アワノトモキの「読書の時間」

ep48-3「モモ」(ミヒャエル・エンデ)/フィクションが描く「時間と聞くの知恵」

<今回の選書>・『モモ』(ミヒャエル・エンデ)

こんにちは、ホシノです。今回も引き続き『モモ』について。アワノさんと雑談しつつ、本の広がり方やメッセージ性についてだいぶ深めていきました。

まず驚くのは、『モモ』の世界規模の読まれ方。50年経っても国境を越えて読まれ続ける理由は、やっぱり普遍性があるからなんでしょうか。時間泥棒の話も、雑談が失われていく社会の話も、まるで現代そのまま。近代統一のテーマなんでしょうね。
会話の中では「消費社会」「都市化」「家族の変化」みたいな背景にも触れつつ、モモが象徴する聞くという行為の価値が、なぜ昔から必要とされてきたのかを考えました。

今回のポイントは2つ。

① フィクションだから言えることがある。
時間泥棒とお人形のエピソード、子どもたちの空想遊び、都市の変化…
社会批評をそのまま書くより、物語に落とし込んだ方が伝わる。『One Piece』や詩、戦後文学の話まで広がりつつ、ストーリーが人を動かす理由を改めて確認しました。

② モモは聞く天才だが、本人は自覚していない。
モモが人の話を聞くことで、町の人の本質や創造性が引き出されていく。でも本人はそれを「スキル」とは思っていない。ただ、相手に時間を渡すだけ。
そのシンプルさが、現代の傾聴とは少し違う形で響く理由なのかもしれない。しかも途中でモモ自身が迷ったり弱ったりする描写もあり、そこでまた心をつかまれました。

話の終盤では、
「これは大人のほうが効く本だね」
「研修の教材にもなるんじゃ?」
なんて話にまで伸びていき、気づけば『モモ』をいろんな角度から再発見する回に。

次回は、いよいよアワノさんの一冊『叱る依存が止まらない』(村中直人さん)へ。
「叱る」「導く」「正解を求める心」――こちらも現代性ど真ん中のテーマです。どうぞお楽しみに。