今回のテーマは、OracleがNVIDIA搭載サーバーを貸し出す“AIクラウド”の中身です。The Informationが入手した内部データによれば、OracleのGPUレンタル事業は直近四半期で約9億ドルの売上に対し、粗利益が約1.25億ドル、粗利率はおよそ14%にとどまったといいます。記事を受けて株価は軟調に推移し、同様の数値を引用する後追い報道も相次ぎました。
採算を圧迫しているのは“最新世代の初期導入負担”です。報道ベースでは、Blackwell世代の貸し出しでは四半期で約1億ドルの赤字に陥った局面もあったとされます。最先端GPUの確保・据え付け・冷却・電力・減価償却が前倒しで乗る一方、顧客課金は利用立ち上がりに時差が出やすい――AIインフラならではのキャッシュフロー構造が数字に表れた形です。
一方で、スケールの絵柄は大きい。OracleはNVIDIAと組んでGB200 NVL72やH200の超大規模クラスターを“受注生産”の勢いで拡張中で、最大13万GPU級のスケールアウトをうたいます。ここが立ち上がるとリソース稼働率の改善や運用の学習効果でマージンが上がる――これが強気派の見立てです。実際、アナリスト筋からは「初期のAI粗利は薄くて当然、規模化で25%水準へ」との評価も出ています。
マーケットの視線は“需給と顧客ミックス”にも向きます。超大型顧客(例:基盤モデル事業者)がまとめてキャパシティを押さえると、単価は下がりやすい半面、稼働は安定しやすい。AI投資の最前線では、データセンター建設・電力契約・GPU調達が先行投資として膨らむため、短期の粗利は削れても、長期契約や高付加価値のネットワーキング/ストレージを抱き合わせて“総合採算”で合わせにいくのが通例です。Oracleの株価反応に対しても「過剰反応」とする強気レポートが目立ちました。
テック産業への示唆は明確です。第一に、AIインフラの“初期は薄利・時に赤字”という現実。最新GPUの導入期は供給制約と前倒し費用が重く、償却と稼働率が噛み合うまで粗利が伸びにくい。第二に、ネットワーク設計や冷却効率など“土木系の工夫”が利益を左右する段階に入ったこと。第三に、顧客の長期コミットと複合課金(GPU+帯域+ストレージ+サポート)が、採算の安定化に決定的に効くという点です。
最後に、実務の打ち手を三つ。調達側の企業は、①短期の価格だけでなく“稼働保証(SLA)と拡張パス”を契約に織り込み、②学習・推論を跨ぐ“ミックス最適化”(世代混在・閾値配賦)でコストを平準化し、③ネットワーク/ストレージを含む総コストで見積もること。提供側にいる皆さんは、初期の薄利を織り込んだうえで、稼働率改善と自動化(プロビジョニングの即応性)でキャッシュ回転を速めることが肝になります。いずれも、今回のOracleのケースが“AIインフラ経済学”の教科書になりつつあることを物語っています。
Informations
- Émission
- FréquenceChaque semaine
- Publiée15 octobre 2025 à 22:00 UTC
- Durée4 min
- Saison1
- Épisode635
- ClassificationTous publics