2025年10月28日、MicrosoftはOpenAIとの「次章」を告げる最終契約を発表しました。大枠は、2019年以来の協業を“長期持続型”へ組み替える内容です。目玉はOpenAIのPBC化と再資本化の正式化、そしてMicrosoftがOpenAI Group PBCに評価額約1,350億ドル、持分約27%(希薄化後・全オーナー込み)で参画する点。従来ラウンドの影響を除くと、Microsoftはこれまで約32.5%相当の持分を保有していたと補足されています。市場は好感し、報道各社も“構造の再定義”として伝えました。
提携の“核”は維持されます。OpenAIはMicrosoftの「フロンティアモデル・パートナー」を継続し、APIについてはAGI到達までAzure独占。一方で今回の契約は、到達の判定をOpenAIの自己宣言ではなく“独立専門家パネル”が検証する新ルールを導入し、Microsoftのモデル・製品に関するIP権は2032年まで延長、AGI到達後のモデルにも一定の安全策の下で適用可能としました。研究に関わる「機密の方法」に関するIPは、AGI検証完了か2030年までの早い方で終了するという“線引き”も明示されています。
権利と自由度のバランスも再設計されました。OpenAIは第三者と共同開発する余地が広がり、第三者と作るAPI製品は引き続きAzure独占ですが、非API製品は他クラウドでも提供可能に。また、OpenAIは能力基準を満たす範囲で“オープンウェイト”の公開が許容され、米国の国家安全保障分野の顧客に対しては、クラウドに依らずAPI提供ができるようになります。Microsoft側も“独自または他社とAGI追求”が可能となり、もしOpenAIのIPを使ってAGIを構築する場合は、宣言前でも大規模な計算閾値の下で進められるという枠組みに変わりました。
クラウド面の“縛り”にも変化があります。OpenAIはAzureの追加利用で2,500億ドルを契約する一方、Microsoftは“計算リソースの第一拒否権(ROFR)”を放棄。結果として、OpenAIのマルチクラウド化が制度的にも可能になりました。9月に示された覚書から続く“関係の再定義”が、正式契約として結実した格好です。
この再編の裏側では、OpenAIの支配権を握る非営利団体がPBCに巨額の持分を持つという独自構造が進んでいます。非営利側の持分は1,000億ドル超との説明がこれまでにあり、公益性と資本調達を両立させる狙いがうかがえます。今回の最終契約は、公益目的・安全性検証・知財の保全と、事業の拡張性・柔軟な提携の両立を、条文レベルで具体化したものです。
足元の産業文脈で見れば、OpenAIの“計算の買い方”にも注目が集まります。Azureへの大型コミットに加えて、同社は他社クラウドや自社主導の半導体調達も模索してきました。ROFRの廃止は、需給逼迫が続くAI計算を“複線化”する選択肢を現実にし、Microsoftは“IP・製品の線引き”を強めつつ、Azureの長期需要を確保するという、攻守両面の着地に見えます。
総じて今回の“新章”は、両社が互いの自由度と安全弁を拡げながら、関係の解像度を上げたという出来事です。AGIの判定を第三者が検証し、知財の適用期限を明快にし、クラウドのしがらみを調整したことで、開発・提供・規制対応の三つ巴を長期運用できる設計に寄せました。企業の皆さんにとっては、Azure前提のエコシステムは維持されつつ、OpenAI由来の製品やモデルが“より広い接続性”を持ち始めることが、来年以降の実装・調達の選択肢を確実に増やすはずです。
Informations
- Émission
- FréquenceChaque semaine
- Publiée29 octobre 2025 à 22:00 UTC
- Durée6 min
- Saison1
- Épisode671
- ClassificationTous publics
