今回のエピソードでは、「AIは家庭医を超えるのか?」というテーマを扱った論文をご紹介します。日々進化するAI技術は、私たちの臨床現場にどのような影響を与えるのでしょうか。特にプライマリ・ケアの領域では、AIが診断支援や治療計画の最適化に貢献することが期待されています。この研究では、AIチャットボットであるChatGPT v3.5と家庭医が、急性疾患の治療方針を決定する際にどちらがより正確な判断を下すかを比較検討しています。
本論文はポルトガルのプライマリ・ケア3施設で行われた横断研究です。
急性疾患の診察860件を対象に、家庭医が行った治療処方と、AIチャットボット(ChatGPT v3.5)が同じ診断に対して提案した治療法を比較しました。治療の正しさは、エビデンスに基づく臨床意思決定支援ツール「Dynamed」をゴールドスタンダードとして評価されました。その結果、ChatGPTが正しい治療を提案した割合は55.6%であったのに対し、医師は54.3%でした。また、不正確な治療を提案した割合は、ChatGPTが5.2%であったのに対し、医師は11%と、ChatGPTの方が低い結果となりました。
この研究は、ChatGPTがプライマリ・ケアの急性期疾患診療において、医師と同等かそれ以上の精度で治療判断を下せる可能性を示唆しており、AIが医療専門家を代替するのではなく、能力を補強する有効な補助ツールとなりうることを示しています。
Simão BLP, Pereira CM, Jácome M, Oliveira C, Ferreira LM, Paiva JM, et al. Artificial intelligence in the prescription of acute medical treatments in primary healthcare – comparison of the performance of family physicians and ChatGPT. BMC Prim Care. 2025;26(1):284.
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- FrequencyUpdated Daily
- PublishedSeptember 30, 2025 at 8:00 AM UTC
- Length8 min
- Season1
- Episode19
- RatingClean