復職名人が読む三手先

Centro Salute

この番組は、産業医の高尾総司、弁護士の前園健司、社労士の森悠太の三名が、企業や自治体の人事・健康管理に携わる方向けに、メンタルヘルス不調者対応や健康管理について、議論をしていくポッドキャストです。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210%E2%81%A0

  1. May 19

    第102回|てんかんと業務上の運転制限をどう設計するか

    今回は、療養中・就業中にてんかんなどの疾病で運転業務に制限が生じた場合の復職判定や処遇のあり方について議論しました。なお、収録の不手際により、本エピソードは議論の途中からの開始となっており、近況報告は含まれていません。ご了承ください。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 議論した内容 療養期間におけるてんかんの特殊性 通常の原因不明の失神であれば、車内運転は6ヶ月程度のみそぎ期間で再開可能というのが一般的な感覚 検査により疾病が特定されれば、通常は就業制限期間が短くなる方向に働くが、てんかんは2年の実績期間が必要で、特定されると逆に期間が長くなるというデメリットが生じる 失神原因として注意すべきはてんかん・不整脈・血糖値の急激な低下の3つ。不整脈の検出にはホルター心電図が想定されるが、発作の捕捉自体が課題となる リスクベースとリスクトレランスの整理 法的・医学的には運転可能だが、会社として「命じない」バッファー期間が発生する構造 自治体の災害対応のように、いつ命じられるか分からない状態は周囲の納得を得にくい 会社のレピテーションリスクと運用のバランスが論点 就業中に発覚した場合の処遇 復帰時のように一律で休ませる対応はやりづらい 解除期間と、解除はされているが命じない期間を会社側と本人で折半する考え方が示された ケースをマトリックスで整理し、原則とバリエーションを明確化する必要性が指摘された 事故・発作の累積による期間延長ロジック 1回ごとに6ヶ月・1年を独立に当てはめるのではなく、累積で2年など長期に振る運用が必要 累積が2年を超えた時点でキャパシティ問題と捉え、雇用終了や職務限定への切り替えも視野に入る 一方で、無事故期間をクリアした場合は職務無限定に戻す余地を残しておく設計 真に病気で運転回避が必要か、業務回避の意図かの切り分け リスクトレランスとリスクベースの混在をどう切り分けるか、理屈を社内に作る必要がある 治療・自己健康管理への取り組み態度が判断材料となる 接客で問題を起こす人事評価のマイナスとセットで業務から外す運用と類似の構造で整理できる 病気のコントロールと自己健康管理の組み合わせ 糖尿病・高血圧はメディカルコントロールと自己健康管理が揃えばほぼ発作が起きず、就業制限の解除も速やかに可能 てんかんは両方を徹底しても一定頻度で発作が起きるため、2年の実績期間が避けられない 就業制限の解除と現実の配置は別問題で、リスクヘッジ期間は企業規模により変動するが、社内で一定のルールを設けることが必要 運転手当による処遇調整案 「運転するかもしれない手当」を給与に組み込み、制限が生じた際に取り上げる設計案 夜勤手当と同様の構造で、本人へのペナルティを金銭面で吸収する形に整理できる 金額は月1〜2万円程度から、業務の必要性に応じて設定する 解雇や利用延長といった強烈な対応に至らずに調整可能な枠組みを準備できる 社内でのルール設計の重要性 明快な答えは出なくとも、社内で議論し合意形成してルール化することが重要 「めんどくさいから運転させない」で済ませる対応が最も避けるべき結論 議論の過程を同僚にも共有することで、運転免除に対する周囲の納得感も得られる 編集後記 高尾 ひょっとして、職務無限定手当1、手当2とかをあらかじめ組み込んでおいて、通常の復職時、すなわち1ヶ月間以内ならば、これを支給するが、1ヶ月を超えた場合は、支給しなければ、うまくいく? 例えば制約がひとつだけなら、手当1は支給。二つ以上ならいずれも支給しない。 本当は絶対額ではなく、それぞれ基本給の2割くらいに設定できるといいのでしようけれど。 前園 親知らずを人生で初めて抜歯しました。 「詰め物が取れたので歯医者に行ったら、抜歯をすすめられる」という展開が、抜歯あるあるのようです。 よく考えたら、産業保健の界隈でも歯の話題は当然ありますが、法的論点として触れたことはないですね…。 歯のところは、弁護士との連携がしにくい分野かもしれませんね(笑) 森 今回は録音ミスをやってしまいました・・・ いつもは指差し確認をしっかりやって、録音と録画を確認していたのですが、完全に忘れておりました。

    30 min
  2. May 12

    第101回|産業医・弁護士・社労士の三職種連携をどう一般化するか

    第99回日本産業衛生学会でのポスター発表に向け、産業医・弁護士・社労士の3職種連携の特徴を一般化・整理することを目的に議論を行いました。平時連携と有事連携の違い、共通言語の重要性、不可侵領域とオーバーラップ部分の見極め、シナリオによる同床異夢の最小化など、連携の本質的要素を多角的に整理しています。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾 産業医科大学基本講座の受講者激励会に行ってきました。 前園 労働新聞にて単独連載がスタートしました。この機会に労働新聞をぜひ購読してください。 森 作業環境測定士の取得に向け、第一種衛生管理者保有者向けの免除講習を受講してきました。 議論した内容 ポスター発表の狙い 産業医・弁護士・社労士という3職種連携の特殊性を踏まえつつ、産業保健職と人事・経営層との連携など、より広い場面に応用可能な一般化を目指す方向で整理。 平時連携と有事連携 連携には「個別ケース対応の有事連携」と「考え方や仕組みを整理する平時連携」の2層が存在し、3人の関係は当初から平時連携を並行して行ってきた点が特徴。 平時連携が積み重なることで、有事と感じる事案を平時連携の延長で捌けるようになり、結果として「有事ならない」状態が生まれる。 必要性ベースの関係は必要性が消えれば終わってしまうため、必要性のない時間の確保と中期的なリソース交換が連携継続の鍵。 連携を支える共通言語と考え方の共有 メソッドという共通言語を持っていることが、3職種連携の再現性を支える基盤。 「あの先生はこう言っている」という答えだけでなく、「なぜそう考えるか」という導出プロセスを共有することが連携を機能させる上で重要との指摘。 不可侵領域とオーバーラップ部分 職種が異なるからこそ、不可侵領域を明確にしつつ、医学・法律以外の業務的アプローチで重なるオーバーラップ部分を厚くしておくことが連携の持続条件。 リング上で議論する範囲(共通領域)と、リングを降りて持ち帰る範囲(医学・法律的判断)を明確に区別する運用を確認。 勉強会・飲み会形式との比較 勉強会形式は教える側と教えられる側が固定されやすく、平時連携の代替にはなりにくい。 飲み会の質と種類によっては議論が深まらず、文書に相互に手を入れる作業こそが連携の本質的な深化を生むとの整理。 病名ごとの対応検討の可能性 当初から病名を問わない一般化を貫いてきたことが連携継続の要因であり、初期に病名検討から入っていれば連携は続かなかったと振り返り。 成熟した現状であれば、病名ごとの対応をオプション的に取り扱う検討にも意義があり、メソッドのメリット・デメリットが病名により異なる点を整理する余地あり。 両立支援との接点 病名ごとの検討は両立支援との当てはめの議論と相当オーバーラップする可能性があり、メンタルより先にがん等の身体疾患領域から検討を進める方向性。 個別ケースの主治医意見に右往左往するのではなく、再現性のある対応を構築することが企業活動に適合。 文書理解力・作成能力の重要性 自治体関係者との連携が機能している背景には、文書の理解力と作成能力という基礎能力の存在。 医療職は総じて文章作成能力が高くないため、議論の土台を揃える「掃除」のような作業が必要であり、内容に入る前段階の素養を整える重要性を指摘。 同床異夢の最小化とシナリオの役割 連携が形骸化する最大の要因は同床異夢であり、これを最小化するためのコストを払う関係性が不可欠。 面接シナリオは「誰が何という言葉で伝えるか」まで落とし込むツールであり、同床異夢を構造的に減らす効果。 手順や様式だけでは運用がばらつくのに対し、シナリオを共有することで完成度を90%程度まで引き上げ、残る部分にのみマージンを残す運用が可能。 録音共有との対比 面談録音の相互共有は理論上可能でも、リカバリを含む面談全体のアートを損なう懸念や、聞き返す手間の重さから現実的ではない。 事前のシナリオ文書は曖昧さがなくクリアであり、議論を突き詰めやすいというメリットを再確認。 編集後記 高尾 従来型の対応は、経験からの帰納的な内容に、近年では手引きを中心とした要領のようなものからの演繹的な内容を、追加的にハイブリッドにしたものではないでしょうか。一方で、メソッドは要領(労働契約・就業規則+大原則・三原則)からの演繹的内容だけで構成されます。  もっとも、今回言及したように、いかに演繹的に構成しても、運用マニュアル(+様式)だと30%くらいしか(50%未満)制御できなかったところ(すなわち要領と乖離が生じる)、シナリオで90%くらい制御できるようになった気がします。(また連載か、別の原稿にまとめます) 前園 「共通言語」という言葉を、森先生が指摘してくれました。我々専門家は、弁護士であれ産業医であれ、本来いつも「難しい専門用語ばかり使わない」と意識しているはずですよね。でもメンタル不調者対応の相談場面では、専門家の人事・上司に対するアドバイスがわかりやすいかという話とは別に「人事・上司が労働者に対してどういう言葉を使うのか」という意味のレベルまで、共通言語化できているかどうかが、重要だということだと思います。  我々が早口で話す内容が、一言一句のレベルまでメモできるはずもないですので(笑)、私としても、この点はもっと意識していきたいと思います。 森 本編では直接取り上げられませんでしたが、3人がお互いに紹介した本をお互いに読むことが非常に多いのも、何か良い連携のヒントのように思いました。

    1h 24m
  3. May 6

    第100回|100回記念〜リスナーからのお便り企画〜

    第100回記念として合宿先からのライブ配信を実施。事前に寄せられた10通超のお便り・ご質問に対し、番組の在り方からメソッド運用上の具体的な実務論点まで幅広く議論しました。リスナーとの双方向の交流を通じ、メソッドの普及や運用上の課題を改めて整理する回となりました。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 議論した内容 100回記念ライブ配信とお便り企画 100回記念企画として、事前に寄せられた10通超のお便り・質問を読み上げ、コメントしながら進行する形式を採用しました。 来年の合宿に合わせて再度募集する案や、節目の50回ごとに実施する定番企画化の構想も話題に上りました。 番組の聞き方と近況報告の効果 公開収録の現地参加と通常配信、ノーカット版(有料会員向け)を組み合わせて聞いてくださっているリスナーの存在に対し、感謝が示されました。 近況報告は人柄を伝える機能があり、初対面でも知り合いに感じられる効果(単純接触効果に類するもの)があるとの指摘が紹介されました。 出演者の声質と音声編集 3名の声質が明確に異なるため、音声コンテンツとして識別性が高いというリスナーからの指摘を取り上げました。 機材選定と編集は森が担当しており、録音環境(反響音、エアコン音等)に応じた音響調整を行っていることが説明されました。 メソッドの間口の広げ方とセカンドライン構想 「ポッドキャストの内容がコアな信者向けになっている」というリスナーからの指摘に対し、初心者向けの「セカンドライン」配信や、よくある質問シリーズの可能性を議論しました。 「職場は働く場所である」という大原則が、20年以上経った今も新鮮に受け取られる現実への驚きが共有されました。 仕事と治療の両立支援における事業者方針表明 努力義務化された両立支援において、事業者の方針声明(A4・2枚程度の様式)の重要性を指摘しました。 厚労省雛形の声明をそのまま発出すると、人事の方向性がそちらに固定化される懸念があり、独自の方針表明が望ましい旨が述べられました。 福利厚生の文脈で実施できる体力のある会社か、否かでアプローチを分ける必要性も論じられました。 宗教上の断食中の従業員への対応 イスラム教徒のラマダン期間中の勤務に関する質問について、「日本の社会通念上、断食による業務支障は許容されない」という方針を明示すべきとの見解を示しました。 「水分補給の啓発」のような中途半端な対応ではなく、「健康管理を本人責任で行ったうえで通常勤務するか、休暇を取得するか」を選択させる枠組みが提案されました。 建設業など事故リスクの高い業務では、より厳格な運用が必要との指摘も加えられました。 シナリオ・受領書作成のスキルアップ方法 スキルアップにはチームでの相互添削が有効であり、3人以上で同じ事例にコメントし合うことが推奨されました。 「場数をこなせ」という助言が紹介され、実践量とフィードバックの両輪が重要であると整理されました。 AIによるシナリオ添削チャットボット構想は、文体・言い回しの修正は可能でも、背景知識を要するパラグラフ追加には課題があると共有されました。 中小企業(短い休職期間)でのメソッド導入 休職期間が3ヶ月程度の中小企業では、療養開始から1週間以内に初回面接を実施するなど、対応の早期化が必須となります。 「うちの会社の休職期間は3ヶ月しかありません」と、入社時から繰り返し本人に伝えておくことが最大の備えであるとの指摘が示されました。 休職期間の短さを補うのではなく、日頃の労務管理をメソッドで強化することが本質的な解決策である旨を強調しました。 週1報告が止まった従業員への対応と「刺激」という曖昧語 「刺激しない方がよいかと思って指摘していない」という相談に対し、「刺激」という言葉が「相手を怒らせて面倒になりたくない」という回避を正当化していると指摘しました。 週1報告(療養復帰準備報告書)は復職意思の存在証明であり、提出停止は休職を法人として認めるか否かに関わる重大な事象として、明確に通知すべきです。 給与・金銭関連の連絡窓口とエールサポート(復職支援サポート窓口)をワンストップ化し、家族同席の要請も「求めます→要請します→命じます」と段階的に強める運用が提案されました。 産業医・保健職へのメソッド導入と組織構造 産業医や保健職にメソッドを浸透させるアイデアとして、健康管理部門と安全衛生部門を組織的に分け、安全衛生側に産業保健職を配置することで、自由裁量を構造的に制限する方法が紹介されました。 様式や運用面で機能的に主治医・産業医の暴走を抑える従来の対応に加え、組織構造そのものを変更することで何も起きない状態を作る発想が示されました。 神経痛で短期休職を繰り返す社員への対応 残業免除の就業制限では改善せず、短期休職を繰り返している社員のケースについて、療養期間を3ヶ月→4.5ヶ月→6ヶ月と段階的に長くしていく運用が提案されました。 頸椎症や腰椎ヘルニア等の手術判断は本人の意思に委ねるべきであり、会社からは労務提供が不完全であることを明示し、療養に専念させることが助言として有効です。 過重労働の閾値(時間外80時間以上等)の運用や、業務の属人化解消が組織課題として残ること、合理的配慮や両立支援で勤務時間・日数の調整に踏み込む場合は原契約の見直しが必要となる可能性についても議論されました。 編集後記 高尾 セカンド・ライン、いいですね。名称もおおよそ決まったみたいですし。私も楽しみにしています! 前園 ここまでポッドキャストが続いたのも、ひとえにリスナーの皆様のおかげです。 いつもリアルでオンラインで、ありがとうございます。 内容面では、話題が細かすぎるなどの課題はあるのかもしれませんが、とにかく「続ける」ということは大事なだなぁと思います。 この100回まで、よほどのことがない限り収録のキャンセルはしてこなかったです。 とはいえ、聴いてくれる方が減っていくのは意味がないので、今後も真摯に取り組んでまいります。 どうか引き続きよろしくお願いします! 森 100回を記念して、ポッドキャストのカバーアートを新調いたしました! 猪戸どしさんというイラストレーターの方に作成してもらいました。 https://coconala.com/users/4728081?ref=service_main_column

    1h 31m
  4. May 5

    第99回|弁護士勉強会の事例から読み解くメンタルヘルス不調者対応の論点

    合宿2日目の収録です。とある勉強会で取り上げられた「メンタルヘルス不調者への対応」をテーマとする事例検討資料を題材に、ラインケアの限界、業務軽減措置の誤解、受診命令、復職判定、休職満了対応など、現場で頻出する論点を多角的に議論しました。問いの立て方そのものを疑い、業務的アプローチを起点として整理し直す視点を提示しています。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾・前園:シェリー樽熟成の焼酎を中心に7〜8種類を試飲。観光では猿岩など期待を超えた一方、小島神社はモンサンミッシェルというには、やや期待外れ。ウニ飯定食に生ウニ、巨大なアジフライを堪能した。 森:前回に引き続き、自宅からの参加となった。 議論した内容 弁護士勉強会の事例設定への違和感 弁護士の勉強会の題材としては、社労士向けの内容に留まり、厚労省の4つのケアを紹介する解説に終始している印象。 文字資料はサマリーであり、会場ではより踏み込んだ実践的な議論がなされている可能性はあるが、表に出る範囲では当たり障りのない内容となっている。 弁護士に相談が来るのは、他の専門家が的確な助言をしないことの裏返しでもある。 ラインケアと「不調を見つける」問いの誤り 「管理職がどうすれば不調者を見つけられるか」という問いの立て方自体が誤っており、見つけられたとしてその後の対応が担保されない以上、議論の前提を疑う必要がある。 安全配慮義務(部下の健康管理)とプライバシー保護というダブルバインドを与えられた現場は思考停止しやすく、専門家は優先順位を明確に示す助言をすべきである。 4つのケアを参照した瞬間に医療に思考が引っ張られ、職場で素人が予備軍を見つけるという妄想的な議論に陥る危険がある。 業務軽減措置という曖昧な助言の弊害 安全配慮義務の文脈で「業務軽減措置」を助言すると、現場では誤った運用に流れやすい。 専門家の現場助言は「休ませる一択」が原則であり、業務軽減措置は休業命令発令までの過程で必然的に生じるものに過ぎない。 受診命令と受診拒否への対応 「受診させるためにどう対応するか」という問い自体が方向を誤っており、業務的アプローチと医療的アプローチを並行して進めるべきである。 問題行動には事実に基づく指摘・指導(必要に応じて懲戒検討)を進めつつ、産業医・保健職経由で受診勧奨を行う構えが現実的である。 指定医3名を選択させ協議に応じる姿勢を示す裁判例ベースの対応は、実質的には1択でも家族の理解を得て進められる場面が多い。 業務上の支障(事例性)の言語化 「業務上の支障はどこにあるのか」というメタ認知的な視点が、相談者にもAIにも抜け落ちやすい。 能力不足解雇が難しいのは、仕事ができていないという事実を具体的なシーンや行動レベルで言語化できていないため。 「常識」で片付けず、なぜそれが業務上問題なのかを丁寧に説明する力(フィードバック)が現場に求められる。 即答にこだわらず、「会社としての見解を書面で返す」という選択肢を持つことが有効である。 復職判定と主治医意見への対応 弁護士に相談が来る場面は、療養中の週1報告などの労務管理を行わずに突然診断書が出てくるケースがほとんどである。 主治医に職場の状況を積極的に情報提供し具体的な見解を確かめるという対応は、主治医意見の証拠価値を相対化する訴訟戦略の側面を持つ。 主治医が職場業務を踏まえて噛み合った意見を示してくれば、それは強力な味方となる。 「根本的解決」の捉え方と休職という暫定着地点 解説資料が「根本的解決」を雇用終了と暗黙に定義していることへの違和感。 休職は誰にも直接的被害を与えない暫定的な解決であり、考える時間を稼ぐ手段として極めて有効である。 就業規則上の休職期間満了による自動退職の規定は、当初から本人に明示すべき情報である。 会社が当事者であることの再確認 弁護士、主治医、産業医に順番に聞き、会社自身が判断を回避するたらい回し構造が現場の混乱を招いている。 弁護士は「あなた方で基準を作って考えていい」と会社の主体性を取り戻す助言をすべきである。 問題を「メンタル不調者対応」と一括りにせず、「SNSで意味不明な発信をする従業員への対応」「会社の名誉を毀損する行為への対応」など、就業規則上の懲戒検討から議論を始める枠組みに置き換えるべきである。 編集後記 高尾 私たちにとっての「根本解決」は、再び支障なく業務が遂行できるようにすることで、そのためには、たいていの場合、体制を立て直すためにも療養をはさむのが、ほぼ解というのが経験の教えるところなんでしょうね。 (そして体制を立て直す必要があるのは、本人だけではなく、企業側も同様であるということも) 前園 リスナーの皆様も、弁護士がされているポッドキャスト、弁護士セミナーなどぜひ受講頂いて、そのご感想等をお聞かせ頂ければ嬉しいです。弁護士と産業医の共同セミナーなどもあるようです。 専門家同士の連携については、産業衛生学会のポスター発表でも議論する予定です! 森 ウニ丼・アジフライ(あとはお刺身や壱岐牛など)食べたかったです。。。

    1h 7m
  5. May 1

    第98回|次の100回に向けて

    今回は100回を目前に控えた節目の合宿特別編です。森が体調不良により急遽オンライン参加となる中、第200回(2030年予定)に向けた番組の方向性、産業保健領域における今後の重点テーマ、そして3人それぞれの問題意識を率直に語り合いました。 告知 【第99回日本産業衛生学会@大阪の企画についてポスター発表】 下記の通りポスター発表を行います。 セッションの間は私たちがポスターの前にいますので、ぜひお気軽にお越しくださいませ。 演題番号:P9-95 演題名:産業医・弁護士・社労士の連携の取り組み セッション日時: 5月28日(木) 13:45~14:45 【会場外自由集会】 下記にて、自由集会を行います。公開収録形式の予定です。申し込み不要ですので、ぜひお越しくださいませ。 日時:5月29日(金)9時30分〜11時30分 場所:中之島センタービルディング 31階スカイルーム テーマ:両立支援と高尾メソッド 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 森:合宿の2日前に発熱し、現地への参加を断念。自宅から療養しながらオンラインで参加しました。 高尾:博多港からの高速船で大きく揺られ、上陸時点で既に満身創痍。フェリーターミナルにタクシーがおらず、電話で呼び寄せる事態となりました。 前園:同じく船酔いに苦しみ、AIで対処法を検索しながら現地入り。ローテーブルとソファで収録に臨んでいます。 議論した内容 第200回(2030年)に向けたロードマップ ポッドキャストは2022年7月開始、約4年弱で100回到達。同じペースなら2030年に200回を迎える計算です。 両立支援メソッドは番組内ではある程度整理が進んでいるものの、世の中への浸透にはまだ丁寧な議論が必要との認識を共有しました。 高齢労働者と労働力確保 日本は高齢者の労災予防など「リスク低減」の議論が中心で、フィンランドのように国策として「健康に働ける年齢を上げる」発想には踏み込めていません。 定年後の賃金低下に明確な根拠がない一方、職務限定とも異なる曖昧な運用が続いている現状を整理しました。 1日8時間・週5日労働の根拠の薄さや、ワークライフバランスと労働力確保のトレードオフについても言及しました。 健康管理・労働契約・金融の「リテラシー教育」 日本の労働者は過保護な健康管理に慣れ、自己健康管理能力が育っていないとの問題意識を共有。小中高6+6年の教育課程で「健康管理は自分でやるもの」と植え付ける可能性を議論しました。 労働契約リテラシーも同様に教育の対象になり得るとし、研修医の働き方の変化を例に教育介入の効果に言及しました。 iDeCoに象徴されるように、国は「過保護に守った後で本人に投げ返す」傾向があり、職場の健康管理も同じ経路をたどる可能性があるとの指摘がありました。 健康管理・労働契約・金融リテラシーは有機的に繋がるテーマとして整理されました。 産業保健職向け「労務管理」研修シリーズ構想 産業保健職向けに「労働契約とは何か」「労務管理とは何か」をパッケージで伝える研修シリーズの構想が提示されました。 自治体の産業保健は人事のグリップが弱く保健師主導になりがちで、外注化を含めた抜本的な見直しが必要との議論がありました。 産業保健法学会との違いとして、「ホーム」が後ろ向きになりがちなのに対し、本番組は前向きな「労務」の議論を志向していることを再確認しました。 メソッド普及とAIの活用 メソッドのシナリオ化・動画化は一定の到達点に達しており、次は企業への浸透フェーズに入ります。 AIによる「ミニ高尾先生」が完成度を高めており、仲間の産業医がAIを使ってメソッドを企業に普及させるステージが見えてきたとの展望が示されました。 弁護士助言の課題 紛争専門の弁護士の助言が、結果的に「揉めさせる方向」に作用してしまうケースがあり、訴訟リスク低減を目指して逆に紛争化リスクを高める構図を指摘しました。 「最終決定は会社」と逃げるのではなく、シナリオレベルで「全面採用してよい」助言を作り上げる必要性を議論しました。 弁護士はそもそも目の前の従業員に直接アプローチする経験が乏しいため、労務管理の実務感覚が育ちにくい構造的な問題にも触れました。 メンタルヘルス不調者対応における「寄り添い」一辺倒のアプローチが、結果的に紛糾を招く危険性についても言及しました。 公開収録・自治体訪問・ゲスト招聘 合宿の道中で自治体の人事課を訪問し、公開収録や無料相談会を行う構想が提示されました。 地域・職域連携の観点から、商工会議所などとの連携も視野に入れた議論がありました。 ゲスト招聘については、上松先生回(第59〜60回付近)のような形式に加え、現場で両立支援に悩む当事者を顔・声を加工して招くアイデアも出ました。 会員限定コンテンツとして、より突っ込んだ議論や両立支援などの繊細なテーマを扱う方向性も検討しました。 4人目のメンバー候補 番組メンバー拡充の可能性として、ヘッジファンド関係者、企業経営者、労働組合委員長、労働者側弁護士などが候補として挙がりました。 労働者側弁護士との対話は、争うためのスタイルではなく議論を深めるスタイルへの転換が必要であり、現状は議論が一旦止まっている状態であることを共有しました。 模擬裁判と今後の準備 2028年札幌の全国協議会に向けて、産業医・産業保健職向けの労務ホームセミナーシリーズを準備していく方針を確認しました。 番組のセルフプロデュースの難しさに触れ、外部プロデューサーを単発で迎える可能性についても言及しました。 編集後記 高尾 中日にはレンタカーを借りて、島の中を、かなり行ったり来たりしました。 満タン返しで、ガソリン代が600円に満たず。 ホンマか?と思いましたが、考えてみれば、信号がほとんどないので、ストップ&ゴーがなく、移動の予測時間と距離が感覚を超えてましたので、確かに燃費もいいのだと理解しました。 前園 昔から乗り物酔いグセが非常に強く、今回は船酔いでしたが、基本的に車、特に閉鎖的なバスなどはダメです。 船は高速船がダメで、外に出れるフェリーならok。電車は大丈夫。新幹線はときどきダメ。 誰か根本的な改善策をご存知の方いらっしゃれば、ご一報ください…。 森 とてもとても楽しみにしていた合宿だったので、行けなくて大変残念です。。。

    58 min
  6. Apr 2

    第97回|50人未満事業場のストレスチェック実施モデル

    今回は、令和7年の安衛法改正により、ストレスチェックの実施が50人未満の事業場にも義務付けられることを受け、小規模事業場特有のリスク(結果の漏洩、コスト、実施者の確保)を踏まえた独自の実施スキームを議論しました。ベンダーへの外注ではなく、企業内労働組合・互助会に委託するモデルを提案しています。 告知 【リスナーからの声を募集中!】 第100回に向けて、リスナーの皆様からのご意見・ご感想・ご質問を募集しています。いただいたお便りについては、4月17日(金)の夜に実施予定の100回記念ライブ配信にて、すべて取り上げる予定です!どしどし応募ください。 https://forms.gle/DH7MFRKid5Hj5QW29 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:なぜ働いていると本が読めなくなるのか (集英社新書)  前園:「パン作ったことある?」「たい焼き食べたことある?」 森:父の退任記念祝賀会に参加しました。 議論した内容 小規模事業場におけるストレスチェックの課題 50人未満の事業場では、監督署への報告義務はないものの、実施義務は生じる。報告義務がないことを理由に実施しない、という対応は取るべきではない。 小規模事業場では社長や社長の配偶者が総務を兼ねていることも多く、結果が事業者に漏洩するリスクが極めて高い。 厚労省マニュアルは「原則外注」としているが、外注先がこうしたリスクを十分に理解しているとは限らず、コストも割高になりやすい。 労働組合・互助会への委託モデルの提案 ベンダーではなく、企業内の労働組合・互助会にストレスチェックの実施業務を委託する方法を提案。組合には従業員の不利益情報を事業者に漏らす動機がなく、むしろ守る側の立場にある。 事業者は委託契約を結んだ後、実施方法の詳細は一切関知しないという建前を貫くことで、結果の漏洩リスクを構造的に排除する。 組合・互助会から各従業員に実施を依頼し、本人が自分で57項目のうちB領域(ストレス反応)29項目を記入・自己採点して高ストレス判定を行う。 実施者の位置づけと実務上の運用 実施者(医師等)は制度上必要だが、本スキームでは結果を見ない実施者として機能する。判定基準の設定と承認のみを行い、実際の採点は本人が行う。 実施事務従事者は置かない。封筒を集める組合担当者は中身を知らないため、実施事務従事者に該当しない。 当面3年間は高尾先生が実施者を引き受け、その後は地産保の登録産業医に引き継ぐ想定。 高ストレス者の面接指導の流れ 面接指導を希望する従業員は、事業者ではなく組合・互助会に申し出る。組合から地産保の登録産業医につなぎ、事業者を介さずに面接指導が実現する仕組み。 措置の申し入れがあった場合のみ事業者が関与し、時間外労働の制限など具体的な措置を講じる。 検査実施に相当する時間分の賃金は事業者が従業員に支払い、就業時間外での実施による金銭的不利益を補填する。 法令上の論点 安衛法第66条の10、施行令、安衛則第52条の10と政令省令委任の構造をたどる必要がある。「実施者」という用語は安衛則のタイトルに出てくるが、条文本文中には明確に定義されていない。 互助会(法人格なき社団)が委託契約の当事者となれるかなど、契約関係の法的整理は今後の検討課題として残った。 編集後記 高尾 ゾノ先生の指摘を受けて、さすがに、「判定」そのものを労働者自身にやらせるは言い過ぎなので、労働者には、「足し算作業」をやってもらって、判定は、以下のツールで「実施者」が行う建付けとするといいなと気づきました。 https://forms.gle/WkH3tePEoG6WerMJ6 もっとも、この複雑なスキームを音声コンテンツで理解することは困難だと思いますので、また連載で文字で確認ください! 前園 日本語は多義的ですが、読みやすい文章はリズムがいいという話も耳にします。 とはいえ聞き手のリズム感と書き手のリズム感が一致するとも限らず、普遍的な正解があるのかないのか。 法曹界隈には一応の型のようなものはありますが、一般のリズム感とは異なる感じがしています。 とりあえずドラムでも叩いてみてから考えた方がいいのでしょうか。 森 編集をしながらふと思ったのですが、私たちが考えているような、小規模事業場向けのWebで実施できるストレスチェックサービスであれば、Claude Codeで簡単に作れそうです。Claudeとチャットしてみた感じ、おそらく保守費用も年間数万円程度になるのかと。暇な時(私というよりは、Claudeの使用量に余裕があるとき)取り組んでみようと思います。

    1h 7m
  7. Mar 16

    第96回|よくある質問シリーズ Part1「不調に気づいたとき、まず何をすべきか」

    新企画「よくある質問シリーズ」の第1回として、メンタルヘルス不調が疑われる従業員への初動対応に関する4つの質問を取り上げました。大原則と三原則に照らせば、個別事情に左右されず標準的な対応が導けることを、具体的な事例を通じて示しています。 よくある質問シリーズは、今後不定期に収録予定です。 告知 【リスナーからの声を募集中!】 第100回に向けて、リスナーの皆様からのご意見・ご感想・ご質問を募集しています。いただいたお便りについては、4月17日(金)の夜に実施予定の100回記念ライブ配信にて、すべて取り上げる予定です!どしどし応募ください。 https://forms.gle/DH7MFRKid5Hj5QW29 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:神栖産業医トレーニングセンターを訪問しました。 前園:「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」(西林克彦著・光文社新書) 森:東京出張の帰りに雪による航空ダイヤの乱れに遭遇しました。 議論した内容 Q1:パニック障害の社員に業務を限定して与える義務はあるか 「客先訪問はできないが社内作業なら可能」と本人が主張し、「主治医も環境限定で就業可」との意見だが、これは三原則に照らせば、通常勤務ができていない以上、まず療養導入を進めるのが基本的な対応。 安全配慮義務を果たすために軽減業務を認めると、配慮がエスカレートし、結果的に義務違反を問われるリスクがある。 Geminiに同じ質問をすると「合理的配慮の提供義務がある」と回答。事前知識なく汎用AIに頼ることの危険性が浮き彫りになった。 Q2:適応障害気味の部下について、会社はどこまで情報収集すべきか 上司が親身に病状や通院状況を聞き出そうとしているが、疾病に関する情報収集は不要。 会社として把握すべきは勤怠状況と職務遂行状況であり、これらは適正な労務管理の中で自然に得られるはずの情報。 進捗遅延を指摘し、背景に体調不良があるなら療養か通常勤務かの二択を提示するのが適切。 コーチングの弊害について(詳細は第61回を参照) Q3:自殺をほのめかす優秀な社員への対応 業務成績や性格など枝葉の情報を削ぎ落とせば、「従業員が死にたいと言った」という事実のみ。速やかに療養導入を進め、家族にも連絡する。 本人が「大丈夫」と撤回した場合は、2ステップ受診(まず主治医に通常勤務可の意見書を求め、その上で改めて療養を検討)で対応する。 Q4:休職を拒むマネージャーへの対応 ミスの連発に対してまず事例性の指摘と改善要求を行い、改善しなければプロジェクトからの配置変更や懲戒手続きも視野に入る。 病気欠勤は申請制であるため、まず就業規則上の選択肢を説明し、本人に選択させるプロセスが重要。 療養導入は命令ではなく、本人と家族に先の見通し(最悪のケースを含む)を示した上で、本人の選択として進めるのが実務上のポイント。 メソッドAIアドバイザーとの比較 高尾メソッドに特化したAIチャットボットは、上記の質問に対して大原則・三原則に基づく的確な回答を生成した。 一方、汎用AI(Gemini等)は安全配慮義務や合理的配慮を前提とした労働者保護的な回答を返す傾向がある。 質問の枝葉を削ぎ落として100文字以内にまとめるプロセス自体が、問題の本質を見極めるトレーニングになる可能性がある。 編集後記 高尾 何度も言及してましたが、「(メンタル不調者の)希望をきく」ということは医療的アプローチでもあり、近年のコーチングのような意味合いともリンクしやすく、結果として、本来あるべき労務管理を上司なり人事が行うことなく、相手の希望通りにする、そのための変な言い訳として安全配慮義務などが「利用」されているように感じました。  昔?のように、黙っていても自身で気づき、労働者として望ましい方向に回帰してくれる時代は終わったと考えると、「言わなくてもわかるでしょう」ではなく、明確に(誰がきいてもそうわかるように)伝えることの重要性がますます高まっているように思います。 前園 高尾メソッドを習得する最も良い方法は、「事例相談に対して回答する」という機会をもつことと考えています。  聴いてわかったつもり、読んでわかったつもりになっていても、いざ生の事例の相談を受けてみると、病名などに「引っ張られて」しまいがちです。  最近でしたらAIに架空の質問を作ってもらうのも良いかもしれないですね。 森 AIは、ナレッジそのものもそうですが、よく言われるようにプロンプトが重要です。僕が作った(Claude Codeに作ってもらった)AIアドバイザーは、事前プロンプトにコア概念を全部入れているようで、精度が高く出ているようです。

    1h 1m
  8. Mar 9

    第95回|週1報告の「月1提出」モデルと、専属産業医の兼務要件

    今回は2つのテーマを取り上げました。1つ目は、週1報告の記載頻度は維持しつつ、提出を月1回にまとめる簡易運用モデルの提案、2つ目は、専属産業医が他社の嘱託産業医を兼務することの可否について、法令・通達をたどりながら議論しました。 告知 【リスナーからの声を募集中!】 第100回に向けて、リスナーの皆様からのご意見・ご感想・ご質問を募集しています。いただいたお便りについては、4月に実施予定の100回記念ライブ配信にて、すべて取り上げる予定です!どしどし応募ください。 https://forms.gle/DH7MFRKid5Hj5QW29 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:アバルト595が納車されました。 前園:「連絡は産業医に限る」とワコール事件。 森:ウイスキーの飲み方を、ストレートからトワイスアップに切り替えました。 議論した内容 週1報告の「月1提出」モデル 休職者が多い大規模企業では、週1報告の受領・処理の事務負荷が導入の障壁になっている。 本人には週1回の報告書記載を継続させつつ、4枚まとめて月1回提出させることで、会社側の事務作業量を大幅に軽減できる。 記載頻度を週1に維持する意義は、療養中の感慨と増悪の波を捉えるため。月1回のまとめ書きでは、良い時期だけ・悪い時期だけを選んで書くバイアスが生じやすい。 まとめて書いたかどうかは報告書の内容やペンの変化から概ね判別可能だが、仮にまとめ書きであっても、4週分を正確に再現できる能力自体が一定の回復を示している。 復帰準備期後半に入ったら、提出頻度を隔週→週1に戻し、復帰タイミングの遅れを防ぐアレンジが必要。 生活記録表との比較 生活記録表は「何時に起きたか」「何をしたか」という医療的アプローチであり、復帰準備に必要な「業務遂行能力の回復」を読み取ることができない。 週1報告は業務的アプローチであり、事務担当者でも内容を理解でき、復帰基準の充足度を確認できる点で優れている。 生活記録表を週1報告とセットで求めるハイブリッド運用は、本人にとって「会社のためなのか自分のためなのか」が曖昧になり、不信感を招くリスクがある。 生活記録に基づく支援を行うなら、復帰準備期に本人の希望を確認した上で、週1報告とは明確に分けて運用すべき。 専属産業医の兼務要件 「専属産業医が嘱託産業医を兼務することを禁止する規定はあるか」という質問が多いが、禁止規定がないからやっていいという解釈は法の趣旨に反する。 専属産業医の根拠規定は、安衛法第13条→施行令第5条→安衛則第13条第1項第3号と、政令省令委任の構造をたどる必要がある。 「専属」の定義は法令上明文化されていないが、行政解釈では衛生管理者の規定に準じ、「その事業場のみに所属し、もっぱらその業務に従事する」と解されている。 通達(基発)により、グループ企業の嘱託産業医を兼務できる例外要件として、地理的近接性、合同安全衛生委員会等の設置、労働態様の類似性、対象労働者総数3,000人以内が定められている。 禁止されていないからやってよいのではなく、制度の趣旨を踏まえて自ら判断できることが、専門家としての産業医に求められるスキルである。 編集後記 高尾 「岩盤規制(新潮新書)」を引用して、法令の定めに対して、通達で例外を設けることのイレギュラーさを説明する研修も作成していますが、専属産業医の兼務問題も同じ面がありますね。 通達は以下が最新でしょう。地理的要件は削除されたけど、(1)労働衛生協議組織、(2)業態の類似性、などを勘案するとほとんどの兼務は正当化されないでしょう。 https://naras.johas.go.jp/wp-content/uploads/2021/04/aaaa.pdf 前園 お医者さん界隈も、「常勤」「専任」などの言葉が飛び交う複雑な業界ですね。あまり弁護士とクライアントとの関係では聴かないかもしれません。 一方で、弁護士には、利益相反関係には非常に厳しい規制がありますので、この点については皆、とても慎重です。 元請と下請の代理人を兼ねたりすることも控えることも多いですが、もし兼ねるとしても、事前説明や同意、いざとなったときの辞任など、適切な対応が求められています。 森 AIチャットボットは、今のところAPI料金も跳ね上がることなく済んでいますので、どんどんお使いくださいませ。 https://fukushoku-meijin.com/ai-advisor/

    1h 12m

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この番組は、産業医の高尾総司、弁護士の前園健司、社労士の森悠太の三名が、企業や自治体の人事・健康管理に携わる方向けに、メンタルヘルス不調者対応や健康管理について、議論をしていくポッドキャストです。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210%E2%81%A0

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