われらの文化 レオンラジオ 楠元純一郎

Leo_楠元纯一郎

leonradio われらの我们的文化 楠元純一郎とレオーがお送りするレオンラジオです。 音楽、美術、教養、旅、社交、料理、建築、インテリアなどに関する各界の著名人をお招きし、われわれのサロンで優雅に座談をする番組です。常識にとらわれない、自由でクリエイティブな世界を楽しみましょう。 記念すべき最初の放送では、ヨーロッパでご活躍のピアニスト、田近凉子先生をお招きし、松尾欣治先生、張紅先生がパーソナリティを務めます(欣紅文化雅談)。

  1. Oct 23

    われらの文化17欣福茶釜05 レオー作「沈む陽の色」鑑賞会②)

    <レオンラジオ日の出 われらの文化17欣福茶釜05 レオー作「沈む陽の色」鑑賞会②)〉 20261020 レオンラジオ日の出 アクセス総数45.1万回 オープニングテーマ 楠元純一郎作詞作曲 �シャンパンスパークリング� エンティングテーマ 楠元純一郎作詞作曲 �遺伝子の舟� 楠元純一郎 ラジオパーソナリティー 会社法学者 レオー  作家、画家、ラジオパーソナリティー 録音師 松尾欣治 哲学者 評論家 福留邦浩 国際関係学者 評論家 Feng老師  国際経済学者 評論家 畠山果也 SNS日中架橋企業社長 どうにも諦めきれなかった僕は、ふと思った。 美大の近くなら、美術書を扱う本屋がいくつもあるんじゃないか。 スマートフォンを取り出して探してみると、本当に一軒見つかった。 大学関係者の住宅区の近くだった。 柵越しには、赤い壁の集合住宅が見える。何枚かの窓を隔てた先には、古本の買取りや画材販売を知らせるカラー印刷の看板も見えた。 ところが、地図が示す場所まで来ても、それらしい看板がどこにもない。 不甘心的我突然想到,美院附近肯定有不少美术书店。于是掏出手机,还真被我发现一家。 是在家属区附近。透过栏杆看去,是红色墙面的住宅楼。隔着几扇窗户,就能看到一个收旧书或者卖画材的彩印广告牌。 到达指定的地方,却没有发现任何招牌。 だんだん焦ってきて、スマートフォンを何度も見返した。 小さな小さな写真の一枚に、本で埋まった書棚の前に座り、上を見上げている老人が写っていた。 宝箱を見つけた海賊なのに、どうやって蓋を開ければいいのかわからない。 そんな気分だった。 そのとき突然、シャッターに貼られた、黄ばんで角の欠けた一枚の紙が目に入った。 電話番号が書いてあった。 電話の向こうから聞こえてきたのは、標準的な「普通話(プートンホゥア)」を話す、落ち着いた、やさしい男性の声だった。 詳細に、でも、くどくない口調で、彼は自分のことを話してくれた。 我开始急躁,翻着手机。在一张张光圈极小的图片里,一个老人坐在满是书的书架前,抬头向上看。 而我就像发现宝箱的海盗,却不知道怎么把它打开。 突然,我看到一张贴在卷帘门上的、泛黄缺角的纸,上面写着一个电话号码。 电话里,是一个普通话很标准、沉稳而温柔的男声。 他详尽而不啰嗦地介绍了自己。 魯美の図書館長を務めていたこと。 もう八十代であること。 住んでいるところが遠いので、今日は店を開けて僕を迎えることができないこと。 もし僕が本を見たいのなら、明日、店で待っていてくれること。 他说,他是鲁美图书馆的原馆长,已经80多岁,住得很远,不方便当天前来打开店面招待我。如果我想看书,他愿意第二天在店里等我。 僕はぼんやりと、その話を聞いていた。 何か不思議な力に、すっぽり包み込まれてしまったようだった。 我に返ったときには、翌朝九時半に会う約束ができていた。 我听着这一切出神。 一股神秘的力量把我包裹住了。 回过神来,我们已经约好了第二天早晨九点半见面。 僕はいったい、どんな人と話していたんだろう。 まだ、その落ち着いたやさしい声の持ち主の顔さえ見たことがない。 それなのに、午後の陽射しに満ちた交差点に立ちながら、僕は高校生だったころの自分に、心の中でそっと言った。 焦らなくていい。 お前が想像することさえできなかったあの言葉に、今、僕がお前の代わりに一歩ずつ近づいているんだから。 我在和一个什么人对话呢? 我还没有见过这个沉稳而温柔的男声本人。站在下午洒满阳光的路口,我却默默对高中时代的那个自己说: 不要着急。 我在替你一步一步走近这个你想都不敢想的词语。 待ち遠しくて仕方がなかった。 けれど、その「待ち遠しさ」が何を待っているのかを、単純に「ある人に会うこと」だとか、「一冊の本を買うこと」だとか、そんなふうには言いたくなかった。 ただ、その待ち遠しさのせいで、翌朝、雨が降り続く窓の外を見た瞬間、ちゃんと傘を持っているにもかかわらず、僕は反射的にこう呟いた。 「しまった……」 我如此期盼。我不愿意把这个“期盼”的宾语简单地说成“见一个人”或者“买一本书”。我只知道,这份期盼使得第二天早晨看到阴雨连绵的窗外时,明明带了伞的我还是下意识地说了一声:“完了。” スーツケースを引き、リュックを背負い、地下鉄に二駅乗って、約束の場所には十分早く着いた。 電話では、店が具体的にどこにあるのかは聞いていなかった。 少し待っていてくれれば、自分が迎えに行く、とだけ言われていた。 胸がきゅっとした。 外は小雨だった。 三十九歳の僕でさえ、ふくらはぎに力を入れなければ足元が危うい。 八十を過ぎた彼が、この濡れて滑りやすい道をどうやって歩くのだろう。 いったい、どれだけの距離を歩いて僕を迎えに来るのだろう。 我拉着行李箱,背着背包,坐了两站地铁,提前十分钟到了约定的地点。电话里他没有说具体在哪里,只让我等一会儿,他来接我。我心里一紧。外面下着小雨。39岁的我姑且都要绷紧小腿才能走稳,我不敢想象80多岁的他在湿滑的路面上要怎样走,又要走多远出来接我。 髪が薄く、白くなった、黒いジャケット姿の老人が、地下駐車場の入口に現れて手を振った。 僕は慌ててスーツケースを引きながら、早足でそちらへ向かった。 彼は、光っていた。 表情が特別豊かな人ではなかった。 それなのに、僕はあたたかいと感じた。 一个头发稀少而花白、穿着黑色夹克的老人出现在地下停车场的入口,向我招手。 我赶紧拉着行李箱快步走过去。 他发着光。 他没有过多的表情,但是我觉得暖和。 老人について地下駐車場へ降りていった。 そこはかつて防空施設として使われていた場所で、小さな部屋がいくつもあった。 彼の書店は、そのうちの一室だった。 老人がシャッターを開けた。 部屋そのものは大きくない。 三方の壁がすべて本棚になっているのに、不思議なことに中央にはかなり広い空間が残っていた。 我跟着老人下到地下停车场。这里以前被用作人防工事,有很多小房间。老人的书店就在其中一间。 他打开卷帘门。 小房间不大,三面墙都放上了书架,神奇的是中间竟然还有很大的空地。 全部で何冊あると言っていたのか、僕は忘れてしまった。 たぶん、もうそのころには、目の前に並ぶ背表紙と表紙の群れの中で、すっかり迷子になっていたからだ。 しかも、これで全部ではなかった。 我忘记老人说他一共有多少书了。 或许是因为我已经迷失在那一排排书脊和封面中。 而这些还不是全部。

    われらの文化17欣福茶釜05 レオー作「沈む陽の色」鑑賞会②)
  2. Oct 13

    われらの文化16欣福茶釜04 レオー作「沈む陽の色」鑑賞会①)

    〈われらの文化16欣福茶釜04 レオー作「沈む陽の色」鑑賞会①)〉 20261013 レオンラジオ日の出 アクセス総数44.8万回 オープニングテーマ 楠元純一郎作詞作曲 シャンパンスパークリング� エンティングテーマ 楠元純一郎作詞作曲 遺伝子の舟� 楠元純一郎 ラジオパーソナリティー レオー  作家、画家、ラジオパーソナリティー 録音師 松尾欣治  哲学者 評論家 福留邦浩  国際関係学者 評論家 畠山果也  SNS日中架橋企業社長 楠元「このレオンラジオ日の出からついに作家がデビューしました!お馴染み、レオ先生ことレオ君。作品は、レオー作「沈む陽の色」。これは我われが7年かけて続けてきたラジオ番組で蒔いてきた種がついに発芽し、開花したもの。レオ君の文章にはかつてこのラジオで読んだ魯迅「故郷」や、現在も講読中である中勘助「銀の匙」の香り漂う。」 松尾「この作品は散文詩のよう。」 福留「そうですね。」 「沈む陽の色」         レオー 作昨日、大きな荷物が届いた。 瀋陽から。 魯迅美術学院の近くから。 箱の中身は、全部、本だった。 一冊、また一冊と取り出していく。 重い。 これまでにも、いろいろな古書店で本を買ってきた。 美術書だって、ずいぶん買った。 けれど、本を買ったというだけの出来事について、こんなにも何かを書き残しておきたいと思ったことは、一度もなかった。 昨天,我收到了一个大大的包裹。 来自沈阳,鲁迅美术学院附近。 包裹里面全是书。 我一本一本地把它们拿出来。它们很重。 我在不少旧书店买过书,也买过不少艺术类的书,却没有一次买书的经历让我这么想写点什么。 高校生のころ、僕は美大受験を目指して絵を勉強していた。 当時の僕にとって、「魯美」――魯迅美術学院という名前は、憧れであり、地元の普通科の高校生にとっての清華大学や北京大学と同じくらい、はるか遠くにあるものだった。 高校一年、二年のころ、先輩の誰かが魯美に受かったと聞けば、その人はたちまち僕たちの神様になった。 その人の絵は、僕たちのお手本になった。 读高中的时候,我是艺考生。 “鲁美”对于当时的我而言,就像我们那里一般高中生心目中的清华北大一样遥不可及。 高一、高二时,一旦听说有哪个学长考上鲁美,他就变成了我们的神,他的画也变成了我们的典范。 もちろん、僕は美大には受からなかった。 あのころの僕が自分で納得した理由は、いたって単純だった。 絵が下手だったから。 やがて「魯美」という言葉は、憧れから思い出へと変わっていった。 我当然没有考上美院。 那时候,我给自己的解释很简单: 因为我画得不好。 后来,“鲁美”这个词就从憧憬变成了回忆。 つい数日前までは。 瀋陽に来て二日目の午後、ふと気づいた。 ――そうだ。魯美を見に行けるじゃないか。 電動バイクに乗って向かう僕の気分は、ちょっとした巡礼だった。 ところが、そこで目にしたのは、大学全体の移転を知らせる告知と、すっかり寂れて黄ばんだ旧キャンパスの門と柵だった。 直到前几天。 我在沈阳的第二天下午,突然发现可以去鲁美看一看。 骑在电单车上的我有一种去朝圣的心情,看到的却是举校搬迁的通知,和凋敝泛黄的老校区大门与栅栏。

    われらの文化16欣福茶釜04 レオー作「沈む陽の色」鑑賞会①)

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