再生できない場合、ダウンロードは🎵こちら
【お知らせ】
このブログは「五の線リメイク版」https://re-gonosen.seesaa.netへ移行中です。
1ヶ月程度で移行する予定ですのでご注意ください。
【公式サイト】
http://yamitofuna.org
【Twitter】
https://twitter.com/Z5HaSrnQU74LOVM
ご意見・ご感想・ご質問等は公式サイトもしくはTwitterからお気軽にお寄せください。
皆さんのご意見が本当に励みになります。よろしくおねがいします。
すべてのご意見に目を通させていただきます。
場合によってはお便り回を設けてそれにお答えさせていただきます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
かつては金沢城の大手堀があったこの辺りはその一部を残して埋め立てられ、今では道路が走っている。この道路に沿うように何件かの宿泊施設が並んでいた。近江町方面からこの辺りまで歩いてきたひとりの男は立ち止まって見上げた。そこには背は低いが真新しい5階建てのホテルがあった。この辺りは金沢城や兼六園のすぐ近くであるため、景観保持ということで建物の高さに制限が設けられていた。無論それは宿泊施設においても例外ではない。彼は握りしめていた拳を開いて、そこに目を落とした。そして建物の正面玄関に掲げられている看板に目をやった。
「ここやな。」
彼は寒さに身を竦めながらその中へと足を進めた。自動ドアが開かれるとすぐそこはフロントロビーだった。ロビーの中央には大きなクリスマスツリーが配され、様々なオーナメントによって凝った飾り付けがされていた。彼は左腕の時計を見た。今日は12月21日の月曜日。今週の木曜日はクリスマスイブということもあって、このロビーの客層はガラリと変わるのだろう。彼は周囲を見回した。平日の夕刻ということもあって、客はまばら。せいぜいが暇を持て余した老年層がロビーにある喫茶店で、日常会話に興じる程度だった。彼はそれを横目にエレベーターの前に立った。しばらくしてそれは開かれ、彼を5階まで運んだ。扉が開かれるとそこに男が立っていた。
「よう。」
先ほどまで北署で一緒だった松永が声をかけた。突然のことだったので彼は返答に苦慮した。
「あ、ああ…。」
「部屋は奥だ。」
そう言うと松永は十河を奥へ手引きした。
「512号室なんて部屋はここにはない。」
彼は苦笑いをした。
「秘匿性が求められる場合は、これぐらいの気遣いがホテルには求められる。」
部屋の前で立ち止まった彼は扉に記されている部屋番号が1512であることを確認した。松永はカードキーを取り出して扉を開いた。そして部屋に入ってすぐの壁に手にしていたカードを差し込み、室内の全ての照明を灯した。
部屋に通された十河だったが、3歩歩んだところで彼は足を止めた。
「何ですかこれは…。」
ゴールドリーフの1512号室は60㎡の豪華な作りのスイートルームであった。上質で機能的、そして贅沢でくつろぎのひとときを提供するというのが、スイートルームの本来の用途。しかし今、十河が目にしている情景はそう言ったものとは程遠いものだった。本来ならばこの部屋から隣接する金沢城址公園を望み、眺めの良さを楽しむはずの大きな窓はホワイトボードが置かれることで、その魅力を見事に失わせていた。そしてそのホワイトボードには様々な人物の顔写真、そして殴り書きに近い文字の羅列が見受けられる。側にあるテーブルにはノート型のパソコンが2台配され、そこにも数多くの書類が山積みとなっている。足元を見るとこれまた数多くの書類が乱雑に置かれ、部屋の隅には多くの段ボール箱がうず高く重ねてあった。
「帳場みたいなもんだ。」
松永はそう言うと部屋の隅にあるソファに腰をかけた。それはおそらく有名なデザイナーによるものだろう。しかし書類によって部屋が占拠されているので、その存在感は薄い。十河は落ち着かない様子で松永と対面するようにそれに腰をかけた。
「帳場って…。」
十河はソファに腰をかけて再度部屋全体を眺めた。
散らかっている。それが十河の素直な感想だった。そこかしこに散らばっている書類が目立つ。お世辞にも綺麗とは言えない。捜査本部もいろいろな人間が出入りし、様々な情報を吸い上げるためするため随分な状況だが、この部屋はそれに輪をかけたような有り様だ。
「俺は欲しい情報にすぐアクセスできないと気が済まないたちでな。この通りだよ。」
「で、早速なんだが。」
身をかがめていた十河は背筋を伸ばした。
「仁熊会とマルホン建設の関係性を詳しく教えてくれ。」
松永はソファに腰を掛けたまま地べたに落ちているA2サイズの用紙を拾い上げて、それを持って立ち上がった。そして山積みの書類をテーブルから退かして空いたスペースにその紙を広げた。
「どこから話せばいいでしょうか。」
「はじめから順を追って。」
十河は自分の額に手をやった。どのように話せば効率的に松永に情報を伝えることができるだろう。マルホン建設と仁熊会の関係は簡単に説明できない複雑さを持っているため、彼はそれを整理するためしばしの時間をかけた。
「…マルホン建設は国会議員の本多善幸の実家です。仁熊会とマルホン建設が関係を持ったのはこの善幸が社長だった時からです。」
一体何を書いているのか分からないが、松永は十河の言に従ってサインペンを走らせた。
「続けて。」
「私もマルホン建設と仁熊会がくっついたきっかけまでは知らんがですが、仁熊会の影があの会社にちらついてきたのは、バブルが崩壊したころからです。マルホン建設は金沢のいろんなところに土地を購入しとりました。勿論投資目的です。それが弾けてしまって、あの会社は随分な含み損を抱えたんです。さっさと損切りしようにも毎年価値が下がる資産なんざ誰も買いません。しかしそれをなんでかそんぐりそのまま買い取ったところがあった。それが仁熊会のフロント企業と言われるベアーズデベロップメントっちゅう会社ですわ。しかもバブルが崩壊して1年もたたんころの話です。」
「何だそれは。」
「正確な数字ではありませんが、確か全部で20億ぐらいやったと思います。」
「20億?」
「はい。これからどんだけ価値が目減りするかわからん物件をベアーズは全部買い取りました。その後も地価は下落します。ほんでもベアーズは手放さんかった。」
「それじゃあベアーズがみすみす損をするだけだな。」
「そうです。しかしあいつらがそんなボランティアなんかする訳ありません。あいつらがそのタイミングで土地を購入したのは訳があったんです。」
「何だ。」
「バブル崩壊から2年後に本多は衆議院議員選挙に打って出ます。その時にも仁熊会の影がちらほら見えとるんですわ。あいつの選挙運動をバックアップしとったイベント会社ってのがありまして、それがこれまたどうやら仁熊会系列の会社のようなんですよ。」
「ほう。」
「あいつらを侮ってはいけません。あいつらはあいつらなりのネットワークっちゅうもんを持っとります。その組織票も馬鹿になりませんしね。始めての選挙にもかかわらず、結果的に本多は圧勝し国会議員となるわけです。しかしこんな選挙ビジネスだけで仁熊会の損は取り返せません。マルホン建設は土地の売却あたりから、建設工事の下請けに仁熊会のフロント企業を使うようになります。暴対法では暴力団が自分のところを使えと要求することは禁じられておりますが、マルホン建設が進んで使うならば話は別です。あいつらは上手くマルホン建設に潜り込んで行くわけです。」
「そうか…所謂ズブズブってやつだな。」
「はい。そんなこんなで月日は経ち、本多が国会議員になって3年後の頃、田上地区の区画整理事業が突如として持ち上がったんです。」
「区画整理?」
「ええ。バブル崩壊から下落
Thông Tin
- Chương trình
- Đã xuất bảnlúc 15:00 UTC 29 tháng 4, 2020
- Thời lượng18 phút
- Xếp hạngSạch