復職名人が読む三手先

Centro Salute

この番組は、産業医の高尾総司、弁護士の前園健司、社労士の森悠太の三名が、企業や自治体の人事・健康管理に携わる方向けに、メンタルヘルス不調者対応や健康管理について、議論をしていくポッドキャストです。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210%E2%81%A0

  1. 1d ago

    第110回|復帰基準は主観か客観か。メソッドの根幹3要素を深める

    本編では、姉妹番組「次の一手」第7回で扱った「療養開始前の1日だけの引き継ぎ」を3人で再検討したうえで、復帰基準を判断する際の主観と客観の問題を議論します。 近況報告 高尾:アルファロメオのエンジン警告灯が再発 前園:電動レターオープナー 森:大分の自転車レースに参加しました 議論した内容 「次の一手」第7回の再検討:療養開始前の1日だけの引き継ぎ 「難しい」と口にした時点で思考が止まる。メソッドで考えれば簡単であるべき事例だった 理論、理論を現実に落とし込んだ現実モデル、個別事例に応じた曲げの3つを区別せずに議論が行き来していた。理論と現実モデルの差は「時間」であり、その隙間は現実的に許容するしかない。 診断書の「療養が必要」という部分は採用するが、「いつから」は日付がなければ事業の都合で企業が決められる。即時の療養開始はそもそもあり得ない以上、1日の引き継ぎは正当化する方向で考える。 現実モデルとしては、必要最低限の引き継ぎを含めて療養開始としたと整理し、主治医にも情報共有する。 弁護士の視点では、リスクをできるだけ定量化して事業判断の材料を提供するのが実務。ただし「主治医に照会を」「産業医に意見を」という助言は、その間に時間が経過することが抜け落ちやすい。担当者は1か月何も起きないことで「先延ばしでよい」と学習してしまう。 2人での進行は考える間が取りにくく、3人の方が議論が煮詰まりやすいのでは。 復帰基準は主観か客観か 結論は「主観でよい」。本人ができると言い、誰が見ても明らかに無理と説明できる点がないなら復職させる。この業務をやるに値するかの判断は採用時に済んでおり、業務能力の評価は復職後に行うべきもの。 いくら客観的な評価を突き詰めても、本人側は人事の恣意性を感じ取る。判断する側の「無理だと思っている」姿勢はシナリオの言い回しやトーンに透けて見える。 医療職が前面に出ると経験則による「絶対無理」が、人事担当者が判断すると組織側の論理が入り込む。どちらもニュートラルから離れてしまう。 本人が「これなら復帰できる」と自ら示せるように、週1報告の中で説明してもらう方向へ持っていきたい。復帰可能と説明できない人をどう扱うかは、神奈川SR経営労務センター事件の論点であり、復職後に業務評価として直面すべき問題。 期間の目安は全体で最低3か月、復帰準備期は療養専念期と同等かそれ以上。復帰準備が不十分なまま強行的に復帰する人は、再療養や指導といった結果の責任を自ら負うことになる。 復職後に通常の業務指導や注意指導をきちんと行うだけで、労使紛争自体が減るという弁護士の実感。療養モードから就業モードへの切り替えを明確にする「儀式」として、復職時に採用時と同様の研修的な場を設け、業務上の指摘指導が当然なされることを一般論として伝えておく案。 現場が主観での早期復帰に粘ってしまう背景には、復職後の業務管理・労務管理への不安がある。復職後も週2回程度の業務報告を人事がバックアップとして受け取る仕組みにすれば、休職中の週1報告と同じ運用で対応できる。 メソッド根幹の三要素 高尾の提案は「事前説明(復帰基準と復帰手順を含む)」「療養中に放置しない」「説明した通りに運用する」の3つ。 「放置しない」の中身は問われる。月2回の保健師からの電話は、事前説明に含まれそのとおり運用しているなら許容範囲だが、医療的な根性論に陥りやすい。 肝は、誰に対しても同じように適用できる仕組みとして確立すること。個別対応ではなく業務プロセスとして回す。 事前説明の内容や復帰基準は、組合との協議や衛生委員会を経ていることが前提。労働者集団に適用するものとして周知する。 「主治医と産業医の総合判断」を復帰基準にするとブラックボックスになり、人によって結果が変わるため公平性が維持されない。 「メソッドをやっている」と言えるかに悩む必要はない。自社で考えた復職プログラムとして自信を持って運用すればよい。要素は3つに収め、長くしすぎないことが大事。 編集後記 高尾 次の一手へのツッコミ、好評のようでしたら、そのつもりで今後も聴いていきたいと思います。 復帰基準は主観か客観かの問題は、音声コンテンツだけでなく、引き続き文章としてもしっかり議論を尽くしていきたいと思っています。 前園 2人配信か3人配信かという問題について。  たとえ3人配信であっても、司会進行役など、自分に役割があると時間配分の方に意識が向いて、話の中身には入っていけないことがあります。こういうとき、水中に潜らずに水面上でバシャバシャとトークしてる感じですね。  この問題は単純に人数の問題だけでなく、話者の関係性にもよりますよね。復職名人ポッドキャストでは、安心して中身を話し続けて良いという安心感があるので、どんどん水深を深めていける感じがあります。(そんなに話していないですけど) 森 3人目のAIアドバイザーを早速作ってみました。一手先第11回より登場予定ですのでお楽しみに!

  2. Oct 12

    第109回|前園綜合法律事務所新サービス「人事労務アドバイザー」について

    前園弁護士が、検討中の新サービス「人事部門向けアドバイザー」について、議論しました。 近況報告 高尾:厚岸ウイスキーの二十四節気シリーズをコンプリートしました。 前園:福岡ソフトバンクホークスがリーグ優勝しました。 森:娘が飼育するカブトムシの飼育箱からキノコバエが大量発生。 議論した内容 人事部門向けアドバイザーは必要か 顧問弁護士は紛争の直前からしか関与できない。もっと手前から弁護士の予防法務を実践できないか、という問題意識が出発点 顧問弁護士の役割は紛争対応・契約書チェック・株主総会対応などが中心で、中小企業では社長の相談相手。人事が日常的に気軽に相談できる相手は空白になっている 入り口をメンタル不調に限定しない方がよいという指摘。ただし今の労働紛争は健康問題が絡むものがほとんどで、結果的にメンタル対応の相談になる 「お医者さんの意見をまず聞く」という助言や、医療過誤の文脈での「謝るな」型の助言は、現場に落ちると紛争化リスクを上げる。古いタイプの弁護士助言とは異なる関わり方が求められている 既存の顧問契約と住み分ける契約設計 裁判は既存の顧問事務所に任せ、「すれ違いから裁判になるまで」の隙間を埋めるサービスとして位置づける 有事に速やかに動き出せる「予備契約」「基本合意書」を平時に結んでおく。事前に事例単位の基本料金と追加費用の構造を確認しておけば、起きたときに出遅れない 課金は月額ではなく事例単位を想定。月額は長引かせるインセンティブが生じ、会社との利害が衝突する。解決までのパック型や、タイムチャージ併用も選択肢 一事例を相談してもらい、残りの事例は会社が真似して自走するモデルが理想。高尾の成功事例でも、相談対応したのは20例中2例だけだった オンライン前提にすることで福岡に限らず全国対応が可能。予約枠から直接相談に入れる導線にする 丸投げニーズとの距離 「困った事例のアドバイザー」と「丸投げしたい」の2つのニーズがあり、産業医は後者を受けてきた経緯がある すれ違いの本質は会社が本人と正面から向き合わないこと。丸投げではボタンの掛け違いは直らないため、丸投げニーズには応えないという立場を確認 高尾メソッドを実践したい人事担当者が上司を説得する際、「弁護士が大丈夫と言っている」という安心感の担保がニーズになるという指摘 非弁行為との関係を整理する 森が前園事務所の業務補助として休職中の対応を担う形は、顧客対応と判断の主体が弁護士に残っていれば問題にならないという整理 非弁行為の要件は「法律事件」に関する鑑定・代理・交渉などを報酬目的で行うこと。健康問題と法的地位が絡む近年の事案では、産業医の面談も形式的には鑑定に近づく場面がある 実際には悪質で荒稼ぎしている事業者が通報・調査の対象になるもので、真面目にサービスをしている限り過度に心配する必要はないという見解 社労士の労務管理アドバイス(3号業務)や労働衛生コンサルタントは名称独占で業務独占ではないため、労務管理の助言自体は資格者でなくても可能 法人営業の壁をどう越えるか 法人営業の指南書を参照し、キーパーソンに会えない・検討が進まない・予算がつかないといったボトルネックを整理 新しい契約を結んだ経験のない人事・総務では、仕様書案や契約書案から用意する必要がある。「アイデアを売る」難しさがある 高尾メソッド側の反省点として、何をどの価格でどの規範で売るかを明文化してこなかったことが導入のハードルになっているという指摘 研修を入り口にし、受講者特典として相談枠を提供する。既存の研修予算の枠内で始められるため導入ハードルが低い 産業医や保健師が会社の担当者に前園弁護士を紹介するルートを作り、メソッドを現場側から浸透させていく AI活用と見積もり型のサービス オンラインスクールのAIチャットボットの運用経験から、高性能モデルの回答精度は実用水準にあり、弁護士事務所内で助言文の下書きに活用できる可能性 事例ヒアリングの段階で、期間と費用の見通しをAIも使って見積もる。法人は「このサービスで総額いくら」という形が受け入れやすい 事例解決の先に再発防止パックを提案し、弁護士部分・社労士部分・産業医部分を分担する構想 高尾メソッドの三要素 療養開始時の説明を面接シナリオ読み上げまたは動画で行うこと 復帰基準を健康面だけでなく業務・労務の面から多面的に定めること 療養中にほっとかないこと 編集後記 高尾 3年未満のウィスキーは「ニューメイク」で、NEW BORNは厚岸の商品名でした。 弁護士さんのメソッド導入への関与については、総論を案内した後、導入するかどうかの検討段階で、「法的リスク」について、整理してもらうのが一案でしょうかね。 前園 リスナーの皆様の中にも、「メソッドを取り入れたいが、会社側がなかなか・・・ということがあるかと思います。 実際、組織を動かすということは並大抵の努力ではままならぬことも多いです。 ただ、動かない原因がどこにあるのかを特定する努力を続け、あるいは、手を足を動かし続けることで、きっと突破口はあるはずです。 組織は人間が作るもので、あまりにも複雑ですが、その分やり甲斐がありますね(笑) 森 オスメス1ペアだけ飼ってましたが、幼虫がなんと27匹も育ってました。

  3. Sep 14

    第108回|健診受診100%達成に向けて

    今回はいつもの休復職者対応から少し離れ、「健診受診割合100%達成」をテーマに議論しました。 告知 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:久々のアルファロメオネタ 前園:天神に新規オープンしたジュンク堂書店 森:乗鞍ヒルクライムは中止となりました。残念 議論した内容 チャットグループを使った受診勧奨のアイデア 健診時期にLINEやChatworkで10〜20人規模の「健診受診完了グループ」を作り、受診(または予約完了)した人から抜けていく仕組み。督促役の課長は残り続け、残った人にだけ「早く受診してね」を繰り返せばよい。 特定個人を名指しせず集団に向けて言えるため督促する側の心理的負担が下がり、受けていない人をまとめて管理できるため管理側も楽になる。最後に自分一人が残る「見られている感」が受診の後押しになるという両面の効果。 一人だけ残ると名指しと同じになるため、上司の上司や人事が順次グループに加わっていく、あるいは減ってきたグループ同士を合体させて常に10人以上残す、といった発展案も出た。 課単位で100%達成したらインセンティブを付ける正の動機付け案は、未受診者への同僚からの圧力を生むためかえって危ういと発案者自ら撤回する場面も。 是が非でも受けない人は健診以外の業務でも問題を抱えている可能性が高く、他の場面で適切に処置すべきという見方と、こうした小さな逸脱を見逃さないことがモンスター化を防ぐという見方の両方が成り立つ。事案のステージの早い遅いで使い分ける整理となった。 「割合」と「率」 連載原稿のタイトルが「受診率」ではなく「受診割合」である理由の解説。疫学で「率(rate)」は罹患率・死亡率のように分母に時間を含む発生の速度を指し、「割合(proportion)」は分子が分母に含まれる指標(受診割合・喫煙割合など)を指す。 「比率」という言葉は、専門用語である「率比(rate ratio)」と紛らわしく、どの指標も指さないため使わない方がよい。職場で扱う指標のほとんどは割合であり、迷ったら割合と言っておけばほぼ間違いない。 受診命令をめぐる判例と受診義務の射程 健診受診に関する判例は、電電公社帯広局事件と愛知県教育委員会事件くらいしか見当たらないという整理。帯広は頸肩腕症候群をめぐる受診命令の事案で、労働組合運動と絡んだかなり特殊な事案。 愛知県教委事件は一般定期健康診断だが、教職員の健診は学校保健法制・健康増進法系の根拠を持ち、健診を権利的に捉える書きぶりになっているため、通常の企業における健診のイメージとはやや異なるという指摘。 受診義務は労働者を罰するために課されているわけではなく、拒否にどう及ぶかは難しい。正当な理由(妊娠の可能性によるX線検査拒否など)があれば個別項目の拒否で済む話でもある。 同意書と過失相殺当たり屋事案からの類推 未受診を見過ごした労働者が倒れた場合に、過保護的な安全配慮義務の文脈で会社が問われる懸念が残る。対応として、労使協議によるローカルルールや、「自己健康管理を行い健診は受けない」旨の署名を本人に求める案を議論。同意書が有効と認められなくても、過失相殺の材料としては1〜2割は確実に働き、より大きく取ってほしいという期待。 故意に事故を起こす当たり屋事案では過失や因果関係を否定して請求棄却となることからの類推で、「わざと受けない」ケースの整理を試みた。過失相殺が5割を超えるような場合はそもそも因果関係なしとして請求棄却という考え方が語られる一方、実務上は7〜8割の過失相殺例もあり、最後はバランスの取り方の問題。 遺族側からは「真摯な同意ではない」「死ぬことまで同意していない」という主張が当然あり得るという労働者側視点の切り返しも。AI音声動画で最悪の事象まで含めて事前説明しておくという対応案につながった。 コストの偏在と制度の根本矛盾 難渋事例には会社側複数名と産業医が膨大な時間とコストを投じており、その負担は結局、素直に従っている他の労働者に転嫁されているという構造の指摘。医療費で上位1%が全体の約2割を使う構図を職場に持ち込むと、健診を受けない上位1%に産業保健リソースの8〜9割が割かれる逆転が起きており、適正化が必要。 保険でカバーする案はモラルハザードと保険料高騰で成り立ちにくい。受診者に健康増進手当を出す正のインセンティブ案は、99%が受診している健診なら不利益変更にもならず意外と実現しやすいかもしれないが、金額設定が難しい。 健診事後措置の問題が扱いにくいのは、プライバシーを守りたい労働者の立場と、過保護であっても健康管理を行わなければならない会社の立場という、制度の根底にある矛盾した2つの思想に起因する構造的問題であり、表層的な手当てでは細かい問題はなくならない。 編集後記 高尾 「率」はぜひこだわってみてください。 日本語の日常用語での「**率」はほとんど割合です。 一方で、人口動態統計に出てくる人口10万あたりの 年間発生数は、正真正銘「罹患率」であって、 ちゃんと分母が10万人(x年)になってるんですね。 死亡率は本当に、発生の速さとしての「率」の場合もありますが、 一定期間の死亡「risk(リスク)」の場合もありますのでご注意を。 まずまず、わかりやすい解説は以下 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=58299?site=nli 前園 中小書店だけでなく巨大書店もどんどん減っている現状を憂いています。 大きな本屋さんは、そこにあるだけで地域の文化レベルを上げると勝手に考えていますし、 自分のように、本屋に行くだけで賢くなった気がなれる人材には不可欠な存在なのです。 リスナーにもそういう方がいらっしゃるかと思います。 そんなあなたには、「ちょっと本屋に行ってくる」をおすすめします。 https://issuance.official.ec/items/61656295 森 健診受診そのものに意味があるとは考えていないものの、一方で義務ではあるので、ストレスチェックと違って、無視するというわけにはいきません。 そのため、いかに労力をかけずに義務を履行するのか、そうした観点から施策を検討している、という背景をご理解いただけたらと思います。

  4. Sep 1

    第107回|休職「残ゼロ」問題と安全配慮義務

    今回は、近く予定している安西法律事務所への訪問に向けて、安西先生に聞きたい論点を整理しました。休職期間の通算規定における「残ゼロ」問題と、産業保健サービスの提供が安全配慮義務の履行としてどう評価されるかという2つの大きなテーマについて議論しています。 告知 【9月26日・27日開催の産業医生涯研修会のお申し込みはこちらから】 https://jfpa.manaable.com/login/6fc978c9-b132-4b5b-933c-292b51dc7f2b/detail 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:両立支援シミュレーター 前園:634購入しました 森:自転車チェーンの洗浄方法 議論した内容 休職通算規定の「残ゼロ」問題 休職期間満了の翌日に復職した労働者がすぐに再度休み始め、会社が通算規定を適用して自動退職扱いとしたところ、裁判で会社側が敗訴した事例を紹介。 当該会社の就業規則は「休職期間中に復帰した者が再休職した場合」と枕詞を付けていたため、期間満了後に復帰したケースへの類推適用は相当でないと判断された。 背景には、労働者に不利益な処分をするには明文の根拠が必要という、罪刑法定主義に近い法曹界の発想があるという指摘。文言の間を繋いで不利益な扱いをするなら、直接適用できる規定を作っておくべきという発想になる。 通算規定の一般的な書きぶりでは残ゼロのケースが読み込めない可能性はかねて指摘してきた論点であり、残日数ゼロで復職する者の扱いを就業規則に明記した方がよいという結論。 残ゼロ事案は「三段論法」ではなく普通解雇で正面から 残ゼロの状態で休職を命じ、通算規定を適用して自然退職とする組み立ては、実質的に普通解雇を回避する三段論法であり危険という認識。 実際にその事案になれば、休職期間を最大限使って解雇回避努力をした事実を踏まえ、職務遂行が果たされていないことを理由に堂々と普通解雇で臨むべきという整理。自己都合退職の猶予を与えるなら公明正大に行えばよい。 公務員では分限免職の枠組みに相当する話であり、休職開始時点から分限制度全体をニュートラルに説明しておくことが有効。制度説明はAI動画にして全員へ公平に示せば、退職誘導と言われるリスクも減らせるという提案。 分限への理解が浅く、指定医を含む2名の診断書の必要性が伝わらない事案が頻発しているという経験談も共有された。 安全配慮義務と産業保健サービスの位置づけ 医療的アプローチを先行させ労務管理が後手に回ると、予見可能性を高めながら対応が遅れる構図になり、裁判上も致命的になり得るという整理。 一方、弁護士側には「ここまでやっておけば大丈夫」という経験則があり、産業保健サービスの積み上げを一定程度評価する感覚があるのではないかという仮説。医療的アプローチが過失相殺の事由として大きく認められれば、実質的に会社側主張が認められたに等しいケースもある。 産業医への「丸投げ」と、法人として判断した上で正式に業務依頼する形との違いが重要。事例性の改善は会社が然るべき職制を通じて要請しつつ、疾病性の改善を専門家へ費用をかけて正式に注文する形なら、義務を履行せんとする態度として評価され得る。 プランAが駄目ならプランB・Cまでを想定した依頼と費用の支払いを行うなど、判断を委ねず法人側が握る立て付けが鍵という結論。 安西先生への質問テーマの整理 訪問時の優先順位はまずAI音声動画を見てもらい率直な感想を聞くこと。療養開始説明などの実例を共有する予定。 残ゼロ問題は司法判断がどう予想されるかという形で、経験豊富な先生方の見解を聞きたい。 安全配慮義務については、サービスの提供がなぜ義務の履行の一部に転換し得るのか、その要件を掘り下げたい。 両立支援の現状への危機感(主治医マニュアルを含む)についても所感を伺いたい。制度の出始めに研究ベースで関わった医師から、現在の運用には労使の軋轢を生む懸念があるとの意見が出ているという話も紹介された。 編集後記 高尾 医療的健康管理は、結果が悪ければ、安全配慮義務の履行としてはまったく評価されないのか。 それとも、一定の要件を満たすよう、あらかじめ前提を置いた医療的健康管理(産業医や保健職の本人に寄り添った対応)であれば、安全配慮義務の履行の一部、としては評価されうるのか。 非常に興味深い視点です。 前園 軽いは正義といいますが、634の軽さは異様です。 「モックかと思う」という口コミは嘘ではありませんでした。 Macとの棲み分けについてはこれから向き合ってまいります。 森 新品チェーンをしっかりと洗浄してまで臨んだ、乗鞍ヒルクライムですが、雨のため中止となりました・・・ 詳しいことは、次回の近況報告でお話ししたいと思います。

  5. Aug 5

    第106回|裁判例の読み方・考え方の続き/両立支援カード

    9月に開催予定の産業医生涯研修会に向けた、2つのテーマの最終打ち合わせとして、前半は第104回で取り上げた「産業医実務に生かす裁判例の読み方・考え方」の検討、後半は両立支援カードについて検討しました。 告知 【9月26日・27日開催の産業医生涯研修会のお申し込みはこちらから】 https://jfpa.manaable.com/login/6fc978c9-b132-4b5b-933c-292b51dc7f2b/detail 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:北海道の苫小牧市を訪問。市長公約の項目にメソッドに基づく復職プログラムの導入が盛り込まれていました。 前園:福岡を訪れた知人と、行きつけのもつ鍋店へ行きました。反省したはずなのに・・・https://fukushoku-meijin.com/podcast/sp-2025-02/ 森:深部体温を推定するセンサーを購入し、暑熱順化トレーニングを開始しました。 議論した内容 研修テーマ①「裁判例の読み方・考え方」をどう組み立てるか 第104回|産業保健に生かす裁判例の読み方・考え方 タイトルは「産業医実務に生かせる裁判例」ではなく「裁判例の読み方・考え方」。論点ごとに裁判例を並べる構成とは意味合いが大きく異なり、ミスリーディングになりかねない。 論点別の裁判例紹介は労働判例誌や労働新聞で足りるとして、判決文そのものの構造を扱う方向で合意。原告・被告それぞれの主張欄を読むことで、会社が認識していた実態が見えてくるという読み方を紹介する。 教材候補として、直近で話題になった任天堂の事件を提示。産業保健職も邪険に扱われることがある立場から、我が事として読める題材になるという評価。ニュートラルに読める点も適している。 もう1つの候補は、NTT東日本の事件(復職過程での作業により体調を崩した事案)。「どうせ負けるのだから王道を行け」というメッセージの題材として適する。争点が多く、抜粋して実際に読んでみる形式が想定される。 綜企画設計事件も候補。所定時間の業務ができなければ時間外の業務も成り立たないはずが、やらせていない以上できないとは言い切れないという判断など、感覚とのズレがある。 「どうせ負ける」から何を引き出すか 産業医に丸投げする対応は負け筋になる。産業医は選択肢を提示するだけであり、法人が何もしていないという評価につながる。 常識論・救済的発想で対応すると後から断罪され、産業医が安請け合いをしても訴訟では負けにくいという、ねじれた構造がある。 結論として「これさえすればよい」という短絡的な答えは示さない。事案が違えば結論も変わり、事前に推定できない部分は残る。 到達した整理は、負けるかどうかを含め、考えても仕方がないことは考慮に入れないということ。従来の裁判例の使われ方は、考えても仕方がないことを考慮に入れ、やるべきことをやらない理由にしてきた。前向きにやるべきことをやるしかない。 関連する問題意識として、労働者や家族から負の感情をぶつけられたときに言うべきことを言えない人事担当者の存在。従来型(医療の話だから自分は話せない)が取り払われてもなお動かない場合、相手に怒られるのが嫌で先送りしているだけの可能性がある。そうした担当者は繰り返し医療の話に戻そうとするため要注意。転勤内示に怒鳴り込んできた従業員にも同様に何も言えていないのではないか。 研修テーマ②両立支援カードへの疑問 2026年自由集会「高尾メソッドと両立支援」 根本的な疑問として、休む話であるはずなのに、なぜ医師が配慮条件を決めるのかという点。 本人が負担の大きい作業にチェックを付け、それについて医師が意見を述べるという作りへの疑問。 文章として書かれた内容を様式に落とし込む際に不整合が生じるという構造的な問題。もとの文章が玉石混淆であるため、形にすると論理一貫性を保てなくなる。 正社員であれば通常勤務の範囲はすべて担うのが前提。それを列挙して医師に評価させれば、空調の効いた診察室にいる医師には想像が及ばず「大変な負荷」と評価されかねない。建設業で暑熱環境を免除せよという意見が出れば対応できない。 本人が負担の大きい作業に丸を付ければ、主治医はそれを免除した方がよいとチェックする以外にない構造。医師に「この業務はやらなくてよいと言ってほしい」と求めているだけの様式になっている。 主治医よりは産業医の方がまだ妥当な判断ができそうだが、産業医のレベルには幅があり、対応できない産業医に聞くのは主治医に任せるのと変わらないという整理。 就業上の措置との決定的な違い 医師の記載欄は、健診事後措置を中心とした就業上の措置に関する意見書を参照した作りになっている。 就業上の措置・配慮は、リスクとして一定期間メディカルコントロールが可能で、解除できるからこそ医師に聞く意味がある。 一方、両立支援は解除できない事柄を扱っている。したがってリスクの問題ではなく、キャパシティとしての契約見直しか、トレランスとしての「賃金を2倍にしてくれるならやる」という話しか残らない。 本来のあり方は、本人がまず「何でもやる・どこでも働く・いつでも働く」という契約内容を理解したうえで、身体的・精神的状況がそれを許さないのはどの部分かを示すこと。 会社と労働者は、10割を前提にやってみて8割だと分かればそれに見合う労働条件に見直すという話し合いを行う。医師に問うべきは「それをやってはいけないほど危険な状態か」という点のみ。 一時的な制限をかけることで医学的にコントロールでき、ワークリストリクションに意味がある項目があれば、産業医・主治医から追加提示してもらうのは歓迎。それを受けて労使で制限内容と待遇を協議する。 完全労務提供版と不完全労務提供版 完全労務提供申出版は、賃金・待遇を変えずにできることを一緒に考えてほしいという申し出。不完全労務提供申出版は、賃金・待遇が下がってもよいという前提で、10割から下げていき止まったところに合わせるもの。 重要なのは、10割から下げていく方向であって、最初からできないかもしれないので低い水準で試すという発想ではないこと。軽減勤務と同じ考え方。 7割の労務提供に対して7割の賃金が支払われるわけではない。値付けは会社が一方的に決めるものであり、労働者の選択肢は10割を10割でやるか、会社が決めた値付けを受け入れるかの二択。労務提供の質ないし量に対して待遇が比例的に決まるものではない。 キャパシティにはカレントアビリティ(現時点で測定される能力)とマキシマムアビリティ(全力を出せばできる水準)の別がある。アスリートと異なり、一般の労働者はマキシマムより手前しか発揮できないため、測定すること自体が労働者に不利にしかならない。 実態としては、周囲がカバーしている状態に医師のお墨付きを与えようとしているに過ぎない場合がある。 立位作業の例では、主治医が時間の見通しを持たないまま「長時間の立位を避ける」と記載し、会社が本人に尋ねて1時間程度と決まる。0から積み上げて限界で止める議論ではなく、10割から下げてどこまでできるかを見る議論であるべき。前者には賃金の話が一切登場しないという構造的な問題がある。 両立支援の出発点と厚生労働省資料への疑問 両立支援コーディネーターのマニュアルは「仕事を辞めずに治療を続けられるよう支援する」という立て付けで、離職を出発点としている。 本来避けるべきは、治療機会が確保できないことによる離職であったはず。ところが主治医向け支援マニュアルでは離職しか示されず、離職を避けるためなら治療機会の確保以外の何をしてもよいかのような構成になっている。 さらに休業の防止まで前提としており、これは無理筋。無理に働かせるくらいなら一度仕切り直した方がよい。しんどければ休んでよいと言えば足りる。 企業・医療機関連携マニュアルには、労働契約の下で一定の労務

  6. Jul 14

    第105回|三原則アップデートと上司向け「3ステップ」

    三原則のアップデート、とりわけ第二原則の見直しについて掘り下げました。今回は割と早くスッキリしてしまったので、いつもと比べて短めです。 告知 【産業医生涯研修会のお申し込みはこちらから】 https://jfpa.manaable.com/login/6fc978c9-b132-4b5b-933c-292b51dc7f2b/detail 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:風邪が長引いてます。天気予報とにらめっこしながらの(車の)散歩してます。 前園:西鉄の電車内の広告について。 森:身近になってしまったクマ問題。 議論した内容 第二原則のアップデートー「休ませる」から「指摘し続ける」へ 第一原則・第三原則は変更なし。修正の対象は第二原則のみ。 従来の第二原則は「通常勤務ができないなら休ませる」であったが、修正後は「通常勤務ができていない事実(またはその懸念)を何度でも伝え続ける」に軸足を移した。 従来型は運用の担い手を医療職と想定し、共通目標として療養を掲げていたが、メソッドを早期導入した企業では役目を終えつつあるという認識。 無理やり休ませる方向に働くと関係がギクシャクする。難渋事例で法務に相談すれば「休職命令権の濫用が争点になる」と返され、第二原則の運用が阻害されるという構造的問題。 事例性と疾病性の混同も背景にある。疾病性の思い込みから「休ませよう」に飛びがちだが、まずは通常勤務の支障という事例性の指摘を尽くすべき。 休業を命じないのであれば懲戒する覚悟が必要。「様子を見る」「受診させて見守る」という選択肢は取らない。 休職命令と懲戒処分 第二原則は「通常勤務できないなら休職命令」とは述べていない。事実を指摘し、原因が病気にあるなら休むことを強く勧めるという趣旨であり、休職命令権の濫用論に飛びつくのは論理の飛躍という整理。 休ませれば賃金請求リスクが生じるが、休ませなければ安全配慮義務不履行のリスクを問われる。両者は裏表の関係にある。 懲戒と休職命令を比較考慮すると、懲戒は履歴書の賞罰欄を通じて社外での不利益が大きくなりうる一方、休職命令は履歴書に記載されない。不利益の程度からは休職命令のほうが妥当。 懲戒は刑事処分に類似し、事実の存在と処分の均衡が求められるため無効になりやすい。戒告・譴責は法的不利益がほぼなく、訴えの利益が問題となる余地もあるという論点も提示された。 履歴書の賞罰欄はJIS様式の廃止に伴い減少傾向。賞罰欄の「罰」は一般に刑事罰の有罪歴を指し、軽微な懲戒処分の記載は不要とされるが、面接で問われれば正直に答える必要があるという整理。 懲戒は突然行うものではなく、事前に繰り返し予告した上での最終手段。この前提が伝わらないまま「療養の次は懲戒」と受け取られること自体が問題という指摘。 上司向け「3ステップ」 三原則は人事・産業保健職・法務が全体を見通すための「現場運用の羅針盤」であり、上司に教えるものではないという結論。 上司には「気づきと初期対応の3ステップ」として伝える。第1ステップ=気づきのポイント(従来の第一原則)、第2ステップ=指摘・指導を繰り返す、第3ステップ=人事と連携する。 管理職研修で三原則を紹介すると「どうやって休ませるか」に焦点が集中し、その前段にある指摘が抜け落ちるという実感。 「2.5原則」のように原則を分割すると混乱を招くため採用しない。 ポーカーフェイスができない上司は少なくなく、「休ませる」という結論が本人に見透かされると強い抵抗を招く。本人の状態が真正な事例でも微妙な事例でも同様。 上司に休ませる責任まで負わせると「休ませればあとは何もしなくてよい」という理解に流れる。責任範囲を指摘と人事連携までに限定するほうが機能する。 ラインケアとの住み分け ラインケアは「できる上司」を前提とした内容であり、全管理職に求めるのは非現実的。管理職登用試験でその能力を確認していない以上、全員ができる前提には立てない。 4つのケアの枠組みでは人事が抜け落ち、上司の相談先が直ちに産業医となる構造になっている。上司が向かうべき先は人事であり、健康管理ではない。健康管理は本人が向かう先。 上司向け研修ではラインケアの考え方に軽く触れつつ、「規定はしない、できる人はやってよい、基本はこちらで進める」という立て付けが現実的。 ラインケア研修を受けてきた上司ほど「肩の荷が下りた」と腹落ちする傾向。2019年の自治体研修でも同様の反応が多数寄せられた。 上司の裁量権と安全配慮義務 就業上の措置・配慮とは、本質的に「上司の裁量権に対する制約」。上司は法人から働かせる裁量を与えられているだけで、休ませる権限は与えられていない。 したがって休ませるか否かの検討は人事総務が関与してから行うべきであり、上司の役割は働かせること、部下を育成すること、そして安全配慮義務の担い手であることに整理される。 安全配慮義務の中身は予見可能性と結果回避義務。指摘を続け、その限界を超えそうな段階で人事につなぐという整理で履行と位置づけられる。 業務の加減について、事例性も疾病性もない段階では育成目的の裁量範囲内。事例性ないし疾病性が生じた後は、業務量の加減は上司の裁量ではなく法人の指示に従う領域に移る。 指摘・指導は育成の基本。フィードバックを受けない部下はいつまでも改善しない。 指摘は手間がかかるため、放置すれば「コスパのいい部下しか指導しない」状況に陥る。指摘のシナリオ(読み上げられる指摘文)は会社が用意すべきという提言。 管理職研修と動画活用 森の次回管理職研修の構成案:大原則と2つの健康管理の整理 → 復職プログラムの動画視聴 → 上司としてやってほしいこと(3ステップ)。 高尾が医学部生に動画を見せたところ、AMAガイドライン等の講義内容より動画の印象が強く残った。「寄り添わなくてよいのか」という当初の違和感が、動画を見ることで「こんなものか」と納得に変わる反応が多数。 動画は実践投入済みのツールであり、本物を見せることの説得力が大きい。業務基準の説明や、休職期間満了=解雇扱いとする就業規則の読み上げまで、口頭では言いづらい内容がスムーズに受け入れられる。 「理屈はいいが本番でできるのか」と構えて聞く層に対して、動画が有効に機能するという手応え。 編集後記 高尾 これまでの三原則は、産業医(保健職)・人事総務・法務などの、後方支援メンバーの「見通し」をたてるための指針、一方で、上司のための3STEPは、いままさに目前の対応をするための簡便なルール、というような棲み分けですかね。  その意味では、後方支援が主の産業医等からは、現場対応が主の産業医(保健職)に対しては、3STEPを示すことになるのかもしれません。 前園 メンタル不調者対応における私のテーマのひとつが、「人事や上司・管理職を悩ませない」ということなのですが、まさに今回の議論は学び多き時間でした。  メンタル対応は、どうしても、不調になってしまった方に焦点を当てる議論になるのですが、人事や上司らに焦点を当てることにより、見えてくることもあると思います。  こういった、軸をズラすような考えは、これからもクセとして持っておきたいと思います。 森 動画を用いた上司向け研修をやってきました。動画自体については異論無し、厳しすぎるという意見は全くなく、実践導入に向けて対応していくこととなりました。  興味深かったのは、実際に面接で対応する担当者と、一般の上司とでは、考え方が異なった点です。上司からは、「動画は抑揚がなく、人間味に欠けるので、もっと暖かくしてほしい」という要望が多かったのですが(これはAI音声の設定の都合もあったかもしれません)、担当者の上司からは「矢面に立たされる担当者がこれまで不憫だった。これなら様々な反発を直接受けずに済む

  7. Jul 1

    第104回|産業保健に生かす裁判例の読み方・考え方

    9月の産業医生涯研修で予定するコマ「産業保健に生かす裁判例の読み方・考え方」の構成を考えました。 告知 【産業医生涯研修会のお申し込みはこちらから】 https://jfpa.manaable.com/login/6fc978c9-b132-4b5b-933c-292b51dc7f2b/detail 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:先週の札幌での地方研修に続き盛岡へ移動し、じゃじゃ麺を食べました 前園(アラビアータ):エレベーター内でドアにCM映像と音楽が流れた件への違和感。隙間時間まで広告で埋める風潮への悲しさを吐露。 森:総務省・家計調査の対象世帯に当選。半年間の購入品を逐一記録し、初月は食品の重量まで測る負担を紹介。 議論した内容 裁判例を産業保健に生かす2つの軸 産業医が裁判例を知りたがる背景に、「自分の身を守る(訴訟リスク)」と「企業へのアドバイスに生かす」の2軸があるとの整理。 産業保健で裁判例が生きる分野はメンタル不調者対応・過重労働・ハラスメントに偏り、健診事後措置やストレスチェックでは生かしにくいという指摘。 弁護士を介したリスクの押し付け構造 会社の顧問弁護士が、リスクを産業医に取らせる形で主導権を握ろうとする構図。 軽減勤務からフルタイムに移行できない従業員の面談を突然任され、雇用継続への懸念まで産業医に言わせようとする場面など、「自分が言って大丈夫か」という不安が生じる。 パワハラ裁判の萎縮効果 保健師が産業医からパワハラを受けたとされる事例(判例誌掲載)を題材に、裁判所が職場コミュニケーションの適否にまで踏み込む傾向への懸念。 挨拶の無視といった細部まで本件行為として認定される運用が、現場の萎縮を招くという見方。 法的リスクを考えるべき場面 法的リスクが顕在化するのは基本的に「無理やり辞めさせた時」(休職期間満了退職・原職復帰拒否)であり、休職発令の無効や賃金差額請求として争われる。 原職復帰を前提に延長を1回に限る等、雇用を無理に終了させない運用なら過度に恐れる必要はないという整理。片山組事件と必ずしも一致させる必要はないとの指摘。 裁判例そのものの読み方 判決文の構造(経緯・争いのない事実・争点・原告/被告の主張・裁判所の判断・結論)を解説するレクチャーの価値。 ダイジェストや解説文だけでなく原告・被告の主張欄を対比して読むと双方の「景色」やエピソードが見え、会社側の主張は裁判所にほとんど採用されないといった実感も得られる。 SNS等で断片的に紹介される裁判例を鵜呑みにせず、要約に踊らされない余裕を持つべきという注意喚起。参考文献として労働新聞社の裁判例集や労働法の基本テキストを挙げる案。 産業医賠償責任保険と契約上の手当て 医師賠償責任保険は団体扱いが基本で個人加入しにくく、学校医・産業医活動の特約付帯率は低いと推測。支払い実績が乏しく保険会社に有利な一方、手間ゆえ営業が特約を積極的に付けない現状。 訴訟時の弁護士費用に備え、産業医契約に「業務に関連して第三者から訴訟等を受けた場合の費用は会社が負担する」旨を盛り込む提案。医療過誤で病院が求償するのと同様に、費用を会社へ求償する発想も。 費用負担が担保されるからこそ独立して判断できる、という独立性の捉え直し。 産業医が紛争当事者にされやすい構造と対策 産業医は法人から独立した人格ゆえ矢面に立ちやすく、産業医と会社(人事総務)の温度差・不整合が本人の紛争感を招く。 対策は、個別対応の前に運用ルール(対集団対応)を産業医が主導して整えること。事前ルールなく個別に会社へ足並みを揃えると「会社の犬」に映るという指摘。 主治医と産業医を場外に出し、会社と労働者を当事者として向き合わせる「仲人」的ポジションへの転換。 まとめ:トレードオフから両立へ 「自分の身を守る」と「企業へのアドバイス」は無策だとトレードオフだが、会社に言うべきことを言ってもらい、事前に定めた集団的方針を個別事例に当てはめる(シナリオも活用)メソッドを取れば両立するという結論。 研修当日は今回の議論を原稿化し、ブロックごとに紹介しつつ質疑応答で補う進め方とする方針。 編集後記 高尾 (盛岡)じゃじゃ麺は、平打ちのうどん麺。ジャージャー麺は、中華麺、というのが一番の違いみたいですね。 前園 私が「人類はこのまま隙間を埋め尽くしてどこに行くのだろう」と考え出したのは、コロナ禍でWeb会議が普及し、「移動時間がなくなってWeb会議が1日20件入ってる」みたいなエピソードを聞いた辺りからです。エレベーターの中まで広告が流れるとなると、次はどこでしょう。 森 家計調査の報奨金は6ヶ月で21,000円。。。まったく割にあいません。国の大事な調査なのでもちろんご協力しますが、もう少し何か良い方法はないかなと思うところです。

  8. Jun 21

    第103回|パワハラ対応と産業医面談

    次回の研修会で予定しているパワハラのグループワークに向けて、事前議論を行いました。 告知 【復職名人の次の一手をスタートしました】 https://fukushoku-meijin.com/podcast/itte-ep01/ 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】 https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210⁠ 近況報告 高尾:台湾旅行で台湾ウイスキー(カバラン)を購入。試験管入りの定番セットはキャップの出来が悪く液漏れした一方、国内未発売の新ラベルを免税店で割安に入手した。 前園:産業衛生学会に参加。大阪生まれ大阪育ちの立場から、川沿いを綺麗に整備し文化的に活用する大阪と、そうした発想が薄い福岡の街づくりの違いを実感したという話。 森:学会で「復職名人聞いてます」と多数の声をもらった。社名とブランド名の不一致に悩んだものの、ネームカードにシールを貼る対応で決着。セカンドライン番組も準備中。 議論した内容 パワハラ対応の大原則は「切り分け」 パワハラを理由に療養した本人が「上司を変えてくれれば復職できる」と主張するケースを素材に、復職の手続きとパワハラ認定の手続きは分けるべきという基本原則を確認。 切り分けないと、本人の関心が復帰基準の達成ではなく加害者の処遇やパワハラ認定の行方に集中し、時間だけが経過して復帰が遠のくという指摘。 実務で本当に困るのは明白なパワハラではなく、グレーやパワハラ未満の主張事案。会社側がまともに取り合いすぎると、本人が「要求は通って当然」という誤った方向に思い込みやすくなる。 休職を取引材料にさせない、安全配慮義務を一身に投げさせない、という観点でも切り分けが有効。 産業医面談の限界と「原因/結果」の切り分け 産業医は面談で本人の話しか聞けないため、客観的にパワハラ有無を判断できない。主治医が本人の話だけで上司を悪者と判断してしまう構図と同じという指摘。 「原因(本人がパワハラと考えるもの)」と「結果(精神的不調)」を切り分け、医療職は後者の相談・助言にのみ関わるという整理。 慣れていない産業医・産業保健師がこの領域に踏み込むと事態を悪化させるため、安易に触らせたくないという立場も示された。 「さよなら産業医面談」—何でも面談への問題提起 ノープラン・ノー情報で何でも聞く「いきなり面談」は時代に合わないという問題提起(高尾先生の連載構想)。 臨床の問診も構造化・標準化が進み、思いつきで取る情報が決定打になる場面は減ったとの見立て。産業保健でも質問紙等で必要な情報を体系的に収集する流れにあるとした。 パワハラ相談はそもそも産業医・産業保健師がワンストップで受け止めるべきではなく、通報窓口へ案内すべきという整理。 カリスマ産業医とエントリー産業医 法律知識・人事との連携・本人の協力を兼ね備えた万能型(カリスマ)産業医なら、本人ヒアリング→会社確認→異動を含む調整→復職、という交渉ごとをこなせる。ただし非弁活動に近づく面もあると指摘。 一方で、嘱託産業医がそこまで時間をかけるのは物理的・時間的に非現実的。カリスマは「ここまでなら会社が動く」という交渉枠を経験的に持っている=時短交渉をする弁護士に近いという整理。 多くの産業医には、社外相談窓口の初動のように「判断はせず事実だけ確認する」という割り切った役割の方が現実的という結論。 ワンフレーズから「構造化(パーツ化)」へ 設定されてしまった面談では、冒頭で「この場はパワハラの有無を判定・調査する機関ではない」と立場を説明し、調査希望ならパワハラ窓口へ案内する切り返しが有効。 ただし会社側が「パワハラは曖昧なまま、この人を異動させたい」といった忖度系の依頼を産業医に持ち込む構造もあり、巻き込まれるリスクに注意。本人の前で人事面接へ引き渡すシナリオ(産業医の顔をあえて軽く潰す芝居)も紹介。 ワンフレーズでしのぐのは過去の手法。新しいしのぎ方は、伝えるべきこと(中立の立場説明・聞く範囲の限定)を配置し、自由に聞く部分の射程を自分でコントロールする「パーツ(構造)」化。 質問が決まっている構造化面接とは異なり、こちらは「言いたいこと」を起点に自由発話の射程を制限する点が肝。両立支援カードの「自由なキャンバスに見えて絵柄は決まっている」発想とも通じる。 イメージは「交通整理」。本人のお困り事を預からず、緩やかに本人へ返すキャッチボールにたとえた。整理の軸は「原因側・結果側・交絡要因」の3つに絞ると伝わりやすいという案も示された。 編集後記 高尾 産業医が前置きなしで、パワハラの相談を受けてあげると、従業員は、「中立的(=医学的?)であるはずの産業医が共感的に意見を述べてくれたということは、すなわち「私は正しい!(真にパワハラを受けている)」という考えの強化に関与してしまっているんじゃないですかね。。。 前園 パワハラの問題については、パワハラとはなんぞやという啓発の第1フェーズがうまくいかないまま、「パワハラという言葉が走ることで萎縮効果が生じる」という第2フェーズに入っている印象があります。  さすがに最近は、第1フェーズの研修を新規で依頼するような会社は減っているかとは思いますが、第2フェーズにおける有効な対策を考えていくのが、今年の課題だと思います。  教育なのか、仕組みなのか、両方なのか。仮にそれらでやるとしても、本当に実務で活きるやり方は何なのか。  産業保健に携わるみなさんと議論を深めていきたいです。 森 パワハラのネガティブリスト(やっちゃダメリスト)方式の問題は、最近少し話題になっていた不適切保育ガイドラインの問題にも通じる気がしました。例えば「お口チャック」はダメと示されているのですが、じゃあなんて指導したら良いのかはわからず、現場では大変苦労されているようです。

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この番組は、産業医の高尾総司、弁護士の前園健司、社労士の森悠太の三名が、企業や自治体の人事・健康管理に携わる方向けに、メンタルヘルス不調者対応や健康管理について、議論をしていくポッドキャストです。 【番組へのご意見・ご質問・ご感想はこちら】 https://peing.net/ja/takaomethod 【有料のオンラインサロンをやっています。番組を応援いただける方は、ぜひご加入くださいませ】https://community.camp-fire.jp/projects/view/307210%E2%81%A0

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