなったんですか?」
『結婚しました』
「パパ!?
ってすごすぎ〜!・・・あ、でも」
『幸せは1年も続かなかったけど』
「交通事故・・」
『え?どうして知ってるんですか?』
「いえ、えっと・・たぶん事故かなあ〜って連想しちゃったんです」
『はあ・・そうですか』
「お辛いですよね」
『もちろん・・でも、彼がいつも言ってたことが心から消せなくて』
「え?
な・・なにを言われてたんですか?」
『娘はオレが絶対に幸せにする。
どんなささいな苦労だってオレがさせない。
将来は安定した職に就いて、しっかりした結婚相手もオレが見つける。
孫が生まれたら、オレが一番最初に抱く・・って』
え?
『・・あ、ごめんなさい。どうしたんだろ、私。
見ず知らずのあなたにこんな話を・・』
「いえ・・」
『え・・・どうしたんですか?』
「いえ・・なんか目にホコリが入っちゃって、木枯らしが」
『ふふ・・』
「なあに?」
『いえ、ごめんなさい。
娘がね、いつもおんなじこと言ってたなあって。
すっごい泣き虫なのに、負けん気だけ強くて』
「そうなんですよ〜」
ー2人の笑いー
『じゃあ、私、帰ります』
「え、なんで?」
『私がここでずうっと待ってたりしたら、うざいですもんね』
「そんなことないって」
『いいえ。ありがとうございます。あなたと話せてよかったわ』
「私も!」
『なんだか他人のような気がしないし』
「私も・・・」
<シーン3/2005年:「成人式」直後の会場(衣浦グランドホテル)>
■SE〜公民館の環境音/「成人おめでとう!」の声
結局、成人式が終わるまで、会場の前のベンチに座ってた。
知らなかった・・パパがそんなこと言ってたなんて。
ママ、私にはなんにも言わなかったじゃない。
それじゃあ、伝わんないよ。
きっとわかってたんだよね、私に陶芸のセンスがないこと。
自分の娘なんだから。
もう二度と会えないと思ってたママに会えて、私はいつまでも震えが止まらなかった。
■SE〜ハイヒールの足音
『あれ?』
「あ・・・」
会場から歩いてくるのは二十歳の私。
振袖の椿が揺れている。
『まだいらしたんですか?』
「そっか・・もうそんな時間」
『お身体、大丈夫ですか?』
「大丈夫・・・とは言えないかも」
『え?』
「成人式、どうだった?」
『よかったわ』
「このあとどうすんだっけ?」
『着替えてから、名古
資訊
- 節目
- 發佈時間2025年1月15日 下午5:06 [UTC]
- 長度18 分鐘
- 季數1
- 集數10
- 年齡分級兒少適宜