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Ep.682 Alphabet、欧米で総額250億ドル規模の大型起債──AI・クラウド投資の“燃料補給”(2025年11月6日配信)

11月3日、Alphabetが欧州でのマルチトランシェ起債を最低30億ユーロ規模でアナウンスしたのを皮切りに、同日中に米欧あわせて“総額ほぼ250億ドル”の大型ディールへ拡大しました。内訳は米国が175億ドルの8本立て(満期3〜50年)、欧州が当初想定を超える65億ユーロの6本立て(満期3〜39年)。米ドル50年債は米国債+1.07%、ユーロは3年がミッドスワップ+25bp、39年が+158bpで条件が固まり、米ドル建てのオーダーブックは900億ドルに達したと伝えられます。幹事はゴールドマン・サックス、HSBC、JPモルガンなど。調達資金は一般目的に充当され、AIおよびクラウド基盤の大型投資を下支えする構図です。

今回のユーロ建てディールは“最低30億ユーロ”でのマーケ開始が先行報道され、その後の需給を映して最終65億ユーロまで積み上がりました。ユーロ市場へのアクセスは今年4月の初回6.75億ユーロ起債に続く2回目で、年内に米欧の両市場を活用する“資金調達の複線化”が鮮明です。

背景の文脈も押さえておきましょう。Moody’sは「ビッグテックはAI計算とクラウド需要の急伸で容量不足に直面」とコメント。同日のリポートでは、今回の社債は一般目的(借換え含む)に充てられると整理しています。実際、同時期にOracleは180億ドル、Metaは3,000億ドルの社債発行に踏み切っており、ハイグレード格の大規模クレジットを“AIインフラの燃料”として使う動きが続きます。

業界的な意味合いは二つ。第一に、米欧の両市場を同時に使うことで投資家層を広げ、調達コストを最適化しつつ満期分散を確保できること。今回も短期はキャッシュ・ファンド、超長期は保険・年金と、厚みのある需要に丁寧に当てています。第二に、AI向けデータセンターの建設・電力・半導体の調達が“数年がかりの固定費”である以上、運転キャッシュフローだけに頼らず、負債で前倒しに資金を厚くする──この資本政策が業界標準になりつつある点です。Alphabet自身も第3四半期の増収を背景にAI・クラウドの伸びを強調しており、今回の調達はその成長路線を長期で支える“燃料補給”と言えるでしょう。